なぜミネアポリスで事件が相次ぐのか
マライ:次はミネアポリス。どういう場所なのかですね。
今、ミネアポリス市には2000人のICE(アイス)のエージェントがいるんですね。でも、なんで今急にそこにいるのかというのが、いくつかの理由があります。まずは移民の多さですね。
ミネアポリスは、ミネソタ州のツインシティ地域なんですけど、そこにはとにかく移民、あと難民の比率が多いんですね。一番多いのがソマリア系の移民なんですね。米国最大のコミュニティがあるんですよ。で、ちょっと問題視されているのが、2000年後半以降、一部の若者がソマリアの武装組織のアル・シャバブに参加してしまった、まあテロの時代でしたよね。
それが問題視されていて、結局そこらへんは連邦政府によってすごく注目されてしまったということなんですね。だからICE(アイス)とかFBIが重点的に活動している地域だったりするんですね。
それもあって、ICE(アイス)と市民の衝突が正直起きやすいというのもあるんですね。ずっと自分が捜査されているのか疑われているのか気に食わないというので、ちょっとヘイトが溜まっているわけなんですよね。
しかもICE(アイス)のエージェントって、場合によっては私服だったりするんですね。だからこの人たち、そもそも誰なのか、何をやっているのというので、市民側はちょっと理解がない。誰がどんな権限で今来ているのかわからないという状況なので、ヒートアップしやすい。
あと、全員がとりあえずスマホで動画を撮るという。これも、ニュース映像でみんな見ていると思うんですけど、防衛方法はもうとにかく動画で撮影するしかないというのがあるわけですね。
で、もう一つは、共和党VS民主党の構図がそこにあるということですね。ミネソタ州は、ギリギリ民主党なんですよね。民主党ではあるんです。1976年以降ずっと民主党なんですけど、すごいギリギリ民主党なので。
トランプ大統領からすると、ワンチャン共和党に塗り替えられるんじゃないかなという狙いがあるんですよ。
武田:しかもそこを象徴的な勝利の場所にしたいということですよね。
マライ:そういうことなんです。で、2020年にちょっとした給食関連の詐欺事件(Feeding Our Future スキャンダル)が起きていて、それを今のミネソタ州の知事、ティム・ウォルズさんが、今年に入ってからちょっと責任を取らされているんですね。「あなたの下でこんなことあったんですけど」って。
しかもその詐欺事件には、なんとソマリア人コミュニティがちょっとだけ関与していて、「あなたはすごく移民に対して脇が甘いんじゃないか」というふうにメチャクチャ攻撃を受けているんですね。
動画に残された2件の殺害事件と政府の反応
マライ:というのがあるわけなんですよ。そこで、結局1月7日と1月24日に殺害事件が起きてしまったわけなんですね。ICE(アイス)エージェントによる射殺なんですよね。ドイツから見ても日本から見ても、なかなか珍しい事件だと思うんですけどね。
どっちも、27歳の人が殺されているんですね。1月7日に殺されたのは27歳の女性、3人の母なんですね。ICE(アイス)のエージェントと口論になってしまって、急に、自分の車でゆっくり移動しようとしたら撃ち殺されたと。
現場には医師もいたんですけど、ICE(アイス)のエージェントが「近づくな」って止められたりとかしていたんですけど。結局何が起きたのか、いろんな動画が存在するから、すごくいろんな見方があって、意見が合わなかったりするんですけど。
印象的だったのが政府側、JDヴァンスがすぐにステートメントを出して、「これはエージェントによる自己防衛だった」というね。「エージェントを悪く言うやつは恥を知れ」というのがあったんですね。逆にミネアポリスの市長はそれに反発して、「嘘ばっか」とかコメントしているわけなんですね。
武田:まあでも、いろんな映像が流れてきてますけれども、でもその、なんというんだろうな、ヴァンスのいう自己防衛だったというような振る舞いではなかったようには見えますけれどもね。
マライ:いや、そこなんですよね。結局後からいろいろ検証すると、正直自己防衛なのか。でもポイントなのは、エージェントが自己防衛だと主張すれば、それは一応自己防衛なんですという法律があったりするんですね。
武田:それが通ってしまう。
マライ:通ってしまう可能性が高い。
武田:だからこそそこにいる人たちは、もう常にスマホで撮って、どういうことが起きているのかを知ってもらうために、そういうふうにするしか方法がないってことなんですね。
マライ:方法がないってことですね。そこはミネソタ州としてもこの事件については捜査したかったんですけど、なんか急にFBIが出てきて「いや、うちのほうでやるんで」って証拠品を全部押さえられて、できないんですね。
で、24日にもう1回男性が殺されているんですね、看護師のほうなんですけど。このときはやっぱりみんなまた動画を撮っていて、証拠が残っているんですけど。ここはミネソタ州が早く実は証拠品を押さえているんですね。「もう絶対許さない」って。
でもそのときもやっぱり同じ構造で、トランプ大統領が「反乱の先導だ」とか、ミネアポリスの民主党系の行政を「責任はそこにあるよね」というようなことを言っているわけなんですね。
だからそこらへんはね、また今後どうなるのか極めて気になるところではあるんですけど。
「イキり」と余裕のなさが招く悲劇
マライ:そもそも、なんでICE(アイス)の職員は、そう簡単に人を殺してしまうのかなというのが気になるんですね。今回の事件は、白人が白人を殺すという構造で。
なんかフロイドさんがこの近くで、覚えていますよね、ブラック・ライブズ・マターのね、殺されているんですけど。これはまたちょっと完全に別の話で。これこそは有色人種とか黒人に対する警察のステレオタイプとかの問題だったりするんですけど、これはちょっと違うことになるんですね。
これは本当にICE(アイス)のメンバーが、この場所に送り込まれていて、一種の混乱、パニック状態に陥って、精神的に余裕がなくなったときに、急に銃があるわけだから撃ってしまうという、なんかそういったようなものなわけなんですね。
西村:どちらも37歳の方ですかね、犠牲になった方。
マライ:そうです、そうです。37歳なんですよね。
そう、若いんですよね。だから新規採用も早かったりとかしていて、真のプロじゃない人たちがICE(アイス)に入ってきて、もしかしたらそれが今回の事件につながったという考え方もなくはないんですね。
まあ特に最初の事件のエージェントは、もう10年間仕事していたらしいんですけどね。だからそこらへんはどうなっているのか、極めて気になるところではあるんですけど。
ちょっとだから、その背景にあるものはすごく複雑で。ICE(アイス)という組織の構造もそうですし、あとミネアポリスという場所の特徴というのがあるわけなんですね。
だから私の結論というのは、そこにあるICE(アイス)の最近のちょっと「イキり」ですね。余裕のなさ、そしてパニック。その組み合わせが、もちろん最悪なんですけど、それが原因なんじゃないかなという気もするんですけど。
正直、この国のトップの方、もうちょっと彼自身はそういう構造なんじゃないかなという気もしなくもないので。だからある意味、今のアメリカの象徴的なことが起きているんじゃないかなという気がします。
武田:恐ろしいのは、あれだけいろいろ映像が残されていて、「これはどうなのか」というふうに議論が出ているのに、またそこにさらに同じようなことが起きてしまっているということですよね。
マライ:それの繰り返し繰り返しに、今後もやっぱなるんじゃないかなと。誰が止めるかというと、本当はトップだったりするんですけど、そうでもないので。
私はやっぱり注目している映画『シビル・ウォー』、ぜひみなさん観てほしいんですけど。まあそういうようなアメリカに今後なっていくのかどうかがポイントなんじゃないかなと思います。
武田:もうむしろこの国のトップがね、「よし、それは正当的なものだ」というふうに蓋を被せちゃうわけですからね。
マライ:そうなんですよ。
武田:こういうことがこれからもずっと起き続けるかもしれないという、この恐ろしい状況ですよね。
マライ:恐ろしい状況ですね。連邦機関がそれを完全にバックアップしている、そういう話ですね。
西村:このコーナーはPodcastQRでも配信しています。ぜひチェックしてください。ラジマガコラム『マライの気になる世界のアレ!』でした。