【3行要約】
・政治を「右・左」ではなく「お金」と「価値観」の4象限で見ると、立憲民主党と公明党の中道改革連合は「リスクの社会化」と「リベラル」の組み合わせで相性が良いことがわかります。
・ 中島岳志氏は「公明票と学会票は違う」と指摘し、公明党が単独で選挙を戦うと票が3割減る危機感から、立憲民主党との連携に至ったと分析しています。
・ 沈没しつつある日本に必要なのは「もう一隻の船」であり、中道改革連合がこの新たなビジョンを示せるかどうかが今後の政治の焦点となります。
「右・左」ではなく、「お金」と「価値観」で見る政治の4象限
西村志野氏(以下、西村):ここからは前半レギュラー、火曜日は中島岳志さんのコラム『中島岳志と解く』です。今日はどんなお話でしょうか。
中島岳志氏(以下、中島): はい。「中道改革連合はどうなるのか」ということで、新しく立憲民主党と公明党が、1つの政党を作るという話になりました。
世の中では、当然これは選挙前に解散ということでこういう流れになったので、「選挙互助会じゃないか」とか、いろんなことが言われているわけですけども。
もちろんそういう側面はあると思いますが、僕はこの2つの政党というのは、そもそも相性がいいと思ってきたんですね。自民党と公明党の連立のほうが明らかに正当性がなくて、もともとをたどると民主党と公明党のほうが政策が圧倒的に近かったという問題があると思います。
僕は政治を見る時に、「右」「左」という、「中道」は右でもなく左でもなくと言われていますが、これはあまりいい言い方じゃないなと思っているんです。右・左じゃなくて、別の座標軸で、政治を見たほうがいいと思っているんですね。
どういうことかというと、国内政治ですが、内政についての政治というのは、大きくはお金の問題と価値の問題を扱っているんだと思うんです。
お金の問題というのは、これは通常国会で予算を決めて、つまり税金でお金を集めて、あるいは国債もありますけれども、それでどこにお金を政府は使っていくのかという、このお金の出し入れですね。これがものすごく大きな仕事です。
それだけをやっているんじゃなくて、もう一つは価値観の問題に関わる仕事があって、選択的夫婦別姓の是非とか、LGBTQの人たちの婚姻の問題とか、あるいは先の戦争についての歴史認識とか、いろんなこういう問題というのは価値観の問題ですよね。これについても政治が、大きく法案を作ったりということでやっていると。
この2つを見た時に、まずお金の問題については、僕は「リスクの個人化」と「リスクの社会化」という言い方をしているんですけれども。リスクって生きてるといろんなリスクがありますよね。突然仕事ができなくなって、病気になって。
こういった時に、「自分でやってくださいね」というふうに自己責任というのを掲げるのが、リスクの個人化なんですね。いろんなリスクというのは自分で対応してくださいねと。行政に頼らないでくださいねという、そういうタイプですね。いわゆる「小さな政府」と言われるもの。
それに対して「リスクの社会化」というのは、そういうリスクってみんなにありますよね。だからみんなで助け合ってやっていきましょうよと。行政も、セーフティネットを分厚くして、みんなこういうことになったらなんとかやっていける社会を作りましょうよというのが、リスクの社会化なんですね。
こっちのほうが、比較的税金は高くなるけれど行政サービスは分厚いと。税金をどこから取るのかっていうのも重要なんですけれども、こういう対立軸があると。
もう一つは価値観の問題ですね。選択的夫婦別姓についてどう思うのかといった時に、僕はこれも、ちょっと難しい言い方なんですけども、「リベラル対パターナル」という対立軸があると思っているんです。
リベラルというのは、個人の内面の問題とかについては、その人の自由ですよねと。上からいろんな政治が介入しないようにしましょうねというのが、これがリベラルですね。
逆にリベラルの反対って保守じゃなくて、「パターナル」という概念で、家父長的という意味なんですけれども、父権的という意味がいいかと思いますが。つまり、強い力を持っている人が価値観の問題に介入していくという、「介入主義」と考えていいと思うんです。
例えば選択的夫婦別姓の問題だとすると、リベラルだったらそれはパートナーとの間にそれぞれの価値観に基づいて、自由を認めていきましょうというふうになるわけですね。けれどもパターナルのほうは、日本人だったら家族は同姓である「べき」だみたいな、こういう「べき論」で介入をしていく。
婚姻のあり方だって、LGBTQの人たちの婚姻を、いやそれはそれぞれの愛のカタチは自由で、いろんなカタチがあるんだから、それは自由にやっていきましょうよというのがリベラル。それに対して、いや男女の愛だけが正当な法的な婚姻の対象であると介入をしていくというのが、パターナルですね。
立憲・公明の相性の良さと「希望の党」との決定的な違い
中島:こういうふうに分けると、4つの軸ができると思うんです。これの組み合わせで政治を見たほうがいいと思っていて。この中道改革連合というのは、明らかに「リスクの社会化」と「リベラル」なんですよ。
やっぱり再配分をやっていきましょうと。「生活者」という言葉が出てきましたけれども、そこに手厚くやっていきましょう、セーフティネットを分厚くしていきましょうということと同時に、選択的夫婦別姓とかは賛成ですよと。リベラルな価値観でやっていきましょう、と。
これはもともと公明党と、もともとの民主党が共通の土台であったもの。逆に公明党は真逆の、リスクを個人化していき、かつ価値観がパターナルである自民党と組んできたんですよね。
これが公明党をずっと苦しめてきたところがあって、自分たちの支持層の創価学会のみなさんと、この自民党が進めようとする政策がぜんぜん違っているので、公明党はどんどんすり減ってきたわけですね。それが限界に来た。特に高市(早苗)政権とは一緒にやれないというのが、この流れの背景にあったもの。
よく「希望の党騒動」ってありましたね、2017年ですけれども。「希望の党と似ているんじゃないか」と言われるんですけれども、これはぜんぜん違う現象だと僕は思ったほうがいいと思っているんです。
希望の党は何が問題だったかというと、あの時前原(誠司)さんという人が民進党を率いていましたけれども、前原さんもリベラルでリスクの社会化を唱えていたんです。「All for All」と言っていましたから。
けれども、もうひとつくっついた重要な小池百合子さんですね。小池百合子さんは真逆なんですよ。リスクを個人化していくというのと、極めてパターナルな歴史認識とかを持っている人で。
この真逆がくっついたから、「え、希望の党ってどういう政党なの? 何を目指してるの?」というのが、ちょっとみんなわかんなくなって、選択肢を作ってほしい、となって「枝野(幸男)立て」っていうことになるんですね。で、立憲民主党がリベラルとリスクの社会化というフラッグをとったという、そういう選挙だったので、こことだいぶ違うなというふうに思いますね。
10年前とは異なる国際情勢下で、どう安保・原発政策をすり合わせるか
武田砂鉄氏(以下、武田):でもその今、中道改革連合の、こういったことをやりたいということが出てきていますけれども、立憲民主党と公明党がくっついて中道改革連合をやるって言った時に、「あれ? あそことここ、考え違うんじゃないの?」ということで出てくるのが、安全保障であり、原発政策であり、憲法でありというところが問われる。とりわけこの安全保障法制はぜんぜん違うんじゃないのと。
10年前に安保法制の議論があった時に、立憲側は非常に厳しく迫ったけれども、公明党は自民党と一緒になって推し進めたじゃないかと。昨日あたり共産党の人たち、田村(智子)代表なんかは「10年前のこと覚えてます」というようなことを言っていましたけれども、ここをじゃあ擦り合わせることができるのかというのは、問われますけれどもね。
中島:大きいと思いますね。そもそも共産党と立憲民主党というのが、野党共闘を目指していきましょうとなったのは、2015年の安保法制、これで立憲主義がおかしくなっているんじゃないかというところから共闘が始まっていき、まあ結局のところ共闘できなかった、部分的な共闘に留まったということだと思うんですけれども。
やっぱり立憲民主党としては説明が必要ですね。存立危機事態というものについて対応するということは合憲の範囲内であるという、そういう説明をとっているんですけれども。しかしじゃあ、あの時に何が立憲主義に引っかかって問題となったのかについては、もうちょっとちゃんと整理をしないといけないですね。
やっぱりこの10年間、この集団的自衛権というのの部分的な容認ということで、もう政策がずっと進んできていると。なので、ここで与党に入ってこれをひっくり返してしまうというのは、けっこう大変な話ではあるんですね。
ですからこの10年間というものの、日米安保を中心とした歩みを、公明党としては崩されては困りますよと。野党の可能性がなくなりますよという、そういう話だと思うんですが。しかしちゃんと論理はしっかりと整合性をとるということと、同時に日米安保の性質も10年前から変わっているはずなんです。
10年前はやっぱりこの日米のバイの関係というのかな、を非常に強くしてたんですが、今はもう少しネットワーク型の安全保障という方向へと変わっていかないと。
トランプ政権になってもうね、どんどんどんどんモンロー主義、ドンロー主義とか言って、自分たちの裏庭である西半球だけを自分たちのテリトリーとするよみたいな、そんな方向性が見えてきた時に、やっぱりぜんぜん違う安全保障を考えていかないといけない。
なのでこの両輪、立憲民主党としては積極的に、あの2015年の日米安保を基軸としたこの集団的自衛権の組み立て自体も、やはり組み替えていかないといけないんじゃないですかという、そういう提案にしてほしいなと思いますね。
武田:あとは原発政策については、中道改革連合は「将来的に原発に依存しない社会を目指す」ということを言っている。
これまで立憲は「原発ゼロ社会」をどう作り上げるかっていうのを言っていた。公明党は、地元の理解を得た場合は再稼働はありかなということを言っていた。ここをなんというか、真ん中の点を一応見出したということにはなるんでしょうかね。
中島:そうですね。立憲民主党としても、やっぱりオルタナティブな電力のあり方をしっかりと説得的に出せていないというのがあると思いますね。やっぱりメガソーラーというのがこれだけ大きな自然破壊の問題とかを含んでいるというのが見えてきたりしていますので。
いわゆる再生可能エネルギーというものについても、僕は小型化っていうんですかね、いろんなものをこう多数、無数に小型なものを作ってやりくりしていく方法しかないと思っていますけれども。それをちゃんと今の電力需要に合わせたカタチで出せるのかっていうのが、政権を担う政党としては必要なことだと思うんですね。
一方でやっぱり原発の問題だって何も詰まってなくて、避難の問題とか安全の問題とか、あるいは核のゴミの問題だってぜんぜん解決できていないんですね。
両方が解決できていない問題の中で電力をやっているので、やっぱりもう少し電力の問題は総合的に考えていくという、オルタナティブをやっぱり立憲は出さないといけないですね、しっかりと。
武田:今日の新聞でもこの柏崎刈羽原発の再稼働延期っていうニュースがあったりとか、浜岡原発の裁判の中で反論書面に不正データを使ってたとか、そういった原発に関わるニュースが度々入ってくるわけですからね。