「公明票」と「学会票」は違う 公明党が単独で戦えない切実な事情
中島:そうですね。で、公明党のほうなんですけれども、おそらくこの話で、非常にこう積極的に動いたのは、もちろん立憲も動いてるんですけども、公明党もやっぱり非常に積極的に動いたと思うんですね。
どういうことなのかというと、こうちょっと世の中、巷で言われていることが、公明票というものが各選挙区で1万5,000から2万ぐらいありますよと。で、これがひっくり返ると大きいですよね、というのが述べられているんですけども、もうちょっとこれはていねいに見ないといけない話なんですね。
どういうことかというと、公明票と学会票って違うんですよ。で、これがすごい重要なポイントでして、学会票というのはいわゆる「固い公明票」というふうに言われるんですけれども、これは出口調査で公明党の支持者ですと答えて、さらにそれで公明党に入れましたという人の数なんですね。固い公明票、いわゆる創価学会票と言われるものなんです。
それに対して公明票と言われるものは、他の要素、他の票が入っているんですね。どういうことかというと、いわゆる公明票と言われているのは、各選挙区ごとの比例で公明と書いた人を公明票と呼んでいるんですけれども、ここには1つは自民とのバーター票というのが入っているんですね。
つまり、公明党はほとんどの小選挙区では自民党を応援します、と。その代わり、比例は公明に入れてくださいねというのを言ってきたんですね。ですから各選挙区の自民党支持者の中でも公明と書いて票を渡している人たちがいる。これは今度の選挙では野党側には移らない票ですよね。
2つ目にこれも大きいんですけども、いわゆるゼネコン土建票というのがあって、これは公明党が国土交通大臣をずっと握ってきたんです。
武田:ずっとですもんね。
中島:そうなんです。ずっと握ってきました。で、これはなんで握ってきたかというと、やっぱりいわゆる土建ですね。日本の集票的には非常に大きいんですけれども、この業者を牛耳るというのがありました。なので、こういうゼネコン業界とかも、公明党に票をかなり回してたんですよね。
なので、これも消えますよね、今度は。与党じゃないわけですから、で、大臣とってないですよね。ということで、これ公明票と言われるものにはそういうものが入っているので、今度動くのは学会票であって公明票ではないんですよ。
じゃあどれぐらい目減りするのかというと、計算するとだいたい8,000から1万2〜3,000ぐらいなんですよね。なので、1万5,000から2万と言っているよりは、半分まではいかないんですけども、7割ぐらいになると。で、これがどう動くのかっていうそういう話になると思うんです。
武田:純にここの票がごっそりこっちに行くぞ、ということではもちろんないということですね。
そうなんです。だから公明党としてはやばかったんです。つまり与党から離れて野党化する、公明だけで選挙をするということは、3割ぐらいの票がなくなるんですよね。それで単独でやると、比例票がガサッと落ちますから、選挙でかなりの議席数を減らすと。
小選挙区で4議席持ってたんですけども、これも全部落選する可能性があると。これは学会票だけでは勝負にならんぞっていうので、やっぱり立憲側にくっついていくという選択をしていったっていうのも、実際の問題としてあると思うんですね。
安倍政権との「真逆」の相性と、過去の野党ムーブメントに欠けているもの
武田:その自民党側が、この中道改革連合、選挙互助会じゃないかというような言い方をされていて、まあそうなると今まで自分たちは選挙互助会じゃなかったのかという感じもしますけれど。
まあついこの間まで自民党と公明党がくっついて、それに対して野党側、立憲民主党は、まあその立憲民主党側からはその公明党に対する批判であるとか、公明党側からは野党、立憲民主党側に対する批判っていうのも当然その選挙中には言い争ってたわけじゃないですか。
その時にどういうことを言い争ってたのかっていうのは、当然少し調べりゃ出てくるわけなんで、そういったところの不一致っていうのをこれからいろんな場面で問われてくると思うんですよね。それに対して、どういうこうレスポンスができるのかっていうのも、非常に重要なのかなとは思ってみてますけどもね。
中島:そうですね。やっぱり公明党がこれまでかなり無理をしてきたんですよね。安倍内閣の安倍さんの考え方と公明党のもともとの考え方は本当に真逆です。平和と福祉の政党というふうに言って、いわゆる大衆、創価学会というのがやっぱり戦後の混乱期の中で、特に地方から大阪とか地方から東京とかに出てきた人たちがコミュニティを失って出てきた。
しかも、どちらかというと裕福な層に多いわけじゃなくて、庶民層に多いと。そういうところがあって、そこに創価学会はいろんな宗教活動をしてコミュニティを作っていった。婦人部を作ったりとか青年部を作ったりっていう、そういう宗教社会運動だったんですね。
ですからやっぱり支持者が、所得のすごい高い人たちの母体ではなくて、むしろ庶民層なんですね。ですからやっぱり「トリクルダウン」って言って安倍さんとかは、やっぱりお金持ちのところにお金を下ろすと、それが滴り落ちるように下に行くんだっていう。まあこれはまったくそんなことなかったんですけれども。
武田:滴らなかったですもんね。
中島:滴らなかったですよね。で、それとはやっぱり真逆の発想の政党だったんですね。逆に自民党のいわゆるリベラル派、「リベラル保守派」と言われる、まあ石破さんとか、こういうところは公明党に非常に近い考え方なんですね。なので、石破さんだったら、続いていたと思います。
けど高市さんになると、これ安倍さんよりも場合によってはタカ派だから、これは歴史認識の問題とか一緒にやれないですよねってなってきたんですね。
だから整合性としては、立憲民主党とのほうが政策的には近い。なんであんな安倍さんとかに近づいていったんですかということを問われないといけない、公明党はね。
武田:だからその投票先をイメージで選ぼうとは思わないですけれども、イメージで投票する方っていうのもおそらく出てくるとは思うんですが。
このイメージで考えると、まあ初めての女性首相が一人でピシッと立って、「私を信任するか信任しないかで選んでください」っていうふうにああいうふうに出てくるのと、この中道改革連合の立ち上げの時には、まあ立憲民主党と公明党のそれぞれの代表が出てきて、まあ手を組んでとか。
まあ5人で会見する時に5人ともこう中年の男性でっていう感じのイメージと、かなり対照的なイメージで今2つ提示されたという感じがありますけれども。
中島:いやそうなんですよ。あの、何かね、こう「一人で立って」っていうほうが明らかに強いんですね。
野党側で大きなうねりがこの10年で起きたとするならば、2017年の立憲民主党の結党、それから2019年のれいわ新選組ですね。これが大きなムーブメントとしてできたものですけども、これ2つとも退路を絶って、代表が一人で立ってるっていう、そういう印象が非常に強かったんですね。
枝野さんだってこの希望の党騒動で「排除します」っていうふうに言われた人たちで、どうしようもないっていうところから、「けどおかしいよね希望の党、僕たちはやっぱり純粋にこれを訴えたいんだ」っていうので、枝野さんが「枝野立て」っていう声に促されるカタチで「立憲民主党はあなたです」というふうに言ったところから、うわーっと盛り上がったんですよね。
武田:そうだったそうだった。
中島:2019年の参議院選挙で山本太郎さんが出てきたっていうのも、やっぱり一人で立って、政治にぜんぜん届いていない、そういう層がいると。そういうところにこそ政治をっていうふうに生きさせろっていう、根本的な問題を彼が立ち上がったので、まあムーブメントができたわけですよね。そういうムーブメントではない、今回。
武田:そうですもんね。別にムーブメントで投票先を選ぶってことは、別に僕は必要はないと思いますけれども。
どうもその今はムーブメントのありなしでね、その党に対する波が起きるかどうかっていうのがちょっと決まってしまうっていうところがあるので。そのあたりがこの短い選挙戦の中で、それぞれの党がどうなっていくのかっていうのはね、気になるところではありますもんね。
沈没しゆく日本に必要な「もう一隻の船」
中島:だからこうビジョン、やりたいこと、あの「もう一隻の船」を浮かべないといけないっていうのが僕の考えなんですね。
やっぱりこうずっとこう自公でやってきて、この自民党中心の政権っていうのが、なんかもう沈没していってるぞと。日本もどんどんどんどんとこう円安になってるし、GDPとかもいろんな国に抜かれていってるし、なんかズブズブズブズブ沈没していってるっていう、その船だと思うんですけれども。
けれどもね、なんかその船にずっとみんなしがみついてるんですよね。それはなんでかっていうと、もう一隻の別の船がやってこないからですね。こっちに乗り移るともっといい世界になりますよ、別の方法があるんじゃないかっていう、もう一隻の船がちゃんと出てこないと、人はこっちに乗り移れないと思うんですけども。
この船が、見えないといけないですね。中道改革連合は、この船を見せれるかどうかっていうのがポイントだと思います。
西村:このコーナーは「
PodcastQR」でも配信しています。ラジマガコラム『中島岳志と解く』でした。