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勅使川原真衣の今日もマイペースで(全3記事)

たとえ選択肢が17倍に増えても脳は進化していない 「タイパ」「チョイパ」で思考停止する前に知っておきたい、選ぶ主体のアップデート [2/2]

AIレコメンドや「ナッジ」は、本当に中立な選択肢なのか?

勅使川原:2点目はですね、こんなお話をするとこうやって考える方もいらっしゃるかなと思うんですよ。「いやいやテッシーと。テッシーが古いだけじゃない」と。「テッシー古いよ。AIが選ぶサポートもうしてるよ」と言う方もいらっしゃるような気がするんですが、それもちょっと2点目として考えてみたいんですね。

実際に日経新聞の記事でも紹介されていました。ちょっと読みます。「米amazon.comの通販サイトではAIが消費者と対話しながら性能や価格などの要望を聞き取る。膨大な数の商品から選択肢を絞り込む。AIに相談した人が購入を決断する割合は利用していない人と比べ6割高かった」と。

「マジかよ」って感じが、私はしたんですけどね。これ、消費者が賢明な選択をできているのかどうかっていうのは、いささか疑問があるんじゃないでしょうか。Amazonといえばどんなアルゴリズムで動かしているか、もう都市伝説レベルに誰もわからない感じになっていますよ。

どんなアルゴリズムを持ちながら相談に乗ってもらっていると思っているんだろうか。相談が本当に中立なものであれば、購入率が160パーセント増するってなかなか不自然な数字ですので、中立ではないんじゃないかなという気もしたりします。

つまり何が言いたいかと言いますと、懸念点2はですね、商業的な選択を商業に任せていては不十分じゃないかなっていうポイントなんですよ。消費者社会は必ずしも消費のプロではありません。私たちは巧妙に誘導されています。他にも、えっと「キュレーション」っていう仕組みあるじゃない、とかね。「ナッジ」……ナッジ? 「ナッジもあるじゃない」と思われた方もいらっしゃるような気がします。

武田:ナッジって何ですか?

勅使川原:ナッジとは何か。ちょっと読みたいと思います。「ナッジは行動経済学に基づいて、人々が望ましい行動を自発的に選べるよう促す手法。罰則や強制を使わないで、選択肢の提示方法や環境の工夫によって無意識の判断に働きかける」という手法。

例えばですけども、よく公共のお手洗いなんかに「いつもきれいに使ってくださってありがとうございます」とかあるじゃないですか。あれを貼るだけで汚れる率が下がるとか。

あとはなんか私は知りませんけど、男性のお手洗いにサッカーのゴールが……。

武田:サッカーのゴールはありますよね。

西村:ええーそうなんですか。

勅使川原:あるみたい。

武田:サッカーのゴール、そんなにないですけどね。まあ「ここに向かってしてください」っていうね。サッカーのゴール……サッカーボールかな。どっちかっていうとね。

勅使川原:あ、ゴールじゃない(笑)。ゴールだと広いですよね。シュートを決めてらっしゃるんだと思っておりましたが。まあでも、あれもやっぱりないよりあったほうが的を絞れるっていう、無意識の判断に働きかけている例だそうです。

あとね、私はすごいイラッとしちゃうんですけど、よくメルマガとかをね、なんか会員登録しないと見られない記事のために登録すると、デフォルトで全部チェックが入っちゃってるの。「外す」っていうアクション。

西村:いつも忘れますよね。

勅使川原:そうなんですよ。まあそういうふうにデフォルト設定とかインセンティブの提示で人の行動を制御するっていう考え方なんですけども、これもどうですか。「無意識の判断に働きかける」とかね、なんか大したあれですけども、誘導じゃないんですかこれ。

まあ完全な自由選択かどうかとか、「主体的に私たち選んでいるんです」とはなかなか言い切れないかなと思います。

武田:だから「自分が」「この僕が」「これを選んでいるんだ」っていうふうにちゃんと想うっていうことってけっこう難しいことになっているから、よほど意識的じゃないといけないですもんね。

勅使川原:いや本当おっしゃるとおりですよ。もうだって選択肢自体がね、レコメンドで出てきたものしか見てなかったりとかもするので、だいぶ操られている部分も意識しておきたいなと思います。

「タイパ」「チョイパ」はただの開き直り? 安易な「納得感」に逃げないために

勅使川原:そうじゃないとですね、3点目として私の懸念は、やっぱり「納得する」っていうことよりも「納得感」みたいな。「納得した感」が先行する社会になってほしくないなって思いがあるんですよ。選ぶ技術の進展なしに選択肢だけが増大していくこと、これすなわち「エイヤー」ですよ。エイヤーが横行する社会と地続きなんじゃないかと思うんですね。

人は自ら下した決断や行ったことに対する認知的整合性、これを自ら取ろうとする生き物であります。で、整合性を取りたいって思った時に一番手っ取り早いの何ですか? もうどうであっても「いや、いいんです」と。「私これでよかったんです」と自己暗示をかけちゃうこと。これ早いですよ、物事。そうすると、「これでよかったんだ」となんとなく思えるか、言えちゃうかどうかっていうのが、選択の善し悪しを決める指標になりはしないかなという懸念があります。

このことに関してはタイパ回でも申し上げたので被るんですけども、「これでよかったんだ」って、これ先細った自作自演の納得感ですよ、ある種。すぐ思えますからね。

で、このことっていうのは本来の民主主義とは相いれないっていうこと、お気づきのとおりじゃないかなと思います。だって「これでよかったんだ」って言ったら、もう冒頭のニュースでもなんかあったような気がしますけども、説明責任を果たす必要なくなっちゃうんですよ。

したがってちょっとここまでまとめますと、「選択肢ばかり増やせばいいってもんじゃないぞ」というのはまず言いたい。そして「選ぶ」っていう概念自体もアップデートできるように、まあどうせ知恵を絞るならここに寄っていきたいなと思います。

これ、けっこう急ぎだと思ってて、急ピッチでやる必要があります。ちょっと語弊あるかもしれないですけど、商売って基本的に消費者をすれすれの合法ラインでまあ騙すというかね、魅力付けるっていうことが購買の促進になっているんですよね。

マーケティングってそうじゃないですか。実物はもっといいんですって言ってなんか汚い写真出す広告とかないのでね。

となると、消費者の選択をアップデートするものっていうのは、ただ指をくわえて待っているだけだと、たぶん出てこないんですよね。私たちは働きかけないといけない。で、これは選挙でもまったく同様の可能性がありますので、相当意識的に、しかも第三者によって研究されるってことが望まれると思います。

新しい概念には即座に飛びつかず、いったん「外に置いて」観察する

武田:やっぱりね、新しい言葉や概念が出てきた時には、一度それを遠ざけるっていうこと、私は心がけておりまして。

僕の尊敬するみうらじゅんさんがね、あの「タイパ」「コスパ」っていう言葉が出てきた時に、なんかのラジオでしたけど、頭に「ココンテ」ってつけて、「古今亭タイパ・コスパ」っていう新しい漫才コンビだみたいな。「林家コスパ・タイパ」っていうことにしよう、みたいな。

あと毒蝮三太夫さんがね、あの「Spotify」っていう言葉が出てきた時に、新しい薬の名前だと思った話があってね。だからその、新しいいろんなものが出てきた時に、もちろんそれをちゃんとこう摂取するっていう選択肢もありますけども、「これ何なんだろうな」っていうふうに、いったんこう外に置いてみるっていう。

置いて観察してみて、どういうものなのかっていうのを見定めてから、体に入れる・入れないを判断するという。そういうふうにパクパクッというふうになっちゃうとね。まあそれはそれで、選択肢としてまさに一つの選択肢ではあるけれど、その選択肢にこうなんか混乱させられないようにするっていうのは大事なのかなと思いますけどね。

勅使川原:いや本当そうですね。意外と私たちその第六感みたいなもので、「なんか怪しいぞ」みたいなのはセンサーが働いている気がするんですよね。第一印象を大事にしてもいいのかな、なんてことも今お話をうかがって思いました。

武田:でもこういうこと言ってると「テッシー古いぞ」っていうふうに言われるかもしれないじゃないですか。そう一緒に言われたらどうすればいいんですかね。

勅使川原:「だからどうしたの?」って。

武田:いい声でね。「だからどうしたの」って。

勅使川原:真顔で返すっていうのが大事かなと思います。まあとはいえ「選ぶ技術」のほうはすぐには発展しないかなと思いますので、その間にですね欠かせないこと、4つ目としてお伝えして終わりたいと思うんですけども。

やっぱりね、「時間がかかるもの」、それから「わかった気にすぐにはさせてくれないもの」、なんなら「なんかやだな」とか「もやもやすること」への耐性を高めるってこと。これはね、やっぱり避けられないかなと思います。

「わかりやすいものしかわからない、もうこれでいいんです私は」というのはね、タイパがいいでもチョイパがいいでもないんですよ。ただの開き直りです。

一見するとわかりにくいものをわかろうとする、「他者には他者の合理性がある」っていう話、思い出したいですよね。タイパやチョイパで開き直りだとか、安易な納得感によって意思決定がブラックボックス化していくこと、これは避けたいなと思っております。

選べる世界の進化とともに、選ぶ主体の進化、一緒にやっていきたいなと思いますよ、リスナーのみなさん。

武田:まあ新しい技術の、結果的にでも「そうは言っても恩恵受けてんじゃん」みたいな言われ方もありますけども。その恩恵の受け方っていうのがね、それぞれあっていいと思うんでね。

なんか急いでそれに食いついていくってことではなくて、先ほど言ったようにちょっと遠くに置いておいて、「あ、こういう感じか」ってなったら、ようやくそこにゆっくり近づいていくっていうような、こう新しい技術との付き合い方っていうのは、あってもいいと思いますね。

勅使川原:ああ、あったほうがいいですね。意外と教育って流行りのことが好きだったりするんですよね。なんでこれもタイパと一緒にですね、「チョイパ」っていう言葉で「効率的に選択しよう」みたいなことが、ちょっと広まらないほうがいいかなっていうふうには思ったりします。

武田:このコーナーはポッドキャスト「PodcastQR」でも配信しています。ぜひチェックしてください。ラジマガコラム、『勅使川原真衣の「今日もマイペースで」』でした。

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