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木村草太の「今朝の一手」(全2記事)

「なぜ逃げたいのか」の立証は、被害者保護に不要である いじめ・DVの密室化を防ぐための、社会制度の「設計思想」 [2/2]

子連れの避難を阻む、DV対策の現状と課題

木村:実際考えてみると、DVやいじめは相当な数がありますから、一人ひとりにボディガードなんてつけられない現実があるわけです。だからこそ加害者を制裁する、被害者をその場で守ることに非常に限界があるところがあります。

武田:なるほど。先日、40年ほど学校の先生をしている人にインタビューした時のことです。20年ほど前、生徒が携帯やスマホ、当時はポケベルですが、あまり持っていなかった頃は、4月にクラスが始まってゴールデンウィークが明けても、4月に仲良くなった友だちと「久しぶり」となるだけでした。先生から見て、コミュニケーションが変わっている感じはなかったそうです。

ところが、いろいろなアイテムを持つことによって、ゴールデンウィーク明けには何かが違っている。コミュニケーションのカタチが変わっていて、喧嘩をしていたり、新しい友だちができていたりする。クラスのマッピングがわからなくなってきたと先生がおっしゃっていたのが印象的でした。

先生側からクラス内の人間関係が読み取れなくなってきたという話をされていましたけどね。

木村:見えない空間がサイバー空間に広がっているということですよね。SNSは非常に危険なものです。人間関係をしっかりコントロールできる人でなければ使いこなせません。

武田:そのDVの議論で逃げ込む場所をどんどん増やすべきだ、作るべきだという話になりましたが、具体的にはどういう場所を増やしていけば良いのでしょうか。

木村:シェルターと呼ばれるものですね。今問題になっているのは子連れの場合ですね。子どもがいない場合には一人で逃げれば良いのですが、子どもがいますと子どもの親権や住所を調べればパートナーの場所もわかることになったりするので、子どもと一緒に逃げやすくすることも非常に重要なポイントになります。

武田:そうしたシェルターの整備がまだまだということですかね。

木村:本当にしんどい状況が続いていると、シェルターの運営の方々は言っていますね。

武田:需要というか、それを求めている人たちに対しての受け皿が、やはりぜんぜん足りていないということですか。

木村:非常に足りていない状況があると言われているので、こういうことも。首相の所信表明演説などでも石破(茂)さんも高市(早苗)さんもずっと言っているのですが、政府もきちんと支援をして、逃げやすく、とりわけ子どもがいる場合も一緒に逃げやすくしてほしいと思います。

今年は共同親権という、非婚・離婚の場合にも親権を持ち続けられる場合があるという仕組みが導入されていくようですが、やはりその場合も、まずは被害者が逃げられるようにする運用をきちんと確保するのが重要なんです。

最近は法律の中に「子どもを産んで育てる場合にはお父さんとお母さんがお互いに人格を尊重しなければいけない」という、余計なお世話のような条文が民法に入ったのですが、子どもを連れて別居するのは相手を人格を尊重していない行為だと解釈をしようとしている人たちがいるんです。

それはやはり間違いで、そこまで今の生活をしていて逃げたいと思う以上は、何かあるんじゃないかと考えていったほうがいいのではないかなと思います。その後、子どもがどちらで住むかということはきちんと手続きがありますから、そこでやれば良い話で、逃げること自体に制裁を科すことは、かなり限定しなければいけないと思います。

被害者保護の本質は「逃げること」への制裁を課さないこと

武田:今おっしゃっていた余計な民法の条文というのは、どういう思惑があって加わったのでしょうか。

木村:もともと、とりわけ未成年の子どもがいる場合の離婚などですと、かなり攻撃的な態度を取る元パートナーがいる場合があるわけですよ。例えば子どもを連れて別居したら「あいつは犯罪者だ。誘拐犯だ。刑事告訴をする」とか、裁判の書面でひたすら罵倒するというパターン。

DV絡みの場合はものすごく長い文章で、裁判所に出す書面を使ってハラスメントのようなことをしていくことがあったので、「そういうことはやめましょうね」という趣旨の条文なんです。

しかしそういう条文を作ると、「子どもを連れて逃げるのは自分から子どもを取ってしまう人格を尊重しない行為だ」という解釈も、できなくはない条文になっちゃうわけです。抽象的に書かれるわけですから。これがDV対策の諸刃の剣というところがあるところですね。

武田:諸刃の剣というのは、言い方をひっくり返せば、どちらにも一理あるという捉え方にもなってしまうのでしょうか。

木村:明確に「書面の中で罵倒してはいけない」と書けば良いわけですが、なかなかそれが条文化しにくかったということです。運用の中で「これはこういう条文なんですよ」ということを裁判所はしっかり示していってほしいと思います。

基本原則は、人が逃げたいという時には何か重大な理由がそこにあるんだと考えて、その逃げたいという意思を尊重していかないと被害から守ることはできない。鉄板の逃げ場を確保してほしいということです。

武田:逃げたいと思う時に「なんで逃げたいのかちょっと教えてくれる?」ということはおかしいわけですもんね。

木村:厳密な立証を求めて「逃げなくて良いでしょう」と周りが言えることなのかということですね。

西村:このコーナーは「PodcastQR」でも配信しています。ラジマガコラム『木村草太の「今朝の一手」』でした。

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