なぜアメリカは「質の悪い原油」を欲しがるのか
マライ:じゃあなぜアメリカ的に質の悪い原油がウェルカムなのか。例えば今回の放送に対してX(旧Twitter)のコメントで「だったらシェールガスを使ったらいいんじゃないか」というのがあったんですけど、確かにシェールガスなどエネルギー開発は進んでいますが、完全に代わりにはならないんですよね。結局、石油そのものは欲しいわけです。
なぜアメリカがこの重い原油を逆にOKと言っているのか。それは、アメリカのメキシコ湾には重い石油処理用の製油所がたくさんあるからなんですよね。もともとベネズエラ産の原油処理用に作られていた施設で、ベネズエラによって供給源を奪われたから今は停止していることになるんです。
そういう施設があるので、それを再稼働させたい。増産できるじゃんということになるわけなんですよね。なら、アメリカ側には原油はそもそもないのか調べたんですけども。
アメリカにも確かに原油はあって、テキサス州とかノースダコタ州、メキシコ湾にはあるんですけど、ここで確認済みの原油の数量がおよそ460億バレル。ベネズエラはいくらかというと3000億バレル。
武田:そうだった。ぜんぜん桁が違うんですよね。
マライ:だからベネズエラの原油がものすごくトランプ政権にとっては魅力的に映るわけなんですよね。処理もできるし量も多いし、距離もそんなに遠くないわけですからウェルカムなわけなんです。
トランプ氏は自身のSNS、Truth Social(トゥルース・ソーシャル)でこんなことを言っています。「ベネズエラの暫定政府が、3000万から5000万バレルの石油をアメリカに引き渡すと約束してくれた」と。それがもうタンカーに積み込まれていて、あとはもうアメリカに輸送するだけなんですという話があるわけなんですね。
武田:この動きがやたらと早かったですよね。すぐでしたね。
マライ:この後どうなるかというと、一応市場価格で売却されます。そこに入ってくる利益はベネズエラとアメリカで分配されると。現在の市場価格だと、この量の石油は17億から20億ドル相当になると言われています。
この資金をベネズエラの運営に使ったり、さらに原油採掘施設を新しくするために使うと言ってるわけなんですね。なんですけど、またバレルの話になりますが、3000万とか5000万バレルという量は、実は決して多くはないんです。
武田:さっきまではずっと億単位の話をしてましたもんね。
マライ:そうなんです。アメリカは1日で約2000万バレルの石油を消費してるんですよ。なので、3日分弱ですかね。
なんですけど、これは一応ベネズエラ的には、2024年1年で生産した石油は5000万バレルだけだったので、実は1年分の石油に当たるわけなんですね。
武田:埋蔵量はたくさんあるけれども、なかなか生産ができていないということなんですね。
再建には1000億ドル以上、石油企業は様子見の姿勢
マライ:そうなんです。いかに動いてないかということになるわけなんですよね。……今メモが来たんですけど、なんて書いてあるんですかね?
武田:作家さんが今ちょっとメモ書きを書いてますけどもね。
マライ:「古いプラントを再稼働させたいのか」ということですね。一応ベネズエラの古いプラントは再稼働させたいわけなんですよね。トランプにとってはメリットでもあるわけですよね。もちろん自分の国内にもあるんですけど、運搬コストがかからないし、防衛のしやすさとかいろんなメリットがあるわけなんですよね。
1番のポイントは、他の国に依存しないことです。中東ではなくて南米からゲットできれば、すごくおいしい話なわけなんですね。
武田:まさに「運営」という言葉を選んで使ってるわけですけど、自分たちで運営できれば、そこでずっと永続的にできることに頭が働くわけですもんね。
マライ:そうなんです。でも、これは本当にうまくいくんだろうかという話もあるんですよね。石油インフラの老朽化問題が言われていて、ベネズエラの石油産業の再生のためには相当な投資が必要になります。
専門家はその額は1000億ドル以上かかると言っていました。だから先ほどの「5000万バレルの石油を売る」としても、その金額が30億ドルになっていたとしても、本当は1000億ドルが必要ならまだまだ足りないわけなんですよね。
しかも今、ベネズエラの暫定政権は出来つつあるんですけど、政治的に不安定なところはまだ残ってるわけですよね。それに投資をするとなると、企業からするとリスクが高い。最も重要な条件は政治的な安定なわけです。「意外と民主化じゃなくて、何でもいいから安定」という未来もあるかもしれないってことなわけなんですよね。
アメリカ3位の石油大手、ConocoPhillips(コノコフィリップス)はこんなことを言っています。「状況は注視しているが、将来的な事業活動について推測するには時期がちょっと早い」ということなんですね。
なんですけど、こういう話も実は全部ブラフなんじゃないか。もう裏シナリオがあって、「実はやるぞ」とめっちゃ勢いがあるんじゃないかというニュースもあったりするので、どうなるのかわからないわけなんですね。
武田:トランプ大統領としては「自分たちで運営する、これだけ稼ぎになるぞ」と言ってるけれども、実際に石油企業自身は「まださすがに乗っかれないですよ」というようなところで、すでに温度差があるということなんですかね。
マライ:あるかもしれないし、あるいは実はもうやる気満々かもしれない。表向きは、そんなに乗っかるかどうかまだわからないんですよ。だって今回の国際法違反問題も言われてるわけで、企業としては「乗っかりますわ」と言うとどう映るか問題もあると思います。
武田:「さすがにこれまずいと思いますよ」と言いながら、もう手を下で握ってる可能性があるかもしれない。これがまだ見えないってことですよね。
マライ:なくはないんですよ。
「石油時代の終わり」は来るのか、原油が支配の象徴になる未来
マライ:で、そもそもなんですけど、石油の活用ってやめるんじゃなかったっけともともと思ってるんですよ。地球に優しくないというか、やめるっていう話ありましたよね。
調べてみたら、この20年間、コロナの時期を除いて原油の生産量はほぼ毎年増え続けてるんですよね。2024年には最高記録が出ています。昨年の統計はまだ出ていないんですけども、もしかしたらその記録は更新したかもしれない。だから実は、世界は今でもものすごく石油に依存してるよねというのがあるわけです。
ドイツも環境先進国とかよく言われますけど、エネルギーの3分の1は結局石油に頼ってるわけなんですよね。結局「石油時代はもうすぐ終わる」と言われてるけど、終わる終わる詐欺的な感じがしていて、終わりが見えないわけなんですよね。
武田:むしろトランプ大統領は「環境政策何それ」みたいな、「地球温暖化なんて気にしないよ」ということをわりと高らかに宣言していて、むしろそういった団体から自分たちは出てくんだと言ってるわけなんでね。それが潮流になってしまうと、この石油への依存というのもまた元に戻ってしまう可能性ありますもんね。
マライ:ぜんぜんありますね。だからこれからこそ、石油の時代に我々が入っていくのかもしれない、そんな感じですね。
エネルギー源としてももちろん重要ではあるんですけど、今の動きを見ると政治のカードとして使われていることもよくわかるし、産地はどこなのか、誰が管理するのか、誰が利益を得るのかで今後世界が動きそうな気がするわけなんですね。
だから原油というのが、支配の象徴になるかもしれないなと思ったりしています。今日の結論はそんなところですね。
武田:最初にマライさんが紹介してくれた世論調査の結果だと、アメリカがマドゥロを失脚させるのに賛成してるのは25パーセントだと。今トランプ政権の支持率っていうのはけっこう下がってますけれども、その批判票を蹴散らすためにも、こういった判断に出たという考え方もあると思いますけれども。
マライ:ありますね。景気のいい話なわけですよね。またディールになっちゃうわけですね。
武田:目を外にそらすっていうのはね。そうするとこの世論調査などでどういう結果が出てくるかによって、この対ベネズエラであるとか、先ほどのニュースにもあったようにイランであるとか、グリーンランドであるとか。メキシコなんていうのも言葉に出してきてますけれども、対応変わってくるってことになるんでしょうかね。
マライ:なると思いますね。今ちょっと思ったんですけど、今年の漢字を「契約」の「契」にすべきだったのかなと(笑)。
武田:契約の「契」にね。
マライ:難しいですね。
武田:今日マライさんのペンダントが、「悪い子はいねが」というね。
マライ:そうですね、ナマハゲスタイルで今日来ましたからね。「悪い子はいねが」...いますね。
武田:いますね。はびこっておりますね、これはね。
マライ:だから世界どうなっていくのか、今年っていうのをちょっと原油を軸に考えてみました。
武田:「悪い子はいねが」ですよ。
西村:このコーナーは
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