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プチ鹿島の「朝からタブロイド」(全2記事)

産経は「影響70%」、地方紙は「協力」 新聞読み比べで見えた、外国人との共生をめぐる“日本社会の現在地” [1/2]

【3行要約】
・元日の新聞各紙が「外国人との共生」をテーマに競演する中、産経は「影響70パーセント」と問題視する一方、読売や朝日は共生の道を模索する姿勢を示しました。
・地方紙の信濃毎日新聞は「郷に従え」の本当の意味を問い直し、地域での交流や相互理解の重要性を強調。
・専門家は「共生とは泥臭いもの」と指摘し、言葉の壁や文化の違いを乗り越えるには、互いに迷惑をかけ合いながらも折り合いをつける姿勢が必要だと語っています。

毎日新聞が元日に放った、50年越しのスクープ

西村志野氏(以下、西村): ここからは前半レギュラーのラジマガコラム、木曜日はプチ鹿島さんの『プチ鹿島の「朝からタブロイド」』です。今日はどんなお話でしょう?

プチ鹿島(以下、鹿島): はい、今日は「お正月記事、各紙『競演』していた話題とは?」です。「競演」というのは鍵括弧付きでね。

というのも、僕は新聞を14紙、15紙取っているんですけども、元日の一面に何が来るかが一つの楽しみなんですよ。新聞社によっては、貯めておいたスクープを出してくる時があります。

武田砂鉄氏(以下、武田): 出してくる時がありますよね。

鹿島: 例えば1月1日、僕メモをしているんですけれども、目を引いたのが毎日新聞でしたね。これすごいですよ。「ロッキード5億円 配布先入手」。いつの話かと思ったら、74年の参院選で26人にいたと。田中角栄元首相の元秘書官が作成したメモで、事件発覚から50年。これはスクープですよ。

ロッキード事件って。これ、もう一つのショックって、「政治とカネ」の問題は昔話になっていないなという。だから意味があるスクープだと思うんですよね。

武田:でも、ここでこのタイミングで出すぞと決めてたんでしょうね。

鹿島:50年越しですよ。こういうのは読み応えがありました。

産経新聞「外国人、地域に影響70パーセント」の問い方への違和感

鹿島:あと僕が別の意味で注目したのが、1月1日の一面トップの産経新聞。「外国人、地域に影響70パーセント」という見出しを出してきました。これ、どんな企画タイトルかというと、「日本を守れるか」という企画なんですよね。

これどういう内容かというと、産経が全1741市区町村長にアンケートしたところ、外国人が地域に影響と答えた70パーセントのうち、76パーセントが良い影響と悪い影響の両方あると。良い影響で多かったのが、人手不足の解消や観光など経済の活性化。

僕が注目したのは、悪い影響に何を挙げているか。最も多かったのが「文化・習慣の摩擦」。次いで日本語が話せない外国人の子どもへの対応など、教育現場での難しさ。

ただ、このアンケートの問い方と記事の構成にちょっと疑問を感じたんですよね。だって教育現場で日本語をどれだけ学んでもらうかとか、マナーや慣習の問題は、むしろこれから外国人と共生していく上でのタスク、課題ですよね。「悪い影響」とわざわざことだてて言うことかなと思ったんですよね。これを元日に報じていると。

地方紙が伝える「郷に従え」の本当の意味

鹿島:で、僕はその後、地元紙、長野の信濃毎日新聞も取っているので社説を読んだら、実にこのテーマだったんですよ。「共同体と外国人 郷に従え―と言うよりも」。よく「郷に入っては郷に従え」という言葉がありますよね。社説の書き出しは、昨年来、移民政策を巡る話題でよく耳にするようになったと。「郷に従え」と。ただ、よその土地に入るならその文化や習慣を尊重したほうがいい、そういう心なんだと。

ただ、それを受け入れる側が声を大きくして語ればどうなるのか。「よそ者は出ていけ」とばかりの息苦しい空気が広がりかねないのではないか、という書き出しで。

じゃあ信濃毎日新聞は何を調べたかというと、県内で外国人の多くの旅行者や移住者を迎えている地域を訪ねたと言うんですね。野沢温泉村というスキーなどで有名なところがあるんですけど、そこは外国人委員会を作って取り組みをしていると。

例えば宿や飲食店の外国人経営者らを通じて、一緒にお風呂の入り方やゴミの分別、雪の片付け方といった約束事への理解を求めて、交流を重ねてきたというんですよね。こうという言葉を紹介しています。「コミュニケーションがないところに不安は生じる」「共存できなければ廃れるだけ」「郷ではなく、いかに気持ちよく協力し合えるかという働きかけ」を紹介しているんですよね。

あと、他の地域に住んでいるアメリカ出身で、バブル全盛の頃に来日した人の言葉も紹介しています。その方が何と言っているか。「来日当時、つまりバブル当時から差別的な人はいた」と。

では何が変わったのか。「日本人を優先せよ」「ルールを守れないなら出ていけ」と、以前ならはばかられた言葉を政治家らが口にして、SNSが悪意を増幅・拡散するようになった。これもここ30年近く住んでいた方の実感として、「煽られやすい時代ですね」という言葉を載せているんですよね。

だからこそ、この方は互いの顔が見える交流の場を作ろうと。先ほどの野沢温泉村の外国人委員会も、実はもう「外国人」という名前を取って、みんなで住みやすい街づくりにしようという考えで進んでいるんですよね。

なかなか地方の実態とか、なるほどなと思う記事だったんですけどね。

同じ「いちょう団地」を取材した読売と産経、見えてきた違い

武田:まあでも、この産経新聞の1日の「外国人、地域に影響70パーセント」という、この「影響」という言葉は何とも言えない言葉のチョイスだなと思いますけれど。

鹿島:そうですね。(産経新聞の)1月3日の一面トップは「日本を守れるか 浸透するベトナム人」と。

実は、お正月の新聞では外国人に関する企画が他の新聞でも多かったんですよね。読売新聞は1月3日のトップで、「外国人 社会の一員 共生のカタチ」という連載企画をスタートさせていますね。

「在留外国人は過去最多を更新している。貴重な労働力として期待される一方、SNSでは排外主義的な主張も広がる。分断ではなく共生の道がどこにあるのかを探る」と、読売はこういう打ち出し方なんですよね。

で、6日の紙面は「児童の日本語個別指導」ということで。やはり一緒に日本語を学んでいこうという。だから先ほどちょっとちらっと、悪い影響として「日本語を教えるのがなかなか難しい」みたいな記事がありましたけど、読売はこういう打ち出し方なんですよね。

「国は自治体や学校任せにせず、明確な方針と政策を持って対応する必要がある」という専門家のコメントを載せていて。これは昨年来から全国知事会がずっと言ってるわけですよね。「国はもう地方任せにするな」と。

武田:先ほどの産経新聞のアンケートに戻ると、いい外国人とそうではない外国人に分けたがっているのかなと。記事に写真が載っていますけれども、在留外国人・訪日外国人の増加に伴い、なんらかの影響が出ていると感じますか、という問いに付いている写真が、2つの写真が混じり合っているようになっていて。

これは欧米の方だと思いますけど、欧米の方が自撮りをしている写真と、もう半分はヘルメットをかぶっている、これはアジア圏と思われるような方が働いている写真を重ね合わせるような写真にして、そこで「影響が出てますか? いい影響ですか? 悪い影響ですか?」という写真を載せているわけですよね。

鹿島:「影響が出ているか」という問いだったら、それはトップの人は「影響(はある)」と答えますよね。良い影響、悪い影響のどちらでもいいんですと言われたら。しかもそれが悪いことではなく今後の課題でしょうという。読売の中を見ると、課題だから共生していくんだよねという切り口なんですよね。

おもしろかったのは昨日なんですよ。読売のこの「共生のカタチ」で、「文化団地 重ねた信頼」ということで、神奈川県の県営いちょう団地を紹介しているんですね。

これ、2割が外国人だと。1975年のベトナム戦争終結後、多くのインドシナ難民が日本へ逃れて団地で暮らすようになった歴史がある。自治会長の遠藤さんという84歳の方が、最初はやっぱりトラブルが多かったと。

ただ、やっぱり多言語で記した張り紙を掲示したり、味噌汁の作り方を教えたり、祭りで神輿を担いでもらって、理解を広めていったという言葉が載っていて。

実は昨日、産経新聞も同じ団地を取材しているんですよ。「外国人受け入れ原点 インドシナ難民集う団地 日本を守れるか」。で、自治会長の遠藤さんはやっぱり同じようなコメントをしてるんです。「トラブルはあったが顔見知りになり、少しずつ配慮し合うしかないと考えた」。

だから産経新聞も共生の話かなと思ってここを読むとそうなんですけど、紙面をめくると、先ほど砂鉄さんが言った「労働として外国人が増えたこと」に話が移っているんです。安倍政権で特定技能制度を創設したが、あれから約7年経って外国人の増加に国民は戸惑い、夏の参院選では外国人政策が争点化したと、そっちのほうに話を進めているんですよね。

「特定技能は移民ではない」という、昔自民党で特定技能を進めた人のインタビューも載っていて。「労働力だが移民ではない」と、相変わらずここにこだわっている感じです。

武田:だから、どういう方向に持っていきたいのかというのが各新聞記事ですよね。

鹿島:そうですね。

武田:ある意味、予想どおりの方向に乗って行っているわけですけれども、これをやっぱり年始に力を入れてやっている新聞が多いということですからね。

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