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Angel to Series A:次のステージへの壁をどう越えるか(全4記事)

顧客満足度90点がPMFの証 シリーズAに向けたKPIとチームのつくり方

【3行要約】
・福山太郎氏はトップ10顧客の満足度が全員90点以上ならPMFだと提案し、高宮慎一氏はスケールするセグメントでの達成かを最終ゴールから逆算して確認すべきだと述べました。
・嘉陽ティファニー氏はシード段階では「波とサーファー」や採用進捗などのモメンタムを重視し、PMFが未達でも投資判断に至ることがあると説明しました。
・有安伸宏氏は初期はイベントや取材よりプロダクトと顧客に時間を投じるべきだと助言し、シリーズAに向けては本質的KPIの設定とエンジニア投資、肩書に縛られないチーム設計が重要だと強調しました。

前回の記事はこちら

「PMFかどうか」は顧客満足度90点で判断できる

福山太郎氏(以下、福山):PMFの定義について話すセッションが多いので、僕が今日終止符を打ちます。僕がPMFの定義を作ります。

中村真理氏(以下、中村):お願いします(笑)。みなさん、必見ですよ。

有安伸宏氏(以下、有安):終止符? 今言って、今言って。

福山:トップ10のお客さんに僕が電話して「100点満点で何点ぐらい満足していますか?」と聞いた時に、全部のお客さんが90点以上って言ったらPMFです。

有安:なるほど。

福山:1人でも90点って言わなかったらPMFじゃないです。この状態がふわっとしているのにお金だけ集めて、がんばってマーケティングコストをかけて伸ばそうとして採用してやっている会社は、たいてい潰れます。

中村:おぉ、なるほど。だいぶわかりやすいですね。

高宮慎一氏(以下、高宮):でも、シードステージの罠みたいなものもあって、10人電話したお客さんが、スケールしないセグメントのお客さんだとすると、そこにPMFしても意味がないですよね。もしくは、スケールしないと意味ないと言っちゃったんですけど、スケールを狙っていなければそれでいいんですが、より正確に言うとターゲットとしているセグメント、市場じゃないと意味がないんですよ。

なので、たぶん逆引きで、解像度高く均質なニーズを持ったセグメントが定義できていて、そこに対して10分の10、90点というのがたぶん大事。

「波とサーファー」とPMF前の“モメンタム”を重視

中村:なるほど。ティファニーさん、今の話はどうですか?

嘉陽ティファニー氏(以下、嘉陽):Coral社内での投資検討をする時のお話をすると、もちろんシリーズAのタイミングでPMFが明確に見えていて、追加出資をしたり、初めて投資させていただいたりというケースが一番きれいなんですけれども。

やはりシードにおいて弊社が見ているのは、チーム、人。社内ではサーファー(起業家)と呼んでいますが、そのサーファーの事業の方向性やタイミングの仮説が合っているのかどうか見ています。私たちはこれを「波とサーファー」と言っています。

問題の解決の仕方だったり、プロダクトのところは、ピボットや、事業を始めた上で出てくる答えもいろいろあるのでそこまで細かく見ていないんですけど、「サーファーと波」のポテンシャルを見ています。

シリーズAなどに向けては、もちろんPMFを目指していくことが大前提ですが、その一歩手前の段階を見ると、モメンタムが非常に重要だと思っています。例えば、チーム内で優秀なメンバーの採用が進んでいるとか、ユーザーがつき始めているといった、何らかのポジティブなシグナルがあると、たとえPMFがまだ明確に見えていなかったとしても、投資しやすいと感じることはありますよね。

逆に、全部がふわっとしちゃうと、「あれ? この1年間だったり、初回のシードの段階で受けた資金で、PDCAとか模索できたんだろうか?」みたいな話になるので、私たちはそこをけっこう気にしています。

スタートアップ初期は「イベントよりプロダクト」に集中せよ

中村:ありがとうございます。確かに、先行指標みたいなものは一定存在はしますよね。だからPMF自体はけっこうたどり着くのが難しいなって思います。

じゃあ、初期。リソースの少ないスタートアップが何をKPIとして置いて、どこにリソースを集中させるのか、どう考えたらいいか、アドバイスはありますか? 

有安:ちょっとIVSで言うのははばかられるんですけど。

中村:言っていきましょう。

有安:あまりイベントに行かないことですね。

中村:確かにはばかられる(笑)。

有安:(笑)。あとはピッチコンテストに出ないとか。昔と比べてスタートアップのエコシステムはすごく豊かになったので、PMFを達成してなくても取材を受けたりとか、そういう偽りの成功指標がたくさんあります。そうではなくて、プロダクトを作ることと顧客に会うことの時間を最大化した方が良い、という教科書的なアドバイスを支援先へは言っています。事業開発のごく初期であれば、取材も全部断っていいと思います。なので、いわゆるプロダクトフォーカス派かなと思うんですけど、太郎さん(福山太郎氏)、どうですか。

トラクションよりも逆算で見極める本質的KPIが重要

福山:有安さんみたいに、知り合いが多いと、俯瞰して「イベントとかに来ないほうがいい」とか言えますけど、本当に起業家というのは孤独で、どうしていいかもわからなくて、投資家と出会えるかもしれないと思います。僕はこういうイベントに参加するのもすごく大好きなので、ぜひ僕に連絡ください。

寂しがり屋は来ていいと思うんですよ。でも寂しくなくなったら来なくていいかなっていう。

高宮:僕は、有安さんのおっしゃっていることに本質があると思っています。けっこう誤解しがちなんですけど、ボトムアップでトラクションが順調で伸びている状況って、一見良さげなんですけど、エンドゴールに照らし合わせた時に、「本当に刺さりたいセグメントに刺さってそこでトラクションが伸びているんですか?」みたいな話が重要なので、自分たちが10年後の将来から逆算した時、そのセグメントに刺さっている最初の兆しは何ですかというのをきっちり定義することが大事です。

順調にトラクションが伸びていたらバリュエーションも順調に比例的に上がって、シリーズAの調達ができると思いがちなんだけど、0→1であるマイルストーンをクリアすると急に時価総額がポンと跳ね上がってリスクも下がるから調達がしやすくなるという構造なので、そうじゃないと思っています。

偽りのKPIを置いちゃダメだよねというのは、たぶんすごく正しくて、そのKPIを達成するためにこういうところへ来てBizDevするのは意味がある。投資家とつながることに意味があるんだったらやればいいという話かなって、思います……と、誰も敵を作らない脇の締まったコメントを(笑)。

中村:(笑)。

有安:でも高宮さん、言っているのはけっこう一貫していますね。やはりセグメントのアップサイドをすごくおっしゃっていますよね?

高宮:(シリーズ)Aからは最終ゴールからの逆算が大事だと思っちゃうわけです。

有安:ニッチマーケットでPMFしても意味ないぞって言っていますよね?

高宮:そうそう。アーリーアダプターには「おもしろいね」って言われるんだけど、マスアダプションしない罠がそこにあるんじゃないかなと思っています。

エンジニア投資と適切なチーム設計がスケールの鍵

有安:ティファニーさんどうですか?

嘉陽:リソースの使い方みたいなあれですかね(笑)? 

アーリーステージはエンジニアやプロダクトがめちゃくちゃ重要なので、SO(ストックオプション)だったり、給料を上げていいエンジニアが採れるのであれば、それだけでいろいろなところにかなりインパクトがあるんですよね。プロダクトのPDCAも速い、営業もやりやすくなる、調達もしやすくなるみたいなところがあると思います。

海外は生活水準とかいろいろあって給料が高いというのもあるんですけど、日本はもうちょっと出してもいいんじゃないかなって、個人的に思いますね。

中村:確かに。チームはスタートアップの成長そのものだと思うのでめちゃめちゃ大事ですよね。そういう意味だと、立ち上げた段階は、CEOだけとか、共同創業者数人だけだと思うんですけど、PMFが見えてきて、シリーズAで調達しますとなった時に、どこまではそろっていてほしいとかあるんですか?

CTOはいてほしいなとか、営業部長はさすがにいてほしいなとか。採用の設計がきちんとできているとか、チーム周りはどれぐらい見られているんですか?

嘉陽:まだシードステージの会社さんで、採用するたびにCxOのタイトルを与えてしまうケースがすごく多いと思うんですよね。

中村:おぉ、はいはい。

嘉陽:とりあえずエンジニア1人目だからCTOみたいな。そうなると、会社がスケールした時に、スキルセットがそこにマッチしていなかったらすごく難しいディスカッションをしないといけないんですよね。demote(降格)したりとかしないといけないので、変にタイトルを紐づけるよりかは、優秀な人を集める。

逆に言えば、アーリーステージでは、CEOとかファウンダーはプロダクトにも関わって、営業もやって、調達もやってみたいにいろいろなことを一気にやると思うんですけど、やはりそれはスケールをしないので、もう少し進んだタイミングでは、マネージャークラス(が必要だと思います)。どういうタイトルになるのかは、たぶん組織の作り方にはよると思うんですけど、しっかり任せられるようなスーパースター的な人が各チームや部署にいるとスケールしやすくなるんじゃないかなって思います。

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