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Angel to Series A:次のステージへの壁をどう越えるか(全4記事)

投資家によって変わるPMFの定義 シリーズAに進めるスタートアップの条件

【3行要約】
・「Angel to Series A」を軸に、登壇者の経歴と投資ステージを確認しながら次の壁の正体を掘り下げました。
・有安伸宏氏は「正しい領域の選定」が成長余地を生むと述べ、福山太郎氏は「PMFの濃さ」が将来の伸びを示すと述べました。
・高宮慎一氏は最終ゴールから逆算してPMFの定義が変わると整理し、シリーズAは長期ビジョンと足元のトラクションを結ぶ結節点だと強調しました。

登壇者それぞれのバックグランドと投資スタイル

中村真理氏(以下、中村):みなさん、IVS2025にお集まりいただき、ありがとうございます。今回は、「Angel to Series A:次のステージへの壁をどう越えるか」ということで、さまざまなステージで出資を行っている投資家のみなさんにお集まりいただいております。よろしくお願いいたします。

主にこの「Angel to Series A」というテーマに即して、それぞれのステージにどんな壁があるのか、それをどう乗り越えていくのか、それから、「変化に強い設計とか組織とかって何なんだっけ?」みたいなところをテーマにお話ししていこうと思います。

それでは、まずみなさんにも自己紹介をしていただきたいなと思います。これまでのご自身のバックグラウンドとか、それからテーマに合わせて、今主に投資活動を行っているステージに関してもお話しいただければと思います(笑)。仲良くやっていきましょう。

福山太郎氏(以下、福山):遅刻した順でいきましょう。

中村:(笑)。そうですね。集合が遅くなった順で挨拶しますか?

高宮慎一氏(以下、高宮):ふらっとスタバに行くみたいな格好で遅れてきたけど、大丈夫ですか?

中村:(笑)。

有安伸宏氏(以下、有安):有安と申します。よろしくお願いします。20代で創業した会社をクックパッドという上場企業へ売却して、子会社社長を3年ぐらいやった後、エンジェル投資を始めました。もう10年ちょっとぐらいやっていて、今は国内とシリコンバレー、主に国内なんですけど、140社ぐらい出資しています。

最近はコンスタントに出資していまして、毎月1社2,000万円から5,000万円のレンジで、アーリー、レイターに関わらず何でもやりますという感じで積極的に出資しております。今日は登壇者集合時刻に少し遅刻したんですけど、やる気はすごいです! よろしくお願いします。

(会場拍手)

中村:(笑)。お願いします。けっこうぎりぎりでしたもんね(笑)。

福山:めっちゃ中村さん怒っているから。ずっとぶつぶつぶつぶつ言っていました。

中村:いや、怒っていない(笑)。

有安:もういいから、もう早くやって、もう。早くやって、早くやって(笑)。

中村:じゃあ、次、お願いします。

福山:こんにちは。唯一時間どおりに来た福山です、よろしくお願いします。

もともと「Fond」という福利厚生のSaaS(スタートアップ)をアメリカで起業していました。2年前に売却して、今は自分でRice CapitalというファンドをLAでやっています。日本はだいたいシードとシリーズAで投資することが多いです。よろしくお願いします。

(会場拍手)

高宮:こんにちは、グロービス・キャピタルの高宮と申します。5分遅刻したのが、有安さんのおかげで目立たなくなりました、ありがとうございます。

中村:(笑)。

高宮:僕らは、いわゆるベンチャーキャピタル、アーリーステージ、シリーズA、プレA(プレシリーズA)ぐらいから、本当にずっとIPOまでやって、投資のチェックサイズとしては1億円ぐらいから30億円ぐらいまで、シリーズAでも30億円とか入れたりしています。

最新のファンド規模が727億で、我々の背後にいる投資家からは、それを3倍にすることを期待されているので、2,000億円とか2,500億円のリターンを作らなきゃいけない。そうなると、もうユニコーンじゃ足りないと。ビヨンド・ユニコーン、3,000億円、5,000億円、1兆円にどうやって持っていくか。そんなところをがんばってやろうとしています。よろしくお願いします。

中村:お願いします。

(会場拍手)

福山:こうやって大きい数字を出してマウントを取ってくるのは、どうですか?

有安:727億円ってでかいですね?

高宮:いや、でもあっという間になくなっちゃいました。

有安:あっ、そうなんですか。すごい。

中村:そうなんですね。じゃあ、ティファニーさん、お願いします。

嘉陽ティファニー氏(以下、嘉陽):みなさんこんにちは。Coral Capitalのティファニーです。弊社はマルチステージで投資をしておりまして、日本のスイートスポットだと、シードからシリーズAぐらいのステージです。直近、シリーズC以降だったりけっこう大きめなチケットで投資もしているので、マルチステージでやっています。

領域は幅広くて、SaaSから核融合と言っているんですけど、コンシューマーだったり研究開発系を含めて投資先は今120社ちょっといる状況です。よろしくお願いします。

中村:よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

シードからシリーズAへの「見えない壁」とは

中村:おわかりいただけたかもしれませんが、なんとなくで、「Angel to Series A」で右側に向かっていく感じで、今日は話していければと思います。よろしくお願いいたします。

それではさっそく本題に入りたいと思います。エンジェルラウンド、プレシードラウンドで資金調達をされた起業家が、次のプレAにいく時は、最近の市況もあるとは思いますが、見えない壁のようなものがあると思っています。

「シードでけっこううまいこといったのに、なんで次のステージにいけないんだろう?」みたいなところで、原因とか要因とか何があると思いますか?

見ているのは「領域の正しさ」

中村:みなさんは、どういったポイントを見て出資を行っているんですかね? 有安さんとかはエンジェルラウンドでも入っていますが、そこのステップアップについてどう思いますか?

有安:そもそも今、みなさんの中で起業している人ってどれぐらいいますか?

(会場挙手)

有安:あっ、けっこう、特に前の方の席にいますね。じゃあ、起業家向けに話せばいいですかね?

中村:はい、そうですね、せっかくなので。

有安:僕は基本的には、PMFの議論をすることが多いです。。いわゆるプロダクト・マーケット・フィット。でも、最初から顧客が求めるプロダクトを作れている場合ってかなり少ないので、まず、事業を立ち上げようとしている市場領域がそもそも正しいかどうかをかなり見ます。

その領域が正しければ、テクノロジーの変化とか法改正とか、もしくは、何らかのゲームチェンジが起きた時に、スタートアップが割り込んで伸びる余地が出る。その領域が正しいかどうかをまずすごく見ています。

中村:なるほど。

有安:それで、その領域でいろいろストラグルできるチームかどうか、経営者かどうか、みたいなことをすごく考えるんですけど、太郎さん(福山太郎氏)は違うって言っていました。

中村:あっ、違うんですか?

福山:猛反対です。

(会場笑)

中村:猛反対(笑)。

高宮:ここで喧嘩が始まる?

有安:どうですか? どうですか?

中村:そんなに? ここから大きくずれるってあまりないですけど、どうですか?

大事にしているのは「PMFの濃さ」

福山:シードは、ビジョンとか市場でいけるんですけど。やはりシリーズAになってくると数字が出てくるので、そこが一番でかいですよね。それで言うとPMFしているかみたいな話があるんですけど、PMFの定義ってあってないようなもので、1,000人ぐらいの人たちにふわっと刺さっているプロダクトよりかは、3人にズバッと刺さってちゃんと大きなお金をもらっているほうが将来的に伸びると思うので、僕はけっこうその濃さを見るようにしています。

PMFの定義は「逆算思考」で変わる

中村:ほぉ。PMFの定義はけっこう人によっても違いますよね。だからわりとわかりにくい概念だなと思うんですけど、高宮さんはPMFって言われた時に、言語化するとしたらどういう状態のことを指していると思いますか?

高宮:まさに「PMFって大事だよね」「シードからAにいく上でPMFを達成するのが目的です」みたいな話で語られるんですが、たぶんその背景にある、最終到達点、どういう大きな事業を描いているのかという話と、ボトムアップで目先で、最初のユーザーにトラクション出さないといけませんみたいなところとの結節点がシリーズAだと思うんですよ。

なのでPMFの定義は、起業家側であっても投資家側であっても、どんな最終ゴールを描いているかによってが変わってくると思っています。

例えば、日本人1億2,000万人全員が使うサービスを目指す場合、目先のめちゃくちゃニッチな領域でめちゃくちゃトラクションが高くても、それってPMFって言いません。

中村:なるほど。

高宮:ニッチなところでもめちゃめちゃ単価高く刺されば、それでいいか?という話なので、長期的なゴール設定次第ですよねということかと思います。それによってPMFの定義も変わってくるんじゃないかなって思っています。

まずは、長期的な絵を描くことそのものと、そのゴールからの逆引きしたときに、目先のユーザーに刺さっているというところの整合性があるのかというのが重要だと思っています。

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