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#3 コンテンツ制作に不可欠な「耕す」という視点(全2記事)

「作家・編集者・読者」三位一体で耕す物語 「ジャンプ+」が貫く“共創”の現場 [2/2]


ジャンプの伝統「新人主義」を受け継ぐ「ジャンプルーキー!」

入江:今はすごく成功されているので、「『耕す』って考え方は、すごくいいよね」となるかもしれませんが、実際には、いろいろ波がありますよね。

冨山:そうですね。それでいうと、僕は「ジャンプルーキー!」にみんなに投稿してもらって、そこから月間賞みたいなもので連載や読み切りに持っていくのが、すごいなと思っています。

ディレクターとしての感覚で言うと、ラジオもかつてはゼロからイチにする、新しいパーソナリティを発掘するみたいなことがあったんですけど、僕がディレクターの時が、ちょうどニコニコ動画が出てきたタイミングで、正直、新しい音楽や新しいカルチャーみたいなところで、ニコニコ動画に負けたトラウマがあるというか。

そういったところと、今「YouTube」とか、「TikTok」とか、いろんなものがある中で、今はゼロイチというより「何かでバズったり、話題になった人をさらに押し上げるのに『オールナイトニッポン』って、すごく有効ですよ」と案内をしていることが多いです。ジャンプ+さんが、ゼロをイチにするみたいなところをやるのは、どういう心理なのでしょうか。

籾山:「ジャンプルーキー!」は、「ジャンプ+」が始まったタイミングで始めた、Web上での漫画投稿サイトです。1番の目的として、作家さんの発掘、出会いの場を作りたいということで、スタートしました。ただその時は、今冨山さんにおっしゃっていただいたような「ゼロイチ」というよりも、とにかく「ジャンプ+」の最初は、描いていただける作家さんを見つけるのが大変だったので、他の漫画編集部がやっていないことをして、ジャンプルーキー!を始めたというところがあります。

ただ、五十数年前に創刊した紙の『週刊少年ジャンプ』も同じで、当時『週刊少年ジャンプ』は『マガジン』や『サンデー』と比較して後発だったので、人気作家さんは、みんな『マガジン』や『サンデー』で書かれていたんですよ。

そこで、致し方なく『少年ジャンプ』は「それであれば新人さんで雑誌のラインナップを揃えよう」という方向にしたという話を聞いたことがあります。それをやってみたら、新人の才能による漫画を読者がすごく支持してくれて、「おもしろい」と言ってくれた。そして、そこから人気作が生まれることへのインパクトも大きかったんです。

最初は致し方なくだったものが、いつしか「『ジャンプ』は新人主義だ」というふうになってきた。なので「ジャンプ+」もそこを大事にして、今のスマートフォンに合わせて、五十数年前に『週刊少年ジャンプ』を創刊した編集者が作った畑を今も耕しているみたいな感覚です。

「そこからたくさんの漫画が生まれるように」という気持ちではやっているので、結果論かもしれませんが、昔の『ジャンプ』に近いところだったり、新人主義を大事にしている感じで、ジャンプルーキー!などをやっていますね。

編集者の価値と作家発掘の意義

入江:実際に新人の方を育てたり、世に出していくとなると、かなり根気強さとか、本当に耕し続けるという意味で、時間もかなりかかる場合があるんじゃないかなと思います。そのあたりは、どうなんですか?

籾山:そうですね。新人作家さんと初めて会うと、デビューするまでに本当に時間がかかります。ただ、僕の同期が今『週刊少年ジャンプ』の編集長をやっているんですが、数年前に、彼が作家さんがたくさん集まる場所でしゃべっていたことで、僕が「いいこと言っているなぁ」と思ったことがあるんです。

「『少年ジャンプ』は『X』のフォロワー数が少なければ少ないほうが僕たちはうれしいんです」という話をしていて。フォロワー数が多ければ多いほうがコミックスの売上も安心できますし、フォロワー数の多い作家さんのところに声をかけにいく編集部の方がきっと多いと思います。

僕の解釈だと、ちょっと偉そうかもしれませんが、漫画編集者の価値というのは、世の中にまだ見つけられていない才能を見つけて、世の中に「こんなすごい人がいるんだよ」と発表することで、それで初めてその作家さんがたくさんの人に支持され、発見される。それが編集者がいる価値だと思います。

ただコミックスを売るとか、人気漫画で雑誌がたくさん売れればいいのではなくて、世の中に出ていない人が編集者や編集を通じて知られるというところにきっと大きな価値があるんじゃないかなと思っています。

読者がそこに対してすごくインパクトを持って、大好きだと思ってくれているので『ジャンプ』は支持されてきたんじゃないかなと、同期の話を聞いて思ったことがあるんです。それは大変なことなんですけれど、読者が待っていて、作家さんに対しても貢献できるということで、編集者が一生懸命に汗を流してくれているんじゃないかなと思いますね。

入江:「ジャンプ+」自体を耕すだけではなく、才能だったり、漫画家の方の人生も耕している感じなんですかね。

籾山:「人生」と言うと、ちょっとおこがましいかもしれませんが。編集者がいることで作家さんに少しでも貢献できればという気持ちでやっていますね。

入江:長い間、耕し続けるというところは本の中にもたくさん出てきていますが、冨山さんはいかがですか?

冨山:今お話をうかがっていて、すばらしい言葉だと思いました。

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