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なぜオランダは幸福度と競争力を同時に高めることができたのか(全4記事)

仕事でハムスターのように自分が回っていると感じたらすべきこと 「自分の幸せ」を知るための第一歩

人と組織の変革を支援するコンサルティング会社・株式会社ジェイフィールが、「オランダ」「幸福度」「教育」をキーワードとするウェビナーを開催。現地の小学校で教員として働き、教育関係者向けにオランダの学校視察のコーディネートも行う三島菜央氏が、コンサルタントの村田太氏と共に、社会をより良くす流ためのオランダにおける個人の動き方や、持続可能な幸せについて語りました。

前回の記事はこちら

自分の意見を押し殺すことが「和を以て貴しとなす」ではない

村田太氏(以下、村田):私なりに「オランダの魅力って何だろう?」というところを、少しみなさんと共有できればと思います。

まず、アサーティブな(自己主張する)人たちだなと思いました。

「私」を主語にすることにすごくこだわる部分がありつつ、対話を大切にして、「自分さえ良ければ」ではなく、ちゃんとお互いがwin-winになる関係を幼少期から学習しているので、大人の世界もそうなるんだなと思いました。

それはシチズンシップの教育義務化とか、今菜央さんに紹介いただいた「民主主義は練習できる」もそうかもしれません。

「なんでここまで対話にこだわるのかな」と思ったんですけど、「『他者と関わる』ことを通じて、社会をより良くしていこう」、要するに「そこが積極的でない人たちでは、社会をより良くできない」というコンセプトがオランダ社会にあって。

「世の中を良くするのは、『他者とより良く関わろうとする個人』であり、『ただの個人』ではない」という考え方が根底にあると聞いた時に、「なるほどな」とすべてのことが腹落ちしました。こういうコンセプトが国民全体で共有されていると、学校教育も企業も社会も一貫性を持った国になるのかなと思いました。

中でも、「アサーティブ」というのがすごく私の中に残りました。

シンプルに言うと、「I'm OK」「You are OK」という状態を常に子どもの時から学んでいる。これを初等教育から徹底して学ぶ、練習する。先ほどの帽子もそうですけど、自分だけではなく相手のこともしっかり配慮した上で、お互いに良い関係性を作っていくのは、本当にすばらしいなと思いました。

一方で、日本にももともと「アサーティブ」みたいな言葉として「和を以て貴しとなす」があったと思います。これには「あまり怒らず、和を大切にすること」というのと「しっかりと話し合いを行うこと」という考えが根底にあります。

自分の感情を押し殺して、妥協するのではなくて、理解して調和して協調していくことが大事だと言われている。これってもともと日本人にあったのに、最近はなんとなく自分の意見を押し殺したりというところがあるのかなと思いました。

自分のチームにフィットするチームビルディングの手法を選ぶ

村田:ちょっとこちらの動画をみなさんに見ていただければと思います。学校のチームビルディングの研修風景ですね。これはどういう経緯でやっているんですか?

三島菜央氏(以下、三島):これは私の友人が働いている学校です。この学校は若手の先生が多くて、けっこう大変な子どもたち、いわゆる教育困難校に指定されている学校なんですけど。

日本でもそうなんですけど、しんどい学校は先生たちの年齢層が低いことがあります。若い年齢層はリズミカルなことをやってつながりを感じることが好きだ、とこの学校のマネージャーが判断して、先生たちにワークするチームビルディングはこれじゃないかというところですね。

一方で、私の学校はけっこう年齢層も高めの人たちがいるので、真面目な研修というか、先生を招いてプラクティカルな話をしてもらうという選択をしています。管理職の人たちが、自分たちのチームはどんな色で、何が必要かを判断して、チームにフィットするチームビルディングの手法を選ぶということがよくありますね。

村田:あと、私はいろいろな学校へ行って、職員室が日本とぜんぜん違うと思いましたね。「休憩する場所だよ」みたいにソファーがあったり、きれいに植物も飾ってあって、コーヒーとか紅茶が飲み放題だったりする。

三島:コミュニケーションが生まれる場所として、休憩室を設置する感覚ですね。

持続可能な幸せは「自分らしさ」の先にある

村田:オランダの社会を見て、私なりに「日本がこういうふうになったらいいな」というのを最後にご紹介して終わりにできればと思います。

ジェイフィールをご存じの方は、『「コミュニティシップ」経営論』のヘンリー・ミンツバーグ教授をご存知かもしません。

リーダーシップで強烈に引っ張っていく社会のあり方は日本的じゃないなと思った時に、ミンツバーグの言う、一人ひとりが主体となって貢献する「コミュニティシップ」の考え方を日本にもっともっと増やしていくといいなというのが1つ。

もう1つは「人間観」ですね。

オランダの人たちは本当に人間らしいというか。今、人的資本経営というものが日本でも言われていますけど、でも人は資源でもないし資本でもなく、人間そのものだというところがすごく大事だなと思います。

オランダの人たちは「1人の人間」をすごく尊重していますし、「私」にこだわる。感情と意志を思った人間をしっかり尊重していくことをもう1度私たちも取り戻す必要があるんじゃないかと思います。

あらためて、オランダに行って「感情ってすごく大事だな」と思いました。「なんで私がこの仕事をしているのか」と考えさせられましたし、そういった自分の気持ちや感情に素直に向き合って、自分らしさを取り戻していきたいと思います。

「自分らしさ」って自分1人で決めるというよりか、先ほどもあったように、人との関係性の中で自分を自覚したりします。1人でやるよりも、(スライドの)右のような良い関係性を持ち、お互いに重ね合うような関係で、日本も変わっていければいいなと思ったりしました。

オランダは何が一番日本と違うのかなと思うと、今目の前にあることを幸せに感じられる人たちなので、モノとか地位ではなく、自分の心の持ちようとか、抽象的なものにすごく幸せを感じている。「自分らしさ」の先には、長続きする幸せがあるのかなと感じました。

今日本も、ウェルビーイングや幸福学みたいなものが、いい意味でトレンドになっていますので、あらためて「自分らしさの先にあるものって何だろう?」というところを考えていけるといいかなと思います。

仕事でハムスターのように自分が回っていると感じたらすべきこと

村田:菜央さんからも、最後にご覧いただいている方に一言いただければと思います。

三島:みなさんが働き方に苦しさを感じている場合は、私はそこから逃げるのもぜんぜんありだと思います。というのも、オランダの人たちは「この仕事はおもしろくないな」「つまんないな」「もう嫌だな」と思ったら辞めるんですね。だから自分の幸福感、自分が何に幸福を感じるかを、まず知ることがものすごく大事です。

ハムスターのようにクルクル回っている間は、自分の幸せや、自分が何者で何を望んでいるかは見えないと思います。なので、回し車の中に入っている意識があるのであれば、そこから外れないと自分との対話は生まれないと思います。自分が何を欲しているかがわからないというのであれば、恐らく余白がない状況だと思うので、そこからまず外に出る。それが最初のアクションだと思います。

そうすると、他人の余白を認められるようになったり、「それでいいじゃない」と他人を認められるようになると思います。自分自身がどうかということに耳を傾けることから、すべてがスタートするんじゃないかなと思います。

村田:今、日本でも「対話をしっかりしていこう」と「対話」がすごくキーワードになっています。企業の人と話をすると、「対話はとても大事だと思うんですけど、忙しくて、その時間を取れないんですよね」とよく聞きます。

そうかもしれませんが、対話をしてうまくいった国が、私はオランダだと思うんですね。今すぐ結果は出ないけど、今やらずに失われた30年が「失われた60年」になるのか。それは一人ひとりの選択だと思うんです。

今何かを変えることで、30年後の未来が変わる可能性もあるので、私もそうですけど、1人の市民だと思って、身近な人と「こう思う」ということを対話していってほしいと思います。自分もそんなふうな存在でありたいなと思っています。

では、これで終わりにしたいと思います。今日はどうもありがとうございました。

三島:ありがとうございました。

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