2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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人と組織の変革を支援するコンサルティング会社・株式会社ジェイフィールが、「オランダ」「幸福度」「教育」をキーワードとするウェビナーを開催。現地の小学校で教員として働き、教育関係者向けにオランダの学校視察のコーディネートも行う三島菜央氏が、コンサルタントの村田太氏と共に、建設的な話し合いができる人間を育てるピースフルスクール教育について語りました。
村田太氏(以下、村田):教育の格差が経済の格差につながるという話をしておきながらちょっと心苦しいんですが、「じゃあ競争力って何だ?」という話を(笑)。
オランダは競争力ランキングで世界5位になっていたりするんですけど、IMDは「競争力」について、「公・民のバランス度だ」と言っているんですね。最も競争力の高い国はデンマークですが、公・民のセクターが最も効率的だということをもって世界1位になっています。
企業に勤めている方は日本の国際競争力の比較みたいなものを何度も目にしているかもしれませんが、(スライドの)右上はオランダの過去5年間の順位で、直近は5位で、コロナ禍でもほぼ平均5位の競争力をオランダは誇っていると。
一方で日本は(スライドのグラフを)見ていただくように、1回回復しましたけど、直近は35位で、1989年以降で一番低い。
順位に一喜一憂しても仕方ないと思いますが、オランダと比較して何が違うのかというのを見たいと思います。日本はビジネスの効率性が特に低いと言われていて、黄色のハイライトの3番ですね。
参考までに、オランダの各大分類の順位だけ持ってきたんですけど、オランダは2022年も2021年もビジネス効率性は世界3位と2位で、他の「経済状況」とか「政府効率性」の項目はそんなに高くないんです。しかし、ここが群を抜いて良いので、トータルランキングも6位、5位となっています。
ビジネスの効率性の中を見ていくと、赤字のところが特に影響すると思います。
やはり「生産性・効率性」ですね。私が一番驚いたのは、小学校の先生たちも3時半に帰ると言ったらみんな帰っちゃいますし。本当に限られた時間の中でアウトプットをするんだという、効率をすごく重視するところが日本以上にあるなと。そういうところが、労働生産性につながっているのかなと思います。
あと、私は今回5つの学校に行きましたが、校長先生と先生の関係性がすごくいいなと思いました。校長先生は「彼らが良い授業をするために、私はいくらでもサポートします」と本当に先生たちを信頼しているし、部下である先生たちも校長先生を信頼している。
たぶん学校でそういう状況なので、社会全体を通して、企業などもそうなんだろうなと思ったりしました。先ほど女性の就業率が高いという話がありましたし、英語がどこでも通用するというのは、グローバル化においても非常に大事なことかなと思います。
あとはサーキュラーエコノミーの先進国なので、私も実際に菜央さんに特区にも連れていってもらいましたが、本当にそこで全部が循環するようなことをやっていたり、一貫性がすごくあるなと思いました。
また、(スライドのように)企業の経営者たちから、オランダ政府やいわゆるパブリックセクターに対する信頼がすごくあるなと感じました。
幼少時の教育が今のオランダの経済・経営の強みになっていると経営者が答えていることは、もちろんインフラという政府がやるところもありますが、「人を育てる」というところの考えがすごくいいなと感じました。
今回私がオランダを見て思ったのは、教育の中にある「市民づくり」というものがオランダの競争力の源で、それを支えているのが教育だなとすごく思いました。
村田:ここから少し学校教育の現場のお話をしていきますが、その前提として、ある学校の校長先生の言葉を紹介したいと思います。
最初に行った学校なので、すごく印象に残っているというのもありますが、モンテッソーリの校長先生のお話で、ほとんどの先生が同じようなことを言っていたんですが、「子どもにとって大切なのは何ですか?」という問いに、「自分自身を知っていることと、あと自分で選択することが重要」だと答えました。
「自分で選択できることが幸福につながる」ことを学校の教育から徹底していることを知った時に、こういうところに源泉があるなと思ったんですね。さらに、「自分を知る」ということは自分の感情や自分に向き合うということですね。また自分だけではなく、他者との関わりの中で自分を認識できたりするので、他者とつながる感覚も大事にしているなと。
一番びっくりしたのは、大きな窓で教室と庭がつながっていて、「季節の変化とか、世界や地球とつながっている感覚を得る」ということをおっしゃっていたんですね。「『存在するすべてのものにはつながりがある』ということを、教育を通して子どもたちに伝えたいんだ」と校長先生がおっしゃった時に、「やっぱりすごいな」と感じました。
すべてのものがつながっているから自分が生かされているんだ、という感覚を小学校の時から教育の中に入れているのはすごいなと印象に残っています。
村田:この教育について菜央さんに資料を準備いただいたので、お話いただければと思います。
三島菜央氏(以下、三島):オランダでは、性教育と市民教育というのが義務化されていて、教育課程の中で必ず行うことが決まっています。オランダで生まれ、今オランダの15パーセントの学校が採用している「ピースフルスクール」という市民教育の一環のプログラムがあります。「民主主義は練習できる」と、練習を介して民主主義を体得できるというのが、ピースフルスクールの大きなテーマです。
最初にお話ししたとおり、オランダは宗教とか国籍、性的指向、考え方、政治観とか倫理観が異なる人々が一緒に生きる社会です。(スライドの)真ん中の絵のように、私たちは地球を一緒に抱きしめて、いろんな違いを越えて生きていけるという考えのもと、子どもたちは学んでいきます。
例えば、ピースフルスクールでは、もめ事が起きた時は3種類の帽子のうち、「黄色い帽子を被りましょう」と教えます。
赤い帽子を被っている時は、感情的になってケンカをしたりする。黄色い帽子は話し合いで解決できるという気持ちを持って、平和的な解決を望んでいる。青い帽子は我慢をしたり、消極的な姿勢。例えば「我慢して、ここから逃げ去りたい」とか、そういった消極的な姿勢ですね。
「あなたはどの帽子を被りますか?」というのと、「黄色い帽子を被るためにはどうしたらいいか」ということを練習していきます。例えば、「私はもういいんです」は青い帽子なので、そうではなく自分の感情をきちんと言葉にして話し合うことを勧めます。
もめ事が起きた時は、まず「ストップ! 落ち着いていますか? まだですか? まずは落ち着きましょう」。感情的な状態では話はできないので、話を始めません。まず落ち着く。ここで言われているのは「10まで数えてみてください」ということですね。
次は「黄色の帽子を被ってください。言いたいことを伝えましょう。相手の話もよく聞いてください」です。そして、「win-winな解決方法を見つけましょう」「お互いに案を出し合って、その解決法に基づいてコンフリクトを解消しましょう」。これがもめ事が起きた時の進め方です。
もうちょっとかみくだくと、(スライド)①「コンフリクト」が起きて、②「気持ちや考えの共有」をして、③「理解の確認、言い換え」をして、④「責任を共有」ですね。「あなたはこんな部分があったけど、私もこんな部分が悪かった」みたいなことを言い合って、⑤「win-win解決策の模索」をして、⑥「納得のいく解決策を選択」できたら、お互いを⑦「許す、認める、感謝する」というかたちになります。
三島:1つ例を出しましょう。「コンフリクト発生!」ということで、兄妹ゲンカです。
ツヨシと妹のナツキがテレビを一緒に見ているんですけれども、ツヨシは自分が見たい番組にするためにチャンネルをずっと変え続けるんですね。
妹のナツキはそんなツヨシの行動にイライラしている。ついにイライラしたナツキは、ツヨシからリモコンを奪い取って、自分もまたチャンネルを変え始めましたと。こんな時、まず大事なのは落ち着くことですね。感情的な状態では建設的な議論や対話が行えないというのは、前提として知っておかないといけない。
こういう時に建設的な対話ができるようにするためのTipsです。深呼吸をしたり、ちょっと歩いてみたり、何か飲んでみたり、5分ほど絵を描いてみたり、自分と対話してみたり、マインドフルな時間を設けてみるなど。こういった例を示して、「あなたが興奮している場合は、これをトライして」と言います。
そして「I(アイ)メッセージ」で自分の気持ちを伝えます。例えばナツキは、「あなた(ツヨシ)がコロコロとチャンネルを変えた時に私はすごくイライラした。だって私は、チャンネルが自分の元に戻ってくるかを決める権利をもらえるかがわからないし、そもそもどっちがチャンネルを決めるかという話し合いもなくて、私は悲しかった」。
ツヨシからすると、「僕は見たいテレビ番組を探していたのに、君が急にリモコンを取ったからびっくりしたし、怒った気持ちになった。だって僕は見たい番組があってそれを見つけるためにチャンネルを探していただけだったのに」というかたちで、「自分はどう感じたか」ということをまず共有する。そして、その時は割って入らず、1人ずつ話をするということですね。
次に、自分の言葉でリフレーズします。「リフレーズ」というのは、自分の言葉を用いて、もう一度相手が言ったことが合っているかを確認する作業です。「つまり、あなたは見たい番組を探して、ずっとチャンネルを変えていたってことね。だからその番組が見つかるまで、私に待っていてほしかったってことなのね。これであなたの言いたいことは合ってますか?」「そうです」と。
「ナツキはそもそも自分が番組を選べないことにイライラしていたんだね。僕がずっとチャンネルを変え続けていたから、自分の番がいつ来るかもわからなくて、イライラしてリモコンを取ったということで合っていますか?」という事実の確認をします。
三島:そこで、自分が取れる責任を取ります。「なるほど。それなのに、何も聞かずに急にあなたのリモコンを取ったのは私が悪かった」「いやいやこっちも。ナツキが僕からリモコンを取ったのは、僕がずっとリモコンを持っていて、何も言わずにチャンネルを変えていたからだね。それは良くなかった。僕の責任です」ということですね。
そして、次からどうするかをブレーンストームして、お互いに出し合います。「何が見たいかを最初に聞き合ってみる」とか、「お互い見たい番組が違ったらじゃんけんをする」とか、「リモコンをどっちかが持たず、机に置いておいたら平和なんじゃないか」とか。
ツヨシは「僕もどうしても見たい番組がある時は相談するよ。じゃけんじゃなく、僕は話し合うことのほうがいいと思うから」とか、「テレビの時間が限らている時は、ちゃんとどちらが見たか覚えておこう」。win-winの解決策を2人で模索します。お互いに解決策を出して、自分たちがワークアウトできるものを選びましょうということですね。
必ずしも相手を許したくないとか許せないと思ったら、許す必要はないというのが基本的な考え方ですけど、話し合いに基づいて相手の言ったことを認めたり、話し合いができたことに対して感謝を伝えることが重要だと教えたりします。
コンフリクトが起きた時は、真ん中の黄色い帽子を被って、建設的な話し合いができる人間になりなさい。感情を爆発させると話し合いができない状況になってしまうので、話し合いができるように自分をコントロールすることを子どもたちは学びます。
そういうふうにして人とのつながり方を学校で学ぶと同時に、教科横断型学習やテーマ学習人や外の世界とのつながりを大事にしているなと感じるところがありますね。
村田:大きな窓で教室と庭がつながっているとかもですね。
三島:そうですね。物理的に外と中がつながったデザインがあるところですね。大きな窓から外を見て、自分と世界がつながっているという感覚から気候変動への関心が生まれるというところもあるんじゃないかと思います。
村田:私が一番驚いたのは、私の小学校の経験では「廊下は立たされるところ」というイメージがあったのが(笑)、「廊下で勉強するんだ!」というのはちょっと驚いたんですけど。逆にすごくいいなと思ったりもしましたね。
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