2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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早瀬隆春氏(以下、早瀬):では続いて非公開収録したものとしては、こちらですね。「AI生成物をどう扱う?」。
友利昴氏(以下、友利):これは難しかったですよね。
早瀬:はい。とにかく毎日毎日ニュースが入るんだけど、解釈がああだこうだとみんな言うし。法的な見解も文化庁が6月の中旬にギリギリ、セミナーをやりましたけども。もうあの時は7月刊だからギリギリの段階で、最後までもっと盛り込むか悩んだところでしたよね。
友利:そうですね。AIの話も結局この本に収録していて、それなりに現時点での答えは提示できたかなと思っているんですけど。そもそもはこの本の企画って、去年の秋くらいにお話をいただいたと思うんですけど、その時くらいからなんですよね。ChatGPTが出たのもMidjourneyとかが出たのも、ちょうどそのくらいで。
この本を書いている間中、海外では訴訟提起の動きがあったものの、国内ではもちろん裁判もなく、確定したAIに関する著作権の判決は現時点でもありません。書き始めた頃は、学説も活発じゃなかったんですよね。年末とか年明けくらいからやはり「AIと著作権の関係はこう考えるべきだ」という意見、学者とか実務者の論文とかもけっこう出るようにはなりましたけれども。
未だに統一見解じゃなくて、「あの学者はこう言っている」「あの学者は逆のことを言っている」みたいなことがけっこうあって、そういうのを日々キャッチアップして……これはアカデミアの本じゃないから、実務で使う時には、学問上の議論をどう解釈して、どう現実に当てはめるべきなのかというテーマで書かなければならないので。
そういうアカデミアの議論のどこを取捨選択して、実務にどう落とし込むのがビジネスシーンにとっていいんだろうかと考えながら書いたんですけど、結果として初稿で書いた原稿と真逆の結論に直したりしていましたからね(笑)。
早瀬:(笑)。
友利:AIはそれくらい大変でした。
友利:結局なんて書いたんだっけ……ポイントはやはりアレなんですよね。
早瀬:学習させるものと、あとは依拠について、どこまで作る人間が理解しているかというところでした。
友利:一番問題なのは、AIでイラストとかを作るのはいいんですけど、それがなにか既存の著作物に似ちゃうということは絶対起こるので。絶対起こるというか、それは別にAIに限ったことじゃなくて、人が描いたものだってたまたま似ていることはあり得るし、これまでも起こってきたんですけど。
ただ人間が描いたものは、偶然の一致で似ちゃったのは著作権侵害にならないのは、もう確立している話なんです。AIが既存の著作物を学習して、似たものを出力してしまったと。でもそれをAIで出力した人間、ユーザーがそれを採用して広告とかに使った時に、当然その広告に採用した人はAIが何を学習しているか知らないから、その人にとってはたまたまですよね。
広告に採用した人にとってはたまたまなんだけど、AIは学習しているということがあった場合に、「たまたま似ちゃいました。だから著作権侵害にならないんです」というロジックが成立するのかが、この問題の一番難しいところでポイントになると思うんですけど。
ここは結局今も確定的な答えは出ていないんですけど、私が本に書いた見解としては「利用者が知らなかったし、知っていることに過失もなければ、それはたまたま類似したということで権利侵害にはならないと考えるべきなんじゃないか」という結論に一応したんですけどね。
早瀬:そうですね。私が担当した本なので、いろいろ苦情が来ないかちょっとヒヤヒヤしていますけれども(笑)。
友利:(笑)。やはり「AIに学習されたくない」という意見もけっこうありますから、難しいところではありますけど。でもそう考えないと、AI生成物を利用するユーザーにとっては、結局(AIがどの著作物を学習していて、生成したデータが学習した著作物に類似しているかどうかを)知るすべがないんですよね。知るすべがないのに、たまたま似たのが出ちゃったものを使っても権利侵害になるということは、AI生成物をビジネスで利用すること自体が、事実上できなくなっちゃうんですよね。いつ似るかわからないから。
さすがにそれはたぶん社会的に許容されないんじゃないの、というのがセンスとしてはありますね。だから利用者自身が元ネタが何かを知っているなどのシチュエーションがなければ、セーフと考えるのが、やはり社会的には妥当なんじゃないかな。
早瀬:なるほど、ありがとうございます。いずれにせよ今後の見解を慎重に見守っていきたいところですね。
友利:そうですね。
早瀬:時間的には質疑応答のお時間になりますので、もしある方はコメント等でどしどしお送りいただければと思います。ちょっとその間に、もう1つだけこのテーマでお話しができればと思います。
次のテーマはこちら。「黒目線・モザイク・伏せ字でごまかせるかどうか」。(画面に映している)イラストがわりとセンシティブですけど、一応これは「いらすとや」さんの利用規約的にはセーフという見解でいただいておりますので、なんとか。大丈夫ですよね?
友利:大丈夫ですよ(笑)。
早瀬:ありがとうございます(笑)。わりと広告とかでもよくある手法で、あるいは創作物でもパロディでやる時にこういう感じで、よそのキャラクターを出すみたいなことをしていますけど。こういうのってアリなんですか?
友利:おもしろいですよね。これはパクリ疑惑とAIと違って記事自体になっていないんですけど、1つだけ後悔があるとしたら、このネタは記事に入れたかったなと今ちょっと思っていますね。
早瀬:そうですよね。私が「このネタどうですかね」みたいなことを、(制作の)かなり後半で言い始めちゃったのは、本当に申し訳ありませんと言うしか。
友利:いえいえ(笑)。でもいいですよね、これはよく考えるんですよ。目線を入れたりモザイクを入れたり、伏せ字にすればごまかせるんじゃないかということなんですけど。あとこれは有名人の名前とかも入っているので、やはりさっきのパブリシティー権の論点と著作権の論点、2つ入っていると思います。
友利:まず著作権に関して言うと、例えばキャラクターのイラストがあった時に、目線を入れれば著作権侵害を排除できるかという話ですけど。これは基本的に難しいと思いますね。
というのは、目線で隠しても結局隠れているのは目だけなので。著作物の表現は目にしか現れなくて、その他の部分は著作物じゃないかというと、そんなことはないと思うので。基本的に漫画のキャラクターとかを目だけ隠してネットにアップすれば、それは著作権侵害にならないということにはならないでしょうね。普通に侵害になるというところです。
ポイントはやはり、表現部分が隠れているかいないかなんですよね。逆に言えばその表現部分が隠れていて、なんとなく「このキャラクターかな」というのはわかるんだけれども、具体的表現が隠れていればセーフという考え方はできます。そういう考え方をとると、モザイク。これは可能性がありますね。
早瀬:おぉ。
友利:キャラクターのイラストがある。そこにモザイクをかける。さっきの「新聞記事をネットに上げても大丈夫か」という話をした時に、記事にモザイクとかぼかしをかけて読めないようにすれば、著作物としては読めないんだからセーフですということを言ったと思うんですけど。
それと近い理屈で、結局モザイクをかけることによってそのイラストの表現が見えなくなっていれば、著作物を複製したことにもならないし、表現そのものが再現されていなければ翻案だとか改変ということにもならないです。
だから薄いモザイクだと「表現がわかる」という話になると思うんですけど、ある程度粗いモザイクをかければ、そこは実はセーフになる可能性はあるんじゃないかなという気がしますね。これを実際にやったのがアニメの『ポプテピピック』ですね。
早瀬:なるほど(笑)。サブカルではわりと有名な、パロディ作品が多いやつですよね。
友利:そうそう。パロディ満載の『ポプテピピック』ってアニメがあるんですけど、あれはそもそもすごくアニメのパロディとかをいっぱい使っているんです。『となりのトトロ』のパロディなんだけど、結局上がってきた画像を見て、ちょっとパロディとはいえ似すぎているということで、最終的にモザイクをかけて放送したというやつなんですけど。
早瀬:(笑)。
友利:ただそれは逃げ方としては、法律的にはけっこううまい逃げ方です。結局モザイクをかけることによって、なんとなく「トトロかな」とわかるけれども、トトロのデザイン自体は再現されていないからセーフ、という実例としてはありますね。
早瀬:なるほど。
早瀬:でもそれって逆に言うと、宣伝とかで使う場合は、見ている人間が「トトロだ」とイメージできないとあんまり効果がないということではありますよね。有名人にモザイクをかけたらもう誰かわからないみたいな。
友利:これは法的なことを言っていますけど、結局広告になった時にめちゃくちゃ怪しくなっちゃうので(笑)。広告として成立するかは、またちょっと別の問題かもしれませんね。
あと著作権の話が長くなっちゃったんですけど、有名人の場合は一部を伏せ字にしたとしても……ここ(スライドが)「マツ〇・デラックス」になっていますけど、これを伏せ字にしたからといってマツコ・デラックスということはバレバレなので。パブリシティ権の場合は、誰だか特定できちゃえば伏せ字にしても意味がないですね。
だからこれをやるんだったら「あの有名女性タレントが絶賛!」みたいな感じで、それこそ誰だか特定できない程度のぼかし方をするのであれば、パブリシティ権的にもセーフだけれども。1文字伏せ字で結局「誰だかバレバレだよね」ということだと、パブリシティ権の侵害を免れることはできないという感じになると思いますね。
早瀬:なるほど。ただ今の書き方だと、やはりいかがわしい広告に感じますよね(笑)。釣り広告というか。
友利:いかがわしい広告になっちゃいますよね(笑)。「あのハリウッドスター推薦!」みたいな。昔の雑誌の裏の広告の、怪しい健康器具みたいな感じになりますけどね。
早瀬:ありがとうございます。
早瀬:一応本日ご用意したテーマは以上だったんですけれども、ここからは質疑応答ということで。すでにお申し込みの際にいただいたご質問等もありますので、それについて少しでもお時間の許す限りお答えいただければと思うんですが。
挙げていただいた中では、例えば「社内報や統合報告書を制作するにあたり、素材や人物写真をどのようなフローで扱えばいいのか知りたいです」というご質問が来ているんですが、このあたりはいかがでしょうか。この本にも少しありましたけれども。
友利:社内報とか統合報告書というのは、基本的にそこに載せるイラストの素材とか人物の写真は賑やかしのためというか、資料が華やかになるように入れるパターンが多いと思うので。引用というわけにはいかないことが多いと思います。引用が使えればわりと自由に使えるんですけど、この場合はそれは使えないので。
やはり素材をどこからか購入するのであれば、フリー素材も含めてなんですけど、利用規約を確認することですね。それがほぼすべてだし、そこが一番重要です。
これに関してちょっと言うと、素材サイトの利用規約でよくあるのが「商用利用禁止」とか「商用利用の場合は使用料が必要」みたいなパターンですけれども。たまたま質問が社内報・統合報告書という話なので、これがおもしろいと思ったんですけど。広告とか商品に使うのであれば誰が見ても商用利用とわかるんですけど、果たして社内報とか統合報告書は商用利用に当たるのかという問題がありますね。
これが難しく、当たるとも当たらないとも言えるんですけど。素材サイトを使う時の難しさって、結局「商用利用禁止」と書いてあるけど「商用利用」の定義がちゃんと書かれていないことが多いところなんです。その時に「これはボーダーラインだよね」というものをこっちの勝手な解釈で利用しちゃうと、それはリスクになるということですね。
結局著作権は先方に握られているわけですから、向こうが「いや、それは商用利用ですよね」と言うと、少なくともいったんは取り下げる羽目になる。そこはやはり安易に「これは商用利用とは言えないでしょう、ギリギリわからないけど」という感じで判断するのではなく、「これは商用利用に当たりますかね」と、その素材の配布元にちゃんと確認するというフローを取るのは、この場合は正しいと思いますね。
早瀬:なるほど。ただ、先ほどの質問の内容みたいな話になって、「そちらで判断してください」と投げかけるかたちになってしまっているような感じもするんですけど。
友利:あぁ、なるほどね。「これは明らかに商用利用じゃないですよね」という確信があればぜんぜん聞く必要はないと思うんですけどね。これは前提として社内報とかに利用することが、著作権を侵害するやり方なんですよね。基本的に、規約がなければ。それを規約に当てはめた時に規約の範囲内か範囲外かという話なので、著作権侵害に当たるかどうかの判断を権利者に委ねるという話とはちょっと違いますね。
契約とか利用規約の解釈に当てはまるかは、一義的には当事者同士の決めごとなので。もっと言えば、利用規約だったら、利用規約を作っている側の決めごとなので、そこは「どういうつもりでこの規約を書いているんですか」と聞かざるを得ない。聞いたほうがいいと思いますね。そこは法律の解釈を権利者に尋ねるのと、規約の解釈を規約の制作者に尋ねることの大きな違いかなと思います。
早瀬:なるほど、ありがとうございます。ではもうお時間が迫ってまいりましたので、質疑応答が本当に短くて申し訳ありませんが、こちらで締めさせていただければと思います。
『職場の著作権対応100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)
最後に御本の紹介をあらためてさせていただければと思います。『職場の著作権対応100の法則』、弊社の「100の法則シリーズ」の1冊です。著者友利昴さん、日本能率協会マネジメントセンターから出ております。7月26日に発売されておりまして、全国の書店・ECサイトで販売しています。電子書籍は8月中の配信予定です。よろしくお願いいたします。
この本の中で今日お話しした内容、ほかにもさまざまなば内容について学ぶことができますので、ぜひお手に取ってご覧いただければと思います。最後に友利さん、一言ごあいさつをお願いいたします。
友利:みなさん、天気も不安定な中でお付き合いいただきまして、どうもありがとうございました。著作権というのはモヤモヤすることが非常に多いんですけれども、この本はできるだけそのモヤモヤを解消できるように、回避策だったり回避するための考え方を学べるように、なるべくすっきりとした読み応えを意識して書いた本です。この分野に興味のあるビジネスパーソンのみなさんに、ぜひお手に取っていただければと思っております。今日は長時間お付き合いいただきまして、どうもありがとうございました。
早瀬:ありがとうございました。
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