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非上場のDMMが「持株会」を始めたワケ(全5記事)

今の社会の「格差」は、「資産家であるかどうか」になっている DMM亀山氏が語る、非上場会社なのに持株会を始めた背景

音声メディアVoicyにてDMM.com会長 亀山敬司氏が配信している「亀っちの部屋ラジオ」より、「非上場のDMMが『持株会』を始めたワケ」の回を書き起こしにてお届けします。「持株会」とは、自社の株を従業員が購入・保有できる制度です。上場企業ではないDMMがなぜ持株会を始めたのか、レンタルビデオ屋から始まったDMMならではの思いが語られました。

非上場のDMMが「持株会」を始めたわけを、亀山会長が解説

亀山敦司(以下、亀山):どうも、DMMの亀山です。『亀っちの部屋』週末版ラジオ始まります。

野村高文(以下、野村):音声プロデューサーの野村高文です。今週もどうぞよろしくお願いいたします。今週は久々の亀山さんのソロ回を、週末版で配信させていただきます。どうぞよろしくお願いします。

亀山:よろしくです。

野村:テーマが「持株会」ということで、ちょっと「おや?」っていうテーマなんですけど。この背景としましては、亀山さん率いるDMM.comが、従業員の方々向けに持株会を始められるんですよね?

亀山:そうなんだよね。非上場のくせに持株会という、なんか大それたことを始めたいと思います(笑)。

野村:(笑)。私もそこが気になりまして、「非上場で持株会ってどういうことなんだろうな?」とか、あと「亀山さんがどういう流れの変化を捉えて、この持株会を始められたのか?」というのを今日はうかがいたいなと思いまして、ソロ回をセッティングさせていただきました。

亀山:今年から始めようかなと思ってて、今、社員説明会とかしながら準備してる最中です。

野村:そもそも始めようとされているのはどういうものなんですか?

亀山:結局非上場なんで、株価ってもんがないわけよ。それでどうやって株を判断するんだって話になるので、うちの場合は「純資産」で判断しようと。

純資産のキャッシュが黒字であれば、利益の分だけちょっとずつ増えるじゃん? その利益で増えてた分が、株価としての価値になると。だから会社が黒字である限りね、株価は上がってく。という中で、今回うちの株を社員たちに売ろうという感じかな。

だから社員限定なんでね、タイトルなんかを「DMMが株販売」とかにすれば引きはあるかもしれないけど、実際一般の人は買えませんから(笑)。

野村:(笑)。そうですね。「そのタイトルはつけないでね」ってことですね?

亀山:いやいや、まあまあ、タイトルつけてもいいけどね、引きだから(笑)。

野村:(笑)。確かに。

亀山:ただね、これは一般の人が買うって話じゃないけど、俺はこのモデルはほかの非上場の会社、中小企業の人とかにとっては、もしかしたら「あ、うちもやってもいいかな」と参考になると思ってもらえると思うので。ぜひ非上場の会社の方、特に社長は聞いてもらえたらうれしいかなと。

野村:わかりました。

基本的な考え方は「貢献した分を還元する」仕組み

野村:なぜ始めようとしたかは後々うかがいたいと思うんですけど、まずどういうものかっていうのを最初にうかがえますか? 純資産なので、バランスシートでDMMさんの純資産があって、それを株の発行数で割っていくってことですよね? それで1株当たりの金額がでてくると。

亀山:そうだね。いろんなグループ会社があるので、DMMグループ全体の株ってことになるのかな?

野村:黒字がでると、その分純資産が膨らむので、株価が上がっていくっていうことなんですか?

亀山:うん。つまり利益が仮に10パーセントでたら、純資産に応じて株価も10パーセント上がるみたいな感じかな。

野村:例えば株にありがちな「配当」とか、そういうのはないんですか?

亀山:そのへんはないんだよね。要は今回の株は議決権もないし配当もしないと。だから買っといてしばらく持ってて、退職の時に売ってもらうと、それが何倍かになってるよっていう仕組み。だからそういう点でいうと、退職金代わりっていうと変だけども......。

野村:(笑)。

亀山:社員しか買えないので、辞める時には売ってもらいます。そういう仕組みの中で、それまで会社が伸びてたとしたら、その貢献した分を還元しようかっていうのが基本的な考え方かな。

野村:そういうことですね。在籍期間会社の成長に貢献されて、それに対して報酬というか、見返りを支払うという意味合いが強いわけですか?

亀山:そうなのね。うちも(レンタルビデオ時代を含めると)もう会社(が立ち上がって)40年以上経つんだけど、社員たちも、年齢が上がっている人も多くなっている。その間ずっとうちらは、どちらかというと今までは利益が出たらそれを常に新しいビジネスに投資する方向で40年ぐらいやっている。

野村:うーん。40年。

亀山:ある程度歳をとった社員もでてきたわけ(笑)。

野村:(笑)。ベテランの方もいらっしゃいますよね? それこそレンタルビデオ屋時代からアルバイトされてる方とかいらっしゃる。

亀山:そうそう。その頃のやつもいるからね。

どうしても起こる「世代交代」の問題

亀山:だからどうしても、最近現場の中で起きる問題は世代交代。定年退職者もいるかもしれないけど、今はそこまでの歳じゃなくても、若い部長に交代するとかで結果的にポジションが下がったり、給料が下がったりってことが、年齢とともにあったりするわけ。

俺も現場に「がんばって生産性上げろ」とか「組織をちゃんと健全に持ってけ」とかって指導してると、そういう厳しい判断は、どっちかというと止めようがないわけよ。そうしないと会社がおかしくなるからね。

ただ一方で、数十人でやってた時代の社員たちがいるわけで、俺も昔から知っているので。中には役員になったやつもいれば、そんなに上じゃないやつもいるんだけど、そのへんの人間たちがちょっとつらいなって、見てて感じることがあるんだよね。

厳しい判断をすべきことはしないといけないし、一方で社員たちの保護は会社の義務でもあるじゃない?

野村:そうですね。

亀山:そういった点でいうと、もともといた人間たちが株を持っていれば、いくらか貢献した分(を還元できる)。なんだかんだいって、どんどん新しい優秀な人間が入ってくるわけ。昔の(レンタルビデオ時代の)ヤンキーに比べたら。

野村:そうですよね(笑)。しかも回転もすごいですよね、すごい勢いで入ってこられますもんね。

亀山:うん。その頃に比べたら、能力的なものの世代交代はあるよね。でも実際問題、(昔からの)そいつらがいないと今がなかったのも、確かにそのとおりで。

野村:確かに。

亀山:だから今まで支えてはくれたんだけど、そういう中でしんどいかなって(笑)。その時に制度としてこういうのを作ってったほうがいいなって。

野村:今回も、わりと長く勤めてらっしゃる方には最近入った方よりもインセンティブというか、いいことがあったりするんですか?

亀山:うん。そのへんは、長くいるやつのほうが多く買えるようにはしてる感じだね。

野村:多く買えるんですね。

亀山:だから基本的なものとしたら今、給料の10パーセントぐらいが上限として買えると。買わない人がいてもいいけど、買いたい人はそれ以内なら、最大10パーセントまでと決めてるんだよね。

野村:年収500万だったら50万までってことですね?

亀山:そういう感じ。だから古いメンバーに関してはもうちょっと多く、特別枠で持ってもらおうかなって今思ってるかな。

もともとの発想は「もうけるよりも、もうかるための組織を作ってけ」

野村:基本的に社員の方は持株を積み立てていって、資産を安定して増やしていくみたいなメリットがあるってことなんですかね?

亀山:そうだね。基本的には給料から積み立てていくみたいにするんだけど、その分をためていくと、時間が経つごとにちょっとずつ増えていく感じかな。

野村:今回資料としてDMMさんのここ10年ぐらいの純資産の推移を見させてもらったんですけど、めちゃめちゃ増えてるんですよね(笑)。

亀山:(笑)。ここ最近でいうと、そうだね。10年ぐらいたったら、だいたい純資産4倍ぐらいになってるんだけど。

野村:単純に考えて先ほどのルールを適用すると、株価4倍になってるってことですよね?

亀山:そうね。だから利回りでいうと15パーセントぐらいになるのかな。

野村:すごいですね、本当に。

亀山:ただこれ自体は、逆にいうと投資しきれなかったと言えるんだけど。もともと昔はどんどん投資できてたのよ。だから投資できなかった分が純資産になってきたみたいな話になるかな。

野村:じゃあ純資産が“増えてしまった”というんですかね。その部分に関して亀山さんとしては問題意識を感じられてますか?

亀山:うん。もともとは利益を全部次の投資に使っちゃえっていう感じで、「もうけるよりも、もうかるための組織を作ってけ」みたいな感じの発想だったからね。ただ結果的には、それでも黒字。赤字じゃやっていけないんでね、会社だから。

黒字は黒字でやっていくつもりなんだけど、ここ最近を見るとそれぐらいんなってるので、実際は10年前に持ってた人は......例えばその頃100万持ってたら、400万ぐらいんなってるだろという話。「長くいればいるほど、その中での価値は上がっていくんじゃないかな」って、一応そのへんはいけんじゃないかなっていう。

赤字転落は今までないからさ(笑)。今後はわかんないけど(笑)。

「議決権を渡さない」のは、次への投資を続けるため

野村:ええ。でも仕組みを聞いて率直に思ったのは、社員イコール株主の方からすると、「次に投資するよりも、会社の純資産増やしてよ」みたいな方向に、気持ちがいかないかなと思ったんですけど。

亀山:そうね。確かにそういった面ではデメリット。だから「議決権は渡さない」ってのはそういうとこなんだよね。

野村:意思決定はあくまでも亀山さんと経営陣でやるってことですね。

亀山:うん。経営陣までそう思っちゃったら大変なんだけど(笑)。そこはちょっと気をつけたいところで、みんなにも「そういう方向にはいかないから、逆に長期的な話でやっていくよというのは理解してね」と伝えている。

今年からスタートした新しいビジネスもけっこうあるから。「来年利回りはもっと悪いかもよ」みたいな話はしたんだよね。たぶん明らかに......DMM TVとかDMMオンラインクリニックとか。最近だとほかにもいろんな事業、ぱっとでないけどなんかある(笑)。

野村:ぱっとでないけど(笑)。確かにDMM TVはこの前の回でもおっしゃってましたけど、相当投資をされるんですもんね?

亀山:うん。その広告費とかコンテンツの支払いとか含めたら、その利益は当然減っていくわけよ。それでいうと今よりも落ちるんじゃないかな? ただ、赤字にならないよっていうぐらいはいけるんじゃない? それだと厄介だから、うちも(笑)。

野村:(笑)。そうですね。今まで赤字になったことがないですよね?

亀山:そうだね。赤字になるとつぶれちゃうからさ(笑)。

野村:(笑)。いやいや、でも赤字をだす会社ってけっこうたくさんあるじゃないですか?

亀山:そうね。それは資金調達できる会社なんじゃない? 金借りられるから赤字でもいいやみたいな話とか、投資家が出してくれたら赤字でも上場できるってのはあるけど、利益ださないと普通は生き残れないよね、会社は。最低限とんとんじゃないと無理じゃない?

野村:そうですね、その中で40年間黒字をだし続けてきたっていう。

亀山:(笑)。

野村:(笑)。そうすると純資産がたまり続けているってことなんですね?

亀山:うん。そういう感じになるかな。

「資本家であるかどうか」で格差がついてしまっている

野村:なるほど。(持株会の仕組みが)どういうものかを今うかがったんですけど、ちょっとその裏の背景をもう少し詳しくうかがいたいなと思うんですけど。

実力社会なので、どうしてもポジションごとの変化はあるじゃないですか。だから若く有能な人が上のほうにつくのはどうしてもしょうがないですけど。亀山さんの意図として、もうちょっと腰を据えて、この会社の成長に社員のみなさんが安心して貢献できるように仕組みを作ったっていうところが一番大きいんですか?

亀山:そうだね。基本的に今の世の中、今の社会では「格差がついてる」ってよく言われるんだけど。

何が格差かというと、給料格差というよりも資本家であるかどうかっていうところが大きいわけよ。だからむしろ投資をしてる人間、してない人間で格差が大きいっていうのが今の社会問題みたいな話だけど。

世の中給料も大事だけど、お給料よりも「資産運用みんな覚えましょう」みたいな。

野村:そうですよね、そっちの方向ですよね。

亀山:うん。それはある意味正しいんだけど、ある意味正しくなくて。確かにそのとおりなんだけど、じゃあ普通の人たちが世の中の投資っていわれる資産運用をしてうまくいくかっていうと、世の中でうまくいった例ばっかりあげられてるけど、うまくいってない人のほうが多い(笑)。

野村:そうです。全体的には負ける人のほうが多いんですよね?

亀山:そうそう。基本的にこの世界にはプロもいるから、素人がプロには勝てないのはあるし、一方で手数料もかかるよね、なんだかんだで。

だからプロは手数料もとっていくし、ある意味腕も上だから、多くのお金を持ってる人と少ないお金を持ってる人だと、同じ資産運用してもやっぱり多いほうがやっぱ有利だよ。だってプロも、100万動かす人と100億動かす人だったら、100億動かす人のほうがいいプロ雇うじゃない?

野村:そうですね。そういう世界ですよね。

亀山:うん。そういう世界だからどうしても自分らで本読んでやってたとしても、一歩上手の投資家たちがいるわけなんで、どうしても資産運用に関しても「情報の格差」というか、「腕の格差」みたいなもんがでてくる。資産運用は難しいよね。

ましてや世の中の株価は基本、時価の上下ってかたち。だから買った株が見込み違いで外れることもある。

野村:そうですね、ありますよね。

「資本を持っていると富が増えていく」構造は変わりにくい

亀山:その点でいうと、給料自体は今後、しょうがないと思うんだよね。AIとかもいろいろ入ってきたら、いくらかそれをうまく使う人間と使わない人間がでてくるし。ここはある意味そうなるのは流れ的にはしょうがない。資本的な部分に関してはどうしてもそうなる。

とはいえ、うちらの株価は自分たちの会社なんで、状況はわかりやすいよね。俺がちょっと沈んだ、やべえなって顔してたら「来年売ろう」みたいな(笑)。

野村:確かに(笑)。一番情報が手に入りますね。

亀山:身近な情報でもインサイド情報というか「どこどこ成長してるね」とか、「自分たちのここ伸びてるな」ぐらいはわかりやすいじゃない。身近なんで、赤字転落来年ぐらいしそうかなと思えば売っちゃえばいいっていう話はあるよね。そういう点では、買う時期も売る時期も自分たちで決めてっていう話。

俺からすると他の普通の市場とかで売り買いとかするよりは、ある意味資産形成的にはまあまあ堅い方向じゃないかなと思ってるわけよ。

野村:確かに現実問題として、資本を持ってると富が増えていくっていうのは、流れとしては不可逆ですもんね?

亀山:資産運用をみんな覚えたからといって、その構造がなかなか変わりにくいっていうのはある。

野村:そうですよね。

亀山:俺もまあ、若い時に遊びで株とかちょっとやった時もあったりしたけどね、昔よりも金額大きいほうが有利よ。というかアドバイザーがもうそこをわかっている。

野村:(笑)。

亀山:自分は素人だなと思うわけね。経営のプロと投資のプロはまた違うもんでね。素人は手出すもんじゃないなと思って、俺ももう10年ぐらい株の取引とかやってない。

どっちかはプロに任せて、自分たちが投資しきれない分はそこに預けたりとかすることはあるんですけど、うまいもんだよ、彼らは(笑)。そういうのを相手に一般は戦わなきゃいけないからさ(笑)。

野村:プロ相手になかなか勝てるところって少ないですもんね。

亀山:それはあるよね。間に入ってる証券会社や銀行の手数料もあるからさ、個人での資産運用はなんだかんだけっこう大変よ。そういう点で社員は、「一応お勧めはするけどあとは自己判断で決めて」っていう感じにしようかなっていうところかな。

野村:なるほど。

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