2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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山下悠一氏(以下、山下):お聞きしたいのは、前世の小野裕史さんだった時代に、東大を出られていて、みんなご存知のジモティーやグルーポンなど数々の会社の経営だったり、17LIVEという有名なサービスとか、あるいは最先端のベンチャーの方々のカンファレンスを十何年もやられていた。
これを見ている人はおそらく、「ここまでやりきったから、得度とか全部手放すことができるんじゃないの?」みたいに感じてしまうと思います。
前世の時に、ご本人としてはどの程度「自分は成功したぞ」とか、資本主義の中である意味極めたみたいな感覚があったのか。あるいはその中でもものすごいモヤモヤとか、自分はまだまだ足りていないみたいな感覚がどの程度だったのかを、うかがえたらなと思います。
小野龍光氏(以下:小野氏):おっしゃるとおり、ある一定の、いわゆるお金での殴り合いみたいな世界にいたからこそ。
山下:お金での殴り合い(笑)。
小野:得度したのはおそらくあると思います。お釈迦さまもさんざん女性に囲まれて、29歳まで何一つ不自由がないという経験があったから、得度というか出家したんでしょう。
一方で自分として「成功した」とか「うまくいった」という心持ちはこれっぽっちもないのは正直なところです。なぜなら、これが自分を苛ませ、少し比較すると、上はごまんといるわけですよね。
例えば、比べることすらおこがましいですが、孫正義さんでしたり、イーロン・マスクさんでしたり、いくらでもいるわけです。そんな中において自分が何かをしたなんて、とても恥ずかしくて言えない。
むしろ、最近何千億円も資産を持っている方から「死にたいんですけど」と相談が来たんです。「僕のような人間がいいんですか」と相談の相手をさせていただいたんですが、やはりキリがないのが数字の魔力です。
他人から見て「小野さんはやりきったよね」と言われるかもしれませんが、本人は1ミリもそう思わない。もう1つ桁の大きな仕事をしていたとしても、たぶんそう思えなかったと思います。なぜなら、数字は無限に広がっていくので。永遠に尽きないレースだということに気がつけなかったことが、一番苦しかったところですね。
山下:資本主義の数字の世界でどれだけ勝っていようが、それが成功や幸せにどうしても結びつかないジレンマがあるように聞こえたんですけれども。
僕の解釈ですが、お話を聞いていて、龍光さんご自身がバーンと変わったというよりも、もともと持っているものが素直な方というか、素の自分に戻ったような感じも見受けられたんですね。
そのへんを知るために、龍光さんの原型をお聞きできたらと思いますが、どのような幼少期を過ごされて、資本主義のレースにご自身を駆り立てていったのでしょうか。
小野:もともとは宇宙物理や生物の学者を目指していました。本当にピュアに、未知なるものを解明していくことに興味がありました。一方で、そういったことを目指すなら、例えばノーベル賞だとか(笑)、わかりやすく誰かに褒められるようなことをしたいというのが、大きなモチベーションであったわけですね。
今我々はテクノロジーによってこういったこと(ウェビナー)が実現できているわけです。ビジネスにおいても、最初はこういった新しいテクノロジーを使うことは純粋に楽しいですし、それによって自分の体験が変わることも楽しく、それで新しい何かが生み出せるんだったら楽しい。ビジネスに触れ、その中で「数字の魔力」の毒牙に、気がつかないうちにはまっていった。
誰かに褒められることをしたい。それができる方法は、数字で結果を出す。数字で結果を出すとドーパミンが出る。もっともっと欲しくなり、もっと数字を求める。数字はキリがないんだけれども「もっと、もっと」となって、気がつくと数字をとるために人を蹴落としたことに気がつかない自分が生まれる。ある種の薬中みたいなもので「ドーパミン中毒」だったと思うんですけれども。
そういう意味では、今はピュアに、人間の心の解明みたいなことへの好奇心があるというのは山下さんのおっしゃるとおりかもしれませんね。
山下:幼少期の龍光さんは、心の解明、未知なるものに対して純粋に好奇心があった。その中でも、ご自身のドーパミンを刺激していくような体験や出来事はあったのでしょうか?
例えば僕の例だと、資本主義のレースに乗る前の純粋な山下悠一君がいた時に、「親から自立しないといけない」と勝手に思い込んで、勉強をして、良い点数を取ると親に褒められるとか。そこから受験勉強をして、良い大学に入って、良い会社に入ると、多くの人を幸せにできるかもしれないとか。
純粋な思いを持って、社会の評価軸の中に組み込まれていった感じがあったんですが、そのへんは龍光さんはどう考えていますか?
小野:幼少期にあまりピンとくる思い出はないんですが、大学生の頃、学者を目指していた頃に、たまたま研究室にあったパソコンを使うようになって、そこでインターネットを覚え始めたんです。
そんな中で、飲み会の時とかに仲良くなった友だちと今後はインターネットで連絡をとろうということになりました。当時、プログラミングを覚えたてで、今言うと恥ずかしいですが「自分が掲示板を作れるよ」と話したら、たいそう驚かれて(笑)。
「お前はIT大臣の役割になれ」みたいに言ってもらい、学びたての技術が誰かに喜んでもらえるんだという純粋な思いから、学者の道からインターネットのほうに進んでいったんです。
根底には、誰かの役に立つ、もしくは褒められたいという思いが、幼少期も含めて変わらずあったなと思います。それが数字に置き換わってしまったのが、自分の場合はうまく受け止められなかった部分だったのかなと思います。
山下:今、資本主義を活用して社会をより良くしようとしている方が世の中にたくさんいるじゃないですか。得度した立場から見た時に、そういう方々をどう見ていらっしゃいますか。全員得度したほうがいいのではないかとか(笑)。どうしたら資本主義システムがより良くなるのかとか、そっちに関してはどのように感じていらっしゃいますか。
小野:まず誤解なきようにお伝えさせていただくと、資本主義が悪いとは考えていませんし、お金が悪いわけでもありません。自分自身も76万円なり40万円なり、お金があって生活できてますし、それがあって飛行機でインドにも行けていますし。
1つ気をつけなければいけないのは、特にこの数十年の話ですが、お金自身がお金を生み続け、それが膨張し続けている……。端的に言うと、日本という国は人口が減っているにもかかわらず借金が増えていますよね。これはどう考えたっておかしな話です。
悪く言うと「プリンターで刷れば、いくらでもお金が生まれる」世界になってしまっているんですよね。鉛の球がゴロゴロ坂道を転がって落ちてきて、人間ごときではもう止められないぐらいまで、欲望の塊が膨らんできている。
そういう時代になっていることが危ないと思っています。ソフトランディングすればいいんですが、ハードランディングする可能性もあるぐらいに危うい。フランスでも今、暴動が起き始めていますけれども、自分で何者でもないと言いながらも、それに対して警鐘は鳴らすべきだと考えています。
得度する必要なんて1ミリもないです。「足るを知る」という言葉がありますが、「ある中で暮らしていく」でもいいのではないか。特に日本はそうですが、成長する必要はそもそもないのではないか。もし成長をしているとすると、どこかで搾取をしている可能性があるのではないか、という気持ちを持つことが重要だと思います。
もっと具体的に言うと、モノをバンバン買っていた自分が「別に新しいものなんか無理に買わなくたっていいよな。買えば買うほど自分は、ゴミを撒き散らしているよな」とか。もしくはお金も「もっとないと」と思った時に「いや、あるぶんだけで十分暮らせるじゃないか」「みんなが『もっと、もっと』と言ったら、地球を食いつぶしてしまうじゃないか」と。
今この瞬間も、我々日本人は物を安く買えている、食べられているわけですが、インドの下層の人たちから搾取している可能性はあるわけですよね。そういったことを少しでも思い起こす人が増えて、世の中の全員が「もっと成長しないといけない」と考える状況にブレーキが生まれるといいなと思っています。
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