2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
プロ投資家と経済リサーチャーは2022年をどう振り返る?(全1記事)
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赤池実咲氏(以下、赤池):2022年はいろいろなニュースがありましたが、生活に密着したお金のニュースといえば、日用品の値段が上がったことが挙げられると思います。実際に番組で街の方々にアンケートをとったところ、このような結果となりました。
「余裕があった」と回答した方が19人、「厳しかった」と回答した方が31人。「余裕があった」と回答した方の中には、安いスーパーを巡ったりとか、いろいろな努力をされた上で家計に余裕を生んだということでした。
実際に、ケーキの値段が1切れ1,000円になったことがよく話題になっているんですが、藤野さんは周りで「物の値段が上がったな」と感じられますか?
藤野英人氏(以下、藤野):こないだ驚いたんですよ。場所が極端なんですが、京都の一流ホテルに泊まったんです。ずっと仕事をしていて、お腹が空いたから何か食べようと思ってメニュー表を見たら、マグロ丼があったんです。
マグロ丼の値段が書いていなかったので(フロントに電話で)値段を聞いたら、受話器を落としちゃったんですよ(笑)。
(一同笑)
赤池:衝撃の。
藤野:いくらだったと思いますか?
赤池:マグロ丼ですよね。旅行で2,000円~3,000円とかだと「良いものだ」と思っちゃいます。
藤野:ですよね。三宅さんはどのくらいだったと思いますか?
三宅一弘氏(以下、三宅):3,000円とか4,000円。
藤野:ですよね。答えは2万5,000円。
(一同笑)
藤野:やりすぎじゃないですか?
赤池:2万5,000円って、サイズ的にはどのくらいなんですか?
藤野:いや、わからない。ひょっとしたらすごいのがくるのかもしれない。
赤池:びっくりするくらいの大きさ、みたいな(笑)。
藤野:びっくり、みたいなものがくるのかもしれないんだけれど、受話器を落としちゃった。それで「すみません。けっこうです」と電話を切って、近くの王将に行きました。
(一同笑)
藤野:でもね、これは極端な例かもしれないんですが、やはりインフレの足音は至るところで感じられますよね。
――では、なぜ物価の上昇が起きたのか? 三宅さんによると、世界で起きたさまざまな経済の動きが影響していると言います。まずは「脱コロナ」から解説。
三宅:世界的に見ると、コロナが落ち着いて経済が再開したと思います。特にその影響が出たのがアメリカやヨーロッパなんですが、(消費者物価指数の前年比が)アメリカのだいたい8パーセント前後増加。ヨーロッパだと10パーセントを上回るような貴重な上昇ということで、40年ぶりの高騰になっています。
――2つ目は「エネルギー危機」。
三宅:原油価格を始めとしたエネルギー価格の高騰は、いろいろな要因が重なっています。例えばロシアとウクライナの戦争や、対ロシア経済制裁も影響しているのではないかなと思います。
赤池:藤野さんは海外に行かれていましたよね。8パーセントも上がっていると感じましたか?
藤野:至るところで値段が上がっているなぁと思っていて。ファストフードであったり、地下鉄であったり、日本人からするとだいたい3割から2倍くらい高い感じがしましたね。
三宅:日本に関しては特に円安も影響しています。円安になるとどうしても輸入物価が上がりますから、これらが総合的になって、日本の物価は前年比でだいたい3パーセントくらい(プラス)ということです。日本独自で見ても、この3パーセントの上昇はかなり高くなっているだろうと思いますね。
藤野:日本は長い間デフレに苦しんでいたんです。でも、日本を除く国は長い間インフレだったんですよね。そういう意味で見ると、日本はインフレに慣れていないわけです。
インフレとは何かというと、物の値段が上がっていくので、(購入を)待つと値段が上がるわけですよ。そうすると、欲しいものがあったら今買ったほうが安いわけです。それが消費を促す、という面もあるんです。
日本はずっとデフレの国だったから、待てば安くなる可能性があるので、使わないでお金を持っておくことがとても有利だった。結果的に、消費が進まないという悪循環を生んでいたんですね。
今注目していることとして、日本は少しインフレになってきました。実際に物価高が3パーセントくらいになってきていることに対して、今までのデフレ的なやり方で対応しようとしているんです。要するに、物を買わない。
「値段が上がっているから物を買わない」というやり方をしているんだけれども、すごく日本人らしいのが、我慢と根性ですべてに対応するところがあるわけですよ。
実際に「ステルス値上げ」というのがあって。例えばポテトチップス1袋の値段は変えないんだけれども、中の容量を減らしているというようなことが、今は増えてきているんです。
日本人は(同じ値段で)より少ないポテトチップスを食べることで満足する、ということで適応しているんじゃないかなと思うんですよ。
藤野:実は江戸時代ってずっとデフレの社会だったんですね。経済的には苦しい状態が続いていた時に、日本人はどうやって対応したと思いますか?
赤池:江戸時代?
藤野:江戸時代の400年間。
赤池:物を買わない?
藤野:買わない、食べない。そうすると、人間の体はどうなっていきますか?
三宅:背が小さくなる。
藤野:江戸時代の400年間で、日本人はどんどん背が小さくなっていったんですよ。だから明治の人は背が小さくて、渋沢栄一さんも150数センチだったりと、どんどん背が小さくなっていったんですよね。注目すべき最近のデータで言うと、最近の日本人の小学生は背が縮んでいるのを知っていますか?
赤池:そうなんですか。
藤野:はい、背が縮んでいるんですよ。江戸時代みたいに、デフレ社会に「食べないこと」で対応しているので、これがどう転換していくのかなと。
僕らがより早く消費して、早く行動するようになっていくのか。または江戸時代みたいに食べない・飲まないという感じで対応していくのかが、これから注目かなと思っていますよね。みなさんはどっちのタイプですか?
赤池:私は完全に我慢しないですね(笑)。
(一同笑)
――さらに、2022年に急激に進んだ円安について、その背景をうかがいました。
赤池:特に今は円安に関心の高い方も多いと思うんですが、このあたりの背景を教えていただけますか。
三宅:最大の理由は、日本とアメリカやヨーロッパの金利差なんです。アメリカとかヨーロッパはインフレですから、2022年の初めくらいからどんどん金融引き締め(利上げ)を行って、それによって長期金利もどんどん上がった。
一方で日本の日銀は長期のデフレがありましたから、完全なデフレ脱却ということで、物価が上がっても辛抱して金融緩和を続けることで、日本の金利はほとんどゼロ。一方で、ヨーロッパ・アメリカの金利はどんどん上がる。この日米の金利差の拡大が円安の一因になっているんですね。
赤池:根本的なところを聞いて申し訳ないんですが、「金利差が広がると円安になる」というふうにおっしゃっていましたが、どうしてなのでしょうか。
三宅:例えば、日本の債券に投資しても金利がほとんどゼロ。一方で、今のアメリカの長期金利だと4パーセントくらい、ヨーロッパの国々の中ではもう少し高いこともあります。
特にアメリカは流動性があって、国家の信認も高くて、4パーセントの金利がある。そういった国にグローバルのお金が流れやすい。
藤野:金利4パーセントってすごいことで、1年間100ドルを預けたら4ドルもらえるわけですよ。すごいじゃないですか。金利が長期間なかった日本からすると、何もしなくても4ドル入ってくるわけですから、ある面で見ると羨ましいですよね。
そこにお金が吸い寄せられていくので、円安・ドル高の背景はそういうところにあるのかなと思います。
赤池:確かに。自分の預金だけ考えても、4パーセントか0パーセントかだったら、4パーセントのほうに預けたいですもんね。
藤野:ですよね。
赤池:それが世界のお金で起きているのが、円安の背景の1つということですね。
藤野:そうですね。
三宅:ちょっと言い忘れたんですが、エネルギーの価格が高くなっているじゃないですか。日本は原油を輸入していますから、普通の日本経済だと貿易収支が黒字が当たり前だったんですが、今は原油の輸入が非常に大きくなって、実は貿易サービス収支が赤字になっているんですよ。これも円安の一因になっていると思いますね。
――2022年は物価が上昇した年になりましたが、私たちの収入・賃金はこれから上がっていくのでしょうか?
赤池:続いて、物価を表す指標としては有名なところですが「ビッグマック指数」というものがありますよね。
日本だと「390円」と書いてあるんですが、今はもう少し値上がりして410円。一番高いのがスイスでビッグマックを食べようと思ったら925円。日本の倍以上ですね。2つ食べられるんです。
(一同笑)
赤池:(高い順から見ていくと)次がノルウェーの864円、ウルグアイの839円、アメリカでも710円。圧倒的にビッグマックは日本が安いんですが、(日本以外の国では)ファストフードそのものが高級品なんですか?
藤野:いや、そんなことはないですね。平均賃金の格差と非常に関係性があります。
赤池:ちょうど平均賃金のお話が出ましたが、日本だと平均で約583万円。先ほど一番ビッグマックが高かったスイスとは、水準で言ったら倍くらい違ってくるんですよね。
三宅:そもそもなんですが、実は日本の平均賃金が500云十万円というのは、おそらく過去30年くらいほとんど横ばいなんです。
アメリカとかヨーロッパは着実に賃金が上がる、そしてそれに見合って物価も上がる経済なんですが、日本は賃金がほとんど横ばいでゼロ成長で、ほぼ表裏の関係で物価も伸びない経済だったんですよ。
アメリカやヨーロッパといった世界の普通の経済のように、ちゃんと賃金も上がり、それにつれて物価も上がる経済に移行できるかどうか、今は非常に重要な局面にあります。
日銀の黒田(東彦)さん、あるいは日銀の政策に対しても今は非常に批判が強いんですが、日銀の黒田さんの頭の中では「過去20数年間のデフレマインドを完全払拭できる今がチャンスだ」と思っている。
だから少々物価が上がってきても、非常に辛抱して緩和政策を続けているのは、そのあたりに理由があるんじゃないかなと思いますね。
赤池:やはり賃金が上がったほうが嬉しいなと思うんですけどね、三宅さん(笑)。
三宅:そうですね。賃金が上がれば、2パーセントくらいの物価の上昇も容認できる世界だと思うんですが、実は高齢の方や年金受給者の方だと「物価が上がらないデフレ社会のほうが良い」と。
一方で、20代とか30代、40代のような働き世代の方々は、「ちゃんと賃金も上がって、物価もそれに見合うくらい上がるならば良い」というふうに、けっこう世代間のギャップもありますね。
赤池:年金受給者だと(受け取る年金の額は)上がっていかないから、どうしてもコストのほうを抑えたいということですよね。
三宅:そうなんですよね。
赤池:インフレで物価も上がって賃金も上昇していると、何か良い循環が生まれているような気がするんですけれども。
三宅:基本はそうなんですが、過去1年や1年半は、賃金が上がりすぎる、期待物価が上がる。それが結局、さらなる賃上げや値上げにつながるという悪循環のリスクがあるので、できるだけ(賃上げを)抑えたいというのが現局面だと思います。
CPI(消費者物価指数)で見ると、今のアメリカの物価はだいたい8パーセントくらいの上昇ですから、これはやはり上がりすぎです。賃金の上昇率も今はだいたい5パーセントくらいの上昇ですから、現在は上がりすぎな状況じゃないかなと思いますね。
赤池:給料が上がって物価が上がると、すごく良いことばかりなんだなと思っていたんですが、実はそうでもないんだなということが知れました。ありがとうございました。
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