2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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黒岩功氏(以下、黒岩):、僕が福祉や障害者雇用をやるようになったもう1つの理由は、映像にも「引きこもり」というふうに出ていましたが、そもそも僕は体がめちゃくちゃ弱かったんですよ。
おそらく今の時代だったら、発達障害、知的障害もあるでしょうね。体が弱く生まれて、小児喘息を持っていたので肺活量がなかったんですね。なので、幼稚園でコミュニケーションをつける時期がなかったんです。
幼稚園にほぼ行ってなかった時期があったので、その時にコミュニケーション能力がつかなかったんです。義務教育になって「行かなければならない」というふうになりましたが、コミュニケーション能力がないので引きこもりました。
たまたま学校に行っても、学力がついてないから追いついていかないんです。その時点で、コミュニケーション能力ない、学力ない、体力ないっていう3つが揃ったんですね。そこで(他人との)比較が始まって、コンプレックスが生まれて、もう人と同じようにはできなかったですね。
ぶっちゃけた話をすると、小学校2年生の時にうちの母親とおばあちゃんが校長先生に呼ばれて、こう言われたんですよね。「もしよかったら……もしよかったらですよ。息子さん、もう1回同じ学年をやりませんか?」。
僕は3月生まれの早生まれなので、学校が「配慮しますよ」って言ってくれたんです。もう1つは「仲良し学級に入れましょう」っていう、この2つしか選択肢がなかったんです。母親とおばあちゃんはそう言われたみたいですね。
黒岩:その時にうちのおふくろが先生に言った言葉は、「先生。息子は頭が悪いだけなんです」。もう頭が悪いのは認めてしまっていて(笑)。だけど、本当にうちのおふくろが言ってる意味がわかりました。
「頭が悪いかもしれませんけど、優しいんですよ。真面目なんです。一生懸命なんです。夢中になるんです。1つのことに対して執着心がすごく強いんです。だから、頭が悪いだけなんですよ」って、うちの母親は言ったと思うんですよね。僕の可能性を信じて。
その可能性を信じたおかげで、小学校の時のキャベツの千切りが僕に自信をつけさせてくれて、そこから僕は料理人になろうと思って料理にめちゃくちゃハマったんですよ。
フランス料理はそもそも食べたことがなかったから興味があったんです。行ったことがないから「見えない世界だな」と、世界の裏側にも興味がありました。そういう興味だけで、僕はそっちの世界に行きました。
ちなみに僕は一応高校を卒業してますが、これまでの英語の最高得点は7点です(笑)。ですが今はフランスと日本を行き来しながら、多少英語やフランス語とかをしゃべりながら、向こうの外国人と一緒に仕事をしたりもしています。
(英語のテストの点数が)7点の子。それが僕にとっては事実なんです。そして今、うちのメンバーたちを僕らはキャストと言ってますが、キャストを見ると昔の自分とすごくダブるんですよ。おそらく自分の信念って言うんですかね。思いが強くなって、やり抜こうと思って作った結果が、ル・クログループの今のかたちになっています。
黒岩:そんな中で「働きやすい環境ってどういうことなんだろうかな?」と、ずっと考えたことがあります。要は、障害があるメンバーだけが気持ちよく働くのではなく、周りで働くメンバーたちも働きやすい環境にしていかないといけないじゃないですか。
僕自身は「社会課題を解決できるような会社になっていけばいいな」と思ってたんですが、社会課題の解決の前に、やっぱり従業員。今日もさっちゃんが来てますが、さっちゃんはうちの放課後デイル・クッカーの責任者です。
うちの福祉の中でもめちゃくちゃ自分の思いをはっきりと突き進んでいて、今は子どもの登録が150名ぐらいですね。
瀧幸子氏(以下、瀧):そうですね。
黒岩:メンバーがたくさんいるんですが、こういうメンバーたちがちゃんと働きやすい環境を作らないといけないなということで、僕らもどんどん変わってきています。
その中でうちで一番おもしろいやり方を1個言うと「プライベートの問題ごとを会社に持ってきなさい」って言ってるんです。それが一番早いなと思って。
誕生日にはみんなにプレゼントをあげていて、「家族と一緒に(レストランに)食べに来ていいよ」というプレゼントをあげたり、社員旅行をやったりと、それなりにいろんな福利厚生をやってます。コロナで社員旅行は止まりましたけど、そういう福利厚生をやってるんです。
黒岩:でも、メンバーたちが本当に「ここで働きたい」と思うのは、困った時に会社がどういうふうに対応してくれるのか、寄り添ってくれるのかということがあるんじゃないか。
僕らキャストのメンバーたちは、常にお困りごとばっかりです。そこに僕らは寄り添うんです。キャストのメンバーには親御さんがいますが、親御さんのお困りごともたくさんありますので、そこにも寄り添っています。働いてるメンバーに寄り添うためにも、僕は「プライベートを持ち込んでいいよ。みんなで考えよう」と言ってます。
会社で何ができるのか、またそれを考えようよ、ということを今はやっています。時々いろんなことが起きているからね。
瀧:そうですね。
黒岩:それをちょっと話していただいていいですか。
瀧:「できないこと」がわかりやすい子たちと一緒に仕事していると、「できること」もわかりやすくなってきます。それって、私たちも一緒になってくるんですよね。
瀧:ムッシュは……(黒岩さんを)ムッシュってみんな呼んでます。メンバー同士も名前で呼んでいて、私はさっちゃんって呼ばれてます。「ありがとう」が飛び交ってるような場所で「困りごとがあったら持ってこい」って言われたら、やりやすいんですよ。
私は子どもが3人いて、学校に行けない子もいてますが、職場に連れていけるんです。うちの子は小学生の時にけっこう連れて行ってたんですが、今はもう中学生になりました。
今度は産休に入って復帰した子が「保育園に預けるまで場所がないんだ」と言ったら、ムッシュが「連れておいでよ」って言うわけです。
ある日、ちっちゃい子もおっきな子も、スタッフの子たちもわーってしているところに、ムッシュが「おはよう」って来て。「えっと。誰が誰の子かな?」みたいなことが起こるのがうちの職場です。
レストランなので、どんな方が来ても「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」と言います。毎朝キャストもスタッフも全員ごちゃごちゃになって、感謝の朝礼というものをするんですが、「今日は目覚まし時計に感謝です」と言うような、世間からは空気が読めないって思われてしまう子たちが、私たちには朝一からものすごく元気をくれています。
踊り出す子もいますし、そんな状況でお仕事をしているので「大変でしょう?」ってすごく言われるんですが、大変をおもしろがれる仲間たちと一緒にやれているのが、すごくおもしろいし楽しいなと思います。
黒岩:そうですね。
黒岩:「おもしろく感じられる」というのは、みんなが違いを理解してるっていうんですかね。「同じ人はいない」っていうのをみんな知ってるんですよ。
今は1つの建物に三十数名がいるので、多様なキャストのメンバーがいます。正直な話、そういうメンバーたちと一緒に仕事をやる時には、そういう人の違いを理解しながら仕事をしないとなかなかできなくて。
これもみなさんからよく質問されるんですが、「フランス料理と障害がある人たちって相性がいいんですか?」って言うんですよ。僕はめちゃくちゃ相性がいいと思います。もう、最高にいいですね。
なぜかというと、みなさんはフランス料理をめちゃくちゃ難しいと思ってると思います。フランス料理は構築的な料理で、すべてを重ねていきますから本当に難しいです。この構築されたものを1人でできるように職人を育てるのが、僕らの時代だったんです。
でも、実はフランス料理に限らず料理全体でそうなんですが、8割ぐらいは事前準備ですべてが終わるんです。残り2割でその時に(料理を)作るんですが、この構築した料理を横に倒すと、多様な仕事が生まれるんですね。
そこにメンバーたちの特異性がどんどん入っているんですよ。だから最終的にはいいものができちゃうんです。だって、僕らプロが考えてる料理なので。それが今、うちのレストランで起きてることです。
黒岩:僕がやっているリゾートはめちゃくちゃ広くて、仕事もたくさんあります。今現在レストランでやっていることとしては、既存の仕事や作業にメンバーたちが入っていくかたちをとっています。
ここでチャレンジしてることって、いろんな人たちが来て、そこから仕事を作り出すことだと思うんです。もともとある仕事じゃなくって、その子のために仕事を作り出すことができるのが、このリゾートのおもしろさなんです。
リゾートやレストランなど、お客さまが対価を払って、楽しんでおもてなしを受ける場所に多様性を認める土台がある。お客さまは、知らず知らずにそこを利用していいと思うんです。でも、知らずに利用していった結果、あるきっかけで「多様な人が働いている場所だ」って気づいてくれたらいいなと思うんです。
時間があれなので、最後に1個だけ。「お客さまは神さま」の話をしましたが、僕がフランスとヨーロッパとを行き来しながら感じてることして、おそらくすごくバイアスがあります。
もちろん、ここにいるみなさまはいろんな多様性を認める方で、(強いバイアスがある方は)いないと思いますが、世の中にはまだめちゃくちゃ多いんですよね。
じゃあ、そういう人たちが普通にレストランやリゾートに行って、障害者の人たちが働いてた時に、そのバイアスを変えることはどうやったらいいのかな? ってずっと考えてたんですね。でも、これはおそらく「モード」しかないと思ってるんですよ。
黒岩:一昔前までスターバックスの蓋はプラスチックで、ストローもプラスチックです。でもパリなど海外へ行くとストローはほぼ紙になって、蓋さえも全部紙になってます。たぶん、日本ももうじき蓋も全部紙になっていくんだと思います。
それはどういうことかというと、グローバルスタンダードとして1つのモードがあるわけです。日本には(世界的な流れが)遅れて入ってくるんですが、いずれは来るんじゃないかなと思っています。
例えば、パリのシャンゼリゼ。世界ナンバーワンのあの通りにはユニバーサルカフェが存在してるし、パリ市内にはたくさんそういうお店が普通にあります。オランダは広さ的に九州と同じ国ですが、ここにはユニバーサルカフェが54店舗存在してます。(多様な人がいることが)普通になってるんです。
まずは大阪で自分たちがモデルとしてやっていって、「できるんだ」ということを証明する。これが世の中にあっちこっち派生していったら、例えばグランフロント大阪の1階のめちゃくちゃすごい一等地で、発達障害の子たちが一生懸命かっこよくサービスをする時代が来るのかなと僕は思っています。
そのために僕らは、スタッフと一緒になって、彼らができることを証明しながらやっていこうかなと思ってます。もしよければ、うちのお店に来ていただけたら「あぁ、なるほどな」と、よくわかりやすいと思います。遠い方はなかなか来れませんが、お近くに来たらぜひ寄っていってください。
ということで、私からのお話は以上です。ご清聴ありがとうございました。
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