2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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田口一成氏(以下、田口):いろいろ仕組みを考えていて思うことの1つが、さっきの石山さんの仕組みの話です。僕もすごく個人の精神的修行というか、個人の意識の成長はすごく大切だと、痛感していて。最終的にはそこしかないなと思っているんです。けど一方で、そのために何もいらないかというと、やっぱり何かしらの仕組みが必要だと思って、いろいろ研究しながらボーダレスの仕組みを考えています。
「人間のどういう部分を引き出す仕組みか」がすごく大切だと思っています。人の弱いところを引き出す仕組みもあれば、その人の強さを引き出す仕組みもあると思うので。みんなを見ていて、人間の良し悪しとか強い弱いという括り方は、あんまりできないなと思う。どの部分を引き出せるんだろうか、というところがやっぱり大切。
ある仕組みをやると、すごく弱いところが引き出せて、大きな依存意識が生まれたりすることも見てきたし。でもそうじゃないと、ただの厳しい疎遠な関係になるとか、それは人間のおもしろさだなと思っています。
仕組みはある意味、どういう環境を提示するかとセットです。やっぱり人は対話で成長していくのが1つ。もう1つは体験というか、自分でやってみたこと、経験したことの中でしか受け取れない生き物なんだなと、どこかで思う部分があります。全部そうではないんだろうけど、やっぱり一方で思うんですよね。
だからFacebookでいろいろつながったとしても、本当に見聞きしている範囲はすごく狭くなる。僕もダム問題とかやっていましたけど、普通に現場を見に行ったら「これを平気でイエスと言えるわけないよね」と思う。だけど現場を知らない対話の中で、議論だけがワサワサ言っている。
体験性というか、実物が存在しない中での議論になっているから、なかなか成長がないというか、逆に難しさが出るのかなと思ったりもしました。
林篤志氏(以下、林):おもしろいですよね、身体性を伴ったものなのかということと、あとやっぱり適正な範囲みたいなものがあるのではないかなと。よくロビン・ダンバーさんの「ダンバー数」という数字が用いられて……人間の身体的な特徴ですけど、大脳新皮質の容量的には、そもそも仲間として数百人しか認知できない、みたいな話もあったりします。
アンジュさんが冒頭でおっしゃったように、それをたぶん宗教が強化してきた。だが今それがない中、どうなっていくかという話だと思います。4人がいいとか、四十何人だったら合議制がとれるとかいう、たぶん多様なレイヤーで成立していると思うんです。
アンジュさんはプロフィールでご紹介いただいた、Ciftもやっているしいろんなチームで動いている一方で、もう住む人がいなくなってしまうのではないかという大分の、入会地がある田舎で活動していたりとか。そこにいる人々の価値観とかがぜんぜん違うと思うんですけど。
複数のコミュニティを行ったり来たりしながら、こういったものごとを意思決定していくことのおもしろさというか、複数に所属していくことの可能性みたいなものはどうですか?
石山アンジュ氏(以下、石山):いわゆる会社も国家もある種コミュニティだと思うんですけど。これまで人間は、基本的にはコミュニティは長く繁栄し、しかも大きくしていくことを目標にしてきたわけですよね。これを1回手放すことは1つ大事だと思っています。
例えばある時はコミュニティが大きくなったり、ある時は小さくなることもあるし、コミュニティを廃止する時もあれば、期限を決めることもできるかもしれない。そういった、コミュニティのそもそもの存在意義に柔軟性を持つこと。この範囲の柔軟性を持つことを大事にすることが、実はこれからのコミュニティのあり方として必要なのではないかなと私は思っています。
もう1つが、今コミュニティというと、共通のパーパスとか思想、ビジョンが大事になると思うんですけど。ただ、人間を過信しすぎてはダメだと思っていて。このビジョンは行き過ぎると、正義とかイデオロギーの話になってくるわけですよね。これを信じすぎるがゆえ、ほかのコミュニティと対立をしてしまう。
人間はイデオロギーとか正義を持ちやすい生き物なんだけれども、自分がそれを過信しすぎないことを心に留めながら、ビジョンやパーパスをもとに人とのつながりや新しいことを一緒に作っていけるかが、思想のあり方として大事なのではないかなと思います。
林:今の話から受け取ると、目的がしっかりしているものがあれば、「いや俺たち楽しくて集まってるだけなんだよね」みたいな、ゆるいコミュニティもあっていいよね、と。
しかも、生まれながらにしてそこに属している、みたいなコミュニティもあるわけじゃないですか。「〇〇村に生まれてしまった」みたいなところもあったりするわけで。けっこうそこは多様なのではないかなと思っています。
めちゃくちゃシステム化してしまって、コミュニティがある種どんどん失われていって、「一旦システムに頼ろう」みたいになったのが、例えば自治体なんかもそうですよね。「自ら治める」のが自治なのに、「税金納めたらなんかやってくれるらしい」というように、その自ら治める自治をアウトソースする先が急にできて。そこを、システムからの脱却を促しているのが「自分ごと化会議」だと思うんです。
その上で、システムから距離をとって、自分たちで多様なコミュニティを作っていく時に、冒頭で出ましたし、このWEでも模索していこうとしている形態が、DAOですね。DAOとは、ご存知でない方もいるかもしれないので補足すると、「Decentralized Autonomous Organization」。
日本語にすると「自律分散型組織」って、結局何やねんという感じですけど(笑)。詳しくはいろいろ調べていただいて、このWEの中でも議論していければなと思っています。
DAO的な組織なんてこれまでいくらでもあったと思うんです。ブロックチェーン(多数の参加者に同一のデータを分散保持させる仕組み)が生まれて、イーサリアム(分散型のアプリケーションを動かすためのプラットフォーム)をベースにしたスマートコントラクト(契約履行を自動化すること)のようなものが生まれたり。
人間はそういうDAOというか、意思決定プロセスとか再配分の仕組みを備えた組織のようなもの、コミュニティのようなものをけっこう容易に量産できる。そんな兆しが今あって、みんないろんなところでDAO、DAOと言っているわけです。
その「DAO、DAO」という意識が僕たちが今目指している方向性に対して、まさに救世主になるのか。「いやいや、DAO、DAOした結果、ヤバくなるのではないか」とか「気をつけないといけないのではないの」みたいなところ。
WEがどういうDAOであるべきなのか、もしくはDAOという形態を考え直すべきなのか、みたいなところも最後に話したいですけども。
林:まずは、危惧を言ってくださったアンジュさんから、DAOの可能性についてお願いします。
石山:冒頭でご紹介くださったように、篤志さんとはシェアとかコモンズですごく似た思想を持っていると私は思っているんです。だからこそ、コモンズの悲劇を乗り越えられていない人類史に対して、私はどうすればいいんだろうとずっと考えています。
自律分散的なDAOという組織はある種コモンズ的なのではないかなと思う。その一方で、今日話してきたような、人間の性(さが)として「人より多く」とか、何かを乱獲したり奪ってしまうみたいなことが起こり得るかもしれないよね、と。
そこに対して何を軸として持つのかは、システムではないところで必要かもしれない。それが今日の私のワードで言うと「意識の修行」みたいな話なんだけど、私自身もそこはまだすごくぼやっとしていて。じゃあ対話だけで本当にいいのかもわからないし。なので、コモンズの悲劇を乗り越えられるのかが1つ、みなさんと話したいことですね。
「地球の救世主か、破壊者か」というのは冒頭お伝えしたとおりです。自律分散型になるとそういう地球規模のアジェンダはやっぱり、誰がオーナーシップを持つのかが、その「DAO、DAO」した世界の先に成り立つのかは、ものすごく思いますね。
林:そうなんですよね、それはすごくわかるな。Discordでもコメントをくださっているんですけど、みんながDAOで協議や対話をして、意識の修行をして、いろんなことを決定してものごとを進めていくのは、すごく時代が進んだように見えるんだけど。一歩離れて見ると、どんどんタコツボ化して、地球が見えないとか、周りの人たちのことが見えないみたいな。
「俺たちはこの島で幸せに暮らしてるよね」と言って、この海にほかにどんな島があるのか知らないとかね。ましてや島にたどり着けず溺れている人がいることも知らないみたいな、そんな世界があり得るのではないかという懸念はよくわかります。
石山:ワクチンとかコロナの話で「これが真実ですよ、あなたは騙されないでください」と、コミュニティ同士でお互いが石を投げ合っているような感じが、日々すごく心が痛くて。でもどんどんそうなっている気がするし、DAO的に思想としてお互いが共感し合うのが濃くなればなるほど、このコミュニティ同士の石の投げ合いが、もっと過激化してしまう危惧は感じる。
林:だから、いろんなかたちで人々が集まって対話する場ができていく。要は目的を持っている人たちだけが集まっているとか、仲良しこよし同士だけでわかっているとか、初めから一定の前提がある人たちだけで集まっているということではなくて。例えば「自分ごと化会議」なんかはワクチン反対の人もいるかもしれないし、賛成の人もいるかもしれないけど、無作為に集まってきているわけですね。
そういう「自分ごと化会議」の中での対立みたいな、意見の大きなギャップに直面した時に、そこがどう次のステップに向かっているんだろう。DAOと対比して、ぜんぜん違う世界観だなと思っていて、田中さんから現場の様子を聞きたいなと思います。
田中俊氏(以下、田中):意見が対立することはけっこうあるんですけど、議論の場作りで気をつけているのは、お互いの「べき論」を戦い合わせるのではなくて、まずは自分はどうありたいのかを話してもらって、どんな人たちがいるかを知るところから始めよう、ということです。意見がぶつかる時にも、お互い妥結できるところはきっとあるはずなので。
例えばある地域の話をしている時に、そこの地域を良くするという思いは、たぶん共有しているので。そこに1回立ち返った上で、対立していることに対して、AとBではなくてほかのやり方がないかな、という話はすることはあります。でも対立することもあるし、そこできちんと議論を戦わせることも、ものによってはやっぱり必要かなとも思ったりはします。
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