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日本文化 × Web3の可能性 どう伝統を継承するか(全3記事)

Web3を使うべきは「コンテンツの本質」の部分ではない 日本の伝統文化を通して考える、Web3活用の可能性

新型コロナウイルスによって国際観光がストップし、2019年には4.8兆円あった市場が消滅したことで、インバウンド業界は遭遇したことのない嵐の中にいます。今回のインバウンドサミットのテーマは「日本の底力」と題し、観光の枠に囚われない日本が持つ底力、可能性を多様なメンバーによって議論しました。本記事では「日本文化 × Web3の可能性 どう伝統を継承するか」のセッションをお届けします。日本の伝統文化とWeb3をどのように融合させていくのが良いのか、その可能性について語られました。

日本文化×Web3で解決できる課題とは

岩本:あと15分くらいあるんですが、課題についてもだいぶわかりやすく、どこに対して注力をされようとしているか、どういうことを考えられているのかが可視化されていいなと思いました。

今回はビジネスカンファレンスという都合上、見ている方々がビジネスマンの方々です。それこそ事業をされてる方、起業家、実業家のみなさんに、この文化に対してどうやって関わっていただくか。価値あるものを伝えたいと思っているにも関わらず、関わり方がわからないという方が、私の周りにもいっぱいいます。

そこに対するアクションをそれぞれ、能楽と香道というかたちで(お伺いしたいです)。それぞれWeb3的な考えとかけ合わせた時に、短期のアクションとして何ができるか。

それがもし明確になっているならば、じゃあこういう方々が参加したらいいんじゃないかとか。それこそ、視聴者の方々でそのスキルを持ってる方々がいて、「一緒にプロジェクトを立ち上げようよ」という動きがあったら、この1つのセッションを通じて、この時代に合ったソリューションが提供できるかなと思いまして。

西村さん、今声出せますか?

西村:はい、大丈夫です。

岩本:今の宝生さんと蜂谷さんのお話を聞いて、例えばWeb3なのかNFTなのかDAOなのか、まあメタバースもありますが。何とかけ合わせたらそれぞれの課題が解決すると思いますか?

理想の「宗家」を良い意味で裏切れればいい

西村:課題の解決になるかはわからないんですけれども、1つその前におうかがいしたいなと思ったんですが。Web3の専門の立場から見て、やはり今の文化の担い手を背負っていらっしゃる方々って......、例えば一般人同士が道で会って、急にお話ができるかっていうと、まあ無理だと思うんですよ。普通の感覚でいうと。

ただWeb3って、イーサリアムを作ったすごい人でも、Twitterですぐ絡めるわけなんですよね。なんかそのあたりの感覚がものすごく違うんです。

今までクローズドとされていたことが、必ずしもすべてオープンになるものでもないとも思うんですけれども。そのWeb3の感覚からすると、どの程度まで一般化して、みんなと近づいてオープンにしていいのかどうか。なんかそこが難しいし、わからないなと思うところはございました。

それによって、利用されるツールも、あるいは感覚も違うんじゃないかなと少し思っております。

岩本:いかがですか? 宝生さん、蜂谷さん。

宝生:そうですね。ブランディングに関しては蜂谷さんのほうがお考えになられるので。私なんかわりとざっくばらんに、自分のことを話しちゃうんですけども。

よく言われるのは、例えば私は「宗家」という立場に、良い意味でも期待をしているんです。要は、みなさんの理想の「宗家」があるんですよね。そこを良い意味で裏切れればいいんです。

そこで悪い意味なところもさらけ出すと、人が「残念な気持ち」になってしまう。そこから幻想が崩れて、その人たちにとってネガティブになるような情報は出すべきではないとは思うんですね。

そういった意味では、まさに蜂谷さんがおっしゃったとおり、人が知りたいと求めている情報を出して、それを喜んでくれれば、やる必要はあると思います。逆にみなさんがガッカリするようなものについては、ちゃんとうまく装飾しなくちゃいけないかなと思います。

世界中の人と、日本にいながら香りを共有できるかもしれない

岩本:蜂谷さん、いかがですか?

一枝軒:本当に私、みなさんがお使いの言葉はほとんどよくわからなくて、まだ勉強不足なんですけど。

実際今、この2年間中国に行けなかったので、Zoomを使ってお稽古をしていました。ただ、私がお点前した香りは届けられない。でもこれからはひょっとしたらそれができるかもしれないですよね。

今までは一箇所に集って、その空間を共有するのが大事だったけど。今回タイトルが「日本文化とWeb3の可能性」なので。その観点であれば、私は世界中の人と、そこにいながら香りを共有できたらいいなと思うことはあります。

私の夢は、人と人を香りでつなげること。もっと言うと、今世界中では“きな臭いこと”が起きてます。そういう人と人のつながりが大きくなったのが、国と国のつながりになるんです。

結局、いろんな国際会議とか毎日のようにやってるけども、一向に良くならないのであれば、もう最後は文化の力。または歌もそうですよね。歌も人と人をつなげられる。あとは、スポーツの力もありますけども。

私はやっぱりデジタルの、こういうWeb3とかがどんどん進化していくことによって、文化がなにかしらこの国だとか地球、もっと言うと自然界に対しても役に立てることにつながるんじゃないかなって思っています。私自身はすごく期待しているし、私も勉強しています。

日本文化の「​​消費されないかたち」を目指すには

岩本:ありがとうございます。西村さんにもうちょっと聞きたいんですが、あと5分しかなくて。このWeb3の考え方って、オープンに開けたネットワークに、いろんな方々、世界中の多種多様な方々に参加いただいていて、それこそ自律分散的に参画をすることによって、その組織が運営されるという。そういう世界線がすぐ近くに存在はしているんですよね。

例えば「稽古場」というのも、見えないかたちで世界中にネットワークがあって、メタバース上でつながって、同じ時を同じように体験できる空間や環境が、すぐに訪れるだろうと思うんです。

一方で、クローズドでブランディングをしていくのは、権威性を担保するのもそうですし、その文化を適切な方々が支えて、適切に残していくというかたちで(必要なんですよね)。

伝統文化は、ちょっと言葉は悪いと思うんですが、大衆芸能のようにただただ消費されるものではないと思いますので。その「消費されないかたち」をどうやって目指していくのか。その中で、Web3でできることをやっていくのが、ここ直近のお話ですよね。

西村:そうですね。お二人のお話をうかがっていて、この(文化の)一番深いところにいらっしゃる方がどうお考えになってらっしゃるのかって、大変興味深く、ありがたくうかがっていました。

やっぱり聞くにつけ、今おっしゃったように、例えば公演をメタバースで開く・見るですとか。もしかしたらデバイスが発達したら、香りがメールで届けられる時代が来るかもしれません。

それに私のお茶も、もしかしたらまったく脳で同じものと認識する粒ができて、その粒がどこかで拡散されるかもしれませんし、コピーがされるかもしれませんし。そういったものは技術的にはできるんでしょう。

Web3にコンテンツ自体を無理に乗せる必要はない

西村:ただ、いらないなって思いました、正直(笑)。やっぱりリアルな体験ですとか、それぞれの官能・効能というのがあって、その場で見られる、味わえる、嗅げることが必要なのであれば、Web3を使う部分はそこではないですね。

組織運営ですとか、そのカルチャーの担い手ですとか。あるいはアーカイブですとか、新しいメンバーを受け入れる時の「受け入れたよ」って証ですとか。そういったところでいくらでも使えるものです。

コンテンツ自体を無理に乗せるというよりかは、例えばお茶の稽古にどうやって参加すればいいかわからなかった人が、ネットがあると入れるわけですよね。そういう外的なところで(使えるといいなと思います)。

まさにブロックチェーンも一緒なんですけれども、データとか内容ではなくて、その外殻のところでWeb3をいくらでも使って、コミュニティを増やしていくほうに使ったほうがいいんじゃないかなって、私的に思いました。

岩本:めちゃめちゃいいですね。Web3を入り口として使っていきながら、コンテンツは本質的なまま残していくかたち。それはもちろん時代によって、見せ方と提供する価値は違うと思うんですが。それは自信を持って提供しつつ、組織運営をより持続可能なかたちに作っていくという話ですよね。

西村:そうですね。

日本文化は自分たちには関係ないと思わないで欲しい

岩本:最後、本当にあと2、3分になってしまったので申し訳ないんですが。宝生さん、蜂谷さん、西村さんの順でまとめのコメントをいただいてもよろしいでしょうか。宝生さんからお願いいたします。

宝生:はい、じゃあちょっと簡単に。今お話をうかがっていても、ハードウェアとソフトウェアの部分で考え方は異なるところは多いと思うんです。まず最初に「(日本文化は)自分たちには関係ない」と思わせないように、我々もしなくちゃいけないと思います。

ぜひビジネスの人たちも、何か外に打ち出す時のコンテンツとして、「能楽は使えない」と思わないでほしいと思います。我々は人々のためにあるものですから。能楽というコンテンツの良さをうまく使って、社会に発信するためのソリューションになれるように我々もがんばっていきたいと思います。ぜひぜひ、ご相談いただければと思っております。

岩本:ありがとうございます。蜂谷さん、いかがでしょうか。

一枝軒:先ほど私が言ったように、今回タイトルが「可能性」だったので、私なりの発言をさせてもらいました。西村さんからすごく良い言葉いただきましたが、まさしくそのとおりですね。

月が浮かんでいて、その月をその場所で一緒に愛でるっていうのが、一番良いわけですね。そこには風も感じるし、お茶もお酒もいただけるし。最後はそこが大事なのであって、そこに至るまでにデジタルがうまく絡んで、融合されて、さらにこの日本文化が良いほうに向かっていく。そうなっていけばいいと思います。

とにかくいろいろ言いましたけども、最後は自分自身です。自分自身で、私たちで考えることが大事です。それが一番大事なことだと思います。

伝統芸能側も「Web3アレルギー」にならないように

岩本:ありがとうございます。最後に、西村さんから一言よろしいですか。

西村:ありがとうございます。むしろ、私たちのほうもWeb3アレルギーになられないように、伝統芸能の方たちも利用いただけたらなと思いました。

文化そのものをまったくもってオンラインに移行しよう、そのまんま乗せようというのは、日本語の文章をその単語の順番のまま英語にするぐらいアホらしいことでして。それはそれで、Web3の業界でも二流三流のことだと思っております。

結局、じゃあそれを見た方、感じる方が、「何を感じるのか」をオンラインで展開する。あるいは組織運営ですとか、得意なところで活かす。そういったところでぜひ取り入れていただきながら、世界を大きくできればなと思いました。よろしくお願いいたします。

岩本:ありがとうございます。大変駆け足で恐縮なんですが。製造業やIT業でいろんなアセットが外に流出をしている中で、この「日本文化」は残っている唯一のアセットであると考えています。

これがどういう価値を社会に提供できるか。この社会に密接に結びつきながら、この文化の価値を使って、世界に平和と安寧とを起こしていくということが、私たちが任せられている役割なのかなと思っております。

手法論は最新のテクノロジーを使ったり、その時代時代に合わせたかたちで変えていくところ。そして本質は改善し担保していくというところ。その両面で、一緒に考えながら推進していけたらすごくうれしいなと思っておりました。

Web3の方々も含めて、もっともっと密につながりながら、お互いがお互いに助け合うかたちで、この日本のすばらしき文化を残していけたらすごくうれしいなと思っております。

では、本日はご参加いただきましてありがとうございました。

一同:ありがとうございました。

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