2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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柴田啓氏(以下、柴田):太田さん。民泊利用の長期化について、楽天LIFULL STAYの事例で聞かせてもらいたいなと思います。パンデミック期間中は国内のお客さんがほとんどだったと思うんですが、国内の事例で見た場合に滞在の長期化はトレンドとして見て取れたんですか?
太田宗克氏(以下、太田):全体平均が多くガッと動いたかというと、そこまでのインパクトはなかったんです。ただ、今まで最も長い宿泊期間は30日とかだったんですが、このパンデミックに入って78日や90日という予約がちょこちょこと入り始めていて。全体の中でも、2週間とかの長期の予約も入り始めました。
全体の平均を大きく変えるほどのインパクトはまだ出てないんですが、傾向としては滞在期間が長くなった予約が増えたなとか、離島に90日住んでみるとか、3ヶ月の予約とかが入り始めているので、だいぶ兆しが見えてきたかなとは感じていますね。
柴田:なるほど。パンデミック前、海外から来ていらっしゃった訪日客の平均滞在日数はだいたいどのぐらいだったか、もしデータがあれば教えてもらっていいですか。
太田:具体的な数字は出せていないんですが、やっぱり都市部が多かったので、2週間滞在とかはそんなに多くなかったですね。日本人はちょっと長いかな? という感じだったんですが、数日が多かったです。
イメージ的には、よくある東京・大阪・京都みたいに、何都市かに合計で1~2週間いらっしゃるんですが、1回の予約で見ると数日が多かった印象です。
柴田:なるほど。見方としては、これが上がってくるんじゃないかなという感じで見てらっしゃいますか?
太田:はい。我々は上がってくるんじゃないかなと思ってます。今までは大都市圏というか、東京・大阪・京都を回られて帰られることが多かったんですが、(インバウンド客に)「なんで日本が良いの?」と聞くと、「自然がすばらしい」とよく言うんです。日本に対する期待値の中で、確かに「自然体験」はあるなと思っていまして。
太田:私は中国に駐在したこともありますし、シンガポールにもいたんですが、自然体験という面で言うと、確かに日本はすばらしいコンテンツがあるなと思うんですよね。当然、安全面もそうですし、四季もそうですし、純粋に自然をキャンプも含めて体験できるのは、アジア圏内で言うと日本にはすばらしい環境があると思うんですよね。
ですので、大都市圏でお買い物して帰られるだけじゃなくて、日本の自然体験をもっと外国の方にも知っていただく。さすがにキャンプ用品を持ってくるのは大変でしょうから(笑)、グランピングも含めて自然体験ができる地方での滞在は、今後はすごくキーだなと我々も思っています。
先ほど申し上げたように、Rakuten STAYではキッチンや洗濯機もしっかりと完備をしています。できれば大都市圏ではなく、今は地方をメインに展開をしています。
もちろんSDGsも考えていまして、ソーラーパネルを設置してEVステーションも置いているんですね。グループの中の楽天エナジーと共同して、ソーラーパネルや再生可能エネルギーを使って、今後はEVステーションも設けていく予定でございます。環境面にも配慮しながら、外国の方々に自然体験も楽しんでいただけるようなきっかけ作りをやっています。
それで、より長期で地方に滞在いただき、かつ日本の良さを知っていただく。その瞬間だけじゃなくて物販にもつなげて、お帰りになられても良かったものを継続してお買い求めいただくような流れも作っていきたいなと思います。
柴田:さすが。楽天さんはグループのいろんな経済圏が出てくるわけですね(笑)。あっという間にあと15分になってしまったので、少し巻いていきます。
柴田:片山さん、ニセコ町としての民泊への取り組みについて簡単に教えてもらいたいです。いろんなチャレンジもおありだとは思うんですが、今までどんなことをやってきて、これからどんなことをやっていくかも含めて、さくっと教えていただけるとありがたいです。
片山健也氏(以下、片山):私どもの町にはすでに200を超える施設がありまして、当初はそこに民泊が入ってくる懸念が相当ありました。(民泊が)入ってきて、これから増える可能性もあると思うんですが、そこの質をどうみんなと共有し合って高めていくかだと思います。
ニセコに住んでいて、みなさんから信頼される方がやっているぶんにはそんなに抵抗はないんですが、私どもの町は住民の暮らしとリゾートが一つになっているような町ですので、まったく地元と縁のない方が来られて民泊をやっていると、住民の暮らし自体に影響するんですね。細かいゴミ問題とか、環境衛生とか。
質の高い民泊は必要だと思っていますので、みなさんの理解・合意形成を得ながら私たちも進めていきたいと思います。ただ日本全体を見ると、ほとんど宿泊施設がない地域ってたくさんあるんですよね。
例えばフランスの地域活性化の時に、農家に改装費を出してフランス政府が農村民泊を進めたんです。そのことによって地域が復活したという事例もたくさんあるので、そういうおもしろいことができれば、日本社会はもう少し自由な仕組みになるのかなという気がします。
柴田:なるほど、わかりました。ありがとうございます。
浅生亜也氏(以下、浅生):浅生さんにもう1つ聞きたいんですが、最近は日本でも「リトリート」という言葉を少しずつ聞くようになったと思います。
要は、昔で言う「社員旅行」かもしれないんだけど、どっちかというともう少し楽しみながら、心身ともにリセットして、会社の人たちと一緒に旅行に行って合宿するイメージかなと思います。欧米ではものすごく一般的に行われてると思うんですが、これからは日本でももっと出てくるんでしょうか?
そんなに長期滞在じゃないかもしれないけど、民泊の活用も含めて、欧米のある会社の人たちが日本に団体で来て、ニセコ町で数日間なり1週間なりいてリトリートしましょう、みたいなことは起きうるんですかね。
浅生:非常にポテンシャルのある需要じゃないかなと思っています。日本でもそうなんですが、リモートワークが進んだことによって、社員側も会社側も会社とのエンゲージメントに不安を持つようになりました。どこかでいっぺん、面と向かって顔を合わせる機会を作ろうという動きはすごく出てきていて。
今、国内でも「チームビルディングをしたい」という明確な目標を持った、20人前後ぐらいのリトリートが非常に伸びています。
それで、私たちはコワーケーション.comというサイトをやっている次第なんですが、今後国境が開いてくると、例えば外資企業で海外からのメンバーと日本のメンバーがコミングルするような需要があったり。
むしろ日本人と一緒だったら、地方とか自分が馴染みのないところでもできるじゃないですか。必ずしも京都でやる必要はなかったり、みんなが知ってるニセコじゃなくても、ほかの地域でもリトリートの需要は生まれてくるんじゃないかなと思っています。
柴田:なるほど、わかりました。ありがとうございます。
柴田:これは簡単に教えてもらいたいんですが、日本が世界のデジタルノマドを引きつけてきて、彼ら・彼女たちに日本で長期滞在してもらうために、みなさんがやりたいことを具体的に1つ教えてもらいたいです。もう1つは、国や地方公共団体、官にやってもらいたいことを教えてください。じゃあ、太田さんからお願いします。
太田:ありがとうございます。やはり私としては、宿泊だけじゃなく、現地で体験できる体験コンテンツを自治体と一緒に組んでしっかり作っていって、それをデジタルで発信していきたいという思いがあります。
弊社の中に「楽天トラベル 観光体験」というアクティビティ予約サイトもありますし、シンガポールで「楽天トラベル・エクスチェンジ」というホールセラーの事業もやっているんですが、コンテンツを開発したら、中東や世界中の方にも「日本にはこういうおもしろい体験ありますよ」と発信していって、日本に来ていただく動機づけをしっかりやっていく。
同時に、宿泊とのセットでシナジーを出していく。宿泊だけ尖って作るだけじゃなく、やはり体験とセットかなと思っていますね。
最近、サーファーに向けたサーファーの宿を作ってみたりもしていて。サーフボードの倉庫がついていて、終わったあとに屋外でシャワーを浴びられるとか。そういうふうに、体験を意識した宿泊作りと体験コンテンツそのものを作っていく。自治体とも一緒にやって、海外に発信していきたいなと思ってますね。
柴田:なるほど。官に関しては、何かやってもらいたいことはありますか。
太田:滞在目的となるようなコンテンツ作りって、我々民間だけでも難しいところがありまして。土地や行政の許可も含めて一緒にやることによって進むものがいっぱいあると思いますから、体験コンテンツの開拓というか「作っていく」部分を一緒にやっていきたい。
最近では「楽天トラベル 観光体験」の中からも、意外と行政の方々とも一緒に作る事例が出てきていまして、行政と一緒に取り組む観光コンテンツ作りをより進めていただきたいなと思いますね。
柴田:なるほど、ありがとうございます。片山さんはいかがでしょうか。
片山:来られるみなさんに「長期滞在される時は、地域で何か貢献を1つしていただけますか?」ということができたら、おもしろいなと思いますね。エコロジーだったり、子どもたちとの教育の接点だったり、知的にレベル高い方もいっぱいいるのでなにかを教えてもらうとか。そんなことで、教育が進めばいいなと思ってます。
先ほど柴田さんが言われた「教育」はものすごく悩んでいて。長期滞在の人たちが「自分たちの子どもをちょっと預けたい」というのは、けっこう増えてるんです。ところが、小学校は学校教育の中できちっとやっているので、小学校に「面倒見てくれ」と言っても悩ましいことがいっぱいあるんですよね。そこに風穴を開けられればいいなと思います。
柴田:わかりました。お国や官には、何か注文はありますか?
片山:今、ニセコもたくさんの方が来られてるんですが、来られた方が「この景観と環境が良い。もうちょっと住んで、ここで少し働いてみたい」という時に、ビザの関係や規制がたくさんあるので、もう少し柔軟に、幅広く受け入れる風土というか、国の規制緩和ができればありがたいと思ってます。
柴田:なるほど。浅生さん、いかがでしょうか。
浅生:日本の地方の旅館のモデルチェンジにチャレンジしたいなと思ってます。今は29泊なんてまったく無理で、2泊の滞在すらできないような状況になっていて。すごく不便だったり、応用が利かない、フレキシビリティに欠けるところは、みなさんからご指摘いただいているとおりです。ここに根本から取り組まないといけないなとすごく思ってます。
長期滞在のためにもそうですし、リトリートをやろうと思っても大人数で泊まれるような施設になってないんです。雑魚寝だったらできるけど、今時お布団を並べて雑魚寝なんかしないですよね。
あとは、地域の人との交流を図ろうと思って1人で来ても、1人で泊まれないとか。いろんな意味でフレキシビリティに欠けるなと、枚挙に暇がないんですが、そういう部分を一つひとつ解決していけるようなチャレンジをしたいなと思っています。
柴田:なるほど、ありがとうございます。
浅生:官の部分に関しては、突拍子もないことを言うようなんですが……とは言いながら、さっき官公庁の長官が1つの取り組みの中でおっしゃってくださっていたので、期待したいなと思うんですが(笑)。何をしてもらいたいかというと、国のお金でデスティネーションの景観の整備をしてもらいたいなとすごく思います。
既存の事業者に補助金を渡して、「壁を塗ってください」という話ではなくて、まずは誰の手のコントロールもない廃墟を撤廃してほしいなと思っています。
行った先で「がっかりポイント」があると、やっぱり「いたくないな」というモチベーションにつながるので、これをなくしていってもらいたい。それはもう、国のお金でやっていただくほかないなと思っているので、そこをお願いしたいと思います。
柴田:なるほど、ありがとうございます。
柴田:最後に僕が思っている持論なんですが、最近は「関係人口」の話が言われていますよね。この話とすごく結びつくと思うんですが、観光振興と地域おこしがつながってきてるのかなと思うんです。それはやっぱり、つながってきてる間に「長期滞在」があるのかなと思っていて。
確かニセコ町でも「ちょびっと暮らしてみよう」という体験を押し出されたと思います。短期旅行で来てもらったあとに、ワーケーションやブレジャーでリピートしてもらう。さっきの軽井沢の話じゃないですが、最終的には拠点の1つとして定住してもらう。今後、こういう流れがすごく重要になってくるかなと思っています。
やっぱりこれは「革命」かなと思うんですよね。観光と地域おこしという、これまで別々だったものがつながってきてるということだと思うんです。これが関係人口増加による連続だと思うんですが、1つのポイントは「民泊」が深く入ってるのかなと。
もう1つは、これは別に日本人の方だけじゃなくてもいいんじゃないかなと思っています。外国にも日本好きの方がたくさんいらっしゃって、「日本に住みたいな」「長期で滞在するだけじゃなくて拠点にしたいな」という方もいらっしゃると思うんです。
最後におうかがいしたいのは、最終的には外国人にも地域おこしの一助になってもらえるかどうか。みなさんは現実的だと思いますか? いきなり大きなテーマに流れちゃったんですが(笑)、イエスかノーかでも構わないので聞かせていただきたいと思います。まず、片山さんから聞かせてもらえますか。
片山:海外のみなさんが来られる地域おこし協力隊があっていいし、うちでは国際交流員同士がニセコで結婚をして暮らしてる例もありますので、こんなふうにどんどん自由に、差別なくできたらいいと思います。
柴田:なるほど、わかりました。太田さん、いかがですか?
太田:私もこれは本当に大賛成というか、海外の方も含めて日本の良さを認識していただいたところから、人の交流を通じて地域の魅力を高めることができれば、これまた大きな経済活性化にもつながっていくと思います。
国内に留めるだけじゃなくて海外の方にも来ていただいて、経済全体に対して良い影響を作っていければなと思いますので、大賛成でございます。
柴田:ありがとうございます。浅生さん、どうでしょうか。
浅生:私も妙高というスキーリゾートに15年以上関わっているんですが、15年前にはいなかったような人たちが今は住んでます。もともとは旅行で来ていたんでしょうけれども、それこそオーストラリアやニュージーランドの人が住み着いていて。子どもも生まれて、コミュニティができているんです。
もう1つの利点は、その人たちが新たなインバウンドを呼んできてくれるところに貢献してくれるので、すごくいいことだと思います。
柴田:ということで、まだまだ話したいことはたくさんあったんですが、ちょうど時間になりました。あっという間に過ぎちゃいましたね。
デジタルノマドのムーブメントを捕まえて、長期滞在で来てもらうことは、日本にとっては本当に良いこと尽くしだと思うんですよ。なので、ぜひぜひみなさんと一緒になって、これから盛り上げていければと思います。
また来年もこんな話ができたらいいなと思いますし、来年はもっとみんな明るい顔ができたらいいんじゃないかなと思いますので、今日はこれで終わりにさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
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