
2025.02.12
職員一人あたり52時間の残業削減に成功 kintone導入がもたらした富士吉田市の自治体DX“変革”ハウツー
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湯浅エムレ秀和氏(以下、湯浅):今日は、ポストコロナ元年に求められるリーダーとは? というテーマでお話させてもらえればと思っています。実はこのテーマを考えたのはもう数ヶ月も前でして、本当にポストコロナ元年になるかは不安もあったんですが、なんとか最近感染者も収束してきて、ポストコロナ感が出てきたことを非常にうれしく思っています。
その結果、今日はオンラインだけじゃなくリアルでも、しかも全国から(グロービス卒業生のみなさんに)集まっていただいたと先ほどお聞きしましたが、やっと「ポストコロナできて良かったな」と思います。
まず、私がどんな人間かを簡単に自己紹介させていただきますと、グロービス・キャピタル・パートナーズという会社でベンチャー投資をしている湯浅エムレです。
主に私は、最近だとDXと呼ばれる産業変革系のスタートアップに投資をしていて、投資先の一部は(スライドの)ここにロゴの記載があるような会社で、もしかしたらご存知の会社もあるかもしれませんが、本当に業界はさまざまです。
商業不動産に取り組んでいるestie、製造業に取り組んでいるキャディや、インフラ点検をやっているセンシンロボティクスですとか、幅広い業界の変革に取り組んでいるスタートアップと日々一緒に仕事をしています。またグロービス経営大学院では、東京校と仙台校を中心にベンチャーマネジメントを教えています。
今後、世の中がどんなふうになっていくんだろうか。そんな中で、どこにオポチュニティ(好機)があるんだろうか。または、その中でどんな人間が求められていくんだろうかということを、起業家の方々と一緒に日々ディスカッションしていますので、今日は私の考えをこの場でいろいろお話させてもらえればと思っています。
ポストコロナ元年ということで、感染者もだいぶ減ってきてはいますが、それでもこの2年間は本当にコロナに翻弄されて、世の中でいろんなことが変わってきました。犠牲者もたくさん出ました。ただこれは、本当に人類として非常に大きな変化ではありましたが、このようなことは初めてだったのかというと、実はそんなこともないんです。
湯浅:恐らく体験された方はいないかと思いますが、ちょうど100年前、スペイン風邪というものが世界で大流行して、だいたい5,000万人から1億人の方が亡くなったと言われています。感染したのは5億人くらいで、その当時の人口の25パーセントから30パーセントくらいの方が(スペイン風邪に)罹った。
ちょうど第一次世界大戦をやっていた頃なんですが、それよりも多くの犠牲者を出してしまった、スペイン風邪というものがありました。(スライドの写真を見ると)服装を除いては「今なのかな?」と思うくらいの光景ですが、普通にマスクをして歩いています。これは100年前の写真です。人類は、そんな時代を経験していたんですね。
ということは、きっと「ポストスペイン風邪」の時代もあったんだろう思って。そのあたりのことを調べてみると、1920年はスペイン風邪が収束してきて、第一次世界大戦も終わってやっとポスト感が出てきた年でした。
その時に人々は何を求めたかというと、日常への回帰です。元の生活に戻りたいというのが、人々がすごく切望したことでした。1920年のアメリカの大統領選で、ハーディングスという候補者が自分たちのスローガンとして(日常への回帰を)掲げて、これが人々の心にものすごく刺さって大勝利を収めて、その時の投票差は未だに破られていない。それぐらい人々の心をつかんだのが、この「日常への回帰」でした。
ただおもしろいのは、そのあとに本当に日常が戻って来たのかというと実際は全く違ったんですね。平和という意味では日常なんですが、世の中がものすごく変化をして、英語で言うところの「The Roaring Twenties(狂騒の20年代)」がやってきました。
人々はみんな元に戻るかなと思いきやそうではなくて、ものすごく変化が起きた時代がそのあとに待っていたということを、歴史が物語っています。
湯浅:具体的に何があったのかというと、それまでにもあったテクノロジーが一気に普及してきたというのが、1920年代に起きたことです。(スライドの写真を)見てわからないものもあるかもしれませんが、ラジオ、テレビ、電話、自動車とかが1920年代に一気に広がってきた。大量生産の時代が始まって、一般の人にも持てるようになってきた。
また、石炭から電力・電気のほうに大きくエネルギーがシフトしてきた。そんな技術のいろんな変化や普及が、この1920年代に一気に押し寄せてきました。
その結果として、世の中・社会も大きく変わってきました。ラジオや映画が生まれたことで大衆文化が出てきて、ジャズやダンスホールが流行ったりだとか、今までなかったような変化が大きく起きました。また、ちょうど1920年代にはアメリカでは女性の参政権も認められて、ポストスペイン風邪の時代には、世の中が大きく開けてきました。
日本でも、同じような頃に大正デモクラシーがありました。大戦を契機に、経済が大きく発展した。(スライドの)右下にあるのはモダンガールで、当時「モガ」と呼ばれたらしいんですが、自分のひいお婆ちゃんとかがそういう格好をしていたかと思うと、けっこうびっくりします。社会も発展し、大きく変わっていった時代があります。
ここから思うのは、世の中がピタッと止まって、大きく変わってしまうようなイベントがあったポストショックの時代では、今まであった技術が一気に広がってきて、それによって社会が変革していく。人類にはそんなサイクルがあるんじゃないかなと思っています。
まさにスペイン風邪でもそうなりましたし、そう考えると、今回のコロナのあとも大きく技術が普及し、そして社会が変革していく時代がやってくるのではないかなと思っています。
湯浅:ここで一度立ち止まって、今の日本がどんな状況なのかを、私の視点からお話させてもらえればと思っています。よくメディアでも「失われた30年」というふうに言われていまして、これ(スライド)は各国のGDPを表したグラフですが、日本は灰色ですね。
1995年くらいまではとても順調に伸びて、アメリカにも肉薄してきた状況でしたが、1995年を境に基本的には横ばいになってしまって、アメリカ、中国がその間に一気に伸びてくる。最近だと、インドも追いついて来るペースで伸びてきているとよく言われています。
じゃあ、アメリカの圧倒的な伸びの背景は一体何だったんだろうか? というのを見てみます。これは直近10年間、アメリカで上場しているすべての企業の時価総額をグラフで表したものになります。灰色の部分がすべての時価総額ですね。
10年前だとだいたい2,000兆円ぐらいだった時価総額が、直近ですと約5,500兆円と非常に大きく伸びています。どこが伸びているのかをさらに見ていきますと、(スライドの)下にあるカラフルな部分は、アメリカの時価総額トップ7社です。具体的にはロゴが書いてありますが、この7社がものすごく伸びているから、アメリカの全体の経済も伸びている状況です。
黒い線グラフはこの7社が(市場)全体を占めるシェアですが、10年前はたった4パーセントぐらいだったものが、10年後の先月時点では23パーセントぐらいまでになっている。アメリカの中でも7社が特筆して伸びている。それ(7社)が全体の経済を押し上げているというのが、今のアメリカの伸びの背景にあるものです。
これ、日米を比較するとさらにおもしろいことがわかります。このグラフはそれぞれの市場のトップ7社とそれ以外の上場企業を、アメリカと日本で比較したものになります。左を見ていただくと、アメリカのトップ7社は2010年からだいたい19倍ぐらいの時価総額になっています。
日本のトップ7社は、この3年くらいでググッと伸びていますが、それでも(2010年と比較して)4.6倍ぐらいの伸びに留まっている状態です。
湯浅:興味深いのは、それ以外の会社。アメリカでも日本でもだいたい4,000社ぐらいが上場しているんですが、それ以外の会社はどうなっているのかというと、実は伸び率はほとんど変わらない。アメリカでも日本でも、10年間でこの4,000社の時価総額はだいたい2.2〜3倍で、ほとんど変わっていません。なので、この差は7社が作ってきたものということになります。
この7社、「GAFAM(ガファム)」とかいろんな呼び方がありますが、どんどん名前を変えていっています。GoogleがAlphabetになって、この前FacebookがMetaになったりして、もはやGAFAMと呼べなくなっちゃっていて、何て呼ぼうか? というところです。
昔、石油メジャーのことをSeven Sistersと呼んだりしましたが、私は今日からNew Seven Sistersと呼びたいなと思います。ぜひ流行らせてください(笑)。なので、この7社が牽引してきたということは、逆に言うと日本でもこの7社みたいな会社を作れると、ああいう伸びが作れるんじゃないかと思ったりしています。
今日、この場にいらっしゃる中から、イーロン・マスクとかジェフ・ベゾスとかが出てくれば、もう日本は安泰だということかなと思ったりもします。ただ、ビッグITと呼ばれるこの企業には、もう大きすぎて勝てない。経済のあらゆるところに入ってきているので、もはやこの会社に追いつくとか、追い越すことは無理なんじゃないか? というふうに思う方もいらっしゃるかもしれませんが、私はそう思っていません。
この7社が伸び続ける理由を見てみると、基本的に共通していることが3つありまして、ソフトウェアでありプラットフォームでありグローバル。この3つを7社とも持ち合わせています。それぞれの特徴がこの7社の競争を生んでいるなと思っています。
例えば、ソフトウェアは非常にスケーラブル。次の1人のお客さんに対して提供するのに、マージナルコストがほぼゼロ。新しいプロダクトもどんどん作れる。そしてその結果としてデータがどんどん溜まっていくので、お客さんが離れられなくなってくる。
湯浅:そしてプラットフォームというのは、一言でいうと地主ビジネスですね。Amazonで言うと「Amazon」というECサイト。実は3分の1ぐらいがサードパーティセラーと言って、他の人たちがAmazon上で売っていて、Amazonはその手数料をもらっているというビジネスになっています。
FacebookやGoogleも基本的には他の人たちがコンテンツを上げていって、自分たちは地主として広告主からお金を取ってくる。そんな地主ビジネスをやっているので、とても高収益な上にネットワーク効果がどんどん効いてきて、これもなかなか(顧客が)離れられなくなってくる。
最後にグローバル。さっきの7社はすべて通信向けビジネスであれば、数十億人をユーザーとして抱えてやっていますので、ここでも規模の経済が活きてくる。まさにグロービスの競争戦略で上げるようなデータの蓄積、ネットワーク効果、規模の経済とか。
このすべてが掛け算として合わさっているので、この7社は非常に強いのかなと思いますし、逆を言うと、この3つの要素を持っているような会社を作っていけると、まだまだ勝ち目はあるんじゃないかなというのが、私が思うことです。
先ほど、この7社は大きくなりすぎて勝ち目がないんじゃないか? という話をしましたが、実はそんなことないんです。これは日本のGDPを産業別に分けたものです。実はこの7社がどこに位置付けられているか、どの産業を見ているか、どの領域にいるかというのを、青くハイライトした部分です。
基本的には情報通信業とか、一部の製造業。TESLAの場合はチップとか車ですね。Amazonの場合は小売ということで、基本的にこの領域にしかいない。逆を言うと、他の領域にはまだこんなに巨大IT企業が生まれてきていない。
ここには非常に大きなチャンスがあると思っていますし、ご覧いただいているとおり、他の領域のほうが圧倒的に大きいというのが私から見えている世界です。
湯浅:また、Amazonもここ(卸売・小売業のシェア)を全部取っているわけではなくて。日本におけるECのペネトレーションレートが10パーセントから15パーセントと言われていて、それを複数のECサイトで取り合っているので、(Amazonが)実際に取っているシェアはまだまだ小さい。
伸びしろが非常にあり機会もたくさんあるというのが、これからのポストコロナであらゆる技術が普及してくる時の私の見込みになります。
特に日本に関しては、DXニーズがものすごく強いです。(スライドの)左はOECDの労働生産性をグラフ化したものですが、日本は残念ながら労働生産性が低いと言われています。ベンチャーキャピタリスト、もしくは起業家からの視点からすると、これは非常に大きなチャンスで、低いということはまだまだ改善余地がある。ここにはいろんなチャンスが眠っているということです。
少子高齢化、いろんな社会問題に関しても課題があるということは、そこに対してペインがある。ペインがあるということは、ソリューションも求められているということで、まさに日本が直面している課題が故に、チャンスが大きいのではないかと思っています。
私は日々、ベンチャーキャピタリストとしていろんなスタートアップの方と話したりしていますが、まさにこのDX領域を取りに行こうとしている、非常にアンビシャスなスタートアップがたくさん出てきています。
それらのスタートアップは、先ほど申し上げたソフトウェア、プラットフォーム、グローバルという3つの要素を持ち合わせています。少し前は「狙うぞユニコーン」という感じで、未上場段階で1,000億円を狙っていこうというのが日本のスタンダードだったんですが、2018年にVCが投資をしている企業でユニコーンになったのはメルカリ1社だけでした。
2021年にはどうなっているかというと、実はユニコーン企業は(直近で上場した企業も含めると)約20社あります。日本はもうすでにユニコーンを生み出せる環境にあって、今、最先端の起業家の方々がユニコーンではなくて「デカコーン」、1兆円企業を目指して行こうと本気で考えていますし、そこから逆算して、何をしていかなきゃいけないのかというのを日々やっています。
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