2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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大谷明日香氏(以下、大谷):みなさんこんにちは。5日間に渡って行うWILL FESTIVALも今日で3日目になりました。本日のトークセッションは「ジェンダー」というテーマです。
近年、ジェンダー平等の重要性にやっと光が当たり始めたものの、2021年でもなお、世界経済フォーラムが発表しているジェンダーギャップ指数は(日本が)156ヶ国中120位。国際的にも各国が取り組みを進める中で、日本は先進国の中でも、アジア諸国の中でも、推進が遅れていると言わざるを得ない状況です。
選択的夫婦別姓、同性婚・LGBT法案の整備を含め、さまざまな課題が挙げられるんですが、今日は企業の中で実際にジェンダーイシューに対して取り組みを進めている方々に、ゲストに来ていただいています。
「性別関係なく」が理想であることは大前提として、理想と現状のギャップについてどう捉えているか、実際にどんな未来を見据えてアクションを起こしているのか、みなさん自身の思いなどを語る場にしていきたいと思っています。
このセッションのモデレーターを務める、REINGの大谷明日香です。REINGは多様な個のあり方を祝福し、二元論に囚われない表現を追求するクリエイティブスタジオです。性別・人種・容姿などにまつわるラベルイメージや既成概念を問い直すコンテンツ開発、企業ブランドの価値観をつむぐコミュニケーション設計などを行っています。
大谷:それでは、みなさまにも簡単に自己紹介をお願いしたいなと思います。ではまず、サイボウズ株式会社代表取締役社長の青野さんからお願いいたします。
青野慶久氏(以下、青野):みなさん、こんにちは。青野慶久です。ふだんはサイボウズというソフトウェア企業の代表をしています。
あとは個人で、選択的夫婦別姓がなかなか進まないので国を訴えたり。今やっているのが「ヤシノミ作戦」というんですが、選択的夫婦別姓や同性婚をなかなか進めてくれない国会議員を、みんなでヤシの実を揺すって落としちゃおうぜという、ヤシノミ作戦というのをやっていて。
ホームページに行きますと(選択的夫婦別姓や同性婚に)反対議員のリストがありますので、ぜひ今回の衆議院選挙なんかでも、そういう人に入れないように、ジェンダー平等を進められるように、投票していただけたらと思っています。以上です。
大谷:ありがとうございます。では続いては、株式会社ポーラ人事戦略部の大城さんより自己紹介をお願いします。
大城心氏(以下、大城):こんばんは、ポーラの大城と申します。よろしくお願いします。社会人歴は長くなってきたんですが、最初は営業。産育休を2年間経て、今は人事戦略という人事の仕事をやっております。働き方改革、ダイバーシティ&インクルージョンを担当してますので、今日はお二人とお話しできるのを楽しみにしてきました。
プライベートでは6歳の娘がおりまして、一母親です。個人の活動としては、「母親アップデートコミュニティ」というコミュニティに属しておりまして、多様な母親の姿を応援していきたい、自分自身もそれを体現したいと思って活動をしています。今日はよろしくお願いします。
大谷:よろしくお願いします。ありがとうございます。では最後に、SHE株式会社代表取締役CEO・CCOの福田さんより自己紹介をお願いします。
福田恵里氏(以下、福田):みなさん、こんにちは。SHE代表の福田です。我々SHEのことを知らない方もいらっしゃると思うので、簡単にご説明させてください。我々SHEはライフコーチングカンパニーという看板を掲げて、「一人ひとりが自分にしかない価値を発揮し、熱狂して生きる世の中を作る」というのをビジョンに活動をしております。
主要事業としては、SHElikes(シーライクス)という、主に20代から30代ぐらいのミレニアル世代の女性向けに、キャリア支援事業を展開しております。具体的には、女性たちがマーケティングやデザインなどのさまざまなスキルを学んで、時間や場所に囚われないキャリア形成をサポートしております。
先ほど「ミレニアルライフコーチカンパニー」と言ったんですが、女性の人生全般に寄り添うという意味で、キャリアだけではなく金融や美容の領域など、いろいろなドメインに多角的に展開して、女性たちの人生をサポートしております。あと、私もプライベートでは1児の母でして、1歳半の息子がおります。今日はよろしくお願いします。
大谷:よろしくお願いします。ではさっそく、セッションに入っていきたいなと思うんですが。今、それぞれのプロフィールからも、選択的夫婦別姓のお話や育児のこと、女性という性を持ちながら会社の中でどういうキャリアで働いていくかのバランスとか、いろんなトピックが出てきたかなと思うんですけれども。
「ジェンダー平等な社会を目指す」と、国際社会でも日本でも近年大きく謳われ始めた中で、性別関係なく誰もが当たり前に活躍できる社会が理想だと思いつつ、どうやってジェンダーについて学べばいいかわからない、何にどう取り組むべきかという人も多いと思いますし、実際に数字につながっていない現実もあると思うのですが。
じゃあ、どうやって取り組んでいったらいいんだろう? とか、まだ実際の数字につながっていない現実があるかなと思います。
大谷:ジェンダーという視点で不均衡のない組織にしていくために、現在みなさんが実際に「障壁になっているな」と思うことや、それに対して企業としてどう取り組んでいるか、個人としてこう思う、ということがあれば、そのあたりをまず聞いていきたいなと思うんですけれども。大城さん、トップバッターなんですがいかがでしょうか。
大城:ポーラでは大きく3つやっていまして。1つ目が、どうしてもバイアスってあると思うんですよね。それを急になくすことは非常に難しくて、「バイアスはあるんだ」「自分にどんなバイアスがあるのか」ということに気づく機会提供を行っております。
今年は、男性育休、LGBTQをテーマにマネジメント向けにディスカッションを行いました。個人としてどういう価値観を自分が持っているのかを、言葉にして表現してもらうことで気づいてもらう。その前提でどうするかを考えてもらっています。
2つ目は、どうしても今日はジェンダーの話なので「女性・男性」という話になりますが、女性は、自分のことを過小評価したり、「自信がない」ということで、どんどん(会社の中で)埋没してしまうことがあります。
会社として意識的に期待をかけていくことで「見える化」をすること、外部のアセスメントも受けていただいて、(自分の)強みを把握してもらう。それを周囲からも、必ず期待として伝えていく。そして、抜擢することですね。「やってみたらできた」という経験を積むことです。
また、制度を整えるのはもちろんですが、最後の3つ目は風土ですね。性別に関係なく、自分らしくあっていい。肯定される心理的安全性、多様性受容や他者理解は、常に言い続けることを意識しています。
大谷:ありがとうございます。今、お話の中でも「見える化」だったり、期待を作っていくことや、抜擢していくというお話があったと思うんですが、やっぱり(女性)管理職の比率がまだぜんぜん上がらない。
例えば、政府が掲げた、女性の管理職の比率を2020年までに30パーセントに上げるという政策目標に関しては未達で終わってしまっていて、その後の期限がすごく引き伸ばされたところがあると思うんです。
女性の自分に対する過小評価って、SHEが取り組んでいるキャリア支援だったり、自分に自信をつけながらキャリアアップしていくところにすごくつながると思うんですが、実際に受講生の方を見ていて、福田さんのほうで思うことってありますか?
福田:そうですね。我々は「エフィカシー」と呼んでいるんですが、自己効力感。「自分ならできる」という気持ちが低い状態でSHEにいらっしゃる受講生の方が、非常に多いなと感じています。
原因としては、今までの義務教育という画一的な教育システムの中で、人と同じことが求められたり、協調性を大事にされたり、そういった価値観の中で育った。あとは昭和の価値観で言うと、「女性は三歩下がる」とか。
それが親からもずっと刷り込まれてきた中で、自分の意思を発信すること、自分を大切にすることを、社会の仕組みとして憚られてきた側面があると思っています。
福田:一般的には、エフィカシーを向上させる要素が3つぐらいあると言われていて。
1つ目は直接的成功体験。自分が何かを1つやってみて、「できた」という経験を積むこと。2つ目が代理体験と言って、自分と同じような立場の人ができているのを間近で見ること。3つ目が言語的説得といって、第三者に「あなたならできるよ」「あなたはすばらしいね」と言ってもらうこと。(エフィカシーを向上させるには)これが大事と言われるんですけれども。
今、SHEが提供しているスクールって、ただデザインやマーケティングやスキルアップを学ぶだけではなくて、どちらかと言うとマインドチェンジに重きを置いていて。コーチングのようなコンテンツを提供しながら、その人の理想のありたい姿を定義して、コミュニティの中で同じようなキャリアの悩みを持った女性たちと切磋琢磨したり、いろんな意見交換をしながら。
さっきの「代理体験」ですよね。自分と一緒に入会した人たちが、3ヶ月や4ヶ月で本当にデザイナーに転職しているとか、フリーランスになってる姿を間近で見ることで、「私もできるのかも」と思っていただいて。
実際にそこに至るまでのサポートをしているところが、女性のエフィカシー(向上)だったり、さっき選挙の話の中でもあった、賃金格差や教育格差を是正する動きとして、できているところがあるのかなと思っております。
大谷:やっぱり、ロールモデルがいないことに対する不安とか、「本当に自分ができるのか?」みたいなことって、私もけっこう経験があるなと。そこって、自分自身に対するバイアスもすごくあるのかなと思ったりもしていて。
さっき、ポーラの中でもバイアスを取り除く研修をされてたというお話があったと思うんですが。青野さんが実際に選択的夫婦別姓の取り組みをされている中で、自分の中にあるバイアスとか、そういったものに気づく経験ってあったりしますか?
青野:そうですね。うまく説明できるかわからないので、順を追っていきます。僕は社内で、あんまり「ジェンダー平等」って言わないんですよ。男女という話も、ほとんど会話に出ないです。それはどんな感じかと言うと、例えば社内の関西人と関東人の平等問題って、あんまり議論しないじゃないですか。意識しないですよね。
「あなたは関西人なの?」ぐらいの感じじゃないですか。男女もそんな感じが理想だと思っていて、そうなればいいなぁと思って接している感じですかね。だからどっちかと言うと、「100人100通り」という言い方をするんですが、男女という属性に目が行った瞬間に負けだと思っているんですよね。
男女じゃなくて、「○○さん」。「今、○○さんはこの組織で幸せに働けているんだろうか?」ということに集中する。属性としてはいろいろくっついてきますよね。どこ出身で、どんな仕事をしてて、何歳で、みたいな。いっぱいあるんですが、その中の1個が男性か女性か。
青野:もっと言うと、今や性別が2個じゃないことも、もう知られているわけじゃないですか。そうなってくると、そういう視点で運営していったらいいなと思うんですが、そうは言ってもここまで来るのはバイアスとの戦いではありましたよね。
一番陥っていたのは、やっぱりマミートラック(昇進・昇格が難しくなる女性のキャリアコース)でしたね。子育てをされると本当に大変そうだから、「できるだけ仕事を楽にしてあげたい」という気持ちが働くんですよね。実はそれが相手にとっては喜ばしいことではなかったりすると。もちろん、それが喜ばしい場合だってあるから、ややこしいんですけど。
なので一応サイボウズの中では、本人に自立してもらって主張してもらうのをルールにしています。文句があったら言え、上司が気づいてくれるまで待つな、というルールですね。だって100人100通りなんだから、誰が何を考えてるとかわからないよ、主張しろ、ということを言ってる感じですかね。
そうすると、最近なんかは「給料が安い」というのが出てきますね。産休明けになると、(勤務)時間が短くなったりするんですよね。そうするとそのぶん給料が削られて、「なんでもう何年も働いてるのに、新人と給料が変わらないんだ」という声が上がってきて。すごく僕的には楽しい感じなんですが、そんな感じですね。
とにかく、バイアスに囚われないようにするには、属性を一回忘れるぐらいの考え方がいいなと思ってやっています。
大谷:理想のかたちは本当にそこだなぁと思っていて。ただ実際には現状、属性による格差が存在するのは事実なので、それが解消された先にそういう理想の状態がやっと実現するのだと感じているんですけれども。
今のお話を聞いて、組織作りの中で、大城さんや福田さんから青野さんに聞いてみたいことや気になるポイントってありましたか?
大城:1つは、私も母親になって、自分がバイアスまみれだなぁということに気づかされたところがありまして。「母親だからできる」「女性だから料理ができるはずだ」と、すごく自分を苦しめてたんですよね。
それに気づいて、「これは女性だから・男性だからじゃないよなぁ」と思ったぐらいから、もし自分が「40歳だから」「母親だから」「女性だから」と考えていたら、バイアスにまみれてるって思うようにしようと思って。「自分だったらどうか」と考えるようにしています。
(サイボウズの社員は)「主張する」と、おっしゃってたじゃないですか。社員がガーッと主張していく中でも、リーダー側は受け止めるんだということは、社内の中でもルールになってるんですか?
青野:そうなんですよ。イメージとしては、自分の裁量権を相当広くしてます。なので、たぶんこのへんは人事制度を作っていく時に大事になってくるんですが。
例えば働く時間の長さや場所とか、サイボウズだと今は職種も自分で選べるようになっていますので、自分が「キャリアチェンジしてあっち行きたい」と言って、行く先が「OK」と言ったら、上司が何を言おうと行けるんですよね。
逆に言うと上司には権限がないので、上司は絶対に異動命令が出せない。何時間働くかも決められないし、どこで働くかも決められない。これぐらい本人に裁量権を持たすと、「どう働きたい」「どう生きたい」「誰と働きたい」「いくら欲しい」と言えるようになってくる。
なので、裁量権を持たせながら主張させていくと、その人が自分が一番心地良い働き方に目覚めて、選べるようになっていくと。日本はそこが主張する訓練もされていないし、「ルールは大事」と言ってみんなが守る意識があって。
ルールって、自分で決めるものじゃなくて渡されるものという意識があるから、パラダイムシフトを起こしていかないとなかなか変われないよなぁと思って、見ているんですけれどもね。
大谷:属性で見ないことが重要だと思うんですが。とはいえ現実、今の日本社会の中では、管理職になりづらい環境や、育休から戻ってきたら意図せずすごく短い(勤務)時間にされてお給料が減ってしまうとか。そういうところで、どうしても越えられなかったところがある気がするんですけど。
今、福田さんはご自身の会社を経営していると思うんですが、例えば前職やこれまでキャリアを築いていく中で、最初は自分が役員とか会社を経営するイメージって持ちづらさがあったりしましたか?
福田:私はあんまりなかったんですよね。
大谷:それは、周りに同じように活躍できている女性がいるとか、そういった環境の影響がありましたか?
福田:そうですね。ロールモデルもあると思うんですが、私の周りは比較的リベラルに、キャリアをこれから登っていくにあたって消極的な人があんまり周りにいなかったので。当たり前に、もし自分が子どもが産む選択を望んでいるのであれば、両立しながら仕事をしていくことを、普通に受け入れている方々が周りに多かったのはあるかなと思っています。
あと、「時間に関係なく対応できる人が要職に就きがち」というところで言うと、「時間に関係なく対応できる人」がそうなるとは思ってないんですが。ただ、もし本当に自分でキャリアをこれから歩んでいきたいと思って、「管理職に昇っていきたい」と思った時に、対応するための環境を整えていくことが同時に必要なのかなと思っています。
福田:例えば私の場合だと、経営者になってから子どもを産んで、今はベビーシッターさんや家事代行さんとか、すごくアウトソーシングをしていたりするんですよね。それによって、仕事の時間・集中する時間を捻出しているところがあって。自分・人々の幸せのかたちって本当に多種多様だと思うので、自分が何を優先したいかによると思うんですけど。
自分が「管理職や要職にキャリアを昇っていきたい」と考えているのであれば、会社から与えられる制度だけではなくて、自分のマインドだったりとか、調査も含めてその環境を自らデザインして作りにいくべきなのかなとは思いますね。
大谷:そうですよね。ポーラさんが今は(女性)役員が40パーセントという数字を達成できているところには、地道なこれまでの積み重ねがあったんじゃないかなと思うんですけど。
大城:そうですね。育休から復帰しても、それまでとあまり変わらないかたちで働いている姿を見ることは、次の世代も「できるな」と思う、1つのモデルかなと思いますね。
福田さんがすごくアウトソースをされているとうかがったんですが、私も家族・パートナーと曜日で家事分担を分けているんですね。それぞれの家族で、自分たちが働くこととそれ以外のバランスをどういうふうに取っていくのかは、いろいろだなと思って。その選択肢は増えていると思います。
恐らく、上の世代の方々はなかなかそういうサービスもなかったし、もしかすると、その当時は親の支援が受けられる状況や環境があったのかもしれないです。ですが今、私たちは親の支援を受けられない環境の方もいます。多種多様なサービスが出ていることに、自分たちもアンテナを張って探しています。
使えるサービスが増えているのもあるので、それらを使いながら働くことがこれから必要かなと思いますね。全部が全部、自分たちの家族でなんとかしなきゃ、という問題でもないかなとは思いますね。
大谷:いやぁ、そうですよね。
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