2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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沢渡あまね氏(以下、沢渡):小田木さん、手短にもう1点だけ良いですか?
小田木朝子氏(以下、小田木):どうぞ。
沢渡:非常に良いコメントをいただきました。「公務員だと異動があるかどうかわかるのが1週間前で、そこから引き継ぎ資料を必死に作るので、それが当たり前だと思っていました」。これ、すごく大事なポイントが2つあると思うんですね。
異動があるかどうかわかるのが1週間前という、従来のやり方も変えていく時期に来ているのかなと。私も、さまざまな組織で「今までの常識を疑って、ルール側も変わらなければいけない」といった話をしていきたいと、あらためて思いました。
2つ目は「異動というリスクに対して」「育休というタイミングを機に」仕事のやり方を変えること。引き継ぎ可能な状態にしておけば、慌てることはないですよね。育休はあくまでも組織の変化のワンオブゼムで、(育休に限らず)さまざまな変化に対応できるマネジメントができるようにしておく。あらためて、育休にもそう向き合って欲しいですよね。
小田木:ありがとうございます。続々と質問が来ていまして「育休期間中に、気になってパソコン開いたりしませんでしたか?」って。
沢渡:やっちゃうよね。
野島光太郎氏(以下、野島):これはやっていました。我々の会社は、一応選べるんです。パソコンを会社に「丸ごと取り上げられる」っていう表現が適切かわかりませんが、預かってもらうのか、自分で持っているか。私の場合は、自分のアイデアなども書き留めたかったので、パソコン自体を預からせて欲しいと申し出ました。
先ほど「(復帰したら)なんかやってやろう」と言いましたが、深夜にそういう企画書を作ったりしていましたね。ただ、義務感はなかったです。(パソコンを預かったのは)自分で選んだことなので。自分でちょっとメモしたり、企画を作りたくて。
小田木:ちょうど別のコメントで「労使協定を結んで、従業員から申し出があれば、ある程度の就業できる環境も整えようとしている」とありました。なので育休取得者目線でいくと、そこに選択肢があることがけっこう大事だと。そういう考えができそうですよね。
沢渡:そうですね。選択肢があることと「私は完全に休みたいです」「私は少し仕事をします」など、組織と個人とが前広にコミュニケーションを取ることが大事ですね。
小田木:はい、ありがとうございます。続々と質問もいただいておりますが、話を進めていくと、今ここ(スライドを指して)にも「野島さんのケースはどうであったか?」と掲示しています。どういうことをやって、それが結果どんな効果につながったか。それが組織にとっても、個人にとっても良い状態につながったと言えるのか。
「御社だからね」「野島さんだったからね」ではなく、ここに「どうやって再現性を見つけていけるのか?」。こっちに話を移していきたいと思っております。
「野島さんのケースの成功要因って、結局何だったの?」について、ここを(スライドを指して)まとめてみました。簡単に解説させていただきますね。
ここから「再現可能な着眼点に引き上げたい」という意図があります。まず一番上のグレーブロックは「取得を阻む固定概念」です。要は、一般的に育休取得を推進する際に、当事者がどんな不安を抱えるか? 上司や組織がどんな不安を抱えるか? それを言語化したのが、一番上のグレーブロックです。
こういった不安を抱えながら、プロセスとしては「取得前」「取得中」「取得後」の3ステップ・時系列に流れていくと思います。
野島さんのケースでは、具体的に何が良くて最終的にパフォーマンスが上がったのか? 良い結果につながった実際のアクションを「取得前」「取得中」「取得後」で色別に書き出してみました。一番下は、どんな結果につながったかという着眼点です。
要は、野島さんケースでの成功要因に再現性を持たせたいんです。そのために意図的に、組織やチームに仕掛けていく方法を、残り時間みんなで考えていきたいと思います。これが今日の2つ目のテーマになります。
小田木:いくつか書かせていただきましたが、野島さん。特に重要度が高いブロックを、ぜひ教えてください。沢渡さんには、業務改善・組織開発といった観点で、ポイントになりそうなところをぜひピックアップいただきたいと思います。では、沢渡さんからお願いします。
沢渡:私は大きく2つあると思いました。1つ目が(スライドを指して)左下の「計画的な取得準備(業務棚卸と仕分け/引き継ぎ・委託)」。
小田木:これは前段の話から、かなりインパクト項目でしたよね。
沢渡:そうですね。組織としては、ここはサポートする必要がありますよね。2つ目が、右下です。「新たな学びを活かした事業貢献」とありますが、復職後にさらに「組織として」「本人として」アップデートしていくためにやり方をどう変えていくか。
そのためには、育休というライフイベントを通じて振り返りをして、良いところ・悪いところに名前を付けていく。そしてさらなる改善につなげていく。こうしたナレッジマネジメントのプロセスを走らせる必要があると思うんですね。
小田木:ありがとうございます。今の話を聞かれまして、野島さんいかがでしょうか? 計画的な取得準備が成功要因であることは、先ほどからシェアしていたと思います。それに加えて仕事を離れたからこそ、ひらめいた改善策や、深めた考えなどを、実際に復職後に活かすことはできたんですか?
野島:そうですね。私自身も、4ヶ月間も仕事を離れる機会はそれまで経験がなかったので、どうなるかわかりませんでした。今まで終日仕事をしていた自分が、育児に集中しているわけです。それでも、筋肉や脳みそは当初は半分以上仕事になっていて。
いざ離れてみると、仕事のことばかり考えているんですよね。育児しながら。パンツ変えながら。寝かせながら。同時に子どもを見させてもらっているありがたさもあって。仕事のことを考えつつも、いる場所が家なので、(仕事を)客観的に見るようになってくるんです。例えば「あの時あんなふうに言ったのは良くなかったな」など細かいこととか。
小田木:なるほど(笑)。
野島:また、言えば自分自身、取得する情報にすごくバイアスがかかっていたなと。育休前は日中にテレビを見ていなかったのですが、見てみるといろんな情報があるなと感じて。徐々に仕事の筋力から育児の筋力になっていくんですが、同時に(仕事への)客観性もだんだん高まっていくんです。
それで「復帰したらどういう仕事をやっていこう」という思考にだんだんなっていく。今までの延長線上ではなく「この機会を活かしてどうやっていこう」という考えになるんです。(スライドを指して)この中では「頭の余白を活かしたアイデア試案」ですね。ここにシフトしたなって感じました。
結果としては「まだ学びが足りない」「もっと学びたい」となって、「リスキリングへの投資」へ、行動なり思考がシフトしていきました。
小田木:ありがとうございます。今、2つ重要な情報があると思いました。「育休中でも申し出があれば就労もできる」といった選択肢を用意すべきか否か。先ほどチャットでもこの議論がありましたよね。
育休イコール「物理的に仕事から離れる」「チームの中で担っていた短期的な成果を追う役割から離れる」(だけではなく)。この時間をどう使いたいか? 例えば体は育児をしているとして「頭も完全に育児だけにしたいか」。もしくは「頭は仕事モードにしておきたいか」と選択肢があるべきですよね。「こうでなくては」っていう前提を取っ払うことは、けっこう大事だと思いました。
野島:そうですね。育休以外にそういうものって、他にあまりないですよね。4ヶ月給料もらわずに辞めるって、すごく難しいと思うんですよね。でも育休なら、給付金も出て、会社という帰る場所もあって、(さらに)子どもを見させてもらうっていう。そこに対する感謝や、貢献したいって気持ちが生まれやすいのかなとは思いますね。
沢渡:景色が変わったから見えた世界ですね。
野島:そうですね。
小田木:実際に生まれた余白と、協力してできた時間で、リスキリングへの投資をされた。具体的にどんなことされたんですか?
野島:これも個人的なことなんですが、育休期間中に「すごく仕事がしたい」って思い始めたんですね。ただ、直接的な仕事・業務が降ってくることはもちろんないですよね。
だから誰かのための企画というよりは、本当にメモ書き程度に、自分の中に書き留めておきたいといったレベルでした。ある意味、(パソコンを)デバイスとして使っていたレベルなんです。
その中で感じたのは、自分の主体的幸福度。先程「ウェルビーイング」っていうコメントもありましたが、ウェルビーイングが高まると仕事へのモチベーションがすごく上がる。これを育休期間中に感じまして。
『データのじかん』で、「幸福学」の慶應の前野(隆司)先生とお話をする機会があり、前野先生は「幸福度が高まると生産性が1.3倍になる」などなどを研究されている方です。海外からもそういった論文を引用して発表されています。
それまでは自分の認識として、あんまり実感がなかったんですよね。でも育休を通して、肌実感としてようやくわかったんです。「仕事をしたい」気持ちにエンジンがかかってきたのを見て「ウェルビーイングと仕事って、分断するものではなくパッケージなんだな」「双方がファクターとして寄与しているんだな」と実感しました。
それで育休期間中に、個人的にウェルビーイングの研究者の方にコンタクトをして、お話を聞いたりしました。子どもが寝ている早朝にお話させてもらって。その経緯から、大学院に入って一緒に研究をし始めているんです。
小田木:ここまで野島さんのケースとして、仕事への渇望感や、復帰後の仕事についてお話をいただきました。
今コメントでもいくつかいただいているんですが「そういう気持ちを持つのって、男女の違いってあると思いますか?」。例えば、野島さんが育休を取ったのって、奥さんが「私ももっと早く仕事に戻りたい」「辛いんだ。大変なんだ」というところがスタートでしたよね。
野島:そうですね。
小田木:そういう意味では「男性はこう、女性はこう」っていうよりも、仕事にどんな思いを持っているか? だとか、どんな働き方を復職後にしたいか? キャリアをどうしたいか? って、男女差よりも、やっぱり一人ひとりそれぞれ考えを持っていますよね。
野島:持っていると思いますね。仕事にずっと従事していると、ある意味、仕事を外部電源をエンジンに回していくイメージになりますよね。でも離れてみると、仕事って自己実現の手段だったりする。私の場合は趣味もあまりないので、仕事がコミュニケーションの手段になったり、人とつながるきっかけにもなっているです(笑)。
それが実は、対価であるお金や役職などではない、自分の中の大切なことなんだと実感しました。これらは男性も女性も関係ないですよね。対価としてやっている仕事ではなく、自分の価値観として大切なことになるので。
それを画一的に「男性は仕事をやるべき」「女性が育休を取って男性は取らない」という状態はフェアじゃないというのか……。過去のサクセストラップにはまっているのかなと思います。
小田木:ありがとうございます。本当に話が尽きない。男性育休を入り口にしましたが、今は男女に関わらず、ライフイベントに応じて育休を取っていく世の中にあります。そういった機会が促進されていることを前提にして、今日のまとめに入っていきたいと思います。
ケースから入ってグーッと汎用度を上げていきましょう。あらためて、今日はタイトルの中に「育休マネジメント」という考え方を入れさせていただきまして。この場にいらっしゃるみなさんは、この考えはどんなものだと思われますか? これを共有していきましょう。
今、会社や組織が置かれている状況から、育休を取得する社員が増えていくと思います。みなさんにとって、この状況がどう見えるのか。私たちは「育児マネジメント」というキーワードを、発信していきたい・広げていきたい思いがあって、意識的に使わせていただいています。あらためて、言葉の定義・意味付けをしていきたいと思っています。
(組織は)育休を取得する、出産というライフイベントに向き合う本人とそのパートナーから、最大の能力を引き出していく。成果に貢献できる環境、育成、機会を提供していく。育休を取得する人材が組織に増えても、それぞれの人材から最高の成果を引き出せる組織になっていくこと。
そのための戦略的介入を「育休マネジメント」という言葉を使って、発信させていただいています。
小田木:なぜ今、この発想が必要か? なぜ今日のテーマである「個人と組織の成長」につながるのか? 今度は沢渡さんの観点から「なんで育休マネジメントなの?」という説明をお願いします。
沢渡:(スライドを指して)書籍『バリューサイクル・マネジメント』でもしつこく解説している、毎度おなじみの図です。野島さんからもありましたが、今はVUCAの時代です。不確実性が増し、環境の変化も激しく、テクノロジーも進化する時代において、過去に答えを求めにくい時代なんですね。組織の中、あるいは過去に答えを求めにくい時代。
そうすると(スライドを指して)右側にあるように「つながって解決していくこと」あるいは「今までとは異なる環境」が必要になってくる。ある意味、男性育休もそうですね。今まで男性が育休を取ることは少なかった。しかしこれが法制化されて、ポピュラーになっていく世の中においては、今までとは違うやり方にしなければならない。
組織のマイノリティではない人たちが、共につながって、問題・課題を解決していくためには、統制管理型のやり方ではなくて、オープン型、ネットワーク型(組織であることが必要になる)。こうして、イノベーションできる仕事のやり方そのものを変えていかないと、うまくいかないと思うんですね。
別の見方をしてみます。今までの統制管理型、つまり「24時間戦えますか?」の男性社員が、同質性の高い人たちだけで長時間、長期間、入社から定年まで顔を合わせて決められたことをこなすモデルではなく、(スライドを指して)右側。
これまでとは違った環境・働き方がある中、異質な人たちがそれぞれに最適な場所(を選び取っている)。あるいは、ライフステージ、過去に答えのないテーマ、VUCA時代の新しいテーマ、新しいチャレンジ。こういったものに向き合って成果を出すモデルにしていかなければならない。
そのためには、個人のスキルやマインドだけに押し付けることなく、組織としても、そのあり方・ルール・働き方をブレイクスルーしていく必要がある。こんなことが言えると思います。
育休という変化はこのガチガチの統制型から、オープン型(になったということの表れ)。グラデーションのある働き方、グラデーションのある選択肢に向き合う。そこを整備していくチャンスだと言えます。
書籍『バリューサイクル・マネジメント』にも、男性育休が法制化される中で、各組織・各個人がどう変わっていくか、細かいヒントも含めて書いてあります。ぜひ、組織の中でもディスカッションしていただけたらと思います。
小田木:ありがとうございます。これが、組織が今向き合っている大きなテーマだとすると、その中で働く個人がライフイベントを迎えて、いったん職場だとか短期的なチームを離れるということには、どんな意味合いがあるのか。それを(スライドを指して)表現してみました。
沢渡:左が組織、右が個人ですね。
小田木:そうですね。左側が、組織が今置かれている環境。さっき沢渡さんがおっしゃった、状況だとかその中で生まれ得る多様性だと思います。
右側が個人なんです。出産ってちょっと見方を変えると、個人に起こるVUCAだと思いませんか? これは定義の提案でもあるんです。本当に環境も変わるし、自分の内面もめちゃくちゃ変わりますよね。
野島さんもまさに、そういった変化に向き合って感じた。そこから、今の野島さんがあるということを話してくださいました。それは本当に先読みできないし、仕事を長く離れることで、もしかしたらスキルや経験の陳腐化があるかもしれない。それで、ついていけなくなることだって考えられるわけですよね。
逆にさっき、リスキリングみたいな話があったように、短期的な成果を追いまくらなければいけない状況ではできなかった、スキルや知識のアップデートができる機会でもある。こういった見方もできそうですよね。
「今まで仕事が人生の中心でした」みたいなところから「他にも大事にしたいことたくさんあります」(と変化した)。もしくは離れたことで、あらためて自分と仕事との関係性を見直したり、アップデートする機会になったという。
こういう「揺らぎ」みたいなものって、実は人材開発、自分をアップデートするという観点からは「好機」と言えるんじゃないかな。
沢渡:私は2つの意味で好機だと思います。小田木さんがおっしゃるとおり、(スライドを指して)右側、人材開発の好機であり、もう1つが(スライド左側の)組織開発の好機ですね。組織として、このような変化に向き合うためのアップデートをしていく。組織としてのスキルを身に着けていく。
ですから、人材開発と組織開発。この2つのテーマを、クロスファンクションで解決していく。立体的に解決していくための大きなチャンス・大きな転換点が、この男性育休取得の法制化だと私は見ています。
小田木:今の前提から考えた時に、今日の重要な論点はここかな。野島さんのケースから今一度、考えたいところです。
特定のケースだけに留めるのではなくて、成功要因に再現性を持たせるため、今日みんなで、ある程度は言語化できたのかな。名前付けたり、定義したり、言語化したり。
「取得されるみなさん、がんばってください」「上司のみなさん、よろしくお願いします」ではなくて、当事者と上司任せにしない。どうやって、こういった成功要因を生み出していくのか? それを生み出せるような働き方、働きかけ、介入をしていくか。これらが、やっぱり今日のテーマなのかなと思っております。
沢渡:すばらしいまとめです。
小田木:最後ギュッてまとめていきましたけれども(笑)。みなさん、ついてきてくださっていますか(笑)?
当事者任せでも、上司任せでもない。仕組みや人材育成、もしくはこういった知見を組織の中にインストールしていかなければならない。こうした中で、この育休マネジメントを実践していくための着眼点は、どんなものがありそうでしょうか。いったん(スライドを指して)我々のアイデアをまとめさせていただきました。
8項目もあるので、全部読むのは大変かなって思うんですが。
小田木:沢渡さん、野島さん。「より着目したいもの」もしくは「今日のみなさんと共有したいもの」それぞれ1つずつ取り上げて、最後コメントも含めて共有いただければと思います。そんなまとめ方でいかがでしょうか?
沢渡:良いですよ。では、今回は野島さんからいきますか?
野島:そうですね、僕は仕組み作りはもちろん重要ですが、けっこうもう法や制度が整備されていたり、徐々にそういった技術的問題、いわゆる制度やルールは整ってきていると思うので。
やはり重要なのって、(男性育休を)取れる雰囲気とか、環境作りなどの適応課題だと思うんですよね。そういった面で、どこからアプローチするか。当事者に向けた実践も上司に向けた実践も、どっちも重要なんですけれども。
今日ご参加されてるのは、もしかしたら人事の方が多いかもしれませんが。どちらからアプローチするのが良いかと考えてみると、やっぱり当事者だと思うんですよね。
男性育休を取りたい人が統計上は70パーセントぐらいいて、(実際には)そのうち12パーセントしか取れていないっていう現実がある。ここからも「取りたい」気持ちの人はいるけれど「取れない環境」「言えない環境」が見えてきます。
それをどうやって崩していくのか。上司に「部下に取らせよ」と言うのか、当事者に「取ってくれ」と言うのか。僕は案外、当事者に働きかけ、前例を作るのが一番かなと思っています。
じゃあどういった人にアプローチするのか? っていう視点だと……私、データばかり扱っているので、統計学の話になってしまうのですが。政治学や社会学のデータの中でも、そういった分析が数々あるんです。
具体的には「ポジティブデビアンス」というアプローチが、けっこう有効ではないかと言われています。「デビアンス」とは統計学の中の「外れ値」を意味するんですね。年収とかの統計で、正規分布ではだいたい山型、おわん型になるんですが、端っこのほうにいくとずーっとロングテールになる。
それを全部追ってしまうと正当な数値が取れないので、ある程度のところで区切ります。山の真ん中と中央値を取って、最頻値を取って……などと統計分析をするんですが。その外れ値のことをデビアンスって言うんですね。
その中でもポジティブな、良い方向へのデビアンス。「ポジティブデビアンス」を支援する。この人たちをアクセラレート(支援)することが、政治学の中では、民主化などを一番加速させるんじゃないかということなんですね。
野島:これを育休に照らし合わせてみます。育休を取りたいかどうかのアンケートを取ると「取りたい」「取りたくない」でグラデーションが生まれると思うんです。その中でも「特異的な人」と言うと言葉は悪いかもしれませんが、ある一定の人に的を絞って、その方が取る活動を積極的に支援する。
全員じゃなくて、そういった方を支援することによって、徐々に組織が変わっていく。変わっていく時に、統計学で、ポジティブなものに関しては3.5パーセントまでいけば、しきい値を超えるんです。ネガティブなものだと3.5パーセントだと足りないので、16パーセントぐらい取らないといけないんですけど。
ポジティブなアクション、方向性として(育休を)取りたい人がこれだけいる中で、ポジティブなことであれば3.5パーセントのしきい値を超えると、自然に歯車が回るみたいなことが研究されているので。
統計学上はそういうアプローチ(があります)。当事者のポジティブデビアンスを支援して、3.5パーセントをひとまず目指す。なので、(スライドを指して)1番「育休取得をキャリアの好機にする思考のアップデート、バイアスの払拭」が、やっぱり重要になるんじゃないかな。
小田木:ありがとうございます。「『データのじかん』来たー!」って思いました(笑)。
野島:すみません。『データのじかん』の宣伝するわけではないんですけど(笑)。
小田木:いやいや! でも、つい全体的に働きかけて底上げしようとか、反対していたりネガティブな人たちを動かそうって思ってしまいそうですよね。(そうではなくて)特にポジティブな層に働きかけて、組織の中に成功体験を作っていくんですね。
野島:そうですね、実績を作るっていうのが(大事)。
小田木:働きかけが重要だというメッセージに受け止めました。ありがとうございます。
野島:ありがとうございます。
小田木:じゃあ沢渡さんもお願いします。
沢渡:はい。私は(スライドを指して)下にある、仕組み作りですね。野島さんがおっしゃるとおり、やっぱり当事者と向き合って、正しく組織として成功体験に導いていくためには、主として6番「育休マネジメントの実績に対する上司の役割期待の設計、組織と上司の合意形成」が欲しい。
そして、組織全体のサポートがなくてはならないことなんですね。今日のテーマは「育休マネジメント」です。私は「『マネジメント』とは、モヤモヤしたことに名前を付けて、仕組み・仕掛けで解決していくこと」と解説しているんですね。
みなさん不安だと思うんです。なぜなら、男性育休の経験値がないから。今日集まられている中で、こういう不安に名前を付けて、どう組織として向き合っていくか、サポートしていくか。ここに風穴を空けていって欲しい。
小田木:まさに今日の野島さんの話は「誰の不安であるかを分解しました」「その不安に手を打つために、具体的にやるべきことを洗い出しました」「その中に業務の仕分けがありました」と、こういう話だったと思います。
沢渡さんは「それがマネジメントの真髄だ」ってコメントしてくださいましたよね。「これを特別視せずにやっていこうぜ」っていう話ですよね。
沢渡:おっしゃるとおり。とはいえ、現場の当事者とマネージャーだけに「棚卸しをしなさい」と言っても、やったこともないから難しいと思うんです。ですから、組織として、例えば人事あるいは総務が「こういう棚卸しの方法あるよ」「こういうやり方してみようか」って、仕組みをサポートする。あるいは、武器を持たせる。このチャレンジをして欲しいなと思います。
小田木:そうですね。当事者に向けても上司に向けても、(スライドを指して)2番、4番で必要な「知識と技術」を提供していく。これは逆に、組織的な働きかけでないとできない部分だと思うので、このへんともつながってきますよね。
沢渡:間違いないです。
小田木:はい、ありがとうございます。ということで、今日はこの育休マネジメントについて、ケースから考えて、そこから言える成功要因を分解して、さらに再現性のある着眼点に落とし込む。こんな話を、野島さんと沢渡さんとさせていただきました。みなさん、いかがでしたでしょうか。チャットも本当にたくさんの書き込みありがとうございます。
沢渡:本当にうれしいです。ありがとうございます。
小田木:すべて目は通させていただいています。ありがとうございます。最後に、残り5分となりましたので、このイベント自体のクロージングをさせていただきたいと思います。
本当に今日はありがとうございました。「法改正だから」じゃなくて「これってチャンスじゃない?」っていう、この機運を実践につなげていきたい。あらためてそう思いました。よかったら、今日のひと言感想でもけっこうですので、チャットにコメントなどいただけるとうれしいです。
そして今日お越しくださったみなさまに、私たちからご提供できることが2点あります。育児マネジメントを実践したい、組織の中で実現させていきたいと思っている企業さまに、もし課題感や状況に合うものがあれば、ご活用ください。
まずお手伝いできること、その1でございます。先ほど沢渡さんも「必要な知識と技術を組織的に、当事者や関わる人たちに提供していく」と言っていました。このテーマに関して、知識や技術を提供する人材育成プログラムは、どんなものがあるのか。これをご紹介する機会を作らせていただいております。
お昼の時間、約40分で情報が手に入る機会になっております。タイトルは「来年度からすぐに導入できる『育休』取得推進研修プログラムの紹介」。具体的なソリューションとして、どういったオプションがあるのか。ここについて情報収集を希望される方、ぜひこのランチタイムの、人材育成プログラムの紹介オンラインセミナーをご活用ください。
できることその2。私たち「“御社版”育休マネジメント計画の立案・支援」を、来季の計画を企業さまが立て始める10月11月の期間に、お手伝いをしております。
第三者の力も借りて課題の整理したいなとか、自社にとっての優先度の高い問題を言語化したいなっていう企業さまは、こちらをご活用ください。
沢渡:なんと、計画が作れてしまう。
小田木:そうそう。「計画・立案支援」します。第三者を巻き込んで、客観的に言語化したり、まさに名前を付けたりしたほうが早かったりするので。そういった企業さまのために、そのお手伝いができる機会を作っております。「それいいじゃん」っていう方、ぜひご希望ください。この2つ、お役に立つようであればうれしいなと思っております。
小田木:最後に、みなさん今日も本当にありがとうございました。
沢渡:ありがとうございました。
野島:ありがとうございました。
小田木:あっという間の90分でした。野島さん、今日はお越しいただいて、ありがとうございます。
野島:参加のみなさんも、ありがとうございます。
小田木:本当にオープンにいろんな話をしていただき、コメントにも丁寧にお答えいただきまして、ありがとうございました。
沢渡:みなさん『データのじかん』は良いメディアなので見てください。
野島:(笑)。ありがとうございます。
小田木:「これ、野島さんが編集長やってんだ」って思いながら見るとまた感慨深いですよね。
野島:Netflix(『ヒヤマケンタロウの妊娠』)も見てください。私は見ていないですけど。本当に回し者ではないんですが、おもしろそうなので。アンコンシャス・バイアスを崩す、すごく良いドラマじゃないかなって、アブストラクトで見てました。
小田木:今日の延長線上で、みんなで視聴したいぐらいですよね(笑)。
野島:そうですね。そういう会も良いかもしれないですね。
小田木:そして、沢渡さんも今日は金沢からご参加ありがとうございました。
沢渡:ありがとうございました。
小田木:今日もひときわ楽しい場になりまして、ありがとうございます。
沢渡:日本海側と太平洋側と、野島さんは東京湾沿いかな?
野島:そうです。
小田木:オンラインって便利だなって。それでは、今回も「90分腹落ちセミナー」ありがとうございました。
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