2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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荻野淳也氏(以下、荻野):ここで、今日聞きたいことがもう1つ。NO YOUTH NO JAPANが目指されていることとして、「若い世代の投票率を上げていく」ことが1つのミッションだと理解しているんですけども、なぜそこがなかなか変わっていかないのか。
僕もみなさんの活動を見ていて、そういう活動もしてみたいなと思っています。能条さんたちは、今どういうふうにその若い世代のツボ押せば広がっていくのかなとか、何かそういったビジョンって持たれているんですか?
能條桃子氏(以下、能條):そうですね、投票率の低さってここ数十年問題になっているので、ようやく「特効薬がないんだな」ってこの2年で気づきました。今まで私は2年間、特効薬探しのようなことをやっているつもりでした。地方選挙があればそこでプロジェクトを組んで、例えばお店と組んでみたら変わるのかとか試してきたけど、やっぱり特効薬はないんだなって思うようになってきましたね。
それと同時に、選挙がある時も選挙がない時も、街の中や友だちとの間で、選挙だったり政治に対する会話が当たり前にあるかないかが本当に重要だなぁと思っています。例えその社会の中で投票率が低かったとしても、選挙や政治に対する会話が当たり前にあれば、たぶん「次は行こう」って思う人も増えるだろうし、何か変わっていくと思うんです。
別に選挙だけが政治参加の手段じゃないので、今問題が起きた時に声を上げようってなると思うんですけど、会話がなければそもそもスタートラインにも立てていないのかなと思っていて。
やっぱり政治について話すことがタブーって言われていたりするじゃないですか。私も自分が小学生の時に、お母さんに「どこに投票したの?」って聞いたら「いや、そういうのは言うもんじゃないから」と言われて。みんなが「投票先についての会話はしちゃいけない」とか思っているんです。実は大人を含めて、政治についてちゃんとしゃべれる人ってそんなにいなくて、でもみんななんとなく知っているふりをしちゃってるんですよね。
能條:でも有権者の方が学んでいかないといけないんです。結局、有権者と政治家って鏡なんじゃないかなって思っていて、私の体感では、コロナ禍ですごく政治家の批判って増えたと思います。このNO YOUTH NO JAPANの活動をコロナ前からやっていて、政治への関心ってすごく増えているような気がするし、みんな「え、日本の政治ってこんなにヤバかったんだ」って思った人も多いと思うんです。でも、やっぱりそれだけ有権者が政治家を育ててこなかったのかなぁと思っていて。
そういう意味でも、私はこの活動をやっていくことによって、若い世代やその上の世代でも、当たり前のように選挙についての会話が、ケンカや嫌なマウンティングじゃなく、フラットにできるようなきっかけを作っていきたいなぁと思っていますね。
伊藤羊一氏(以下、伊藤):これは本当に僕らというか、これまで社会を作ってきた世代の責任が超大きいと思いますよね。能條さんが言うように、大人って政治について語るの避けるじゃないですか。Facebookとかでも、経営者の人たちでさえ「政治のことについては語ってこなかったんですけど、今回はあえて話します」とか、そうやって前置きを置かないと政治について語らない感じがすごくあります。興味ないどころか、あえて避けているようなところ。
それを総裁選ですごく認識したんですけど、でもよくよく考えてみると、昔から「誰々さんはこういう派閥でなんとかだよね」って、権力闘争の部分を語るのはみんなめっちゃ好きですよね。でもそうじゃなくて、政治って違う部分もあるよねって。今能条さんがおっしゃったように、コロナを通じてみんなが政治に興味を持ったと思うから、今がチャンスだなと思います。
コロナを通じて、政治は自分の生活そのものだよねってことに気付いている人が多いと思うんです。だから、これからめっちゃチャンスだなって思いますよね。
荻野:そうですね、羊一さんがおっしゃっていたように、マスメディアの捉え方も結局「どこどこの派閥でどうたらこうたら」っていうニュースしかないですよね。新しい切り口で政治を伝えていただくようなメディアの1つがNO YOUTH NO JAPANの活動であって、そういった切り口でガンガン攻めているなという印象を受けますね。
伊藤:テレビを観ていて感じるのは、やっぱり総裁選立候補者の4人が出てきて、「質問に○か×でお答えください」という感じでやっちゃうんだけど、いや、○か×じゃないんだよ。社会がフラットになってきている中で、1つの問題に対して「こことかこことかあるよね」「軸は何?」「それでどうする?」って議論をするべきだし、国民もそれに対してちゃんと受け取る力を持たなきゃいけない。○×はさすがにちょっと一般化し過ぎっていうか、簡単にし過ぎだなって感じますよね。
これまで政治に対して、NO YOUTH NO JAPANが活動されたり、例えばたかまつななさんとかも活動されたりしていますけど、やっぱりYouTubeであまりウケないらしいんですよね。でも、これからはくると思います。だってこれから「あれ? 政治ってどうやって考えたらいいんだろう?」って思う人が増えると思うんです。
能條:活動の中で政治家の人とインスタライブをする企画を定期的にやっているんですけど、毎回「今回の人は好きだったわ」とか、「あの人はちょっと違うって思った」という感想が出てきます。人によってどの人が好きかは違うけれども、「政治家」って一括りにしていたけどこんなにも違いがあるんだって気付きがあって、インスタライブを観ている人の政治家を見る目というか、鑑識眼が育っているような気がしています。
これがもうちょっと広がればいいし、それこそデンマークの友だちがみんな何であんなに政治について熱心にに話すのかって、政策ベースで自分の価値観と照らし合わせてフラットに話せるからだろうなぁって思うので、日本もそうなればいいなとは思っています。
伊藤:NO YOUTH NO JAPANでこれからも追及していただきたいのは、要するに「なんの軸なんだ」ということを掲示し続けることと、選択肢は2択じゃなくてグラデーションなんだということね。そこらへんってまだ知らない人が多いよなって思います。
荻野:本当はグラデーションで白黒がつけられないんだということの理解が足りないので、自分の意見と違うと「あ、違う人なんだ」って敵対視をしたり、シャットダウンしてしまったり、聞く耳も持たなかったりすることが起こってしまっているのかなぁって考えますが。
あと、能條さんがどこかの記事でおっしゃっていた「自分の意見を持つこと」ですね。自分の意見を持てば、「自分にもこういった意見があるんだから、ほかの人にもこんな意見があるんだ」って、もしかしたら聞く耳を持つことにも繋がるのかなって思うんですよね。
伊藤:本当にそうですね。
能條:意見がないと会話にならないので、そういう意味ではやっぱり「なんでもいいや」では始まらないなぁとは思いますね。
荻野:能条さんが自分の意見を明確に持って発信していくようになったきっかけとか考え方って何かあったりするんですか?
能條:でもやっぱりNO YOUTH NO JAPANを始めるのも最初は怖かったというか、「ぜんぜん知らないのにやっていいのかな?」ということは思っていました。でもデンマークに留学している中で、日常生活の中で感じた政治に対する自分の違和感を(周囲の人に)話した時に、ちゃんと聞いてもらえたんです。聞いてくれる人がいることで自信になったっていうのは1つあります。
あと個人的にアクティビストといいますか。団体の代表とは別に、例えば気候変動に関心があって石炭火力発電を輸出している会社に「これはやっていいことなのか?」って聞いたり、今年の2月に森喜朗元オリンピックパラリンピック組織委員会会長の女性蔑視発言の時に、署名活動をやろうって思ったり。そういう個人的なアクションをやれるようになったのは、NO YOUTH NO JAPANを始めて1年ぐらい経ってからです。
やっぱりやっているうちに、ただみんなに参加しようって呼びかけるだけじゃなく、自分ももっとやってみたくなったところがありました。それこそ絶対的な正解はないから、例えば女性蔑視発言とかに対しても、「いやいや、みんなおかしいって思っているでしょ」って勝手に思っていたんですけど、実は組織委員会の人とかの発言とか聞いてたらぜんぜんまったく違う価値観で。
私がなんとなく「みんなそう思っているでしょ」って思ったことも、みんながそう思っているとは限らなくて、「なら数にして伝えないと伝わらないな」と思うようになって、失うものもないしちょっとやってみようかなと思ったんですね。
伊藤:あの時、僕も能條さんからご連絡いただいて賛同人として名を連ねさせていただいたんですけど。その時に、能條さんがドキドキしながら踏み出していることを感じたんですよね。ドキドキも何も、当然いいことだよね。むしろ僕、そういうことをやらなかった自分を恥じたんですよね。
やっぱり、能條さんもそうやってドキドキしながら、それでも一歩踏み出しているんだよってことをみんなに伝えたい。だから僕はサポートしようって思ったんです。一人ひとりがいろんなところで、ちょっとずつ自分の頭で考えて、自分の足で踏みだすことができると、やっぱり驚くほど変わると思うんだよな。
能條:そうですね。それこそ「賛同してもらえませんか?」ということも、すごくドキドキしながらメッセンジャーで送っていました。「こういうのはやるべきじゃない」とか言われたらどうしようとか(笑)。
やったことがないから誰も想定もできないし、でも大丈夫と思って送ったりして。やってみると、本当に驚くほど賛同してくれる人、サポートしてくれる人が多かったです。勉強不足なところもあるけど、それは学べばいいやという気持ちに切り替えられるようになりました。
伊藤:それが僕らがアントレプレナーシップ学部でやっていきたいことそのものなんですよね。自分の頭で考えて、知って、また考えて対話して議論しながら、自分の足で踏みだしていく。やってみてイマイチだったらやり直せばいいし、よければ進む。この「回転」を生み出すことが、ほぼすべての目的ですよね。
荻野:やっぱり怖いんだけども、そういった一歩を踏み出すシミュレーションをしてみるとか、実際にやってみるとかが大事になりますね。そうすると、まさに能條さんみたいにいろいろ応援が集まってきたり、仲間が集まってきたり、視界が開けてきたりしますね。ちょっとした一歩をみんなで踏み出せるような社会にしていきたいなと思いますね。
能條:今日のテーマでも「Z世代」って入っていますけど、私が活動している中で、基本的に同世代でも自分を「若者」って括って言うのはちょっと違和感あるんです。でも、私たちの世代特有かなって思うのは、いい意味かはわからないけど「自己愛」が強いんです。
私もそうだし、基本的にみんなが活動しているのは「自分のため」なんです。自分が生きている社会をよくしないと自分が困るからやっているし、何をしていてもしていなくても自分は価値がある人間で、だから自分の意見は聞かれて当然って思っている部分があるんです。そうやって日本の自己肯定感も上がっていけば、きっと一歩踏み出せる人も増えてくるんじゃないかなと思ったりしますね。
荻野:まさに。今年のWisdom2.0Japanのそれぞれのセッションは、スピーカーは違えど、それぞれの方のメッセージに共通点があるなぁと思っていて、まず「自分自身を大切にすること」なんですよね。他者を大切にするために、自分を大切にする。他者の大切なこと、他者の個性を活かすために、やっぱり自分の個性も大切にするし、そして他者と自分がつながっていく。このあたりは今回ご登壇されているみなさんの共通点なのかなとに思います。
このセッションは「Z世代」って括っていますけど、もしかしたら本当にこれからいいウェルビーイングな社会を作っていくヒントって、「世代」で切るんじゃなくて、その「時代」に合ったヒント、もしくは前に進んでいくようなフレームワークなんだと思います。ゴールデンルールがだんだん見えてきたなって思っています。
伊藤:すごい、まさに「Z世代から全世代へ」ですね。
能條:そんな感じですね(笑)。
荻野:いろんな世代の思いを持った人たちがフラットにつながって、前に進んでいけるような社会を作っていきたいと思いますね。これは僕の勝手な思い付きなんですけども、Wisdom2.0でも、政治的な活動ではなく、若年層そして全体的な投票率を上げていくようなヒントをみんなで発信していけるといいなと思いました。
やっぱりみんなが声を上げることがすごく大切だし、「あ、ここでも言っている、ここでも言っている」ってなると、それぞれ感化されて「投票に行ってみようかな」という活動にもつながってくるかなと思ったんですね。もうすぐ衆議院選挙もありますので、みんなでつながりながら活動していけるといいなと思っています。
荻野:間もなく時間なんですけども、能條さん、今度出版される書籍について最後教えていただいてもよろしいでしょうか?
能條:いいんですか、ありがとうございます。10月20日に『YOUTHQUAKE』という本を出します。
『YOUTHQUAKE: U30世代がつくる政治と社会の教科書 』
これは最初に言ったとおり、若い世代の投票率の低さって、若い世代が責められるように書かれることが多いんですけど、私はいつもそれを見る度に「いや、違うんだよ」って感じています。別にみんな、この社会を終わりにしたいとかぜんぜん思っていなくて、ただただ本当にわからないことが多すぎて、何から学んだらいいのかわからないという話が多いんです。
であれば、自分たちが欲しいと思う教科書をまず自分たちで作ってみようっていうことで、NO YOUTH NO JAPANのメンバーで「どういう教科書があればいいかね」と話して作ったのがこの本になります。なのでこれは20代だけじゃなくて、意外と他の世代も求めていることなのかなとも思っています。
いつもSNSで情報発信をしているけれども、流れるSNSではなく、まとめてインプットしてからSNSの波に乗るのも大事かなと思って、今回初めて本にまとめてみたので、よかったら手に取ってもらえればうれしいです。
荻野:参加者のみなさまはぜひ頭の中にとどめていただいて、必要であれば購入いただければと思います。羊一さん、短い時間のセッションでしたけれども、何か最後にメッセージはございますでしょうか?
伊藤:今日話してすごくつながったのが、結局最後は「ソサエティ(社会)に対してこうだ」ってことにつながるんだけど。でもその前提は、能條さんは「自己愛」とおっしゃっていたけど、「自分自身を幸せに生きること」ですよね。そこから始まるんです。
そのためには、やっぱりまず「汝自身を知れ」ですね。自分の内面に目を向けることが、すべてのスタートであるって改めて感じました。
これはあえてまとめるわけじゃないんですが、やっぱり「マインドフルネス」で言っている感覚ですね。「リード・ザ・ソサエティ(社会を牽引する)」の前提は、「汝自身を知る」という、今を生きる自分自身を見つめること(「リード・ザ・セルフ」)になるのかなと。自分を見つめることは社会とつながっているんだというイメージが持てることが大事だなって思いましたね。
荻野:羊一さん、きれいにまとめていただきましてありがとうございます。
伊藤:きれいにまとまった“ふう”です(笑)。
荻野:お2人とも、今日はお忙しい中お時間いただきましてありがとうございました。今後も機会があればぜひまたコラボレーションをお願いしたいと思っております。本日は、伊藤羊一さん、能條桃子さんにご登壇いただきました。みなさん拍手をいただければと思います。
一同:ありがとうございました。
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