2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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平田はる香氏(以下、平田):「人々の健康を」というビジョンにしたことは、自分にとってすごく推進力を与えたと思うので、よかったなと思っています。「どうやって考えてビジョンを作ればいいの?」ということになると思うんですが、突き詰める。自分で膝を突き合わせて問答ですよね。それをやらないといけないと思っています。
わかりやすいので先ほどからパン屋を例に使っていますが、例えば「パン屋をやりたい」と思いついた。でも、これはビジョンではない。じゃあどうやって考えよう? という時に、「どういうパン屋をやりたいの?」と自分に問うわけですよね。
そうすると、「塩・水・粉だけの材料で作りたいなぁ。私はそういうパンが好きだから、そういうパンをやりたいの」というところまで行く。「なんでそうしたいの?」と自分にまた問いかけると、「毎日食べるものはシンプルな材料がいいよね」と考える。
「じゃあ、毎日食べるものはシンプルな材料が良いというのはなぜなの?」というと、健康的なパンが世の中に少ないから。「じゃあ、それをどうやって? どういうことなの?」ともう一度問うと、自分は人々の健康を支える仕事がしたいんだな(と気がつく)。
だから、ただ「パン屋をやりたい」と思っていたわけじゃなく、そこまで考え付くにはいろんな構造があったわけですよね。そうすると、じゃあ言い方をきちんと考えようと。「人々が健康である社会」を目指そうということで、ここまで出てくる。これは、私のいつもの考え方のフローです。
平田:子どもの頃、素因数分解がめちゃくちゃ好きで、「なんでこんなでっかい数字もこんなに小さくなっちゃうんだろう」と思っていて。素数でひたすら割っていくと、すごくわかりやすくなりますよね。素数は何なんだろうと考えた時に、5W1Hなんですよね。
「いつ」とか、「Why」「When」「How」「What」、そういう問いかけを脳内で繰り返して分解していくんですよ。そうすると、一番下に一番小さい最小値が、割り切れない数が出てくるんです。それがビジョンなんだと思うんですよ。
これは「人々は健康である社会へ」ということ以上、小さくならない。素因数分解だと数が小さくなってきますが、これは逆に大きくなっているんですよね。おもしろいなと思うんですが、最初のほうが具体的なのに、具体的なものに5W1Hで割っていくと、すごく抽象的な根幹みたいなものが見えてきて。こうやってビジョンを考えたら良いんじゃないかな。
悩みはさっきの「肉体労働はつらい」とかでも、スタートは良いんです。「なぜ?」は「Why」と書けますよね。「なんで肉体労働はつらいんだろう」と考えると、「朝から夜まで12時間毎日働いているな」となりますよね。それを書く。
「じゃあ、なぜ12時間働いているんだろう?」となってくると、人が足りないからかな? となって、人が足りないのはどうすればいいの? 雇えばいいんじゃない? というふうに答えが出てくる。何でもいいんですよね。
わからないことを考える時に、5W1Hで割り算しようとするだけで思考が深まるので、途中で「うまく回答が出てこないよ」という人もいると思うんですが、これを日を置いてまた考えるんですね。
寝かせておいて考えると、意外とそれがなにかの拍子で割れたりするので。常に念頭にビジョンを置きつつ、そういう割り方をすると、日頃の問題も解決できるんじゃないかと思います。
最近ときどき、中学生とか高校生、学校から講演の依頼を受ける時があるんですが、このお話をしています。「誰でもできるよ」と言ってワークショップにしてやってみたりとか、「ちょっと悩みを書いてみようか。今、問題が起こっていること何だろう?」って。
それが高学年になってくると、「社会問題を解決する事業化をしてみよう」と言って、経営計画まで立ててみるというのも、高校でやったことがあります。みなさん、もしかしたら使えるかもしれないので覚えてみてください。
平田:「わざわざ」のビジョンが今、どうなっているかを説明したいんですが、ビジョンをさらに分解して考えるようになって、今年はコーポレートアイデンティティというものを作ったんですよね。
一般的には「CI」と言われているものなんですが、1950年代くらいにアメリカで始まった考え方です。日本では1970年代にホンダが初めて取り入れました。
みなさん、「やっちゃえNISSAN」というフレーズを覚えていませんか? CMでバーンと出ているメッセージって、だいたいコーポレートアイデンティティです。ここでいうと、うちだとスローガンに設定されているのが出ています。
コーポレートアイデンティティの考え方として、先頭にビジョンを置いて、実現したい未来の姿を一番向こう側に置くんですね。真ん中に「じゃあ、それをやるための『わざわざ』の使命は何なの?」を考える。
私たちは「人々が健康である社会」を実現したいので、使命としては「人々が健康であるということに、必要であるモノ・コトを提供する」というのが使命であると。これができれば、健康的な社会になるのではないかとミッションにしています。
「バリュー」は誰宛かというと、ユーザー宛です。約束をする価値。これは、私たちを利用するとあなたたちにはこんなバリューが生まれますよ、ということです。
「わざわざでサービスを受ければ安心だよね」「わざわざで買えば健康的だよね」「わざわざで買えばだいたい壊れない」「わざわざで買ったら修理してもらえるよ」という安心感を顧客に与えたいと。それをバリューに設定しています。
平田:スピリットはお客さまの反対側なので、社内の人です。社内の人にこの理念を伝えるために使うのは、「全ては誰かの幸せのために」。これは「社会のために」と言うと、ちょっと大きいですよね。
もしかしたら、「自分が店頭でレジを打つのは、社会の何のためになっているの?」と、思っちゃうかもしれないから、自分の労働状態が良くて、お客さまも喜んで帰ってくれたり、周りの同僚とも楽しく仕事ができている。そして早く帰れるので、家族にも健康的な食事を作ってあげられるとか。
あと、いい事業をやっているから、「わざわざで働いていると、地域の人にも『いいね』と言われるな」とか。「三方よし」とよく言いますが、取引先のことも考えています。あなたの仕事はすべての誰かの幸せにつながっています。だから、丁寧に今日もコツコツやりましょう。これを社内では、スピリットとして浸透させようとしています。
そしてみんなに与えるのが、さっきの「やっちゃえNISSAN」とか、そういういろんなスローガンになってくるんですが、「よき生活者になる」というのをこれからわざわざの合言葉にしようとしていて。
「よき生活研究所」というお店が、今年か来年に(長野県)東御市にオープンする予定なんです。わざわざでサービスを受ければ安心だし、自分なりのよい生活が、ここのフィルターを通すとできるんじゃないかなと思ってもらいたい。
平田:「健康である社会」と言うと、お肉を食べちゃダメとか、お酒を飲んじゃダメとか、煙草を吸っちゃダメとか、みんないろんなことを制限されるのかなと思うかもしれないんですが、私たちは人それぞれの健康を探すためのサポートをしたいと思っているんですよ。
私、この人生を今まで生きていて感じることなんですが、体の強い・弱いってありますよね。ホリエモンさんのインタビュー見ていて思ったんですけど、お肉を食べてもあの人は健康なんですよ。たぶん消化機能が強いと思うんですけど、いつもすごく元気だし、堀江さん自身もそういうことを言っているのを聞いて。
でも、もし私が堀江さんと同じ食生活をしたとしたら、体がすぐ壊れるんですよね。私、けっこう虚弱で。あまり量をガツンと食べちゃうと、すぐお腹が痛くなってしまったりとか、わりとそういうのがあって。
でも、もし堀江さんに「あなた、肉(ばっかり食べたら)ダメですよ。私には健康的でないから、きっとあなたもそうだよ」と押し付けたとしたら、それは違うんですよ。2人はそれぞれの健康の姿、別の姿を持っているんですよね。
だから、おうちの子どもが「スナック菓子を食べたい」と言っても、お母さんはそれを食べるとアレルギーか何かが出るかもしれないけど、子どもは「友だちと一緒に食べること」を選択したい時もあるんですよね。
そこに親が介入して、「絶対にそれは体に悪いからダメ」とは言ってほしくない。それがあなたたちの選択なんですよ。だから、「よき生活者になる」というのは、人それぞれ健康に対するスタンスが違う。「あなたなりのよき生活を作ってください」と言いたくて、こういうスローガンにしました。
だから、さっきの話のビジョンは、こうやって分解して考えていて。単純に「人々が健康的である社会へ」と言うと伝わりにくいので、相手によって言語を変えていく。お客さまにはこう言う、社内にはこう言う。自分たちは今、こんなふうに作っています。
理念やものを全部まとめたコーポレートサイトが、今月末にリリースされるんです。なのでちょっとお見せしたいと思ったんですが、ユーザー名とパスワードがわからないので、また次でもいいですか(笑)。これ、本当にお披露目会したかったんです。見せたかったんですけど忘れちゃいました、すいません。これで終わりです(笑)。
(会場拍手)
井上:平田さん、どうもありがとうございました。
平田:ありがとうございます。
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