2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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安居昭博氏(以下、安居):みなさま、はじめまして。安居昭博と申します。2021年7月に、この度私の初めての書籍『サーキュラーエコノミー実践』という本を出版させていただきました。2015年から拠点にしていたオランダでの取り組みを、本の中で書かせていただきました。
サーキュラーエコノミーという仕組みを日本に伝えていく・広めていくことによって、少なくとも今よりも、より良い経済と社会の仕組みやモデル作りができるんじゃないかと思っています。
視察イベントの開催であったり、あとは講演会やアドバイザーをやったり、そういったいろいろな活動をしてきたんですが、原稿を書き始めてだいたい2年くらいを経て、1冊の本にまとめることができました。
『サーキュラーエコノミー実践』というタイトルなんですが、そのテーマを日本で考えた時に、まさに実践者の1人として、必ず思い浮かぶのが田口さんだったので、今日、お話しさせていただけるのをめちゃくちゃ楽しみに来ました。よろしくお願いします。ありがとうございます。
田口一成氏(以下、田口):ありがとうございます。じゃあ、僕も自己紹介。(本を)持ってくるの忘れたんですが(笑)。僕も『9割の社会問題はビジネスで解決できる』という本を、2021年5月に刊行しました。
社会課題をビジネスという手段で解決することも大切なんじゃないかな、ビジネスで解決できる部分もけっこうあるんじゃないかな、という思いがありまして。
まさにそれを実践していくプレーヤーたちが増えたらいいなということで、さまざまな社会問題、最近は「ソーシャルビジネス」と呼ばれるものを世界15ヶ国で展開しています。昨日、また1社増えて41社になりました。
例えば、昨日増えた1社の取り組みとしては、マレーシアに難民として渡った無国籍状態の人たちをサポートするものです。
国に帰りたいけど帰れない、なかなか安定して生活しづらい、またいつ警察に捕まるかわからない。そういう彼らを国に帰すことができて、働く仕組みができるのかを、企業としてやってみようという取り組みなんですが、そのようなさまざまな人たちに対して、企業だからできることがあると思ってやっています。
田口:安居さんと初めて会ったのは、1年くらい前ですか?
安居:そうですね。2020年の秋くらいに。
田口:ある方に、「ぜひお会いしたほうがいい」と紹介いただいて、安居さんの話を聞いたら、めちゃくちゃいい人で。サーキュラーエコノミーの話をZoomで1時間くらいレクチャーしてくれたんですよ。
安居:初対面で。
田口:サーキュラーエコノミーって、すごいなと思って感動して。それで、ボーダレスグループの社長たち全員に聞かせたいと思って、実はボーダレス向けにレクチャーをやっていただいたんですよね。
安居:そうですね。やらせていただきました。
田口:僕らは環境配慮にはとても気を付けてやってきた会社なんですが、今日、このあとお話があると思いますけど、「リジェネラティブ(Regenerative)」という概念であったり、さらに環境に良いことをするには、具体的にどういう方向にいったら良いのかを教えていただいたりして。
社内で、今日も「安居さんが来る」と言ったら、数名駆けつけてくれました。ボーダレスグループ、安居さんに感化されております。
安居:まさに実践者の田口さんの視点から見て、この日本での、そしてボーダレスでのサーキュラーエコノミーの実践というか、注目度はどうですか?
田口:ボーダレスグループは、サスティナブルに限った事業体ばかりではないんですが、どんな事業体をやっていても、そこに対する配慮というか、環境的負荷に加担しないようにやることは考えています。1つ大切に守られているルールとしては、そういう考えがベースにあります。
田口:安居さんのレクチャーからしばらくして、実はゼロ・ウェイスト活動(ごみを生み出さない社会を目指すこと)を始めました。ゼロ・ウェイストな社会をどう作れるか、というところを目指す、SUTE.lab(ステラボ)という団体です。「捨てるラボ」から派生したネーミングで、捨てることをもう一度考え直してみようという、そういう研究と実践をしていくつもりです。
安居:おお。
田口:産業廃棄物の処理をされている、石坂産業の石坂典子さんとお会いした時のお話も印象的でした。石坂産業って、産業廃棄物を最後は解体するか、埋め立てるか、それとももう1回資源化できるかという、サッカーでいうゴールキーパーみたいなところなんです。
産廃の最終現場を見てきた彼女が言ったのは、「昔はいろいろなものをリサイクルしてたんです。だけど今は、より強く頑丈に、そして安くすることだけを考えて作っている。確かに安くていいものはできている。だけど最後、いろんなものが混ざった状態で、分解してリサイクルすることがすごく難しくなってきている。これからは、捨てる時のことを考えてものを作らないといけない」ということ。
もの作りをするいろんな人たちが、捨てる時のことを考えてやっていかないといけない。それで、デザイナーとかアーティスト、クリエイティブな人たちに声をかけて、有志で月1回くらい集まって、「ゼロ・ウェイストアワード」みたいなものを作ったりとか、ちょっとずつ発展していっています。「SUTE.lab」という組織です。
具体的には、「CHOICE! ZERO WASTE AWARD」というものですが、みなさんの生活の中で、こんな素晴らしい商品、サービス、こういう選択肢がありますよ、というものをおもてなししていこうというプロジェクトです。表彰と発表、みたいなかたちで。
安居:特に今の時代の日本で行うのが、すごくおもしろいですね。
安居:日本でもここ数年の間に、サーキュラーエコノミーだったり、ゼロ・ウェイストを本質的に取り入れた、しかも日本ならではの取り組みがすごく生まれてると思うんです。
例えば、糸くずなどを元にした「反毛」という再生毛が、もともと日本にはあったそうなんです。ウールのセーターがボロボロになって着られなくなった時に、繊維をまたウールのセーターにすると、また新しい命が生まれる。そういった文化を今の事業に取り入れるところもあって。
あとは、受注生産もこれからの可能性になりそうだなと思っています。僕は今、京都に住んでいるんですが、「tezomeya」という草木染めのお店がありまして。
お店に行って、無地のTシャツのサイズを選んで、それを草木染めで染めてくれるんですね。カラーバリエーションがすごくたくさんあって、自分で選べるので、それを染めてもらった3週間後に取りに行くんです。草木染って、着始めるとやはり色落ちしやすいけど、tezomeyaさんだと、色の染め直しが何回でも無料というサービスが付いていて。
色を選んでもらってから染める受注生産だから廃棄が少ないし、生産拠点と市場が近いからこそ、染め直しなどの関係性が成り立つんだなと思っています。日本の現状に合った、日本ならではの取り組みができているのも、今の時代はすごくおもしろい流れになっているなと。
田口:ファストファッションならぬ、スローファッションですね。
安居:そうですね。
田口:注文してから作る。スローだからこそ、ちゃんと考えるという。欲しいと思ったときに衝動買いできる、ファストファッションの価値もありますが、届くのが3週間後だと衝動買いがなくなるし、ちゃんと時間がかかるのも、また1つのこれからのおもしろいかたちかもしれない。
だからこそ思い入れもできるし、家でも着たくなるし、結果それが自分にとっても経済的であるという。
安居:そうですね。最近、身の回りのものを見渡してみた時に、あらためて「今すぐに欲しい」と思うものって、実はぜんぜんないことに気付いて。
自分にフィットする一生モノが手に入るのであれば、それはプラスアルファで20パーセント・30パーセントでもお金を出せる。しかもできるまでに2〜3週間かかるけど、それも楽しみに待っちゃうなとも思ったりして。
例えばスーツとかも、今すぐに必要だというタイミングって、あまりないと思うんですよ。それよりも、2週間とか3週間とか待ったとしても、少しでも自分に合うもののほうがいい。それって売り手側からすれば、ロスが減ることにもつながりますし、田口さんが進められているゼロ・ウェイストアワードの考えにすごく近しいなと思って。
田口:そうですね。本にも書いたのですが、ボーダレスグループで「Enter the E」というアパレルの会社がありまして。「エシカルファッション」と言われるものを普及したい、だけど実際にはなかなかエシカルファッションを売ってくれる場がない、ということからスタートしました。
例えばオーガニックコットンを使うと、どうしてもナチュラル系のデザインに偏っていくので、デザインのバリエーションを広げる、そして価格帯も広げることを目指した、エシカルファッションに特化したセレクトショップです。ただ、確かに商品はエシカルなんですが、仕入れ販売していたので、どうしても在庫が出ちゃうんですよ。売れ残っちゃう。
それで、「いくらエシカルなものを扱っても、この売り方じゃいけない」ということで、受注販売に変えたんですよね。今はオンラインで1点1点直接説明をして、そこで注文をもらったものを製造するようになっています。
「Enter the E」では、届くのに数週間かかる売り方に切り替えた。そうやって、気付いて少しずつできることから事業を変えていくことで、サスティナブルな社会に近づいていくきっかけを、企業サイドからもいろいろと作れるんじゃないかなと思いましたね。
安居:まさにですね。
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