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トップが変われば組織は変わる!女性活躍を実現する組織の作り方とは?(全4記事)

ジェンダーギャップ指数が156ヵ国中120位という、日本の現状 「官・学・民」それぞれの立場で考える、日本の女性活躍

2021年3月、世界経済フォーラム(WEF)が発表した「ジェンダーギャップ指数ランキング2021」で120位だった日本。そこで日本には現状でどれだけジェンダー格差があるのか? そしてどうすればジェンダー平等の社会に少しでも近づけるか? といったテーマについて、早稲田大学大学院経営管理研究科教授であり『世界標準の経営理論』の著者・入山章栄先生と、全国最年少女性市長の徳島市長・内藤佐和子氏、そして女性7割の営業アウトソーシングサービスを提供している株式会社SurpassのCEO石原亮子氏が語りました。

入山章栄氏、内藤佐和子氏、石原亮子氏

司会者:よろしくお願いいたします。では最初に、本日ご登壇いただくみなさまを紹介をさせていただきます。

まずお一人目のご登壇者は、入山章栄先生です。早稲田大学大学院経営管理研究科、早稲田大学ビジネススクールの教授でいらっしゃいます。『ワールドビジネスサテライト』のレギュラーコメンテーターを務めてらっしゃるほか、数々のメディアでもご活躍されてらっしゃるので、みなさんも入山先生のことはよくご存知でいらっしゃるかと思います。

2019年に発売された著書『世界標準の経営理論』は、800ページを超える分量でありながらベストセラーとなりまして、新しい時代の経営学として認知されていらっしゃいます。本日は、ぜひそんな入山先生の経営の視点から見た女性活躍のお話をおうかがいできればと思っております。よろしくお願いいたします。

世界標準の経営理論

入山章栄氏(以下、入山):よろしくお願いします。

司会者:ではお二人目のご登壇者、内藤佐和子徳島市長です。令和2年4月から「最年少女性市長」として、徳島市長に就任されてらっしゃいます。内藤市長は2003年、東京大学在学中に多発性硬化性を発症されて、その難病を乗り越えて東大の法学部をご卒業されたというご経験をお持ちの、非常にパワフルな女性でいらっしゃいます。

直近では、今年3月に在日米国大使館および駐大阪・神戸米国総領事館から「勇気ある女性賞」を受賞されて、また4月には男女共同参画会議の議員も就任されていらっしゃいます。弊社Surpassとは、3月に連携協定を締結させていただいておりまして「とくしま TECH WOMAN」という、徳島市の女性活躍を推進していく事業もご一緒させていただいております。

内藤市長、プライベートでは1児の母と伺っております。ぜひ今日は、政治の視点から見た女性活躍の話をおうかがいできればと思っております。

内藤佐和子氏(以下、内藤):よろしくお願いします。

司会者:お願いいたします。そして最後、3人目の登壇者。弊社・株式会社Surpass代表取締役CEOの石原亮子です。20歳から大手生命保険でトップセールスとして活躍して、一部上場企業からベンチャー企業まで100業種以上の営業経験をしてまいりました。

その中で、2008年に「女性営業の力を社会的意義のある事業に生かしたい」という思いで、Surpassを立ち上げました。弊社は今年で創業13年目を迎えますが「女性活躍という言葉がなくなる日まで」という想いを込めて、今、140名近いメンバーのうち約7割が女性という組織で、営業アウトソーシング事業を展開しております。

本日は、実際にビジネスの現場で女性活躍を進めてきた視点から、お話しをさせていただければと思います。

石原亮子氏(以下、石原):よろしくお願いいたします。

司会者:ではここから、石原に進行を渡したいと思います。よろしくお願いします。

「女性活躍を実現する組織の作り方とは?」

石原:入山先生、内藤市長、お忙しい中ありがとうございます。今日は「官と学と民」という、それぞれの知見だったり、それぞれの立場でお話しができればと思います。

入山先生に関しては「世界の」というタイトルで、経営ですとかダイバーシティ&インクルージョンとか、幅広いご研究を企業と取り組まれたりされています。

内藤市長に関しては、最年少ながらもリーダーシップによりどんどん市政を改革してらっしゃいます。私は民間の企業で、けっこう男性の多い会社さんとお仕事をさせていただく機会も多いということで、今日はそれぞれの視点・経験のところから、日本の今の女性活躍の現状だったり、今後何していったらいいの? という話をしていけたらと思います

来年、改正された女性活躍推進法が施行されます。より国も力を入れていくというタイミングで、いろいろ悩まれている方も多いと思いますので、なにか「気づき」などを持って帰っていただければと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

では本日のアジェンダです。「日本の女性活躍の現状」と「このままでいったら日本の未来ってどうなるの?」というところ。そして「女性も活躍できる組織を作るために○○から始めよう」ということで、最後にメッセージをいただければと思っております。

ジェンダーギャップ指数が156ヶ国中120位で、G7では最下位

石原:さっそく1番目の日本の女性活躍の現状。まず、この数字をご覧いただければと思います。2021年版のSDGs達成ランキングなんですけども、ハフポストから持ってきております。

北欧が上のほうにいて、日本は165ヶ国中の18位におりまして。昨年は17位だったので、常連と言えば常連で、順調に下がってしまっているという感じではあります。その中でも赤いところ。17個あるうちの赤いところが「主要な課題が残ってるよ」というところになってます。

今回の話で言うと、この「ジェンダー平等を実現しよう」の5番のところも真っ赤なんですね。

あとは毎年出る「ジェンダーギャップ指数」。156ヶ国中の120位、G7では最下位で、経済分野では117位ということで、これもまた昨年よりも下がっている。内藤市長がいらっしゃる政治分野においては、もう147位と。非常に低い、不名誉な数字になっているというのが現状になります。

さらにもう1つ。こちらは相対的な数字で、けっこう現実的なところで言いますと「女性の管理職の比率」。これは今後の指標になっていくところの1つではあるんですが、これもG7最低。しかし「女性の就業率」は年々上がって、71パーセントまで達しています。

「女性の管理職の比率」は14パーセントで。これはソースによって11パーセントだったり14パーセントだったりと、ちょっと差はあるんですけども。母数が70パーセント台に達してきているにも関わらず、やっぱりここが10パーセント台の前半をずっといっているというところが(日本の)現状になります。

はっきり言うと「世界から激しく離されてきている」

石原:入山先生。今、SDGsの達成ランキングや、その他いろいろな数字を見てきました。日本の現状というものは、世界から見たり、いろいろ大きな会社に携わっていらっしゃる先生から見て、このジェンダーギャップのところってどのように見えてらっしゃいますか?

入山:まず僕は比較的、東京にいて。「世界の」とか、あまり偉そうなことは言えないんですけど。大手企業さんや東京のベンチャー企業さんとのお付き合いはありますが、逆に地方の現状とかって、まだよくわかってなんですよ。そのへんはむしろ、内藤さん、石原さんのほうが詳しいと思うんで。

僕自身もバイアスがあるとは思うんですけど、それを踏まえてもはっきり言うと「世界から激しく離されてきている」というのが現状で。日本でもがんばりだしている会社さんっていうのが、ちょっと出てきていて、有名なのはカルビーさんとか。僕はダイバーシティのイベントに出たことがあるんですけど、本当に真剣にやられています。

あと、アクサ生命さんも、安渕(聖司)さんっていうGEキャピタルの社長をやられていたすばらしい方なんですけど。安渕さんがアクサ生命の社長になって「とにかくダイバーシティなんだ!」って、どんどん進められるようになってますし。

あと、アメリカン ファミリー(アフラック)ですね。ここの古出眞敏社長という、すばらしい方。あの方が就任して最初にやりだしたのは、ダイバーシティ改革。それが結局、会社全体にプラスの効果をもたらしたんで。

ダイバーシティを増やそうとすると、当然、女性の方にいっぱい活躍してもらおうとなるじゃないですか。そうすると、デジタルが絶対に必要なんですよ。なんでか? というと、どうしてもまだ今の日本社会だと、女性の方のほうが家庭も見ながら働くってなるから。

アメリカン ファミリーって、そもそもコロナの前からデジタルコミュニケーションを実装させて、家で働けるようにしてたんですよね、なので、このコロナになってもぜんぜんパニックが起きなかった。

石原:すごい。

入山:今、アメリカン ファミリーはよくなってきてるんですけど。「その改革の起点になったのはダイバーシティだった」って古出社長は言ってて。「大したもんだな」みたいな。少しずつそういう会社が出てきてるんですけど。とはいえまだまだで、スピード感が遅いと。そういう会社ばっかりじゃないというか、大半の会社はそうじゃないので。

「憎くきアメリカ人」の女性をトップに置く、ドイツのSAP

入山:今、世界のほうが猛烈な勢いでダイバーシティが進んでいるんですよね。そのスピード感の中で日本は相対的に、まさに数字が象徴的だと思うんですけど、女性の就業する方はだいぶ増えてきたと思うんですが、一方で管理職になられる方とか、ましてや役員になるような方がぜんぜん出てきてないと。

「いや、これ時間かかるんだよ」っていうのが、普通の会社の言いわけなんですけど。海外のほうはもう、そこはある意味で思いきってバンバン引き抜いて、上に上げてるんですよね。

例えば、一番わかりやすいのがドイツのSAPですね。SAPは、今は変わったんですけど、この前すごい有名だった経営者さんが辞めた後は、2人CEO体制になって。1人がドイツ人の37歳の男性ですね、若者です。もう1人が、46歳か47歳ぐらいのアメリカ人の女性なんですよ。

ドイツの会社ですごくないですか? ドイツ人って基本、アメリカ人が嫌いなんですよ、本当は。戦争に負けてますからね。「憎くきアメリカ人」みたいな。この憎くきアメリカ人の、しかも女性ですごい優秀な方なんですけど。それをトップにしちゃうんですよね。そのくらい、トップからダイバーシティを進めてかないと、もうグローバルな中で生き残っていけないと。

そういう感じで始めてるんで。僕は今、早稲田大学のビジネススクールでMBAを教えてるんですけど、実は昼のプログラムのトップやってるんで、学生の8割ぐらいが留学生なんですね。世界中から集まった優秀な学生なんですけど、はっきり言うと女性の数が半分以上なんですよ。グローバルって、そうなってきてるんですね。日本もちょびっと変化は出てきたんだけど、そのスピード感で今はだいぶ離されちゃってるなっていうのが、現状だと理解しています。

石原:離されちゃってるのか、落ちてっちゃってるのか。その両方か、みたいな。

入山:相対的に落ちてってるってことですね。

石原:そうですよね。でも事例が出てきてて、今までよりも数が多くなるっていうのはいいですね! ロールモデルみたいな。

入山:そうですね。特にどっちかっていうと、外資系の会社ですよね。外資系の会社は当然、世界を知ってるんで。やっぱり日本でも今、アクサ生命もそうですけど、外資系の会社の方が進んでいるし。外資系出身の方が国内の企業に移ることで、少し意識醸成が変わってきたっていうのが現状かなって、東京では見てます。

地方都市としてはモデルになりうる徳島市

石原:ありがとうございます。変わりまして、内藤市長。私も最近、徳島市に関わらせていただいたり、他の地方都市の方々ともいろいろ取り組みをさせていただいて感じるのですが……やはり東京とまたぜんぜん事情が違うな、というのをあらためて感じています。

内藤市長は「市長に就任してから」というよりも、ずーっと前から徳島とかを見てこられてますよね。日本の現状と、そういった地方都市の現状のジェンダーギャップのところって、どのように今は感じ取られてますか?

内藤:さっきも「政治の分野で147位」という衝撃的な数字がありましたけれども。さっきの管理職の話もそうですが、やっぱり意思決定層に女性がすごく少ないですよね。特に若い人、女性もそうですけど若者も少なくって。私は徳島に帰ってきたのが2010年ぐらいなんですけど、そこから徳島市とか徳島県の審議会とかにも入らせていただいて。

20代の頃から審議会の委員とかさせていただいてたんですけど、やっぱり20代の女性がそういう審議会とかに行くと「職員さんですか?」とか「何か手伝いに来たんですか?」っていう感じの扱いを受けてしまうような状況だと思ってます。比較的、徳島県に関しては審議会の女性の割合が平均で50パーセントを超えてたりとか。女性を引き上げようとする意思があるので、そこはまだマシなほうかなと思ってるんですけれども。

全体的な状況としては、まだまだ女性が上にいけるというか、管理職の引き上げという部分では難しい状況かなと思ってます。

入山:徳島市議会の中で、女性議員の方って割合でどれくらいいらっしゃるんですか?

内藤:今は30人中5名が女性ですね。

入山:なるほど、6分の1。

内藤:そうですね。共産党さんが2名、公明党さんが2名、無所属1人なので。党から2名、2名で4名来ているので、お母さん代表という方が無所属で今は1人上がって来てますけど。なかなか、そういう党に所属してないと上がっていくのは難しいのかなという気はしてます。

石原:徳島のいろんなランキングを見ると、経済3団体のトップも女性だったり、女性の管理職比率も全国1位であったり。女性の社長の比率も全国1位2位あたりを行ったり来たり。

入山:すごいですね。

石原:あと、家計に占める妻の所得も全国1位で、男性の育児参加率も全国1位。地方都市してはモデルになりうる都市。

入山:それは伝統的に、徳島にそういう風土があったのか。それとも内藤さんとかいろんな方が改革されてきたのか、どちらなんですか?

内藤:「阿波女」っていう言葉があって、それは「働き者」とか、そういう意味で使われてるんですけれども。基本的に女性は元気で、活発に活躍しましょうっていう雰囲気は、あるのはあります。

東京ほど所得が高くないので、もちろん共働きの家庭も多いですし、地方なので職住近接の部分も大きいですね。なので、夫婦共働きで、必然的に女性のほうが所得が高い場合とかもありますし。そういったことも含めて、子育てでお互いに助け合ったりといった雰囲気は、特に今の若い世代、20代30代にはすごく大きいように感じてます。

日本の中で1位なだけで、世界的に見るとまだまだ低い?

石原:この数字を見て思うのですが、徳島市ってすごいモデル都市になるポテンシャルがある……というか、すでに男女共同参画モデル都市としてもっと取り上げられてもいいと思うんですけど。一方で、実は私は昨日、徳島市の職員の方々にジェンダーギャップの研修を実施しまして。今は2ヶ月に1回、男女それぞれに研修をさせていただいてるんですけど。女性のみなさんにこの数字をお伝えしたところ、逆に「えー!?」って言ってびっくりしてて。ご存じないし「その実感がない」っておっしゃってたんですね。

内藤:ないですね。

入山:それってどういうことでしょうか?

石原:これだけ1位になってても、ぜんぜんその実感がないとなると、日本全体が変わるまでに気が遠くなるな……と。

入山:実感がないっていうのはどういうことですか? 日本の中で1位なだけで、世界的に見るとまだまだ低い?

内藤:そうです、そういうことです。意識もぜんぜん低いですし。例えば徳島市でいくと、私が就任するまで女性の部長は皆無でしたから。女性が働いてはいるけれども、意思決定の場にそこまで(女性が)たくさんいるのか? って言われると、もちろん社長とか管理職の割合は高いですけど、大企業さんとかも含めると、なかなかそこは感じづらい、実感しづらい部分はまだまだありますし。

徳島市に関しても、まだ女性の部長は1名なので、管理職比率もまだまだ低いような状態で。女性の人材プールもすごく大きいわけではない、という状況ですね。

石原:日本の現状で言うと、これだけ1位ってなってても、みなさんの中でその実感はぜんぜんない。比較対象がないというのもあると思うんですけど、あらためて感じたのは、日本のガラスの天井ってだいぶ高いなと思って(笑)。

入山:高いですね。かなり高い。

内藤:なので、選挙で通って、一気にトップにいって、そこから変えていくことが必要なのかなっていうのは、私はすごく思ってることですけど。

石原:それを今まさに実践されて、超改革で大変な中で、今日も来ていただいてるんですが。現状、先進国としては総じて悲惨な状況。あと数年もして、ESG経営とかが当たり前になってくると、本当にビハインドが致命的になっていく。

入山:民間企業だと、投資してもらえなくなりますね。

石原:そうですよね。これは今までにないこと、逆に言えば転機なので、このセミナーも「もう前みたいに戻れない」という意味で、聞いていただいてる方もいらっしゃると思います。

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