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組織の慢性疾患から脱却する「2on2」の可能性(全6記事)

失注ばかりで困ったときに考える「もっと失注を増やすには?」 反転的な発想で見い出す、意外な原因と今後の手立て

近年、変化の激しい環境の中で「実行力の高い組織」を作っていくために、業種・業界に関わらず多くの企業が社内制度として取り入れている「1on1」。しかし「相当の準備や対話の技術がないと、雑談レベルの会話になってしまう」など、運用面での課題が生じています。そんな中、4月に新刊『組織が変わる――行き詰まりから一歩抜け出す対話の方法2 on 2』を上梓された、埼玉大学経済経営系大学院 准教授・宇田川元一氏は、1on1の課題に対し、4人1組の「2on2」という新たな手法によって、具体の行動変容が生まれる対話の場づくりができないか? と考えました。そこで本記事では、同氏が登壇されたウェビナー「組織の慢性疾患から脱却する『2on2』の可能性」の模様を公開します。

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「2on2」で“Aさん”となって話し始めるには?

斉藤知明氏(以下、斉藤):では、Q&Aコーナーに移ってまいりたいなと思います。

34件も質問いただいているので、一問一答形式ではやりきれないかなと思います。少しまとめて、私のほうから代表して問いかけをさせていただければと思うんですけれども。

「自分自身もAさんになってみて話し出すというところについても、難しさがあるのではないかと思っています」という問いをいただいています。「難しさがある中で、どうやって最初に話し始めればいいんだろうか? 場を設け始めればいいんだろうか? というところについて、なお疑問が残っている」というお声をいただいてるんですけれども、いかがでしょうか? 

宇田川元一氏(以下、宇田川):それに関して言うと、個人の問題を語るよりも、組織で起きている……繰り返し起きている、慢性的に起きている課題について「こういうことが起きている」というのを目にして「これ、みんなで話したほうがいいんだけど」みたいな感じで投げかけるのが、けっこうおすすめですね。

だから日頃から「自分のいるところで、繰り返しこういう問題って起きてるよな」とか、そこを考えてみるといいんじゃないかなと。先ほど出した例が「個人の困っている例」だったので、そこのところよりも、むしろ「組織の課題」を考えたほうがより深まるんじゃないかなと思います。

指名するのではなく、話したい人に手を挙げてもらう

斉藤:なるほど。僕が例えば例を挙げるとしたら「こういうのもいいでしょうか?」という問いなんですけど、例えば全社会議というのを弊社ではやっているんですよ。

これはみなさん、どれぐらいの頻度でやられてるかはわからないですけど。我々、変化の激しいフェイズでもあるので、週に1回やってるんですね。

頻度が多いということもあるのかなとは思いつつも、この全社会議の参加率がオンラインになってから、2割ぐらいの人が参加できないことってあるんですね。でも、できるだけやっぱりみんなに参加してほしいと思っているんだけど、なんでなんだろうな? って、これがなんとなく常に思っている課題感の1つで。

この「2割の人が固定化しているかどうか?」というのも、別にまだ探索をしているわけではないんですけれども。こういうことって、みなさんもある意味、当事者意識を持ちやすい。自分自身も参加者、ないし欠席者の主体として関わっているものですし。切り出しやすいのかなーと思ったり。少し広すぎますかね? どうですかね。

宇田川:そういうやり方でもいいんじゃないかと思います。ただ、他の人の声が混じるとやりにくいというのはあって。あと、話したい人に手を挙げてもらうというのがいいと思いますよ。

斉藤:なるほど。そうか、そうか。Bさん・Cさん・Dさんをバッと指名するわけじゃなくって「ちょっとこういうのやってみない?」というのを、手を挙げてもらうということなんですかね。

宇田川:そう、そう。「こういうことについて話したい人いませんか?」という感じで呼びかけるのが、けっこうおすすめかなと思います。

斉藤:なるほど。これ確かに、けっこうポイントですよね。近場の人だけでやってみるというのも、1つ、アリでしょうし。すごく決め打ちで「この人たちにやってほしいんだ」という課題から考えてしまうと、それがまた対話としてうまく進みづらいこともあるかもしれない中で。Aさん・Bさん・Cさん・Dさんも、さっきおっしゃっていた主体性があるかないか? って大きな違いなんですよね。

この組織における現場と、リフレクティング・プロセスを実行されている現場との違いとしてあるんだ、というふうにおっしゃっていましたけど。手を挙げてやってみるというのは、それをとれるようにするってことですよね。

宇田川:そうです。そうするとたぶんこっちが想定していたのと、ぜんぜん違うかたちでその問題を捉えている、というようなこととかも逆に出てきて。いい場になりますよね。

「こういうことについて課題だと思うんで、誰か話してくれる人いませんか?」と、例えば斉藤さんが呼びかけたとして。でもAさんが手を挙げて、違う観点からその問題について語ると「あーそうか。そういうふうにも捉えられるんだ」みたいなこととかが見えてきたりします。

「みんな、手を挙げてくれないのでは?」というバイアス

斉藤:これ、意外とだと思うんですけど「そもそも、手を上げてこないんですよね」というのもバイアスな気はしていて。どういう反応があるかなって想像してたんですけど「いや、声かけてもなかなかみんな乗ってくれないと思うんだよね」って思っているとしたら、それは1つのバイアスである気がしていて。

たくさんの大手企業さんも、僕ら「Unipos」を通して支援させていただいている中で。まさにこの「Unipos」って、最初にある意味「たくさん活発に活用して、意義を理解して活用していただく人たちをどれだけ巻き込めるか」ってポイントなんですけど。

「こういうのやるんだけど、乗る人います?」と聞いたら、どんな企業さんでも必ず何人かは手が挙がるんですよね。

宇田川:だいたい挙がりますよね。

斉藤:そうなんですよね。そこは僕の中でも、ある意味、導入推進していただいているみなさんの感じられている感覚との、ギャップで感じることがあって。この2on2もそうやって……。

宇田川:そうですね。手が挙がらなかったら「手が挙がらなくて困っている」ということから話すのがいいかもしれないですね。

斉藤:あー、なるほど。それすらも課題の1つですもんね。

宇田川:そうだと思います。いつも、どうしてこうなっていくんだろうか? でも、そこで何に自分は困っているのかな? みたいなことについて考えるところから、まずスタートしていくといいんじゃないですかね。

「これを変えよう!」で始めると、挫折する

斉藤:ありがとうございます。では、別の問いにもいかせていただければと思います。このOさんが出してくださった問いが、少し気になっているんですけれども。

「会社方針で『業務の効率化』を謳いすぎているのかもしれないのですが、目的が明確にならない話し合い。特にこの『慢性疾患』というテーマって、目的がなかなか緊急度の低い課題に見えてしまうものについては『業務ではない』という意識が、現場でも管理者層でも強く持たれてしまっている中で。ここを掘り下げる機会を得るのが難しくなっている。経営者意識を変えていくべきなのか。どういう動き方ができますかね?」って悩んでいらっしゃいますね。

宇田川:うーん。そうですね。たぶんまず「これを変えよう!」ってすると、挫折すると思うんですよ。

こういう会社、僕もお話を伺って大変だなって本当に思うんです。これを変えようと思うと、ものすごく挫折してしまうので。まず「目先の業務が逼迫してる中で繰り返し起きていて、みんなの効率性が下がっているような具体的なテーマについて考える機会を持つ」というところからスタートするといいんじゃないかな? って思います。

要はこういう「風土を変える」とか。風土って実態がないじゃないですか。「風土を変えるために話し合いをする」と言ったら、実体がないものについて話し合いをしないといけない。そうすると「それはなんのために、業務の役に立っているんだ?」という話に、すぐなります。これは危ない。

これをやっていくと、そういう状況との対話をぜんぜんできていないということになるわけです。でも、そうではなくて。「具体的に繰り返し起きていて非効率になっているので、これが『どういう原因で起きているのか?』ということを特定して、業務の効率化に貢献するために大事なことについて話しませんか?」という話の持っていき方が、大事じゃないかなと思います。

斉藤:あ~、いいですね。さっきの宇田川先生の「どういう問いを最初に持っていけばいいか?」という時に「個人の問いじゃなくて、組織の問いを持っていくのがいいんじゃないか」っておっしゃっていたのは、まさにそこだなと思っていまして。最初はこういう、経営層も悩んでいる問いを持っていっちゃえばいい、ということですよね。

宇田川:そうです、そうです。困ってるから、そうなっているんですよね。だから「効率化のために時間を使いなさい」というのは、別に効率化をしたいだけでもなくて。たぶんパフォーマンスがどうもいまひとつ出なくて、そのことに対して、みんなよくわかってくれていないんじゃないかな? とかという、いろんなことがあったうえでの方針だと思うので。

そのいろんなところがなんなのかというのが、なんとなく垣間見えますよね。なので、そこの筋に沿ったかたちで始めるっていうのがおすすめかな、と思います。

「声を上げていいんだ!」という安心感

斉藤:組織の慢性疾患、課題感っていうものって、ここに合意しない人ってあんまりいないと思うんですよ。昨今の経営者のみなさんも、マネージャーのみなさんも含めて。「このままだとゆっくり悪化するんじゃないか?」とか「繰り返し問題が起きてるんじゃないか? 例えばこういう例があって……」って言ったとき「それそれ!」って頷いたところを1個目のテーマにして話し始めてみると「確かにこういう対話って重要かもね」って巻き込みやすいってことなんだろうかと思いました。

宇田川:そう、だから繰り返し起きてる問題がいいですよってことです。

斉藤:まさにそれこそ「慢性疾患」ってことですもんね。

宇田川:そうそう。だから例えば「なんか最近、失注が増えてる」とか。

斉藤:(笑)。

宇田川:そういう話でいいんじゃないかと思いますけどね。

斉藤:その中でも「みんなを巻き込むのが難しい」という、Kさんからの質問なんですけど。「このようなプロセスや考え方を行っていかないと『慢性疾患は手がつけられなくなる』ということについては、まさにそのように思います。しかし、今は硬直した息苦しい組織だと、特に若手社員が声を上げるのは難しいんじゃないでしょうか」っておっしゃっていただいてるんですが。

これこそまさに、経営陣含めて、ご自身含めて、自分が声を上げてみるのを、Bさん・Cさん・Dさんの立場で見せると「声を上げていいんだ!」っていう安心感が生まれて、次からも上げやすくなる。そういうサイクルをみんなが思ってる共通の課題……例えばさっき言った「失注が多くなっている」っていうのは、チーム全体の課題なので。

「失注が多くなってるのって、こういうこと悩んでるんだよね」っていう発露から、自分から入っていくっていうのは、今の宇田川先生のお話を聞いていても。みんなが自然に巻き込まれたくなるというか、自分も発露したくなる環境づくりに貢献するんじゃないかなと思いました。

宇田川:そうですね。たとえば「もっと失注増やすにはどうしたらいいか」とかって考えたら……(笑)。

斉藤:(笑)。っていうことですよね、さっきの、反転でしたっけ?

宇田川:そうそう。反転的なことで「もっと失注増やすにはどうしたらいいだろうか?」みたいなに考えてみると「意外にこういうことが原因だったな」みたいなことが、自分たちなりに手立てが見えて。「ちょっとそれ、やってみよっか」みたいなことになりますよね。

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