2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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斉藤知明氏(以下、斉藤):まさにファシリテーターの役割が変わりつつあるというか、ぜんぜん違うという話だと思っていて。最後の「決める」というゴールは一緒なんですよね。決めるというゴールを目指すにあたって、リーダーは“いい選択”をしないといけないというのが前提で。
でもいい選択をするために、自分の意見だけで選択をするのがいい選択なのか? それとも、いろんなアンテナを張ってる中からみんなが集めてくれた情報から統合して出せた意見が、良い意見・良い判断なのか? それは確実に後者であると。
最後に決めるのはリーダーであるべきだし、最後に決めるのは(会議の)場であるべきかもしれない。「決める」ということは必要かもしれないですけど、それを引き出すためのファシリテートをうまくしないといけないよね。そのために「聴くという力」が重要なんだよね、ということなんでしょうね。
篠田真貴子氏(以下、篠田):はい。おっしゃるとおりです。ちょっと乗っからせていただくと、今のは「アイディアを出していく」という例で、斉藤さんがお話しなさったんですが。通常のオペレーション的な業務でも、まったく一緒で。
ここではミスを防ぎたいんですよね。どんな立派なリーダーでも、人間である以上、一定の確率でミスを犯すわけです。エイミーさんの研究の初めは、実はビジネスじゃなくて医療現場だったんですよ。
医療現場って、やっぱりお医者さんの発言権が強いし知識もあるし。治療に対する決定権を持っているのは、間違いなくその担当医師なんですけれども。そこには看護師さんもいれば薬剤師さんもいて、チームで入院患者の治療にあたっているワケですよね。
こういう時に心理的安全性が高い医療チームだと、例えば夜勤に入っている新人看護師さんが「この薬を点滴しておく」という(医師の)処方を見た時に「あれ、これでいいんだっけ?」って。
「ん?」「ちょっと量が多すぎないかな?」って思ったら、夜勤なんだけどお医者さんに連絡して「こうなってますけど、いいんでしたっけ?」って確認ができるのが、心理的安全性が高い状態なんですよね。
多くの確率では、これは経験のまだ浅い看護師さんの勘違いであって、お医者さんが「それでオッケーだから」ということになるんだけれども。その時にお医者さんが「夜中に連絡してきやがって、そんなことで!」っていう態度を微塵でも見せたら、(それ以降は、気になることがあっても)言ってこなくなっちゃうんです。
その時に「わざわざ言ってくれてありがとうね」と。「これはこういう理由で正しいんだけど、でも自分も勘違いとかぼーっとしてて、1桁多く書いちゃうこともあるから、また気がついたら教えてください」って言って返すのでは、やっぱり医療ミスの防がれ方って、まったく違う。こういうところから、この心理的安全性というものの研究が始まったそうです。
斉藤:僕、チャット欄を拝見させていただきながら、篠田さんのお話も聞いている中で。すごく素敵なみなさんが集まっていただいてるなと思うのが、内省をされていらっしゃるコメントがちょくちょくあるんですよね。
「僕自身もここは気をつけないとな」って思った時に、さっきの医療現場のお話も聞いていて、聴く力って、実はマネジメントだけじゃなくて個人もなんですよね。
リーダーが決めたことを「押し付けられている」と感じるのか。それとも「なんでこう決めたんだろう?」って考えるのかって、まず聴くというステップがあって。耳から情報が入ってきて、その意図を理解しようという行動を起こして。理解した上で自分の考えと接合させるという、この3つのプロセスに「聞く」と「聴く」って分かれるのかなと思ったんですけど。
この3つ目のプロセスって、チーム自体がどうやったらとれるようになりますか? けっこう否定的になっちゃうとか、レジリエンス(ストレスに適応する力)が低め、固い状態になっちゃってる状態の人って、どうやったらこの3つ目の「相手の考えを、自分の考えと接合させる」というプロセスを取ろうという気になりはじめますかね?
篠田:本当、今の整理はすごくありがたいし、大事なポイントなんですよね。
ヒエラルキー組織の中で下のほうであるメンバーも「上司の意図を理解するのが自分の仕事である」と思うかどうか。そう思うということは、言ってみれば、自分が持ってるスキルとかそういうところはいったん置いておいて、マインドとして「自律的に自分の仕事を作っていこう」というお考えとつながっているんじゃないかと思うんですよね。
篠田:これ、今思い出して、個人としてどうできるかというよりも、また組織風土の話になっちゃうんですけど。航空自衛隊の方のお話を聞いたことがあって。軍隊だから、めっちゃヒエラルキーのある組織なんですけど。
部下が上官の意図を確認する“意図取り”っていうワードが、もう組織の中にあって。「意図取りできたか?」なんていうのを、同僚同士とかですごく確認しあうんですって。
上から下への指示の体系にも「号令・命令・訓令」って、3つ定義付けがあって。
号令は行動だけをいう。「回れ右」みたいな。でも命令は、行動とその意図の両方をセットでいうんですって。「ここにいって向こうの飛行機を迎撃してこい。なぜなら、迎撃をしてここから手前に敵機が入らないようにしたいから」というのが命令。
「迎撃してこい」が行動なんだけれども、意図としては「ここから手前の本土に近づかないようにしてくれ」というのがある。迎撃しに行って、だめだったからって「言ったとおりにやったけど、だめでした」っていって帰って来ちゃだめじゃないですか。
意図に対して「勝手になんとかしてでもとにかく防ぐ」ということをしなきゃいけない。これが命令なんですって。訓令というのは意図だけらしいんですけれども。このように「指示には行動と意図、両方がありますよ」という定義付けがなされていて。
その意図を理解するために、お互い上司・部下とか部下同士でのコミュニケーションをめちゃめちゃ気をつけてるって、この間教えてもらって。すごく感動したんですよね。
斉藤:やっぱり「伝えるために聴く」んですね。命令って、結局、軍隊というのはすごくわかりやすい組織の例だとして、100人チームにいたら100人で1つのことをなさないといけない集合体である。これはもう前提なので。
そこを進めるにあたって、ちゃんと伝えることをするために、伝わっているのかの確認のためにも聴かないといけないし……。
伝えたこと。例えば行動、号令だと「回れ右」レベルでしか、本当に行動って伝えられないと思うんですよ。ではなくって、その中で「右から人が出てきたら、どう対処するべきだろう」とか「仲間が出てきたら、どう対処するべきだろう」と考えるのは、やっぱり個人だからこそ。その人たちがどう動こうとしているのか? も聞かないといけないという、こういう順番なんだろうなと思いました。
篠田:まさにそうなんですよね。だから実は「聴いてばっかりだと話が進まないじゃん」というのはそうなんだけど、やっぱりベースに聴くというのがあって。意識の向け方としては「言葉として伝わってないものがあるな」って察知したら、それを聴きにいくということで、チームのコミュニケーションが本当に伝わるようになるし。
この心理的安全性というところで、主題にしている何か困ったことがあった時も「伝わる」って思っているから、マズいことがあった時も言えるようになるという。こういうつながりなんだと思うんですよね。
斉藤:組織においても相似形なんだろうなと。今の号令・命令・訓令で、号令が行動ベースの指示だとした時、命令がリーダーからの上意下達、もしくは会議という場所で決められたことをどう進めていこうか?そして訓令が、たぶん行動指針とか価値観。
篠田:そういうことです。
斉藤:風土、その「無意識領域のものをあげるべき」という風土を作っていくために、訓令というのが必要で。訓示とかって言われているものがありますよね。(後藤田正晴氏の)『後藤田五訓』なんていうものも、けっこう有名だったりするかもしれないですけど。
会社としてどうあるべきか、チームとしてどうあるべきか? 行動ベースの指針ないし、意図を共有して考えられた会議。また価値観の浸透。どれも重要だと言われることって、いろんなシーンであると思うんですけれども。
特に訓令と命令の「意図の伝達」のところと「意図と合わせた行動のディスカッション」のところで、訓令の「意図のところ」って重要なのかなと思ったんですけど。どういう割合と順番で進めていくのがいいのでしょうか?
篠田:あー、でもそうね。行ったり来たりはするんだと思うんです。ただ、今伺いながら思い出していたのは。例えば、訓令が概念としては、その会社の理念とか行動指針に近いですよね、と。これの共有ですよね? って、今、整理してくださったんですけど。これをやる時に、企業って往々にして「いかに伝えるか?」にやっぱりフォーカスするので。
しょっちゅう言うし、言い方をイントラにも載せるし、みんなにカードも配るし、毎朝朝礼で言うし、みたいな。そういうふうにやっちゃうんですけど。
実は同時にすごく大事なのは「一人ひとりの話を聴くこと」なんですね。聴くことによって、その人が、まだ自分では今まで言語化できていなかった自分自身の価値観とか、自分自身で個人として大切にしている行動指針が、徐々に言葉になっていくんです。
そこで初めて「だから私は、なんだかんだいって、この会社でいることが好きなんだな」とか「この会社のここの企業理念と自分が大事にしていることが、こういう関係性なんだな」ということが、初めて認識できて。
それでその「会社の意図」ということが、すごく自分事として理解しやすくなる。こういう行動が、本当はあるはずなんですよ。どの会社でも「優秀だとされる一部の方々が、わりと企業理念の共感度が高い」と言われるのは、もちろん採用もあるんですけれども、優秀とされる方は一般的にそこまで聴かれなくても自己理解の度合いが高いので。自分がどこに理念共感してるかって、もう言語化できちゃってるんですよね。
でも、多くの人はそんなに器用じゃないんで。やっぱり、じっくり聴いてもらうことでそこが理解は進むということが、実は聴くということの関係性であるなと思って、伺っていました。
斉藤:行動指針を作っているワークショップとかって、それを達成するためにやるということなんでしょうね。
篠田:そうだと思います。
斉藤:そういう位置づけとしては、なんで必要なのか?
篠田:まさにそうだと思います。
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