2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
リンクをコピー
記事をブックマーク
辻愛沙子氏(以下、辻):ジェンダーギャップ以外にもいろんな課題があるので、最後にご紹介できればと思います。例えば、環境問題。アパレルって「大量生産・大量消費」と言われるんですけど、これは服のゴミの山を表現しているアートです。(スライドに画像が表示される)
実際に世の中に発売されている服から、毎年シーズンで型落ちしてしまったものが大量に焼却処分をされている現状があるんですね。こういう課題から、いろんなブランドがサスティナブルに取り組んでいて。
SDGsって、持続可能な社会を作っていくための17個の目標なんですけど、その中の「作る責任・使う責任」とか、13・14・15あたりは環境のテーマなんですが、いろんなブランドがそういったところを解決したいと思っています。PRADAは自分たちのナイロンをもう1回再生産して使う、『Re-Nylon』というプロジェクトをやっています。
NIKEもゴミを再利用してスニーカーを作っていたり、最近H&Mもそういうタグを付けたり。Burberryの黒いコートも、リサイクルで作られています。こういうものがどんどん増えてきているのが、今のアパレルの現状です。
辻:アパレルはジェンダーでもいろんな動きがありまして、好きなブランドをいろいろ挙げました。
CHANELのファッションショーで、ジェンダー平等のためのデモをモチーフにした画期的な取り組みというか、かなりストイックな表現だなと思います。Chloeが国際女性デーのタイミングで、ジェンダー・イクオリティ、ジェンダー平等を目指して売上げの一部が募金されるTシャツを出していたり、こんなことをいろんなブランドがやっていたりします。
あとは(ジェンダー)イクオリティの中で、LGBTQのお話も大事なポイントかなと思っています。人権の問題でまだまだ課題がある中ですけれども、いろんな企業のロゴがカラフルになっていると思うんですが。少しずつ、「自分たちはLGBTアライ、フレンドリーですよ」「LGBTの当事者の人たちも自分の会社で一緒に仕事をするなど、いろんな領域でサポートしていますよ」と表明している企業は、こういったロゴを出していたりします。
あと、(スライド)下の真ん中のコアラ。私はLUSHという化粧品ブランドが大好きです。ぜんぜん教科書っぽくない、ポップでカラフルな店頭だと思うんですが、実はオーガニックの商品を使っていたり、動物実験に反対していたり、環境問題に取り組んでいたり。かなりいろんなSDGsの課題を、実は自分たちのプロダクトで解決している企業です。
こういったやり方もあるので、実はかなりポップな表現がいろいろあるんだということを今日は見ていただけたらなと思います。
辻:あとは、メディアも今かなり変わり始めています。例えば、先ほど申し上げた『ハフライブ』という番組や、NHKや日テレだったりと、いろんなところが番組でSDGsを取り上げるようになっています。『Update the world』という、『news zero』が新しく始めたWeb番組で、まさにSDGsをテーマにしたいろんな取り組みを紹介しています。
実は「ディズニープリンセス」も、まさにジェンダー平等に取り組んでいる表現をたくさんしているなと思っていて、今日は最後にご紹介できればなと思ってお待ちしています。(ディズニー)プリンセスって、『白雪姫』から始まったと思うんですけど、実は白雪姫って白人の14歳なんですよね。
「いつか王子さまと結婚すること」が女の子の幸せの表現となっていたところから、白人だけじゃなくて『ポカホンタス』や『ムーラン』といった、有色人種のプリンセスが出てきて。そこから(『メリダとおそろしの森』の)メリダとかくせ毛の子が出てきたり、いろんなプリンセスたちが生まれてきていてます。
まず、人種の多様性を1つのアクションとして自分たちのコンテンツで表現して、そこから王子さまを待たないプリンセスという、女の子と女の子(がメインの主人公)の『アナ雪』が出てきて。『アラジン』の実写版では、王さまになるプリンセスが出てきたり。
コンテンツもメディアもデザインもそうですし、実は金融の世界でも「ESG投資」という言葉がありますけど、「ビジネスで社会にどう還元していくのか」をテーマにした投資があったりします。今、いろんな領域で社会がSDGsを軸に変わりつつあるので、教科書の中の出来事だと捉えずに、自分が行きたい業界で何ができるかを考えていただけたらなと思います。
あと個人的な好みなんですけど、私は初代プリキュアがすごく好きで。実はプリキュアも「女の子だって暴れたい!」というキャッチコピーで始まっていたり、最近は男の子のプリキュアが出てきたりとか。
辻:最後、いろいろ紹介しきれなかったものもありますが、パンテーンさんの広告でダイバーシティを謳っていたり、こういう表現がどんどん出てきていて。生理用品を街中でピールオフ(ノベルティや商品のサンプルを剥がして持って帰れる広告)ができるようになって、「生理って恥ずかしいものじゃないよ」という表現が生まれてきています。
私自身がいる広告というフィールドだけじゃなくて、今はいろんな領域でどんどん新しい取り組みが増えてきています。
みなさんもきっとこれから社会に出ていく中で、自分たちがやりたいことや手に入れたいもの、買いたいバッグとか。もちろんそれもすごく仕事のやりがいとして大事な部分だと思うんですけど、それだけじゃなくて「自分が社会のために何を残せるのか」「自分の将来・未来のために、どんなことができるんだろう」ということを考えていくと、長期的に自分がエネルギーを消耗しないというか。
誰かの役に立つことがすごくいいエネルギーになるなと私自身も思っているので、そういった「自分ができることって何だろう?」というのを、身近なことから考えていただけたらなと思います。
今日、繰り返しお話しちゃったんですが、もしかしたらSDGsと聞くと「まじめっぽいし、説教くさい」と思っちゃう方もいらっしゃるかもしれません。
いきなり教科書的に「全部知らなきゃ」と思うよりも、とりあえず自分が取っ掛かりとして知ることができるところから考えてみる。アイデアや視点やクリエイティビティが巡り巡って、きっと社会の前進につながっていくんじゃないかなと思うので、最後に「パーパスフル」という言葉をみなさんにお届けできたらなと思います。
「自分のために社会が何をしてくれるのか」をじっと待つだけじゃなくて、自分から動いて社会を変える側にまわることを、みなさんにこれからの人生でやってみていただけたらなと思います。
パーパスは「目的」という意味なんですけど、そんなものを持っている人生にしていただけたらなというところで、今日の授業を終わります。
辻:最後に質問をいくつか見させていただけたらなと思います。今日はかなり駆け足になっちゃって、すみません。
「クリエイティブ・ディレクターとしてすばらしい功績を残されていると思っているのですが、そのために最初はどのような仕事・勉強から始めましたか?」という質問、ありがとうございます。
SDGsもそうですけど、夢や課題でできることをいきなり大きく捉えると果てしないので。例えば私でいうと、ドラマも作りたいし、映画も作ってみたいし、アパレルブランドをやってみたいし。夢はたくさんあるんですけど、まずはできることからしか始められないなと思いました。
実はゲームが大好きなんですけど、会社の営業の人がChatworkの中で「今日は○○の会社に行ってきます」と書いていたことがあって。
それを見て、「私、ファンなんです! この会社行ってみたい!」と手をあげて、「カバン持ちでいいので連れて行ってください」と言って連れて行ってもらった打合せの時に、アイデアを出して。「じゃあやってみる?」と言ってもらい、最初の仕事がそこから始まったんです。
いきなり社会を変える大きなことを企てるというよりも、すごく小さなプロジェクトだったり、まずは自分が目の前で得意としていること、例えば私だったら、絵やアートが好きでずっとウォールアートを描いていたので、「空間演出でなにかできることがあるんじゃないかな」と思って、ナイトプールの仕事やカフェの(空間デザインの)仕事をしたり。
そういったことをやらせていただく中で、ちょっとずつ自分のできる領域が広がってきた感じです。まだまだなんですけど。なので、言葉を書くのが好きだったらnoteを書いてみたり、Twitterで発信してみたり。絵を描くのが好きだったら、インスタで発信してみるとか。まずは自分ができる領域を、少しずつ少しずつ広げていくことが大事なのかなと思っております。
辻:(視聴者からの質問で)「最近の生理用品の割引について、どう思いますか?」。個人的には賛成です。貧困の話もあったりするので、ちょっとずつそういうアイデアだけじゃなくて、企業のアクションで解決を促していけたらなと私自身も思っています。
「辻さんはどうしてSDGsを志したのですか?」。最後の質問だと思うんですけど、とても素敵な質問をありがとうございます。
「SDGsを志す」と明確に思って目標からスタートしたというよりは、私自身が仕事をしていく中で、次の「働いていて、ジェンダーの格差を感じたことはありますか?」という質問にもつながるんですけど。
例えば女性が会社をやっていると「女性起業家」と言われるんですよね。学生時代に仕事を始めたこともあって「大学生なのに、若い女の子なのに、女子大生なのに、仕事をがんばっていて偉いね」みたいなことを言われたり。私自身がメディアに出させていただくようになって、褒め言葉として言われるステレオタイプをけっこう感じることが多かったんですよね。
良かれと思ってだと思うんですけど。そこに対する違和感から「このモヤモヤって何だろう?」といろいろ学んでみて、「『ステレオタイプ』って授業で聞いたことあるけど、あれってこれのことか」と。そこからいろいろ紐解いてみて、ジェンダーのことを学ぶようになって。ジェンダーのことを学んだら、他にも環境問題やいろんな課題があることに気付いて。
なので、いきなりSDGsや地球や社会と言うと、「(スケールが)でかっ」と思うんですけど、自分の身近なモヤモヤや違和感から紐解いていくと、実はいろんな課題とつながっていることに気付いたという流れですね。最後、駆け足ですみません。たくさんの質問、ありがとうございました。
2024.10.29
5〜10万円の低単価案件の受注をやめたら労働生産性が劇的に向上 相見積もり案件には提案書を出さないことで見えた“意外な効果”
2024.10.24
パワポ資料の「手戻り」が多すぎる問題の解消法 資料作成のプロが語る、修正の無限ループから抜け出す4つのコツ
2024.10.28
スキル重視の採用を続けた結果、早期離職が増え社員が1人に… 下半期の退職者ゼロを達成した「関係の質」向上の取り組み
2024.10.22
気づかぬうちに評価を下げる「ダメな口癖」3選 デキる人はやっている、上司の指摘に対する上手な返し方
2024.10.24
リスクを取らない人が多い日本は、むしろ稼ぐチャンス? 日本のGDP4位転落の今、個人に必要なマインドとは
2024.10.23
「初任給40万円時代」が、比較的早いうちにやってくる? これから淘汰される会社・生き残る会社の分かれ目
2024.10.23
「どうしてもあなたから買いたい」と言われる営業になるには 『無敗営業』著者が教える、納得感を高める商談の進め方
2024.10.28
“力を抜くこと”がリーダーにとって重要な理由 「人間の達人」タモリさんから学んだ自然体の大切さ
2024.10.29
「テスラの何がすごいのか」がわからない学生たち 起業率2年連続日本一の大学で「Appleのフレームワーク」を教えるわけ
2024.10.30
職場にいる「困った部下」への対処法 上司・部下間で生まれる“常識のズレ”を解消するには