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2020年IPO企業の社長が語る「事業の成長」と「組織の成長」(全5記事)

当時は「上場する」どころか「生きるか死ぬか」状態だった 組織が強まる契機の1つになった「サバイバル100日プラン」

激動の2020年を経て、2021年の「雇用」や「組織の在り方」はどう変わるのか? 業界を代表するリーダーたちが語るトークセッション「HR Knowledge Camp 2021」から、Retty株式会社 代表取締役・共同創業者 武田和也氏、株式会社Kaizen Platform 代表取締役 須藤憲司氏が登壇した「2020年IPO企業の社長が語る『事業の成長』と『組織の成長』」の模様を公開します。

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「上場する・しない」どころか「生きるか死ぬか」状態だった

江成充氏(以下、江成):去年はだいぶ苦しい瞬間もおありだったとは思うんですが。スドケンさんのところは、DXブームでグッと追い風が吹いたのかなと想像していたり。逆にRettyさまだと、かなり苦しいサバイバルプラン、100日プランですかね(笑)。

そこに至るまでの組織づくりで、苦しい瞬間ももちろんおありだったと思うんですが、どんなハードシングスがあって、それをみんなでどう乗り越えてきたのか。順調に右肩上がりだったワケではないと思うので、その辺もぜひ教えていただきたいなと思います。武田さん、残高10万円の時代とかもありましたもんね。

武田和也氏(以下、武田):そうですね。

江成:有名な話ですけど。

武田:これは僕から話しましょうかね。

江成:お願いします。

武田:上場に至るまでの組織づくりで、本当にいろいろあったと思うんです。わかりやすい例でいうと、やはり去年の3〜4月のコロナの時は、本当に外出すらあまりできない状況だったので。「外食なんてもってのほか」みたいな。

その状況になった時には「本当にこれ、どうなるんだ!?」と最初は思ったんですよね。本当は去年の夏前くらいに上場するのも考えてはいて。いろいろ準備をしていたんですが、緊急事態宣言になったので東証も(上場の)審査とかが一時的にストップしたんですよね。

江成:ええ、そうなんだ。

武田:「上場する・しない」ではなくて、そもそも外食ができずに大半の飲食店が潰れたらそれどころじゃないぞ、という話になって。4月の頃は上場とかじゃなくて「生きるか死ぬか」みたいに思っていたので。

さっきのサバイバルプランというか、よくある最悪な状況を明確に想定して「いつまでにどんなことをやっていなきゃいけないのか」をすべて大枠でまとめて、全社的に危機感を持って共有をしました。

100営業日くらいがちょうど9月頃の段階だったので、5月の中旬頃に「サバイバル100日プラン」を発表して、全社的に共有してやっていったんです。そこから徐々に、思ったよりも早く世の中が回復していって。特に6月、7月、8月、9月と、どんどんユーザー数や店舗の獲得も戻ってきたので、無事に9月末に上場承認になったワケなんです。

最初はそもそも上場どころじゃなくて「これはもう会社がどうしようもなくなるぞ」と思ったのが1つ。あとはその時に、ありのままというか、すべてをみんなに共有をして。「こういう動きをしていきましょう」と目線合わせをしたのが、この濃い1年間であったことです。

江成:「みんなに開示」というのは、どのレベルの開示ですか? 本当に全部を?

武田:そうですね。全部とは言っても、売り上げがどれだけ減っているとか、キャッシュはいくらあるとか。そのぐらいの話なので、項目自体はそんなに多くはないんですが。ある意味、ヒリヒリした緊張感の中でいろいろ考えながらやってました。

江成:それはものすごいですね。

武田:(笑)。そうですね、ああいう経験ってなかなかないと思うので。本当にミスれないですし、限界までがんばらなきゃいけない。非常に高い緊張感の中でやれたことは、ある意味、すごくいい経験の1つになったなとは思いますけどね。

江成:より組織が強くなるきっかけの1つだったということですよね。

武田:そうだと思います。

「このまま行くと、本当にキャッシュアウトしちゃう」

江成:スドケンさん上場までの道のりでいうと、2020年に関わらず、どんなハードシングスがありましたか?

須藤憲司氏(以下、須藤):「個」が強い人が、会社を立ち上げていく段階ではすごく必要になってきて、マネジメントや組織がやはりすごく大事になっています。比率やバランスとか。

質問でも出てきましたけど「その環境で活躍できない人たちや、(カルチャーに)フィットしていない状態の人たちって出てきますよね」というのは、そのとおりだと思っていて。Kaizenの場合は、会社を離れちゃうことがすごく起きていて、それは大変でしたよね。

江成:それはいつ頃の話なんですか?

須藤:2015~2016年くらいから、退職する人たちが出始めて。

江成:3期目、4期目くらい。

須藤:2017年のインバージョンの時は、会社のキャッシュがすっ飛んでいっている中で、売上も一部下がっちゃった時期があって。

「このまま行くと、本当にキャッシュアウトしちゃう」という時がありましたね。でもおもしろいんですけど、そうやってまさに開示している危機の時は、退職する人がいなかったんですよね。

江成:へえ!

須藤:あまり楽しい経験じゃないですけどね……。

江成:(笑)。そりゃそうですね。

須藤:そこまで僕は覚えていないんですけど(笑)。

江成:(笑)。

須藤:でも、そういう時期があって良かったなと思っているので。やはり人の入れ替わりはすごい寂しいのもありますし、どういうふうに(それを改善)できたのかな、と今でも思いますよね。

ちなみに僕も、答えはないです。答えはないというか「もっとうまい方法があったんじゃないか」とは思うんですけど、なんともできなかったのはありますね。

事業成長とキーマン採用の関連性について

江成:組織をつくっていく時に、両者とも「キーマンの採用がけっこう大事でした」という話は打ち合わせの時にいただいていたんですが、事業成長とキーマン採用の関連性についてもう少し教えていただけますか?

須藤:そうですね。僕と石橋(利真)さんというエンジニアは共同創業者で、もう1人、栄井徹さんというCGOがKaizenの最初の仲間なんですよね。

この3人でやってきたんですけれども、石橋もまだCCOとして在籍しているので、実は最初の3人が残っていたのはけっこう大きいなと。CTOとして渡部(拓也)、CSOの海本(桂多)さん、CFOとして高崎(一)さんたちが来てくれて、現場では沢山のリーダーが生まれて、やはりそれぞれの専門領域でちゃんとリーダーシップを取れる。力量のある人たちが入ってくれたことは、やはりすごく大きかったなと思っていますね。

江成:CXOクラスの方々は、どのような情報を開示してご入社に至ったんですか?

須藤:例えば渡部がCTOで来てくれた時は、渡部は全員と面談していましたね。

江成:え? 社員全員とですか?

須藤:エンジニアも営業もみんな会ってた。

江成:へえ!(笑)。それは「入社も考えてくれている人なので会ってみない?」という?

須藤:それもCTOとして(入ってもらうという)。海本さんは社外取締役から入ってもらった。

江成:確かにそうですね。

須藤:高崎さんはもともといたコーポレートを手伝ってくれていて。その後、グライダー(グライダーアソシエイツ)という「「antenna*(アンテナ)」(の会社)に戻ってまた退任されたので「来てください」と言って来てもらって。

チームの編成もすごく大事じゃないかなと思っていて。それぞれの強み・弱みをうまいことカバーできるチームって、すごくいいチームになっていけるんじゃないかなと思っていまして。

1人でポジションを埋めるということよりも、グループの相性や組み合わせのほうがいいのかどうか。バランスとかはすごくあるような気がしますね。

江成:管掌範囲というか、役割責任として「完全にここはお任せね」ということはもちろんありながらも、双方向でガバナンスし合ったり協力し合う体制の組織づくりという意味合いですか?

須藤:はい。それはもちろん。

ビジネス側と開発側で異なるルート

江成:武田さんはどうですか。キーマン採用や事業成長で「こういうチームづくりが効いた」という事例はありますか?

武田:そうですね。やはりすごく良かったなと思ったことが、もともと僕はグルメのサイトの会社にいたワケじゃないので、経験が最初はそんなになかったんです。それが良かったこともあったと思うんですけれども。

ユーザー数がある程度伸びてきて「これから飲食店向けのビジネスでやっていこう」という時に、食べログの事業にいた人が入ったんですね。

食べログで代理店などを作っていた人なんですけれども、2014年くらいに入社をして。僕らもユーザーさんと一緒になって作ったところはあるので、ある程度、飲食店のユーザー側に対する知見はいろいろあったんですけれども。

飲食店の販促の事情といったところで、やはり十分に知らなかったこともあって。そこに経験者が入ると、どういう悩みを持っているかがいろいろわかるので、それで一気に(事業が)加速したのはありますね。

今は役員としてホットペッパーにいた方もいるんですけれども、比較的営業側においては、経験者が入っているのはキーマン採用という意味では非常に大きかったんじゃないかなと思います。

前のCTOはGoogleにいて、最初にうちのインフラとかを作ってくれた人で、今は研究開発をやったりするんですけれども、プロダクトを作る側においては一部、外から採ったケースもあるんです。プロダクト側においては、外から採るよりは中からどんどん(人材を)作って、みんなそれなりのポジションにいる状況ではあります。

プロダクトを開発する側って比較的いろんな流れが早いので、(採用したのが)外からでも中からでも、学んでいったほうが早いことがけっこうあるので、たまたまそういう構成になっているんだと思うんです。ビジネス側と開発側で少しルートが違うんですけれども、ビジネス側は経験者を採用するところが非常にうまくいった気がしますね。

江成:ありがとうございます。

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