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2020年IPO企業の社長が語る「事業の成長」と「組織の成長」(全5記事)

マネージャーは「中からの登用」の方が、成功率は圧倒的に高い フェーズごとに大きく変化する、会社組織が求める力

激動の2020年を経て、2021年の「雇用」や「組織の在り方」はどう変わるのか? 業界を代表するリーダーたちが語るトークセッション「HR Knowledge Camp 2021」から、Retty株式会社 代表取締役・共同創業者 武田和也氏、株式会社Kaizen Platform 代表取締役 須藤憲司氏が登壇した「2020年IPO企業の社長が語る『事業の成長』と『組織の成長』」の模様を公開します。

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「個としての突破力」から「チームづくりへの投資」へ

江成充氏(以下、江成):打ち手の1つとして、最初に事業グロースしていく時って、採用もけっこう大事なポイントだと思うんです。質問でもいくつかいただいていたんですが、グロースする組織づくりをする上で、気を付けていることやポイントに置いていらっしゃることがあればぜひ教えていただきたいです。

須藤憲司氏(以下、須藤):各フェーズによってちょっと違うと思うんですけど、初期はやはり、会社が“個人力”にすごく依存すると思うんです。個人としてすごく突破力がある人がどうしても必要ですし、たぶん会社のCEOやHRの人たちって、そういう方を求めていくと思うんですよね。

ある程度の人数、僕らで行くと30人から50人ぐらいになってきたら、さっき言ったようにマネジメントを作らなきゃいけなくて。それって要は、個としての突破力ではなくて、やはりチームをつくっていくことに投資していかなきゃいけないんですよね。そういう人って「個としての突破力がある人」とは、また違う属性だったりするので。

江成:そうですね。

須藤:その辺(従業員規模30〜50人)から、そういうビジョンがすごく大事になってくると思っています。自分たちが何をやりたいのか、どんな力が欲しいのか。あとはある程度、マネジメント自体のやり方が固まってくると、やはりカルチャーフィットがすごく大事になると思っていて。

むしろカルチャーがフィットしないと、どれだけ力があっても力が発揮できない状態になる。組織が大きいから、個だけでは力が発揮できない状態に必ずなっていくので。

僕らとしては、ビジョンやミッションが本当に有効活用できるようになってきたのは、ある程度人数が増えてきたから。今は60名ぐらいですけど、こういうの(ビジョンやミッションを)ちゃんと言語化して良かったなという感じです。

チームが「採用したい」と求める人を採用する

江成:具体的なHowに入るかもしれないんですが、いわゆるビジョンやカルチャーにフィットする人材の見抜き方や集め方は、どういうふうにしていかれたんですか?

須藤:僕はけっこう早い段階で「僕が採用の最終決定者じゃない」と言っていたんですよね。チームが「この人を採用したい」と求める人を採用する。だから逆に僕は、一次面接をやっていたり。そういうふうに変わってきた。

動機付けを僕がやって「カルチャーに合うか」「スキルセットは大丈夫か」というのは、逆に現場の人たちにお願いするかたちにはしていました。

江成:「Kaizenさんっぽいよね」「うちで(採用して)大丈夫そうだね」というのは、現場の方々が何度か対話を重ねながら見極めていく感じですか?

須藤:そうですね。さっき言った「組織を作っていく」という過程において、要は「チームがこの人を欲しい」というふうにしていったんですよね。それまでは僕が「一緒に働いてみたい」ということで決められる範囲でしたけど、そこから先ってちょっと決められないので。一緒に働くのはチームの人たちなので、やはりみんなが採用に関わってくれたほうが絶対いいなと思いました。

何かしら、みんな採用に関わらなきゃいけない「全員で採用」

江成:武田さんも、従業員規模が100名近くまではリファラル採用で見極めていたり、それも評価に入れていたとお伺いしたんですけど。

武田和也氏(以下、武田):そうですね。うちの場合は採用について「どうやって採るか」を中心に話したいと思うんですけれども。さっきのバリューの話じゃないですけど「全員で採用」という項目が入ったんですよ。

江成:全員で採用。

武田:僕らの会社におけるバリューは「Retty Way」というんですけれども、(「全員で採用」が)評価の項目に入るので、ちゃんとそれで評価されるんですね。なので、何かしらみんな採用に関わらなきゃいけないというのが、ある意味カルチャーとして昔からずっとやっていて。

そのための箱をちゃんと用意してあげることが大事だなと思っています。通常のリファラルの紹介はもちろんありますし、ちょっと気になる人がいたら、毎月15日にある「イイゴハンの会」などの会社の様子がわかる場所に来ていただいてました。

今はちょっとコロナでできないんですけれども。おいしいお店にRettyへ出張していただいて。そこで「飯で釣る」じゃないですけれども(笑)。

江成:(笑)。

武田:「今月はこれが食べられるから、みなさんどうぞ」というかたちで、毎回100人くらい集まるんです。Rettyでいつか一緒に働きたいと思うような人、もちろんそうじゃない人や普通の友だちもみんな呼んでいい場でもあるので、いろいろ(な人が)混じってはいるんですけれども。

そういうかたちで会社に接してもらって、いろんな人や社内の人を自分たちが紹介し合ったり。そこでカルチャーも一緒に知ってもらえるので「合うか・合わないか」というところも含めて、口説きに入ることももちろんありましたし。それも2012年ぐらいから2019年くらいまで、ずっと続けているのかな。

江成:じゃあ、本当に創業期から。

武田:そうですね。それぐらいからずっとやっていました。その人のスキルや誰かの紹介で来るワケなんで「全員で採用する」ことを通じて、カルチャーフィットする人材を常に探して採用することを繰り返していました。

須藤:確かに僕らも、さっき言った合宿を毎月やってたんですけど「外の人も来ていい」というふうにしてたんです。すげぇ生々しい会社の戦略の話をするんだけど「興味ある人はぜんぜん来ていいよ」としていて。そこから入社してくれた人たちがたくさんいますね。 

江成:確かに、濃い話を聞けるとわかった状態で来てくれるので、入社前後のギャップは極力下げられますよね。

須藤:隠す必要がないくらい赤裸々なので。

江成:(笑)。

「中からの登用」のほうが、成功確率は圧倒的に高い

江成:組織を拡大していくフェーズで、キーマンとか、いわゆる結節点となるようなマネージャーもつくっていく組織づくりが大事だということだったんですが。

こちらは、会社の外から採ることと、中から抜擢していくことの両方があると思うんですが。「こういうやり方をして成功・失敗したことはありますか?」ということも質問でいただいています。

須藤:(会社の)中からの登用のほうが、成功確率は高いんじゃないですか?

武田:本当に、圧倒的に高いですよね。

江成:圧倒的ですか。

須藤:けどスピード感とか「本当は(成長を)待ってあげたいんだけど合わない」時って、けっこうあると思っていて。そういう時はやはり、外から採用してくるしかないですよね。

江成:例えば、外からマネジメントの方とかを採る時に「能力はあるけれどカルチャーとフィットしない」「その方がパフォーマンスを発揮できる環境とフィットしない」といったことはないんですか?

須藤:いやいや、ぜんぜんありますよ。

江成:そういう時ってどういうコミュニケーションを取られるんですか?

須藤:いや……「どういうコミュニケーション」?

(一同笑)

江成:すみません。質問がちょっと難しいなと思いながら。

須藤:フィードバックするしかないですよね。「うまくいっていないですよね」と、普通に話すしかないかなと思いますね。

江成:そういう見極めの仕方や採用の仕方について、上手なやり方はありますか?

須藤:あったら聞きたいですよ。

江成:(笑)。

武田:そうですね。そこはもう、ある程度はチャレンジすると。役員の人が一気に採用すると、必ず失敗することはあると思うんですよね。失敗がゼロだった組織なんてないんじゃないかな、という気もしますけどね。

課長なら課長、部長なら部長のカルチャーが必要

江成:そうですよね。グロースしていく時に「このタイミングで組織づくりのピースがハマったな」みたいな。採用や文化づくり、箱の作り方など、どんなタイミングで「これはちょっと勝てるかも」みたいに思われました? そういうタイミングってあります?

須藤:なんだろう……。もちろんさっきの育成もそうですし、やはりキーとなる人材が必要。会社の外からもそうですし、こういう人たち(が必要)だな、とか。僕がすごく感覚的に持っているのは、ある程度50人とかになってくると、課長や部長とかのミドルマネジメントが必要になってくるワケじゃないですか。

課長は課長のカルチャーが必要になるし、部長は部長の役割をこなさないといけないワケです。それってたぶん「いきなり作ったらできます」ということはなくて、けっこう時間がかかったイメージなんですよ。さっきの評価制度とかもそうだし、やはり2年ぐらいかかる感覚です。

江成:役割範囲ではなくて、課長なら課長、部長なら部長のカルチャーなんですか?

須藤:会社によって求められていることって、フェーズによっても変わるんですよね。だから「こういうことをやることがマネジメントだよね」という意識合わせ、マネジメントって言葉がすごく広い。

フワッとしているから「(マネジメントはどういう)役割を果たすか」の期待値を、たぶんみんなで揃えないといけないんですよね。それにけっこう時間がかかるんだと思います。

新しく優秀な人たちが活躍すると、組織で悩むことも減ってくる

江成:武田さんは、ハマった瞬間とか「この作業が効いたな」みたいな(事例はありますか)?

武田:もちろんなかなか「ハマった」というのは難しいですけれども、やり続けて良かったと思うものは1つあります。うちの会社は、新卒採用をけっこう昔からやっているんですよ。

江成:うんうん。

武田:2013年頃からやっているので、今は新卒の比率が(全体の)5割を超えているぐらいなんですね。

江成:それは文化づくりが強いですね。

武田:徐々に新卒から活躍する人が出てきたり。もちろん、マネージャーもいるんですけれども。そういった状態になってきた時は、いろいろと楽になりましたね。

江成:そうか。楽になる。

武田:楽になるんですよ。どんどん新しく優秀な人たちが活躍してくれるようになってくると、組織で悩むこともだんだん減ってくると思うので、比率がけっこう大事になるんじゃないかなとは思っていて。去年は20人くらい(新卒を)採りましたが、そこは1つ、早い段階から始めて良かったなとすごく思った時ですね。

江成:スドケンさん(の会社は)、基本中途ですよね。

須藤:そうですね。中途採用。

江成:今みたいな新卒の話は、検討されていらっしゃったかとは思うんですけど。

須藤:そうですね。やはりどこかで、育成ができる組織になっていかないといけないとはすごく思っていて。僕らはまだ本格的に……嘘だな。一部、エンジニアとかはインターンとかの受け入れや育成が回っているんですけど。そういうふうな(新卒採用をする)段階まで来た時に、新卒の人たちに声をかけるようにというのは、すごく考えています。

それがいつなのか……どっちもあるんですよ、鶏と卵みたいに。下が入ってきて育てることで「ちゃんとしていかないと」という意識が上がるのももちろんありますし。そういう意味でいくと、うちの会社はまだそこまでマチュア(成熟)な状態には来ていないのかなと思いますね。

江成:この間、インターンの方が「インターン終わりました」とnoteに書かれていらっしゃったんですけど、今伺っているのとは真逆の「ちゃんと成長できました。いいところだよ」みたいな(笑)。エンジニアですよね。

須藤:はい。ああいうふうになっていると、たぶん大丈夫だろうなと。

江成:おもしろいですね。

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