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2025.02.18
AIが「嘘のデータ」を返してしまう アルペンが生成AI導入で味わった失敗と、その教訓
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小国士朗氏(以下、小国):そして、一番大事なのは……「deleteC HOPE」というイベントを僕らはやっていまして。これは、1年間で集めた寄付金を先生たちにお届けするというイベントですけれども。
去年も今年も、2テーマ寄付をさせていただきました。今年は慶應大学の大槻(雄士)先生の「ドラッグリポジショニングの研究」に200万円。藤原(紀子)先生は東大のリサーチナースの方ですけれども。
「研究をサポートする研究」というのも僕らは応援しようということで、今回クリニカルリサーチナースをテーマにされている藤原先生に100万円。総額300万円を寄付させていただきました。
それをやっていく中で、ヤンデル先生とかけいゆう先生とか、たくさんの医療者の方と対話させていただく中で、もっともっとこの輪を広げていきたいということで、(スライドを指して)こういうアーティストとかアスリートの力も借りて。
これ、ヤンデル先生のツイートの嵐で、めちゃくちゃオークションが盛り上がったんですけど。
ヤンデル先生(以下、ヤンデル):あれ、ちょっとびっくりしましたよね(笑)。
小国:あれでむちゃくちゃ増えましたからね(笑)。
ヤンデル:(笑)。
小国:「井原ー!」みたいな(笑)(注:井原正巳氏)。
ヤンデル:みなさま、たぶんご存じだと思うんですが、HOPEという取り組みでオークションをやったんですね。
サッカー選手やラグビー選手の方々が、自筆でメッセージを寄せたりユニフォームにサインしたりというのを出していて。オークションなので、最終日に向けてそれまでみんな「俺はあまり高い金を出したくないから」って、ジワッと待ってて盛り上がりがなかったんで。最後の数時間で僕が言ったら「絶対バズる」ってことがわかってたんですよ。
(一同笑)
小国:さすがや。
ヤンデル:「あんなおいしいツイートねぇよ」と思って。「よぉしよし、きたきた!」みたいな感じで。だから僕、いつも午前中にツイートするんですけど、あの日は午後ですからね。
ちょっとでも、もうみんながそろそろ……。
小国:ギリギリ?
ヤンデル:もうそろそろ「我慢できない」ってやつらがオークションに入るだろうって思って。一番金額が高いのは誰かなぁと思って、中田(英寿)かなぁと思って見たら井原だったんで、「井原か、わかった井原をいじればいいんだ、余裕」と思って。
(一同笑)
ヤンデル:すごい楽勝。まぁまぁ、それはいいや。ごめんなさい。さらに他のスライドも見せていただいて。
小国:今、おっしゃっていただいたように、ラグビーとサッカー界から15人が本当にすごい逸品を出してくれて。2010年のワールドカップの時に着てた代表ユニフォームを出してくれた岩政(大樹)さんとか、とんでもないものを出してくれていて。ラグビーもレジェンドみたいな人が本当に出してくれて、それでオークションをやったんです。
小国:これはやっぱり「アスリートがやれること」ということでやってもらって。もう1つはAIさん、アーティストの力、音楽の力ということで。「いいねの募金」というのをやりました。これは「いい音色、いい音楽を聞いて『いいね』と思ったら、その思いの分だけ募金してくださいね」という「いいねの募金」をYahoo!ネット募金さんと組みながらやりました。
AIさんの曲が『HOPE』という……。これ偶然だったんですけど。
ヤンデル:え!? 偶然なんすか?
中島ナオ氏(以下、中島):偶然なんですよ。
小国:偶然だったんですよ。
ヤンデル:怖ぇー。
(一同笑)
小国:そう、怖いんですよ。「『HOPE』という曲を書いてください」って言ったわけじゃなくて。たまたまAIさんが、このコロナの1年を過ごして、思い描いていたのが『HOPE』という曲で。
それをお話しに行ったら「実は私、今こういう曲を書いています」ということで教えていただいて。
ヤンデル:えっ、そういう?
小国:「だったら僕らも、deleteC HOPEというのをやるので」……。
ヤンデル:えっ、そういう順番なの?
小国:そうなんですよ。僕らがお願いしたというよりは偶然だったんです。
ヤンデル:マジか……。
小国:「だったら、もう一緒にやりましょう」ということで、向こうもすごく乗ってくれて。『HOPE』でミュージックビデオを作って「それを見て、いいなと思ったらいいねの気持ちの分まで募金してね」という仕組みが生まれて。
今もYahoo!ネット募金でdeleteCを調べていただくと、この「いいねの募金」が出てきますので。今年の12月31日までやっております。
6日間でこの「いいねの募金」とオークションで合わせて、324万円が集まりました。去年1年間で集めた募金が300万円だったので……。
ヤンデル:6日で!?
小国:6日で集まったのは、やはりアスリートとかアーティストの力がすごいなと思うんですけれども。これはだから「Cを消す」ということに僕らはあまりこだわっていなくて。
一番大事なのは「“みんなの力”でがんを治せる病気にしようぜ」というのが、deleteCのすごく大事にしているミッションで。なので「Cを消す」というのも、一番楽しくてわかりやすい、僕らのユニークな表現なんですけれども。あくまでもそれは表現であって。
それにこだわるというよりは、みんなが、自分ができることを見つけて、無理のない範囲で続けていくということをやっていきたいなと思っております。
ちょっと長くなりましたが、以上です。
ヤンデル:ありがとうございます。さて、続いてそのまま、ぜひ中島さんの声を聞きたいですね。
中島:はい。
ヤンデル:この後のセッションって、今、イベントの目次を見ていたんですけど、2番目に「がんと研究について医師が思うこと」って書いてて、ここを削ってもいいなと思ってるんですよ。医師だから(笑)。いいやと思って(笑)。
(一同笑)
ヤンデル:3番目に「メディアの立場からできること」ってあるんで、ここ、やっぱり小国さんもそうですし、藤松さんにゴリゴリいっていただこうかと思うんですけど。
となるとやっぱり1(「deleteCの意義とHOPEの報告」)と4(「deleteCの今後の展望」)で、中島さんのお声を聞きたいなというのが、すごくあって。
「何を話す」とかテーマを決めなくていいので、今の話を引き継いでもいいですし。「これを言っておきたい」というのを、まずどうですか? フリーな感じで。
中島:そうですね。今、deleteCについて小国さんからご説明があったんですけれども。そのdeleteCを始めようと思ったきっかけであったり、なぜこういった「がんの治療研究の応援に至ったのか?」というところには、やっぱり自分の患者としての立場であったり……。
31歳の時にがんを患っているんですけれども。そこからもう、何かしらの治療をずっと受けながら続けてきた生活がなければ、やっぱり今はなかったなって本当に思える経験ばかりなんですよね。
もうしたくない経験というのも、本当に山のようにありますけれども。でも、その一つひとつが今につながっているというのは、確かなことなので。そういったことが、私が言える……伝えられたり言えることの1つでもあるのかな、とも思っているので。今日そんなことも含めて、質問等でもみなさまとのやりとりの中でも少し触れていけたらなと思います。
ヤンデル:ありがとうございます。
中島:かといって、じゃあ「患者としてこんなことが苦しい」とか「こういうことが課題で変えていきたい」「課題ばっかりで、今って辛いんだよ」ということではなくって。deleteCの中でもとても大切にしている言葉として「明るく、軽く、柔らかく」というのがあるんですけれども。
ヤンデル:明るく、軽く、柔らかく。
中島:はい。
ヤンデル:「明るく」はわかりますけど「軽く、柔らかく」なんですね。
中島:そうなんですよ。やっぱり自分がなってみて感じたのが「もう、ぜんぜん大丈夫じゃないじゃん」っていう。
ヤンデル:あぁー……! そうかぁ……なるほどな。
中島:後でメディアのこともちょっと触れていただけるということなんですけど、実際にメディアで、自分が目にするがんの情報であったり、がん患者さんが描かれている物語であったりが、本当に暗くて重くて硬い表現・内容ばかりだったんですよね。
(がんに)なった時に、でもそれだけではない面というのにも、とても触れることができたので。これってもっともっと更新していきたいと思えたし、変えていきたいというのはすごく強く思い続けていたことだったので。それがその、今の言葉(「明るく、軽く、柔らかく」)にもつながっているという中で、進めてきております。
ヤンデル:今しゃべられている言葉1つとっても、慎重なようで大胆なようでっていう。誰も傷つけないし、決して根明(ネアカ)で忘れているってわけでもないという、すごいバランスをとられている方だなというのを、失礼ながら。
中島:本当ですか? そんな……(笑)。
ヤンデル:このままの流れで、もうちょっとお話をお伺いしようかと思ってたんですけど。さっき特に「へぇ〜」と思ったのが、deleteCの活動でMD Anderson Cancer Centerの名刺の中で「柔らかくCancerを消している」というやつ。
そのきっかけの時に、先ほど小国さんが「これを見た時に『あっ』って思った」というのがあって。そして3人で始めたっていうのがあったんですけど。そもそもあそこにたどり着いたきっかけというのは、何だったんですかね?
中島:まず名刺を手に入れたといいますか。あれはMD Anderson Cancer Centerの上野直人先生の名刺なんですけれども。
ヤンデル:上野先生。はい。
中島:もともとつながりがあったというよりは、私の手術を担当してくれた先生がいて。当時、手術してから何年も経っていたので、年に1回とか半年に1回診察に行くようなかたちだったんですけれども。会いにいくというか。
そこでまぁ、小国さんに話したのと同じぐらいのタイミングで、本当にもう「ここから私は治療研究を応援していくぞ!」って、なんか勝手に自分の中で決めていたタイミングがあったんですよ。
ヤンデル:それは、自然と湧いてきた……?
中島:ずっとそういうことを、自分が社会の中で見てみたいという思いが……。すごく強く思っていたのと。「誰か始めてくれないかな」だったり。「どうやったらそういう動きって見つけられるんだろう。見当たらないな」ってずっと思いながら……。なんか、今を支えるであったり、QOL。自分自身もQOLに対する取り組みなんかもしているので、とても大切だと思うんですけれども。
ただやっぱりそれって、今を少し変えることだったり、今を過ごしやすくすることはできるんですけど。ちょっと先や未来というのは、やっぱり(がんは)まだまだ治せない病気であって「変わっていかない」というのも、同時に自分事としても強く実感する部分だったので。「今を変えていくベクトル」を社会の中で見たいとか作りたいというのを、すごく強く思い続けていた何年間があったんですね。
中島:いろんな人に相談したり、会う人で「この人には聞いてほしい!」という人に相談をしていったりした中で、転移して2年が経っていたというのもあるんですけれども。「今ここで始めないと、自分が動けなくなった時に絶対に後悔する」とも思えたし。
「これって、待っていても始まらないものなんじゃないかな?」というのも、いろんな方から話を聞いた中で思って。その外科の先生に話をした時に「それはすごく応援したいし、今ちょうど会わせたい人がいる」っていうふうに言われて。
ヤンデル:その主治医の先生が?
中島:そうなんです! 私の診察が、その日の予定のすごく最後のほうだったんですよ。
ヤンデル:なるほど。
中島:その診察が全部終わった後に、上野先生とその(主治医の)先生がお茶をする予定になっていて。
ヤンデル:え、それがきっかけなんですか!?
中島:そうなんです。(上野先生が)たまたま近くにいらしていたんですよ!
ヤンデル:えっ、近くにいらしてた?
中島:近くに、病院に来ていた。上野先生が、その主治医の先生に会いに。
ヤンデル:来日していたみたいな?
中島:来日していて、しかもその病院に来ていたっていう(笑)。
ヤンデル:えぇーっ!?(笑)。
中島:そうなんです。私が、その日、最後から2番目の患者だったんですよ。
ヤンデル:なるほど。
中島:なので、その日最後の患者の方を主治医の先生が診察している30分の間だけ、上野先生と2人で話をすることができて。
ヤンデル:あ、そうか。最後じゃなかったから。逆に2人で。
中島:そうなんです。逆に2人で。
ヤンデル:なるほど。
中島:そうなんです。はじめましてなんですけど、その名刺をいただいて。そこからもう自分の自己紹介だったり「こんなことを考えていて、日本でこういうことを絶対かなえたいんですけど、どう思いますかね」だったり、いろんな話をしたところ「すごく必要だと思うし、応援するよ」って。
なんか「アメリカの先生に言ってもらえたんだったら、それはもう、がんばっていいんじゃないかな?」って勝手に思えた瞬間でもあって。
ヤンデル:わかるー! そのアメリカ感はわかる(笑)。すごいわかる! なるほど。
中島:そこで名刺を手にして、診察が終わったその主治医の先生も合流してくださったんですけど、そこの場面でも、やっぱり名刺のインパクトの話にはちょっと触れていて。
「やっぱりこの表現ができるって、すごく勇気がいることだし、強いよね」って。「日本では、やっぱりこういうものって見たことない」っていうのも、その主治医の先生もおっしゃっていて。「でもすごく思いが伝わるし、がんを変えていきたいということがここに表現されているよね」という話をしたのまで、覚えています。
ヤンデル:なるほど。いやぁ、いいなぁ。(Zoomの)画面を見ていると、今の話でテンションが上がった各人がそれぞれ一言ずつしゃべりたそうなんですけど。
中島:そうですよね。ごめんなさい、ちょっと話しすぎちゃってますけど。
ヤンデル:いや、違うんですよ。感動があるんですよ、やっぱり。すでに知ってた2人と、なんならけいゆう・堀向あたりは「へー!」って思っているはずなんですけど。
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