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メンバーの不調シグナルを掴むには? リモート時代のネガティブコンディションキャッチ&ケアとは?(全6記事)

「日報」は、気持ちを全面に書いた“ポエム”でいい 社員が楽しめる、オンラインコミュニケーションのあり方

「激動の2020年を経て、2021年の『雇用』や『組織の在り方』はどう変わるのか?」をコンセプトにした、人事担当・経営者向けのイベント「HR Knowledge Camp 2021」が開催されました。各セッションのテーマに纏わるキーパーソンを迎えて行われ、本記事では「メンバーの不調シグナルを掴むには?リモート時代のネガティブコンディションキャッチ&ケアとは?」をテーマに、リモートワークにおけるコミュニケーションのコツが語られました。

社員が楽しめる「日報コミュニケーション」のコツ

江成充氏(以下、江成):余談ですけど、意外とSlackとかってたまに「投稿する人が反応してくれなくて」と言う人に限って、実は自分もスタンプや反応をあまりしていないことも多いことありませんか? やっぱり「〜をしてくれない」というよりは、さっきの「察すること、察してもらうことを諦める」に近いですけど(笑)。

「お互いにそれをやり続けるから」というのは、森数さんが今、身を持っていろいろ体現していただいている。まさかSlackもやっているとは(笑)。

森数美保氏(以下、森数):そうですよね。帰ってきたら、またうちの会社のSlackも今めちゃめちゃ伸びています。

江成:すごいな(笑)。どんだけ器用なの、めちゃくちゃすごい(笑)。今Slackの話も出ましたけれども、その中で言うと森数さんから、明日からさっそく真似したい取り組みも共有いただいていまして。「日報コミュニケーション」ですよね。この辺りもぜひ、みなさんにも明日や今日からお持ち帰りいただけるテクストとしても共有いただきたいです。

森数:そうですね。私たち、日報をSlackのスニペットで全員提出して退勤していて、これはすごくアクティブなんですよ。みんな楽しみにしていて、私も100名ぐらい全員に必ずリアクションすると決めているんですけど。まず、気持ちから書く。ほぼ気持ちに全振りしている人もいるぐらいで(笑)。

気持ちいいぐらい見てない人も多いかもしれないですけど、その気持ちはなんでもいいんですよね。「今日このあと何食べる」でもいいし、今日の仕事を振り返ってもいいし。なんでもいいんですけど、その人の人となり、価値観や今気になっていることがすべて現れるので。「いつもと違うな」「気持ちの欄がブランクになっている」とか、日報でネガティブな文字が見えると速攻DMするようにしています(笑)。

“気持ちを伝える日報”に全振りしたから見えるもの

江成:さっき大室先生がおっしゃっていた、ふだんとのずれをここでもう見つけられることもありますよね。

森数:けっこう毎日見ているから、文字の使い方とかでだいたい差分がわかるんですよね。

江成:これはやりはじめた時から「気持ち」を入れていらっしゃったんですか? 取り組みの変遷は何かありました?

森数:実は、私が前職でMisocaにいた時にこのスタイルだったんですね。その時はesaという社内wikiツールで、みんなが日報のページを書いていくかたちだったんですけど。キャスターに来て初日に日報のスタイルを変えてもらいました。

江成:日報というと、聞いていらっしゃるみなさんもわりと業務日報というか、To Doや進捗状況を共有することも多いと思いますが。気持ちにフルベットすることの良さはどんなところですか? さっきの「いつもとの違いがわかる」ところですか?

森数:そうですね。それもありますし、そこから会話が生まれるんですよ。スタンプもあるし、けっこうスレッドにコメントを書くんですよね。昨日ツイートもしたんですけど、私けっこうこれで「あれ、メンバー引っ越すんだ」とか知るんですよ。昨日も「荷造り大変」とか書いてあって。「あれ、どこ行くの?」という感じで。

コミュニケーションの総量を増やして、仕事以外の部分の人となりを含めて、今までなんとなく感じていた空気のようなものがここに現れているかなと思います。

江成:なるほどな。めちゃくちゃすばらしい。

「気持ちを外に出さないのがプロ」という日本的な美学

大室正志氏(以下、大室):気持ちって、例えば社会人になったら自分の気持ちを外に出さないのがプロであるみたいな、日本的な美意識ってあるじゃないですか。

江成:美学的な感じがしますよね。

大室:例えば、親が亡くなってた日にそれを一分も出さずにコンサートで歌う演歌歌手とか、そういうのがすごいみたいな。だけど「奥さんが亡くなって試合に出るってあり得ない。お前早く帰れよ」というのがメジャーリーガーですよね。

要するに「気持ちをいかに仕事に持ち込まないかがプロである」みたいなコミュニケーションなんですけど、これはたぶん今後、いわゆる世の中が知的産業になってくると実はそのほうが無理があると。人間ってロボットじゃないので。

あと、ちょっと違った観点から言うと、僕もたまに体調が悪い方とかに「ところで上司は嫌いですか?」とか聞くんです。それをいきなりぶっこむんですよ。もちろん信頼関係ができた後ですが。

江成:あはは(笑)。

大室:それは何でかというと、その時に「(上司が)言っていることは正しいので」って好き嫌いという感情を飲みこもうとしている方が多いので。(部下が言うと)「いやいや、嫌いか好きか聞いているから」みたいな話で。そこを気持ちという言葉で表現しない人は、何か無理しているのかなと考えたりするんですよ。そういう人のほうが実は病みやすかったりして。

「言っていることは正しいけど、あの言い方は嫌いです」って、気持ちは気持ちなので、別にこれは矛盾してないんですよ。「言っていることは合っている」ことと「不愉快である」ってことは。

だけど気持ちに無理やり蓋をしようとしていること自体が、実はあまり健康に良くなくて。だからといって「嫌いだからこの人の言っていることは間違っている」というぐらい気持ちに引っ張られて、合っている・間違っているの判断が、理性までずれてしまうのはだめ。

だけど等価に扱うという意味では、会社の中で気持ちも出していくことが、今からは大事かなと思いますね。

日報は「むしろポエムでいい」

江成:確かに。ちなみに昔、それこそ僕も新卒の時に「日報というよりは、お前ポエムやな」みたいにめっちゃ詰められたこともあって。

森数:いいじゃないですか。ポエム。

江成:そうそう。なのでさっき大室先生が「等価」とおっしゃっていましたけど、「気持ちと取り組みは同じぐらい大事」ということをある種アップデートしたり伝え続けていかないと、変に忖度がはじまったり、それこそ美意識の押し付けが始まっちゃいそうだなと今聞いていて感じましたね。

森数:そうですよね。「むしろポエムでいいやん」と私は思っているんですけど(笑)。

大室:けっこうKPIがしっかり制度設計としてできている会社であればね。

森数:そうですね。このあとが見えてないんですけど、ちゃんとみんな今日やったことと明日やることを書いてくれているので(笑)。

江成:両方あるんですよね。お気持ちが先のほうがよりいいよねと。

森数:あります。そうですね。みんなの目に触れやすい仕組みと、「あなたの今の状態を大事にしていますよ」という組織としてのメッセージですね。(日報を)書いてもらうことが目的じゃないので。

江成:確かに目的と手段が逆になっていたり、これが例えば「マネジメントが把握したいから共有してよ」になったら違うんですよね。やっぱり「気持ちをちゃんと共有できる組織にしたいんだよ」というベースがあって、そっちが本質なわけで。

森数:そうなんですよね。メンバーにも「美保さんからスタンプがあると、読んでくれたんだなと思うので、うれしくてまた出しますという気持ちになれる」とけっこう言ってもらえるので。やっぱり自分がやりたくてやる、アウトプットしても受け止めてもらえるのが大事なのかなと思っています。

「無条件に相手を信頼する」

江成:そろそろ本編も終了のお時間に近づいていますので、お三方から一言ずついただければと思っています。森数さんも、時代が御社の事業に追いついてきたところもあるかなと思うんですが(笑)。改めて、組織作りで大切にしていることも含めて、ぜひ一言メッセージをいただければと思います。

森数:そうですね。私が今一番大事にしているのは(アルフレッド・)アドラーの言葉で、「無条件に相手を信頼する」。ルールでがんじがらめにして信用できるような組織にするんじゃなくて、「信頼すると決めています」というメッセージを常に発信をしているのと。

そうするためにアウトプットの責任、「察してもらうことと察することを諦めるんだったらアウトプットをしなさい」ということも、いつもメッセージとしていて。その2つは、バリューとはまた別ですごく大事にしていることです。

江成:ありがとうございます。無条件の信頼。

トライアンドエラーで「最善が何か」を模索

江成:石黒さんも、ぜひ一言いただければと思います。

石黒卓弥氏(以下、石黒):今日はありがとうございました。本当に、森数さんや大室さんの話を聞いて「そうだよね」というのがすごく多くて、僕自身もむちゃくちゃおもしろかったです。やっぱり僕たちはまだまだすごく歴史が浅くて、新規で立ち上げていく中なので。

コロナ禍なんだけど「オフィスにどうやって行こうか」だったり、リモートワークの時もオフィスに近い空間をどう作るか、という努力だったりするので。いろんなパターンがあって、今日は学びが多かったなと個人的にすごく思っています。

これから我々もまたいろんな状況に直面していきますし、社会の環境もまた変わっていくのかなと思いますけど。やっぱり常に最善は何か、考えの染まらない組織にしたいなとはすごく思いますね。

諦めたらそこで終わりだし、みたいなこともよくありますけども。常に「最善が何か」と言っているのと、あとはやってみてうまくいかなかったら頭を下げて「ごめん、今回の間違いだった!」と謝る。そういうのを潔くやっていきたいなと思っているので、また引き続きみなさんの発信も勉強したいなと思っています。今日はありがとうございます。

江成:ありがとうございます。

森数:ありがとうございました。

「ずけずけ言っても大丈夫」な環境の構築

江成:大室先生、お願いします。

大室:ダイバーシティという言葉が叫ばれてもう久しいですし、このリモート下においても「言わなくてもわかってほしい」は、いよいよ難しくなっていると。ただ一方で、それは日本人が今まで持っていたOSでもあるんです。心理的安全性という言葉を使うと、お互い遠慮してずけずけ厳しいことを言わないという意味じゃなくて、ずけずけ言っても大丈夫な安全性ということですよね。

「言わなくてもわかってほしい」ではなくて「言っても大丈夫」ということを、いかに会社の環境設定にするのかも今後すごく大事になってくるんじゃないかなと思っています。

江成:ありがとうございます。お三方、本当にめちゃくちゃ頷きポイントが多すぎて、こんなにチャットが盛り上がった会も……(笑)。非常にありがたいところなんですが。

森数:そうなんですね。

江成:ありがとうございます。大室先生から歴史から紐解いてもいただきました。大室先生もさっきおっしゃっていましたけれども、隔週金曜日で『OFFRECO』をやっていらっしゃいますし、石黒さんもClubhouseで非常に多く発信をされています。森数さんも毎日Voicyをやっていらっしゃいますので、ぜひみなさんノウハウや思いを受信できる環境にしていただけたらなと思います。

改めて本日はありがとうございました。本編は以上になります、お疲れさまでした。

石黒・大室・森数:ありがとうございました。

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