2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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江成充氏(以下、江成):確かに。大室先生、この下の「上記に気付いたら、まず相談! 診断する必要はない!」というのはどんな文脈なんですか?
大室正志氏(以下、大室):安全配慮義務という言葉がありまして、これはマイナスをゼロにする概念です。安全配慮義務というのは、いわゆる会社は社員に健康で安全に働いていただかなきゃいけない義務があると。
昔はそれが工場の中の物理的な怪我や事故から守るという概念だったのが、今から20年前ぐらいに「第一次電通事件」と呼んでいますけど、うつ病という診断書を出していたのに過重労働の末に自殺してしまった社員がいて。それによって「心身の健康にも配慮しなきゃいけない」という判例ができたんですよ。これが安全配慮義務のもともとの考え方です。
(安全配慮義務で大切なのが)何かというと、予見と回避なんですよ。要するに、予見できることは(それがもたらすであろう悪い)結果を回避しなきゃいけない。
だから突発的な休みって、「この人は体調が悪い」と予見できますよね。上司は(部下を)診断しなくてもいいから、予見できることは(きちんと気づいてあげることで)結果を回避する。要するに、人事に相談したり産業医に言っておくところまでは上司の役割だよ、というイメージですね。
江成:なるほど。「予見」と「結果回避」ですね。
大室:そう。これが安全配慮義務の2つのポイントですね。これ、僕が代ゼミの講師だったらチェックポイント。
江成:あはは(笑)。マーカー引くところ? (笑)。ここテストに出るところって。
大室:予見と結果回避。
森数美保氏(以下、森数):今油断していた(笑)。テストに出る。
江成:危ない(笑)。
森数:やばいやばい、メモ(笑)。
江成:石黒さん、一般的にはミーティングなどに出たら、「発言責任を持ちなさい」「その場へのバリューを出しなさい」という話がある一方で、実は今の“雑談責任”みたいなものも大事なんじゃないか、というコメントも別の場所で拝見したんですけど。ぜひこの辺りも。
石黒卓弥氏(以下、石黒):Discordってもしかしたらお使いになられていない方もいらっしゃるかもしれないですけど、常時つなぎっぱなしの音声ツールですよね。別に今、Clubhouseでもいいんですけど。
それまではオフラインの時って「会議に出たら発言しなさいよ」「しゃべらないなら別に会議に出なくていい」というふうにDeNAさんがよくおっしゃられていたんですが。「雑談を積極的に聞きにいこう」というものを作ろうと思って、Discordを使っていた時に“雑談責任”と言っていたんですね。
要は、オフィスだと日常的に、例えば「この間のお土産うまかったよ」って話があるじゃないですか。「八つ橋が好き」とかって、本当にどうでもいい会話ですよね。そういうのを、たぶんまったく聞かなくなっているはずでして。
ミーティングだと、私と江成さんがしゃべっているんだけど、どこかで森数さんが「それ私知ってるよ」とか「私つなげられるよ」みたいな会話がめちゃくちゃ起こりにくくなっているので、雑談を聞きに行く。最近のオフィスって、会議室が実はすごく少ないんですよね。スタンディングデスクとかがすごく多く置かれていて。
社内で「スタンディングデスクから漏れてくる音を積極的に聞きに行こう」みたいなキャンペーンというか。“雑談責任”という言葉を使って、いろんなDiscordのルームに入ることはむしろ推奨するよ、ということをやっていますので。
江成:確かに、雑談を聞きにいく。意外とその中から、コンディションや「最近プライベートも忙しいのかなぁ」みたいな、いろいろと気になっていることを聞けたりしますよね。
石黒:もしかしたらね、プライベートのことを聞いて急に嬉々としてしゃべりだしたら「こっちのほうが楽しいんだな」みたいなやつも(笑)。
江成:なるほど。逆に。
石黒:というのは大事にしていましたね。
江成:逆にこれ、マイナスをフラットに持っていくような、ステップ1の話だと思うんですが。例えば、今はフラットな組織が組織作りや文化醸成でより良くなっていくためのポイントやコンディション、組織作りの文脈もぜひぜひお話をいただきたいです。
例えば今、森数さんも事業運営をされている時に、より組織作りをうまくしていくために取り組んでいらっしゃることや考えていらっしゃることってどんなことですか?
森数:そうですね。さっきの“雑談が起こりやすくなる仕組み”はけっこう気にしていますね。例えば、雑談チャンネルも1個作るんじゃなくて。そこで1つの話題が盛り上がっていたら、「今はこの話題で盛り上がっているから、自分も何か言いたかったけどやめとこう」となるじゃないですか。
フィットネスや、私たちの組織は女性が多いのでビューティーのチャンネルとか、パパママのチャンネル。甲子園の時だと甲子園のチャンネルという感じで、趣味や自分が話しやすいトピックに出会えるように分けています。あとは「オフィスにいたら、あの人がすごくいつも水を替えてくれる」「ごみを拾っている」みたいなのあるじゃないですか(笑)。
江成:あります、あります。
森数:そういうのが見えないから、そういったナイスムーブを拾うチャンネルもあって。どこかで誰かがやった良い行いに「ナイスムーブ」というスタンプを付けたら、「ナイスチャンネル」に全部飛んでくるんですよ。みんなそこを見れば各所のナイスムーブが見られて、「めっちゃいいやん!」という話をしたりしますね。
江成:確かに、通勤を捨てても離れているだけじゃない。例えば事業部ごとに文化が分かれていて、他のところが何をやっているかわからない、ということはあるあるだったりするじゃないですか。
「あの事業部は」などの“VS構造”を作ってしまうこともあると思うんです。例えばそういう簡単なスタンプ1つで他の誰かがやっているいい動きがわかるのは、めちゃくちゃ会社や仲間が好きになりますよね。
森数:そうなんです。簡単なスタンプ1つで全部が流れてくるって、その仕組みもセットなのかなと思っています。
江成:想いと仕組みをセットしていくイメージですよね。
江成:石黒さんも、それこそメルカリさんの時は60人から1,800人までの組織作りを見ていらっしゃる中で、この取り組みがフラットなコンディションをより良くしてきたとか、組織作りにおいてもしかしたらすごく効いたかも、というのはどんなことがあります?
石黒:そうですね。とにかく届いてないのでしつこく言い続けるというやつですね。なので、なにも難しいことはないというか、言い続けることがやっぱり大事なんですけども。
当時のメルカリでいうと、3つのバリュー、行動指針もそうですし。例えば「みんなリファラル採用をがんばろうよ」とかも、「先週言ったから今週は言わなくていいよね」みたいなことがけっこうあるんですけど、そんなことはなくて。
会社が言わないと忘れるし、先週休んでいた人もいるし、新入社員だっているし。聞いているほうはもしかしたら「しつこいな」と思うかもしれないですけど、しつこいなと思うぐらい言われないと忘れるし、みんな忙しいからプライオリティが上がらないですよね。
なので、社内のみなさんに同じようなことを思っていただく中では、けっこうしつこく何度も言っていく。例えば「思っていることがあったら言ってね」みたいなやつも、「はい、はい」って教科書っぽく言っているだけだよね。
(そうじゃなくて)「マジで言ってほしい」「この間〇〇さんが先に言ってくれて、それで1人助かったんだよね」とか。具体的なことや、どうアクションにしてほしいかも含めてちゃんと言ってあげると、みんな言ってくれる。例えば今、僕は採用をやっていると「石黒さんにDMするの申し訳なくて」ってよく言われるので。
Clubhouseとかで、「迷惑なことは1ミリもないので」と言っているんですよ。そしたらちゃんと2通か3通ぐらい来るようになって、「ここまで言わないとだめなんだな」と思って。
石黒:社内のコミュニケーションとは外れますけど、例えば私も今日もこういった機会を頂戴してすごく光栄ですけど、外でお話をするようになると、意外と遠慮してしまうんですよね、みなさん。
例えば「産業医の先生(の立場から)ならお話していい」とかあるかもしれないけど、日頃の会話だとそういうのを言わないで、「阿吽(の呼吸)でわかってんじゃん?」みたいなコンセンサスがあったりするので。「マジで言っていいからね」というのをしつこく言うのは、本当に効きますね。
江成:おもしろい。確かに「忙しそうだな」とか、よくオフィスの時にも「上司とか先輩が忙しそうだとちょっと声かけづらい」みたいに空気読んでいたりするので。それは、離れていると余計に感じますよね。
石黒:例えば「江成さん、明日5分だけいいですか」と言われると、5分だけスケジュールをもらうって逆におかしいじゃないですか(笑)。謎の緊張をするじゃないですか。
江成:逆に身構えちゃいますよね。
石黒:でも5分が実は「このロゴだけ直したいので見てほしい」ということかもしれないんですけど、そのめちゃくちゃ軽いやつが聞きにくい。
江成:確かにそうですね。
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