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メンバーの不調シグナルを掴むには? リモート時代のネガティブコンディションキャッチ&ケアとは?(全6記事)

リモート慣れした企業も苦戦、「リモートワークwithキッズ」 部屋に鍵、時間割表作成……親の“切ない試行錯誤”

「激動の2020年を経て、2021年の『雇用』や『組織の在り方』はどう変わるのか?」をコンセプトにした、人事担当・経営者向けのイベント「HR Knowledge Camp 2021」が開催されました。各セッションのテーマに纏わるキーパーソンを迎えて行われ、本記事では「メンバーの不調シグナルを掴むには?リモート時代のネガティブコンディションキャッチ&ケアとは? 」をテーマに、リモートワークを通して浮かび上がってきた課題について議論されました。

「産業医」って何科なの?

江成充氏(以下、江成):今日は、「メンバーの不調シグナルをつかむには?」と「リモート時代のネガティブコンディションキャッチ&ケア」をテーマにお話を伺っていきたいと思います。

今日は豪華なお三方にご登壇いただきます。大室先生と石黒さんと森数さんでございます。それぞれ自己紹介、自社紹介等々をお願いできればと思います。まず大室先生、お願いします。

大室正志氏(以下、大室):どうもこんにちは。産業医の大室といいます。よろしくお願いします。

江成:お願いします。

大室:よく、「内科ですか? 外科ですか?」と聞かれるんですけど。実は僕は産業医大と言いまして、産業医を専門に養成する大学(に通っていました)。僕の時はまだ学費がタダだったんですけども、ざっくり言うと、防衛医大や自治医大などと同じ「目的別医大」というカテゴリーの大学です。

そういった大学を出まして、研修医が終わったあとに産業医の養成コースに入ったんですよ。そのままジョンソン・エンド・ジョンソンという会社の統括産業医になったので、産業医としか言いようがないんですが、医師全体でいえば割とめずらしいキャリアです。

よく司法試験を受けたあとに弁護士さんになる人がほとんどで、裁判官や検察官になる人が数パーセントずついると言われます。産業医(と医師)って、実は検察官と弁護士ぐらい別の商売なんですよ。検察官は公務員ですから、辞めたあとしか弁護士にはなれません。だけど産業医の場合は、医者の90パーセント以上を占める白衣を着た臨床医の先生がふだん兼務をされているので。

「何科ですか?」と聞かれるのは無理もないんですが、本来であれば白衣を脱いで、産業医をする時は別の職業であるというのが産業医の在り方ですね。

僕はまず、ジョンソン・エンド・ジョンソン(の在職が)終わったあとに、同友会という人間ドックのグループにいて、今は自分で独立して約30社の産業医をしています。

それ以外にも、NewsPicksで平成ノブシコブシの吉村さんと2人で番組をやっていたり、課外活動もやってたりします。ということで、よろしくお願いします。

江成:よろしくお願いします。隔週金曜日にNewsPicksで『OFFRECO』が配信中ですね。

3つの事業を展開するテックカンパニー「LayerX」

江成:では石黒さん、お願いします。

石黒卓弥氏(以下、石黒):よろしくお願いします。改めて、LayerXの石黒でございます。書いてあるとおりなんですけども、NTTドコモという会社に入社して、もう6年も前になりますが、2015年にメルカリに入社しました。メルカリの成長を支える採用とか、その他周辺の人事を中心に担わせていただいて。

2020年の5月にLayerXに入っています。今は少しデジタル庁の採用のお手伝いなどもしている状況でございます。

私が所属しているLayerXという会社を改めてご紹介させていただきますと、従業員が35名ぐらいで、そのうち25名がエンジニアという、いわゆるテックカンパニーです。グノシーでニュースアプリを創業した福島(良典)が代表をやっている会社です。

もともとはブロックチェ―ンの事業をずっとやっていた会社ではあるんですが、金融事業とか、あとはDXですね。先日「LayerX INVOICE」という主に経理向けの業務効率化のプロダクト、いわゆるSaaSのプロダクトを出しまして。1月からそれをみなさんにご利用いただくかたちで、SaaSの立ち上げをやっています。

ですので創業2年というところなのですが、SaaSの事業と金融事業で三井物産の合弁会社があって、もう1つがブロックチェーンの研究開発をやっておりますので、今は3つの事業をやっています。組織としては35名なんですけども、今日はLayerXのお話と、メルカリの拡大期のお話なども少し触れたいと思っております。楽しみにしておりました、今日はよろしくお願いします。

「採用を科学する」オンライン人事サービス

江成:森数さん、今日はよろしく願いします。

森数美保氏(以下、森数):みなさんはじめまして。株式会社キャスターのCASTER BIZ recruitingという事業部で責任者をしています、森数美保です。自己紹介はここに書いてあるとおりなんですけど、JAC Recruitmentという転職エージェントに新卒で入社をして、そのあとは石黒さんと同じなんですが、ドコモ系の会社で採用をしていました。

直近が、弥生(会計)にバイアウトしたMisocaで人事の立ち上げや制度構築をして、今はキャスターにいます。CASTER BIZ recruitingは、いわゆる採用代行の事業なんですけれども。ただ代行しているわけじゃなくて、採用をまるっとそのまま私たちがすべてやっているのでファクトをもとにすべての数字を持っている。再現性の高い採用活動ができるのが特徴で、私はいつもそれを、「採用を科学している」と言っているんですけれども。

事業部にいる120名ぐらいのメンバーは、全員フルリモートです。前職のMisocaはリモートと出社が混じった組織で、今はフルリモートで両方の会社を経験しているので、その視点でも今日はお話しできればと思います。よろしくお願いします。

江成:よろしくお願いします。

コロナ禍で“あぶり出された”企業の課題

江成:ではさっそく、さっき冒頭に今回の開催背景でも触れさせていただいたんですが、2020年はだいぶ組織の在り方とか組織と人の関係性が変化をしてきたと思うんです。

まず石黒さんに伺いたいんですが、石黒さんご自身も昨年転職という変化もされたことで、去年は2社で人事をされていらっしゃったと思うんです。この辺りも踏まえ、人事として見えた2020年に起きた変化などをぜひ教えていただきたいです。

石黒:コメンテーターみたいなすごく難しいお題だなと。

江成:あはは(笑)。お題が難しかった。すみません、抽象度が高いですが。

石黒:やっぱり外部環境という意味では今でも辛い方も多くて、私も少しでも感染拡大を防止しなきゃと思いながらではあるんですけども。コロナがすごく大きな変化の1つだったのかなと思っております。

コロナ禍によって何か変わったのかでいうと、やはりオフラインで会う機会が減ったことがあります。ただどちらかというと、それまでにあったものがあぶり出されたり、より見えにくくなるような両側面があったのかなと思っています。

私が所属していた会社の話ではないんですけれども、「見えるようになった」という意味でいうと、もともとなんとなく課題だったものが、よりあぶり出されたものがけっこうあるのかなというのが1つ。

もう1つは、本当に誰がコンディションがいいのか悪いのかがまったく見えにくくなった。私は例えば人事の時って、ワンフロアだったらワンフロアを、1日1回は必ず歩くんですよね。

江成:お散歩みたいなイメージですよね。「どうなの?」と顔を見る。

石黒:何があっても必ず歩く。誰がいるのかとか、誰の顔があるかを見たりしているので。そういうものがオンラインのSlack、Zoom、Discordというものに代替をしていくことがあったかと思うので。

その代替手段にいち早くトライして見つけていった組織は、その後もすごく「よりいいものを探そう」とポジティブな変化を楽しんでいる組織が多いのかなと感じています。特にWebスタートアップやベンチャーとかだと、「この環境をどう乗り切りましょうか」というマインドセットでやれている会社は、すごく強いなという印象を持っていますね。

リモートワークは顔色が伺えない

江成:石黒さん、今気になったキーワードが2つぐらい出てきていて。まず「あぶり出される」というのはつまり、もともと燻っていた組織課題がリモートによって浮き出ただけで、「もともとあったよ」というイメージですか?

石黒:「出てきてしまう部分もあったのかな?」と思ったりしますね。

江成:石黒さんも他社の相談にけっこう乗られるケースが多いとも伺ったのですが、どんな特徴を持った組織でわりと(課題が)浮き出ているような体感・印象ですか? 「こういうことに気を付けていなかったから浮き出た」とか「もともとこういうことをしなかったら浮き出た」みたいな。

石黒:あまりネガティブなことばかり言ってもしょうがないんですけども(笑)。例えば日本の言葉でよくあります、「顔色を伺う」って話あるじゃないですか。(リモートで)顔色を伺えなくなっちゃいましたよね。

いかに顔色を見ながら仕事しているのかがわかっちゃうケースもあって。顔色を伺えなくなったので、常に透明な意思決定とか情報流通がされていれば、たぶん問題なく移れたはずなんですけど。常にオフィスの空気感だけで仕事をしていた方は、より(課題が)大きくなっていってしまうシーンもあったのかなと思いますね。

江成:確かに「よしなに」「よろしく」は、なかなか難しくなったところもありますよね(笑)。

石黒:ハイコンテクスト型だと難しいなと思いますよね。

部屋に鍵をかけたり……子どもと過ごす在宅ワーク事情

江成:うんうん。代替手段のところも伺いたかったんですけど、これは後ほどのテーマでぜひ伺えたらと思います。逆に森数さんはもともと、2020年にこうなる前からほぼほぼいわゆるフルリモートで、御社の場合だと自社でも働かれていますし、御社を活用されている方もそういうフルリモートだと思うんですが。そもそも去年は変化って起きました?

森数:そうですね。そういう意味ではコロナ禍に強い組織だなというのは改めて思ったんですけど。ただ、うちのCOOの石倉秀明もよく言っているんですが、「いくらリモートワークに慣れていても、リモートワークwithキッズに慣れているわけではない」と。

要は子どもも休校になり、家にいることになって、その環境はさすがに私たちも辛かったんですね。そもそもリモートワークに慣れていない方で、さらに子どもも見ながら働かなければならないのは、両方を初体験の方にとっては非常に苦しい1年半だったんだろうなと思っています。

江成:確かに。森数さんご自身もお二人のお子さんがいらっしゃると思うんですけど、もしかしたらそこの想像がついてない独身の方だったり、お子さんがいらっしゃらない方もいると思うので、特に苦しかった瞬間なども触れていただいてもいいですか。

森数:やっぱり姿が見えると、仕事中とわかっていてもどうしても話しかけたくなるのが子どもだと思っているので。部屋に鍵をかけたりいろいろ工夫をしたんですけど、「やっぱりどうしても集中しきれない」と、うちのメンバーもクライアントさんもおっしゃっていましたね。

なので私の場合は時間割表を全部作って、小学校とまったく同じタイムスケジュールでその時間にチャイムを鳴らすようにして、時間割表も各部屋に大きく貼って「これ通りに生活をしよう」って、いっさい(生活リズムを)崩さない3ヶ月間を過ごしました。

江成:確かに、その辺りの工夫はなかなか実際にやってみないと難しいですよね。コメントでもすごくいただいていますね。「部屋へのカギ……切ないですね」というコメントもあります。切ない。お互い切ないですよね。

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