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マイクロツーリズムと酒蔵の可能性(全5記事)

自宅から1~2時間で行ける「ご近所旅行」で地域が活性化 単なる“観光”にとどまらない、マイクロツーリズムの真価

日本酒ファンの増加や将来のマイクロツーリズムへ繋げるためのイベント「サケソニック」が開催されました。「マイクロツーリズムと酒蔵の可能性」をテーマに行われた基調講演には、株式会社ヤッホーブルーイング代表取締役社長の井手直行氏、株式会社KURABITO STAY 代表取締役社長の田澤麻里香氏、モデレーターに面白法人カヤック 代表取締役 CEOの柳澤大輔氏が登壇。本記事では、コロナ禍で注目を浴びているマイクロツーリズムの可能性について語られました。

「ご近所旅行」が町を活性化させる

柳澤大輔氏(以下、柳澤):今日のテーマであるマイクロツーリズムの資料を表示していただいて、意識合わせをしたいと思います。

マイクロツーリズム自体は昔からあった言葉ですけど、このコロナで特に注目を浴びましたね。特に星野リゾートの星野(佳路)さんが、「これからしばらくインバウンドが戻ってこないでしょうから、マイクロツーリズムなんじゃないか」と発信をされて注目を浴びました。

この数字は、Go Toの影響もあるかもしれないですが、もうすでにマイクロツーリズムが伸びていますよ、という資料ですね。

今、僕らカヤックはまちづくりの事業に携わっています。いろんな町が活性化した、いい施策を聞いていると、観光地としてもう栄えているところはすごく町の魅力がはっきりしていますので、人も来るし、発信する内容もあるんです。

けど、そうじゃない場所が観光客や移住者を「どう増やしていこうか」という時に、町の魅力を再発見する必要があって。その町の中でまだまだ観光地化されていないところや、町のいろんな魅力をまずは再発見する。

さらに人を呼んだり、住んでいる方々が自慢する流れにするためには、まずは地元の人たちが参加したくなって町の魅力を再発見するような、地元向けのツアーを作っていく。地元の人たちが、より地元を好きになる。その結果、人に勧めたくなって、どんどん町がより魅力的になっていく。

これがまさにマイクロツーリズムだと思うんですね。地元から究極に近いご近所旅行をするという意味だと、まちづくりの観点からもマイクロツーリズムはものすごく有効です。

「観光名所じゃないもの」に魅力を持たせるには?

柳澤:結局、観光地じゃないところのマイクロツーリズムをやろうとすると、いわゆる「観光名所じゃないもの」を魅力的に見せて、参加してもらうことになるんですよね。

まさに今回の酒蔵なんかも、もともと観光地ではなくて。田澤さんがやられた酒蔵ツーリズム、KURABITO STAYは、日本初なんですよね。酒蔵にホテルとして泊まれて、そのまま体験できちゃうのは新しい発想じゃないですか。

(大阪府)八尾市の事例が書いてありますけど、「ファクトイズム」。これも八尾市が発信した言葉で、まだ世界的にも珍しいんですが、八尾市は部品を作っていたりして、いろんな製造工場があるんですよ。

ぜんぜん観光地じゃない場所だったけれど、多くの工場が協力し合って、実際に工場のものづくりの現場をみんなに公開しよう、ということでツアーで回っていくんです。それ自体を1つのマイクロツーリズムにして、「ファクトイズム」という言い方で、こういった1日か2日のイベントをやって魅力的にしていこうと。

実際、ツアーに参加してみるとおもしろいんですよね。そうなってくると、もしかしたら工場で働きたい人も増えるかもしれないし、毎年ツーリズムに行く人もいるかもしれない。そんなような流れが来ていますという話なんですね。

井手さんは、佐久に醸造所があるんですよね?

井手直行氏(以下、井手):はい。ビールを作っているのが佐久市の醸造所になるんですね。

柳澤:そこは、まだ稼働していますか?

井手:そこは今も普通に、毎日毎日フル生産でやっています。

柳澤:さらに御代田町にもう1個(オフィスを)作ったということですか?

井手:そうです。佐久市の隣が御代田町というところで、今私は去年の9月に御代田に新しく作ったオフィスにいます。営業とか事務方が手狭になったので、全員越してきました。この事務所の隣にも小規模のビールを作る施設を作って、そこは主に試験開発用です。

柳澤:今日はそういう意味でいくと、今も佐久に拠点があるので、佐久自体を酒蔵ツーリズムでしっかりと活性化していくことには、きっとご協力いただける最適な方なんじゃないかな。

井手:ありがとうございます。

柳澤:井手さんって(出身が)久留米ということでしたけど、そもそも佐久市には「イデ」さんという方ばかりなんですよ。

井手:そうなんですよ。よく間違えられるんですけど、九州の「イデ」は私と同じ「手」の「井手」なんですが、この辺の地域の「イデ」さんは全員「井出」なんですね。井出さんがいっぱいいるんで、よく地元の人かと言われるんですけど、「いえいえ、私は福岡で」と。

柳澤:ちょうど同じ名前って、非常に運命を感じますね。今、僕の方でマイクロツーリズムの話を簡単に整理させていただいたんですけれども。「ツーリズムで盛り上げよう」というのが、今はコロナで人の移動も少し押さえられているので、「盛り上げよう」という流れ自体が来始めるのが、もしかしたら今年の後半とか来年になってしまうかもしれないですが。

家飲みユーザーが少ない「日本酒」もコロナ禍で苦戦

柳澤:実際に今、コロナの状況を踏まえた上で、これからマイクロツーリズムの可能性を図っていきたいんですけど、どうなんですかね。お二方にお聞きしたいんですが、例えば田澤さんはコロナによって酒蔵のホテルは影響を受けているのでしょうか?。

先ほどの井手さんの話だと、「ビールそのものはそんなに影響を受けていない」ということでしたけど、これは自宅で買われる方がいるから影響を受けていないんですかね。その辺の全体感、コロナの状況を踏まえて酒造業界や酒蔵業界がどんな感じなのかもお話いただけますか?

田澤麻里香氏(以下、田澤):はい。ツーリズムという点では、例えば温泉に入ったり、食事で地域に観光客の方がお金を落としてくれたりと、これまでは実際に現地に行ってやっと消費が発生して経済が回る。それがツーリズムだったと思うんです。

新型コロナウイルスの感染拡大によって、県をまたぐ移動や、実際に人と人とが対面することが完全に否定されてしまいました。なので、飲食店の方たちも私たち観光産業の人間も、ディスタンシングを取ったりマスクを着用したりと、ニューツーリズムやニューノーマルになんとか対応してきた部分があると思います。

それでも、実際にお越しいただいた時に生み出せる経済効果を100パーセント補完できるのかというと、なかなかそういうわけにはいかないです。今後、ワクチンが普及してノーマルに近くなるには、まだまだ1年はかかると思うと、観光産業や外食産業はかなり厳しい状況が続くんじゃないかなと予測しております。

蔵元の方々のお話を伺っていても、やはり家飲みよりも飲食店で日本酒を召し上がる機会のほうが圧倒的に多いというところで、かなり苦戦をしていらっしゃる蔵元さんが多いと聞いております。

KURABITO STAYは、昨年の7月からニューツーリズムやニューノーマルに対応してなんとか再開することができたんです。この13蔵の酒蔵のみなさんを応援したいという本当に個人的なおせっかいな気持ちで、このサケソニックを始めました。

今回の「まちのコイン(面白法人カヤックが開発したコミュニティ通貨サービス)」もそうだと思うんですけれども、すぐにはお酒の売上につながらなかったとしても、蔵元のみなさんの人柄が伝わったり。

コロナが落ち着いた時に「会いに行ってみたい」というふうに興味を持っていただけるようなきっかけにできることを、オンラインでいろいろと仕掛けを作っていけたらいいなと思っています。

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