
2025.02.18
AIが「嘘のデータ」を返してしまう アルペンが生成AI導入で味わった失敗と、その教訓
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斉藤知明氏(以下、斉藤):では、さっそくディスカッションに入っていきたいんですけど「どういうチームが成果を出し続けられるのか」というテーマから、お話をしていきたいなと思います。
僕は中竹さんにお声がけさせていただいた時に、やはりラグビーの監督をされていた時の例を拝見していて、まさに今の「カルチャーをつくる」というところに近かったと感じました。
一人ひとりの対応をとても大事にされていた。「自分自身にオーラがない」という表現をされていらっしゃいましたが、その中で一人ひとりが能動的に考えて成果を出すチームに変えていったという経緯が、まさにラグビーのチームの中でもあったように思います。それを今は組織にも展開されていらっしゃるところが、中竹さんの原点の1つなのかなと思っている部分です。
昨今はコロナやさまざまな外的要因もありましたが、成果を出し続けられるチームの特徴がどのように変化しているのか。変化している部分ないしは、普遍的に重要なところや最近注目され始めたところを、ぜひ中竹さんからお教えいただければと思っています。中竹さんにとって、成果を出し続けるチームとはどういったチームなんでしょうか?
中竹竜二氏(以下、中竹):まず、この問いはすごく深いなと思っていて。そもそも成果というのがやっかいで、1個の要素ではないんですね。昔は成果の基準がかなりシンプルだったので、売上に向かって走っていけばよかったんですけど、今はいろんな要素が組み合わさって「売上だけでいいのか?」となっている。
要するに「株主だけでいいのか?」から「従業員の満足度はどうなんだろう?」とか、実は1つの成果だったものが、そこに紐づくいろんなKPI自体が成果に変わっていっていて、成果自体の定義が組織によって変わってきているというのが大きな変化の1つです。
やはり、ここ(成果の定義)を何も考えず「成果=売上だ」とか「成果=シェアだ」という感じになっていくと、成果の観点の違う人たちが組織の中で一緒にいることになって、ちぐはぐになるんですね。
「成果といえば売上だけじゃないよな」という人と「成果って売上だよな」という人のように、そもそも定義がズレていると成果は出ないですよね。
大事なのは「成果が1つじゃない」ということと、成果を自分たちの組織の中で定義付けること。しかも今、定義付けにはめちゃくちゃ時間がかかるという、大きな時代の流れにあります。
斉藤:成果の定義付けって、リーダーの役割なのか、一人ひとりの役割なのか、それとも会社としての役割なのかでいうと、どういう役割なんでしょうか。誰が成果を決めるんですか?
中竹:いい質問ですね、実はここも正解がないんですよ。トップが決める組織であれば、おそらく、その決め方が組織の文化にかなり紐付いていくんですよ。「うちはみんなで決めるぞ、みんなでやっていくぞ」と言いながら、成果のところだけ全部トップダウンで決めるところも必ず出てきます。
それがいいか悪いかといったら、実はどっちでもないんですよね。一貫性を見出すことが大切だと思っていて、これから共創の組織をつくる場合には、たぶん成果の部分も共創的なつくり方をしていったほうが一貫性があって機能すると思います。
それがすべて正しいかというとそうではなく「成果だけは上が決める。いろんなプロセスはみんなでディスカッションして進める」。これもぜんぜんありだと思います。
僕の観点や経験でいうと、学生にスポーツを教えていた時は、成果は僕が決めていました。なぜかというと、任せるとめちゃくちゃ時間がかかるので。僕は練習のやり方や戦略とかのプロセスにほとんどタッチしないので「監督として何をやっているんだ」とよく言われたんですけど。
「勝ち方はちょっとわからないからみんなに任せるけど、今年は決勝で50対0の歴史的勝利を収めよう!」みたいな。
この目標の掲げ方はスポーツだと超わかりやすいので、そこだけトップで決めていました。あと、人選はトップダウンで決めていました。正解、不正解はないんですよ。
斉藤:成果や目的の定義って、みなさんの会社でどうなのかなというのも、ぜひ伺いたいなと思いました。ラグビーのチーム1つとっても「優勝する」というだけじゃなくて「50対0で優勝する」と決めたならば「50点をどうやって取るか」というのと、0点、つまり「どうやって点を取らせないか」という思考が働くと思うんですよ。
今、みなさんからチャットでいろんなご意見をいただいているんですけれども。「組織文化って、どうやってつくるんですか。過去を踏襲していくと、なかなか変化することって難しいよね」というお声もいただいています。僕は1つ「成果を定義するということが、そもそも組織文化や志向性を定義すること」だと中竹さんの話を聞いて思ったんですね。
まさに「みなさんの会社の中において、成果の定義ってどうされていますか?」というのを、お聞きしてみたいところです。
中竹:そうですね。本当にこの問いは、すごく深いなと思います。成果から考えたほうがいいですが、単発的に上げるのか、出し続けるのかでも違うんですよ。スポーツの世界を見ても、例えば昔ってけっこう「一発勝ったら勝ち」みたいなトーナメント制で一発勝負だったんですね。甲子園とかもそうですよね。
今はほとんどのスポーツの形態は、リーグ形式やプレイオフ形式になっています。実は本当に強い選手は、何度も何度も相手と戦っていく中で勝ち続けて学び続けられる組織なので、最終的に勝てるというふうになってきているわけです。
要するに、成果の定義もしないといけないし、みなさんの共創環境がどういう仕組みなのかを考えた時に「一発勝負でいいのか?」と。ずっと何かを学びながら出すチームにしておかないと、そもそもその領域において成果を出せないんじゃないか。ここは大きく変わってくると思います。
斉藤:少し別の観点のご提示として、表を1つ用意していました。
Googleさんが提唱されているサイコロジカル・セーフティを日本に持ち込んだ、石井遼介さんの著書『心理的安全性のつくりかた』の中で「成果を出し続けられるチーム・マネジメントの特徴の変化」について、心理的安全性の観点から書かれています。
「これまでの時代とこれからの時代って、何か変わるんですか」に対して中竹さんがおっしゃっていた「変化をし続けて成果を出し続けるためには、適応していかないといけない」ということをまとめたものが、この本に書いてある観点なのかなと思ってお持ちしました。
「人材・チーム」の観点で何が変わったかというと「正解がないです」と。チャットでも「トップから明確に示すほうがいいんじゃないか。文化が高まっている以上、より示していくほうがいいのではないか」といただいています。ただ、示した後に変わるんです。変わると(チームの人員は)何を言うかというと「朝令暮改しまくっているから大変なんだ」。こうなると、これはこれでトップの人も困ります。
どういうふうに目標設定をしたら、一人ひとりが変化をし続けられるのかというのが、これからの肝になるポイントです。模索・挑戦し、失敗や実践から学べるというのが1つのポイントですし、変化を感じ、工夫や創造することができる、率直な対話が行われていて、意義あるゴール設定を一人ひとりがしている状態。かつ、探索・実験が許容されている状態。
まさにこの部分が変わっていくところの違いで、今後成功を出し続けるチームとしてのポイントなんですかね。
中竹:そうですね。この石井(遼介)さんとは、シンガポールで一度案件をご一緒したことがあるんです。
斉藤:そうなんですね。
中竹:ロジカルに物事を説明してくださる方で「この整理の仕方が素晴らしいな」と私も非常に勉強になったのですが。もしこれに1個僕のアイデアを入れるとすると、ちょっと細かいんですが、スライドに「正解がないこれからの時代」とあるじゃないですか。
斉藤:はい。
中竹:「正解がない」ではなく「正解が1つではない」というね。
斉藤:ああ、なるほど。
中竹:正解がないわけではなくて、たぶんこれからは組織の中に自分たちで正解をつくらなきゃいけないんですよ。要するに「成果とは何か?」を自分たちでつくらないといけなくて。昔はそうではなく、正解がなんとなく世の中にあったから、それを自分たちに落とし込めば正解だったんですけど。
これからは正解が1つじゃないからこそ、多くの人たちが迷っていく。だから、いろんなものを模索して挑戦し、探索と実験を繰り返さないといけない。これが大きな特徴の1つかなという感じですかね。
斉藤:さっき中竹さんがおっしゃっていたように、正解がないからこそ、成果の部分、目指すところをアライン(合意形成)しないといけないんですよね。何を目指すのかについて多様性があり、さらにその手段も多様だと、とっちらかっちゃいますと。
チャットにすごく示唆深いコメントがあったんですけど「変化し続ける環境要因が多い時代において、成果よりもパスがいくつかあるとよい」と。
中竹:そうですね。
斉藤:「『正解がないから何を目指してもよい』ではなくて、目指すところは1つ。それを成し得る手段は複数あるからこそ、リーダーがその複数を定義して、一つひとつ『Aさんにはこれを、Bさんにはこれを』と全部定義するのは難しい」。
「同じ方向に対して『Aさんはこうしたい、Bさんはこうしたい、Cさんはこうしたい』で、全員が同じ成果に向かっている状態をつくることが、まさにこれから成果を出し続けられるチームの特徴だと言えるのではないでしょうか」というコメントをいただきました。
中竹:すばらしいです。
斉藤:すごく素敵なまとめをいただきましたね。
中竹:ありがたいですね。実際に、つくりあげている感じですね。
斉藤:そうですね(笑)。ありがとうございます。
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