2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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山岸園子氏(以下、山岸):ありがとうございます。今、ちょうど優等生みたいなキーワードが出たのでかぶせて、質問を一つ。
北野さんが考える優秀なビジネスパーソンの条件。「優秀なビジネスパーソンに共通することはなんでしょうか?」というご質問をいただいています。
北野唯我氏(以下、北野):これは僕の中では明確にあって、努力ではなく工夫できる人ですね。
努力はぶっちゃけ、どっちでもいいと思うんですよね。努力は重要ですよ。でも、どっちでもよくて、工夫できる人が重要。工夫できるかどうか? が重要だと思っておりまして。工夫というものを持っている人が、僕は優秀な人だなと思います。
山岸:なるほど。努力はがんばろうと思えば誰でもできるから、自分なりの工夫、工夫といったら言葉は簡単ですけれども、どうやったらよりうまくやれるのか? という自分なりの仕組みを作れるかどうかが大事なんだ、と理解をいたしました。
山岸:その努力しかできない人と、工夫ができる人の分かれ目ってなんなんでしょうかね?
北野:それってまさに、グロービスさんが大事にしている本質的な意味の知恵ということだと思うんですね。
私はこの前、自分の出身大学で講演みたいな授業を持たせていただいて、1年生と2年生の方にお話させていただく機会があったんです。その時に言ったのは「学ぶことや勉強することが、どういう意味かというのをほとんどの人が知らない」と。
いつも言うんですけど、本質的な意味でアセットを貯めるとか学ぶということは「アセットを学んで目標を達成する」のではなくて「目標を目指してがんばっていく中でアセットを得て、そのアセットプランを持っていけるもの、移動可能なものにする」という。それこそが本当のアセットなんだよ、ということをお伝えしたんですね。
すなわち、誰かから教わったことをそのまま使うということは、それは学ぶじゃなくて勉強するというだけで。本当の意味で何かを学ぶということは、目標があって、その目標のプロセスの中で得ていくものなんだ、という話をしたんです。
例えば、甲子園を目指したいと思っている球児の方がいらっしゃった場合。彼が甲子園に行くためにはどうすればいいか? を考えたとしたら、素振りとかキャッチボールをすると、野球がうまくなるわけじゃないですか。そしてその技術が、他の試合でも使えるようになると。
だけど多くの“大人”とかビジネスパーソンと呼ばれる人たちは、先に「TOEICを勉強しよう」といったことが多くて、これは「先に素振りの練習をしよう」というようなもの。でもそれって、本当の意味で言うとアセットにはならなくて。頭を使っているということではないと、僕は思っているんですね。
だから例えば、どんな職場においてもいいんですけど、ちょっと高い目標を立ててみて。あるいはちょっと高いと思う目標があった時に、じゃあ目標を達成するためにどうすればそれは達成できるだろう? と考えるそのプロセスこそが、本当の意味での工夫だと思うんです。だから、それができるかどうかだと思いますね。
山岸:なるほど。今のお話を更に深めたいなと思っていて。手段の前に、まずはその目的や目標を定めることが大事だと。目標と、まさにこれから自分がどう生きたいか? を、ニアリーイコールだと考えた時に、志みたいなものが定まらないということも、当然あるかなと思うんですね。
そうなった時に手段である、とにかく素振りをたくさんして、何かできるようになるまでがんばって、そこから先が見えたところに志ができるみたいな構造というのは、なりえますかね。
北野:なりえると思いますよ。でも、ここの最初のご質問……すばらしく鋭い質問だと思うんですけど「優秀なビジネスパーソン」という質問だったので、僕はそうお伝えして。
山岸:そうですね、なるほど。
北野:「とにかく素振りをしなさい」と言われて素振りをするというのは、僕の意味でいう「優秀」というより「言われたことをできる人」だと思うんですよ。なぜ、私はそれを優秀な人と定義せず、さっき言った工夫した人を優秀な人といっているかというと、経営者・投資家から見た時に、どっちにお金を払いたいかという視点だと思うんですよ。
すなわち、言われたことだけやれる人とか素振りだけできる人というのは、確かに助かる時はあるんですよ。でもそれって「機械で置き換えたらええやん」という話で。
山岸:おっしゃる通りですね。
北野:でも人間の工夫というのは、現時点において機械ではだいたいできないので。じゃあどっちのほうが辞められたら困るか? と言われると、あきらかにこっち(工夫できる人)なんですよね。
だからこれは、マクドナルドの例がわかりやすいと思うんですけど。マクドナルドはすばらしいトレーニングシステムだけど、やっぱり「マクドナルドでがんばっている人」よりも「マクドナルドでがんばれるような仕組みを作った人」のほうが、圧倒的にバリューが高いじゃないですか。
山岸:はい。確かに。
北野:それが真実なんですよね。努力は大事だし、僕も努力はめっちゃしてるし、日々鍛錬はするんですけれども。でもやっぱり学生から社会人になる際に、僕が大人として先輩として、若い人に対して伝えなければいけないものは「大学時代、高校時代とかは努力が認められたかもしれないけど、ビジネスの世界においては努力よりも工夫なんだよ」ということは、みんな気づいていないからこそ、伝えないといけないことだなと思うんですよ。
山岸:ちょっと今、深いため息しか出なかったです。ありがとうございます(笑)。
北野:本当ですか、いえいえ。
山岸:ありがとうございます。そうしたらまた次の質問にいきたいなと思います。「平成は転職が当たり前になりました。令和の時代は副業が当たり前になる、そんな話をよく聞きます。そんな世の中をどう生き抜いていけばよいのでしょうか?」こちらはいかがでしょうか。
北野:そうですね、どうやって生き抜いていけばいいか? ですよね。これは難しいですよね。
山岸:今日のテーマそのものなんですけどね(笑)。
北野:でもこれはものすごくシンプルに、変化に対応していくということしかないと思いますけどね。それはダーウィンがもうずっと散々言っていますし、我々の生物界においても重要な要素だと思うんですよ。
じゃあ変化に対応する際に、自分で変化できる人は別にベストだと思うんですけれども、そうじゃない人もいらっしゃるわけじゃないですか。その時に重要な要素を何か1つだけ言うのであれば、トップが変化してるか? だと思いますね。
私は去年、地方の講演に行かせていただいて。地方の中小企業の経営者の方々150名ぐらいにお話させていただく機会があったんですね。僭越ながら「現代における強い価値の条件は?」というテーマでお話をさせていただいたんですけれど。
1時間ちょっとぐらい話をした後、最後に「なにか質問ありますか?」となった時、最初に手を挙げられた70歳ぐらいの経営者の方が「貴重な講演ありがとうございました。おもしろかったです。1つ質問があります。最近、私の会社に新卒で入った10年目の男の子が辞めました」と。「私は彼に期待していました。しかし競合他社にに転職しました。そしてそこで取締役になりました」と。
「私は、もう悔しくてしかたがないんです」と。「どうすればよかったんですか、北野さん」と70歳ぐらいの経営者の方に言われまして。「なんて難しい質問をするんや……」と思ったんですけど。
僕はその時に答えたんですよ、一応ね。でも、答えながら「あぁ、なんか違うな」と思ったんですね。その時に答えたのは、たしか「役割を与えましょう」とか「ポジションを与えていく」とか「学ぶ機会を与えたほうがいいですよ」ってことを言ったんですよ。それっぽいじゃないですか。
でも新幹線で戻りながら「いや、あれ違ったな……」みたいな。「僕はなんてお伝えすればよかったんだろう」って思ったんですよ。大先輩の経営者の方に、なんて言えばよかったのかなと思って。
それで気づいたのは、僕が本当にその人のことを思うのであれば言うべきだったのは、辛辣な意見なんですけど「社長が変わっていない」ことだったと思うんですよ。「社長が変わっていないから、従業員とかリーダーとかも変わっていない」ということを言うべきだったんですよね。
よく大きな会社とかで、若い人とかの新規事業立案みたいなのがあるじゃないですか。
山岸:はい。
北野:若い人がプランを作って、それを経営者に提案するとなった時に、経営者の方がいろんなフィードバックをするわけじゃないですか。
僕は新卒の会社でそういう担当をしていたからこそ思うんですけど「偉そうに言っているトップの人って、新規事業を作れるのか?」というと、必ずしもそうじゃないじゃないですか。
でも本来トップというのは、一番能力が高いはずなんですよね。新規事業を作るって一番難しいことの1つなので、それが全員にできるか? というと、できない会社もいっぱいあるじゃないですか。それはまさに『天才を殺す凡人』という本のテーマなんですけれども。
それって、変化も一緒だと思っていて。だからさっきの質問にお答えさせていただくのであればなんですけど。もし自分が自分自身で変化できないのであれば、トップとか自分の上の人たちが変化している会社・チームで働くというのがオススメかなって思います。なぜかというと、変化率というのは上から決まっていくからだと僕は思います。
山岸:もうちょっと今のお話を伺いたくて。トップが変化するという変化とは、北野さんの中でもうちょっと具体的にいうと、何を表すんですかね? 何が変化するんですかね、これは。
北野:いい質問ですねぇ。
山岸:いや、今日聞きたくてしょうがないんですよ。
北野:めちゃくちゃいい質問ですよ。僕はいつも申し上げているのは、WhyとHowとWhatのどれでもいいんですけど、そのどれかを変えることだと思いますね。それが変化だと、僕の中では定義していまして。
僕がいつも「WhatとHowを同時に動かすな」と言っているんですけど。まずWhyの変化というものに関していえば、Whyってそんなに変化しないと思うんですよ。自分の志みたいなのが決まって、でも解像度は上がっていくじゃないですか。
私は27か28才ぐらいの時に「32才までに絶対ベストセラーを出すぞ、出せなかったら死のう」と思っていたんですけど、それは解像度がより上がってきているんですよね。志というのがシャープになってきている。Whyというものは上がっているし。
さっき応援ソングの話というのは、Whyというものの解像度が上がっているわけですよね。それが1個。
そして、Whatというものが変わる時もあるじゃないですか。例えばこれまでマーケティングをやっていたけど、それが営業部に行くとか? という、Whatが変わるパターンもあるんですよね。
もう1個、実はHowを変える方法もあると思っていて。それこそさっき言った、工夫だと思うんですけど。これまで営業の手法をAというパターンでやっていたものに対して、A′とかBでやってみるという。
営業というWhatは変わらないんだけど、Howというものを変えてみるという。本当にそれはなんでもよくて。ただ、僕がいつも言っているのは、WhatとHowというものを両方同時のタイミングでズラしてしまうと、戦略論的に言うと失敗することが多いなと僕は思っているんで。相当自信があったらいいんですけど。どっちかから変えていったほうがいいですよ、ということはよく言いますね。
山岸:うーん、なるほど。WhyとWhatとHowがあって、WhatとHowの中でいくと、おそらくHowのところから変えていくというのが、ある種、着手はしやすいと。
北野:そうですね。
山岸:そこはさっきの工夫という観点から考えてもとても重要だというお話、すごく興味深く聞かせていただきました。ありがとうございます。
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