2024.12.24
ビジネスが急速に変化する現代は「OODAサイクル」と親和性が高い 流通卸売業界を取り巻く5つの課題と打開策
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倉橋健太氏(以下、倉橋):草野さんに聞いてみたいんですけども。先ほどの榊さんのお話の中でも、データを使ったほうがいい企業と使わない方がいい……というか、それだとけっこう極論にはなってしまうんですが。まだデータ活用より重要なものがあるんじゃないかというようにおっしゃられていました。支援される企業さんごとにいろんなケースがあると思うんですけども。
これは自分の身で考えてもそうなんですが「使わない方がいいですよ」って、なかなか我々のような立ち位置からだと、押しにくい部分もあるのかなと思うんです(笑)。その辺、実際にクライアントにとってのベストを言い切れていらっしゃいますか?
草野隆史氏(以下、草野):僕らには、漫然と「データを使いたいんですよ」「AIを使いたいんですよ」というお客さんも、けっこういらっしゃいます。そういう時は、お客さんのビジネスモデルと今取れているデータの種類などを伺った上で「その中のどのデータでどんなことをしたらビジネスにインパクトを与えられるのか?」を構想するところから入ります。もちろん、そのインパクトで売上が伸びるようなパターンができれば理想ですけど、やはりコストの削減といった成果が多いですね。
僕らは分析の機能を提供する会社なので「分析しないでいいですよ」とは、なかなか言いづらいというか(笑)。とは言いながらも、いきなり高度ですぐには分かりやすい成果が出ないことにチャレンジしても達成感がないでしょうし、お客さんの社内で担当の方も「コストばっかり使って」という話になってしまいます。
なので、やっぱりまず結果を出さなきゃいけないとなると「今あるデータで、どこで成果を出せるか?」ということを考えて、提案していくというかたちですね。なので、先ほど榊さんがおっしゃった中で、本当にそのとおりだなと思うのは、やっぱりデータが何の写像なのか。榊さんのケースであれば、基本的にはお客さんの行動そのものなので、それを分析することでお客さんに関しての洞察が得られる。
それをBtoBのビジネスにフィードバックしたり、BtoCの部分でお客さんへのレコメンデーションとか、いろんなパッケージを変えていくことが可能になると思うんですよね。大企業でデータ活用したいといっても、そのデータが「オペレーションの写像」という状況だと、オペレーションの改善しかしようがないという話ですよね。
だからやっぱりビジネスを伸ばそうと思うと、ある程度、まずそのビジネスがデータが取れる状態で、分析に基づいてアクションが取れなきゃいけない。つまり「ビジネスそのものがすでにデジタル化しているかどうか?」ということは、すごく大きくいんです。そうなっている会社が日本はすごく少ないので、まずそこからやらないといけないという話ですよね。
今はDXの名が広くふわっと使われちゃっていますけど、本当にDXの議論って、本来的な意味でデジタル技術を使って、ビジネスを革新・変革していこうと思うと、まずビジネスの現場に正しくITを入れていかなきゃいけないと思うんです。でも、そもそも日本の企業って、IT・ビジネスがわかっている方が、なかなか育てられてないと。
企業の中にいるITの専門家って、オペレーションのためのITを回すことを中心にしてきた人が大半で、しかもその人たちが外部のSIerなどを使って仕事をしている状態です。要は、ITが「外注するもの」になっている中で、その外注したシステムの中に溜まるもの(=データ)をどう使うか? という感じなんですよね。
でもアメリカなどはもともとITの内製率が高い中で、ビジネスもITもわかっている人が社内にいるので、よりクイックに貯まっているデータを活用できたということなんだと思います。ビックデータの時代に大きくビジネスを伸ばすことができたのは、ITの企業における位置づけという初期値の違いが大きく響いちゃっているなと思っていますよね。
倉橋:やはり「その人」というところが1つ、どうしてもキーのお話になるのかなと思うんですが。とはいえ、私も事業を展開していくなかで、世の中とか市場の成長に比べて、「人依存」のところが圧倒的にスピードが遅いというか。そういった人たちがより足りない世の中に、どんどんなっていっているような体感があります。ここの2つの成長スピードのギャップを埋めていくには、どう考えていけばいいんですかね?
草野:答えはないですね(笑)。
倉橋:かなり、難題だと思っていて。
草野:そうですね。なので、僕がいろんな協会活動をやっているのは、自社の育成云々よりも本当に社会全体での人の育成の部分から関わっていくためです。今はデータサイエンスについて、最低限のものを大学で必修化しようという動きが文科省や内閣府であるんですが、これも、もともとは一般社団法人データサイエンティスト協会というところで、ヤフーの安宅(和人)さんとワーワーと騒いでいたところが、けっこう効いている部分もあったりするんですよ。
そんなかたちでベースの人の育成については、ちゃんとマーケット全体で供給を作っていきながら。一方で、本当に高度なビジネスとITが両方わかる人は、その会社のビジネスの現場でしか育てられない部分だとは思うので、どうしていったらいいんですかね。
本当に全部の会社が助かるというか、なんとかなる状況って作れるのか? というのは、常に議論している状態ですよね。理解がある経営者も数が限られちゃっているので。少なくともそういう会社では成功事例を作れるようにということで、葛藤している感じですかね。
倉橋:なるほど。人も企業の数も、消費できるサービス数がこれ以上増えない中で、ユーザーがどうサービスを選んでいくのか。ある意味で、選ばれる企業がしっかりと伸びていっている状態。その意味での次の時代にとっても健全な市場。あとはユーザーからのフォーカスみたいなもので、少しずつ危機感が醸成されていくのかなと、お話を聞いていて思いました。
倉橋:みなさんのお話の中で、細かく聞きたいところがめっちゃいっぱいあるんですけれど、あと7〜8分ぐらいなので(笑)。5年、10年前から見た時に、現在地は少し通過点だとは思うんですが。将来のみなさまの事業や展開されている市場、インダストリ、業界。その辺りに対しての「To be」「あるべき姿」「こう持っていきたいな」というお話をいただきながら、セッション終了に向けて進んでいきたいと思います。
いつも榊さんからスタートになっちゃっているんですけれども(笑)。
榊淳氏(以下、榊):なんとなく過去5年間ぐらいを振り返った時に、toC向けのサービスで一番すごい人と言ったら、やっぱりAmazonとかGoogleとか。この辺の人たちが、検索という領域、もしくはコマースという領域では圧倒的でしたよね。これはもう明らかに、お客さんの顕在化したニーズにズバッと答えられるというのが、彼らの一番すごいところだなと思っていて。
だけど最近はちょっとずつ「これやっぱり、ちょっとおもしろいかも」というものが(増えつつある)。例えば「TikTok」とか「Spotify」といったサービスって、顕在化していないニーズに対して自動的に流れてくる。潜在的に「そうそう、俺が聞きたかったのはこれ!」という感じで、流されてくるサービスが最近出てきていて。これはちょっとした進化かなぁ、と思っています。
我々のサービスも草野さんみたいな方だったら、こういうところに行かれるんじゃないかなとか。草野さんがご存知じゃない、すごく魅力的な宿を提案できるような。僕は「Discover Weekly」(注:Spotifyのサービスの1つ。自分の視聴傾向に合わせて、自動的にプレイリストが作成される)がすごく好きで、ああいう感じのサービスにしていけたらなとは思っています。
倉橋:ありがとうございます。みなさまのサービスにユーザーが到達する前に、情報をユーザーが取りにいっているものなのか、それともユーザーに対して情報が向かっていっているものなのか。ここの「情報の矢印」が、少し転換し始めているような時代感もありますよね。
榊:そうですね。なんか流れてきますよね。サービスを開いたら、それがまた心地良いという。YouTubeのリコメンデーションもそうですけど、流れてくるというのは1つの新しい体験になってきつつあるなと思っていますね。
倉橋:企業からの情報発信に対して、ユーザーの目がより厳しくなるような1つの流れかもしれないので(笑)。ある意味、データに対しての危機感が醸成されやすい世の中に、加速的に向かっていくかもしれないですよね。なるほど、ありがとうございます。
倉橋:では、スマレジの山本さんはいかがでしょうか。
山本博士氏(以下、山本):スマレジ自体は今、2万店くらいのアクティブな店舗さんが使ってくれていて。データの蓄積で言うと、たぶん2兆円以上の取引データが溜まっています。
倉橋:2兆円ですか? すごいですね(笑)。
山本:それはスマレジだけのものでもないですし、お客さんのものでもありますし。それをどうやって掘り起こしていくか? というところを1社だけでやっていても……これはパズルみたいなものだと思ってます。スマレジは、パズルの1ピースを持っています。でも、パズルを完成させて価値を上げようと思うと、もっといろんなデータやいろんな会社さんと絡み合っていかないと、価値ってあまり出てこないかなと思ってるんです。
今はAPIとアプリマーケットを使っていて、それを通じていろんなサードパーティーの人たちと組み合わせて、いろんな価値を生み出していきたいなと考えています。例えばBIツールの会社さんともよくお話しますし。
あとリアルの店舗さんで、自分のお店の前にカメラをつけて通行人のデータを測定するっていう、かなりマニアの人がいて(笑)。季節性、イベント、天気などを掛け合わせて、データを半自動で取っていって。実際にお店の前に看板なりポップを設置した時に、何人がこっちを見てくれたか? とか。
何人が店に入ってくれたんだろう? みたいなところまでやっている方も、けっこういらっしゃるんですよね。そういった方と連携して、もっとデータの価値を出していくような取り組みをしていきたいなと思っています。
倉橋:ありがとうございます。店頭のみならず、そのお店の前とか周辺の動きまでデータでビジュアライズされていくというのは、非常に未来的でもあります。ただ、これからの事業で確実に必要になってきそうなデータやインサイトだと思うので、ぜひぜひ実現していただいて。いろんなところのデータとつなぎやすい状態を、お互いに作っていきたいなと感じました。ありがとうございます。
倉橋:最後に草野さん。データ活用のいろんな難しい部分これまでも見られてきていると思うんですが。特に日本の企業におけるデータ活用、あとブレインパッドとしてのデータ活用の未来についても、最後にお聞きできればおもしろいかなと思いました。
草野:ここから生き残っていく企業って、やっぱりある程度はITを内製化しつつ、あるいは内製化しないにしろ外注をもっとうまいこと使っていくようなプレイヤーしか、デジタルを活用して伸びていくことは難しいと思うんですよね。だから、そういうプレイヤーに必要とされる会社にならなきゃいけないなと思っていて。
海外を見ていると、やっぱりアジャイル開発でシステム開発を手伝いながら、データサイエンティストもコンサルタントもいるような会社がすごく伸びているんですよね。ただこれって、本当に企業がITを内製化することを前提に、それをサポートするという立ち位置なんですよね。このビジネスモデルをそのまま日本に持ってきても、アジャイル開発しようと思うと企業の内側ですごくクイックに仕様確定とかできるような人たちがいなきゃいけないので、まず無理なんですよ。
そういう人たちもいない中で、そのままビジネスモデルを持ってきても難しいので。ビジネスモデルと日本の現状をくっつけたようなかたちで、僕らは変身していくんだろうなぁということを……今はまだ「これです」というの言語化できない状況なので……こういうものを今、チャレンジしている感じですね。
倉橋:ありがとうございます。今日、いろんなテーマでお話を伺って、やはりその事業がこれまでどういうアセット、魅力を積み上げてきて、市場がどういう現在地で、将来の自分たちの事業目的をどこに置くのか。まずこの向かう方向性、このルートをクリアにしていくところが、データ活用の大前提として重要だというお話につながってくるのかなと思いながら、聞いてまいりました。
まとめの言葉みたいになってしまいましたが、まだまだこれからいろんな事例が出てきて、使い方もより多様になっていくと思うので。またこういうお話をしていきながら、私も含めてみなさんで情報発信していければいいかなと思っております。ではご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。登壇者のみなさま、ありがとうございました。
榊:ありがとうございました。
山本:ありがとうございました。
草野:ありがとうございました。
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