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大企業が活用できていない「データ」のリアル(全4記事)

一休.com代表が説く、データ活用の3つの利点 競合との比較から見出す“好機”

2020年、オンラインにて開催されたIVS(インフィニティ・ベンチャーズ・サミット)において「大企業が活用できていない『データ』のリアル」について、株式会社ブレインパッド 代表取締役社長 草野隆史氏、株式会社一休 代表取締役社長 榊淳氏、株式会社スマレジ 代表取締役 山本博士氏がスピーカーを、株式会社プレイド 代表取締役CEO 倉橋健太氏がモデレーターを務めて語り合いました。本パートでは「競合とのデータ比較から生まれる、ビジネスの提案」などについて話します。

コロナの影響が大きい、観光地・宿泊施設・レストラン

倉橋健太氏(以下、倉橋):よろしくお願いいたします。簡単に、みなさんの自己紹介から入っていきたいなと思います。榊さんからお願いしてもよろしいですか?

榊淳氏(以下、榊):一休の榊です。事業は主に、宿泊の予約事業とレストランの予約事業をやっていまして。ご存じのとおりインターネットの会社なので、対お客さん向けのサービスだとか、ホテルさんとかレストランさん向けのサービスに、データ活用などをやっております。よろしくお願いします。

倉橋:お願いします。では次、山本さんお願いします。

山本博士氏(以下、山本):スマレジの山本と申します。飲食店さんとか小売店さん向けのレジのアプリを作って販売している、ソフトウェア会社になります。今年2月の中旬ぐらいに、観光地で商売されているお客さま・店舗さまから「売り上げが一気に落ちている」とご連絡をいただいて。

「スマレジの利用料を減らしてくれ」もしくは「ちょっと払えないかもしれない」みたいな連絡をいただいて「おおっ!?」と思って、あまりそこまで気づいてなかったんですけども。個別の店舗さんのデータを見るというのは、あまりよくないんですけれど。全体の統計データとしてスマレジの売上のデータを見ると、やっぱり落ちていると。

3月になると、イベント系がドン! と止まっちゃいましたね。全部のイベントが中止になりましたということで、物販のほうの契約もドドーン! と止まりました。メディアでフォーカスされている飲食店さんというのは、実はもっと後になってから落ち込んだんですけど。

4月の緊急事態宣言で自粛が始まって、一気に飲食店が止まってしまって。今日のテーマにもかかわると思いますが、ダイナミックにいろんなことが動いている中で、データが見られたからこそ、いろんな手が打てたというのもあったんかな? なかったんかな? という話(笑)。

倉橋:なるほど。飲食店へのインパクトって、けっこう遅れて来たんですね。

山本:4月7日に全国的な緊急事態宣言が出て、一気に止まったみたいな感じですね。

倉橋:なるほど。この辺の流れって、榊さんもかなり近しい感覚をお持ちですか?

:まさにそうで。我々、宿泊事業とレストラン予約事業って、両方ともコロナインパクトのド真ん中で。コロナが炸裂しているような業界だと思うんですけれども。さっき山本さんがおっしゃったとおり、レストランとか宿泊は4月にグーッと落ちてきて、簡単に言うと9割減ですね。95パーセント減と言ってもいいかも知れませんね。

そういった状態があって、そこから不思議と宿泊がけっこう復活してきてます。でもレストランはなかなか復活していなくて。やっぱり宿泊は、すごく仲が良い人と行くというのがありますよね。なので家で一緒に暮らしていて、そのまま車に乗って旅館に行くみたいな人は、あまりリスクを感じないんですけど。

会社の知り合いの人と接待とかでご飯に行くというのは、ちょっとまだ内心で不安があるみたいな。そこは明確に差が出ていて。宿泊は一気にガーッと復活した一方で、レストランは「あれれ?」という感じが続いている、というのが今の全体感かなと思っています。

倉橋:実際、宿泊が戻してきたタイミングって、どのあたりから回復してきているようなイメージがあります?

:緊急事態宣言の解除が、まず1回目ですよね。そこで対前年の7割ぐらいまで戻したと思うんですけども、そこから対前年超えまで戻ったのは「県またぎ移動OK」みたいな。

倉橋:ありましたね。

:あの時に前年超えになって、今は賛否両論ある「Go To Travel」がありますけども。それで今、対前年の何倍も売れている、みたいなところが宿泊事業の動きですね。

倉橋:ありがとうございます。このあとの話でも、直近のユーザーというか、人の動き・データみたいなところにも、ぜひ触れていただけるとおもしろいかなと思います。

各社の事例に見る、データ活用の話

倉橋:では最後、ブレインパッドの草野さん、よろしくお願いします。

草野隆史氏(以下、草野):ブレインパッドの草野と申します。よろしくお願いします。うちは2004年に創業のベンチャーで、もう16〜17年やっているんですけど。当初からデータの分析をやっていて。それがあとからビックデータとか、最近はAIという手段も出てきたので「AIの会社」みたいな言われ方もするんですが。

やっていることとしては、ビッグデータ活用のためのコンサルティングとか、実際の分析の代行みたいなものとか、分析のためのSI環境の構築などをやっています。あとはデジタルマーケティングツールもやっていて、一部は「KARTE」さんと競合しちゃっていますけど(笑)。

倉橋:ハハハ(笑)。

草野:一部のみですが、ガチンコでぶつかっちゃったりして。

(一同笑)

倉橋:そうですね。ちょっとぶつかりながら、仲良くさせていただきたいなと思うんですけど(笑)。

草野:まあまあ、そういうの気にしないでやれたらなと思っています。よろしくお願いします。

倉橋:最後にモデレーターの私は、倉橋と申します。ブレイドという会社でKARTEというデータ活用のプロダクトを提供しております。プロダクトという観点では、草野さんのところと一部競合する部分もありますが、とにかく大きくなっている市場、これからより伸びていくようなところなので、共創していくという、謎のフォローを入れながら(笑)。

僕も登壇者候補の一覧を最初に見せていただいた時に「これは僕で大丈夫なんだろうか?」と、いろいろ思いましたが、今日はフラットに一個人としても、データ活用と企業といったところを考える機会になればいいなと思っております。

オーディエンスの方たちもお気づきかもしれませんが、登壇している方々の事業は、基本的にはBtoBの要素が入っていると思います。一休さんに関してはBtoBtoCで、ビジネスモデルとしては最終的にはコンシューマの方まで入り込んでいるわけなんですが、まずはBtoBの側面があって、その先に企業さんのユーザー・生活者へのサービス提供という二段構造になっているのは、みなさん共通の部分かなと思います。

話としては自社のデータ活用の部分のお話と、あとみなさんがご支援されてる市場だったりクライアントさんですよね。そこでのデータ活用の話。この2面のところは、少しずつ触れていければいいんじゃないかなと思っております。どんなお話をするのがいいかなと思ったんですが、データ活用に関わる、いわゆる一般的な「あるべき論」は、けっこうコンテンツなどでも流通しているので。

あくまでみなさんの会社・事業をデータという、ある種の「相棒と共にどうされていきたいのか?」。あくまで主眼的なところで、どんどん深堀りしていったほうが有意義なお話になるんじゃないかなと思っていますので、そういった流れで進めていきたいと思っております。

一休が行っている、対顧客向けのデータ活用

倉橋:初め、テーマ的に振り出していきたいなと思うんですが。みなさまの事業は、いわゆる世間一般の企業さまに比べて、データ活用という意味ではしっかりとなされているという認識を持たれやすいですよね。もちろん企業ですし、実際そうだと思っているわけなんですが。

自社のデータ活用の現在地。これをどのようにお考えかというところを、みなさんからお話しいただけないかなと思っております。先ほどの順番どおり、まず榊さんからお願いしてもよろしいですか。

:我々はインターネットの会社なので、おそらくデータ活用が進んでる業界にあるんじゃないかなと思っています。その中でも一休はBtoCの会社で、お客さまの動きがつぶさにデータで読み取れるという業界の特徴がありますので、このデータ活用には非常に力を入れているつもりです。

「他社さんと比べて、どれぐらいデータ活用が立派にできているか?」というのは、よくわからないですけども。今、うちでやっていることは大きく3つありまして。1つはみなさんがすぐ想像されるような、対顧客・C向けのデータ活用ですね。例えば「明日の東京のホテル」で検索した時に、僕が検索した結果と倉橋さんが検索した結果で、並んでるホテルの順番が違うだとか。

あとは倉橋さんがどのホテルを見たというのを理解して、どこの商品を今度オススメしたらいいか? とか。「コミュニケーションの1to1化」みたいなのも、まあまあ進んでると思います。あとはちょっと変わったところでいくと、お客さんがホテルとかを見た時に「このお客さんは買いそう」とか「このお客さん、もしかしたら買わないよね」とか「このお客さん、今500円のクーポンが出たら買うんじゃない?」とかも裏側で計算していまして。

なのでそういった意味では、パーソナライズ化されたpricing(価格設定)みたいなものもやっています。また宿泊でよくある話でいくと、例えば「今度、箱根の旅館に行きます」というお客さんがいらっしゃって。そのお客さんの行動履歴を見ると「毎年この時期に行ってるよね」みたいなのが見えたりして。

それって何なんだろう? と考えたら、想像するに奥さんの誕生日だったりするんですよ。僕らそれを「シクリカルな利用」と言うんですけども、サイクルが明確にあるような利用に関しては、わりと予測はできたりするとか。そういったことも含めて、対顧客向けのデータ活用というのをやっています。これが1つの領域です。

競合とのデータ比較から生まれる、ビジネスの提案

:あともう1個の領域は対B向けというか、これは我々のお取引先であるホテルさん・レストランさんへの提案に、どういうデータを活用するか? という観点なんですけども。これは当たり前のこととしては、ホテルさんに提案に行く時に「御社はどのような売れ方をしています」というご説明をします。

例えば「月曜日と火曜日はよく売れてるけど、金曜日が売れてない。週末が弱いですよね」とか。「朝食付きのプランがよく売れていますね」とか。そういった類の話を当然、透明度高くお伝えして。そこまでは当たり前だと思うんですけど、けっこうおもしろいのは「リッツ・カールトンさんがどういうふうに売れている」というデータを、我々は持っていて。

同じように「マンダリン・オリエンタルさんもどういうふうに売れているか」を知っているわけです。そうすると、仮にマンダリンさんのほうが売れているとした場合に、どこに差があって、どういう差が生まれているのかがわかるので。だとしたら、リッツ・カールトンさんに「金曜日の値段をもうちょっと高くしたほうがいい」とか「土曜日はプライベートの利用が多いから、必ず朝食付きで売ったほうがいい」とか。

いろんなヒントが見えてくるので、「競合との比較からのオポチュニティの提案」というものが、もう1つの大きなデータ活用の領域ですね。

あと最後が、もう本当に当たり前のことなんですけども、これどちらかというと、社内のデータ活用に使っていまして。3番目は経営情報のマネジメントですよね。

会社の中で売り上げが明確に見えるようになっていますので、社員がみんな同じレポートを見て行動するようになっています。なので会社の中では、例えば数字の報告というのがほとんど行われない会社になっています。みんな、そのレポートを見ていれば「先週どういう動きがあった」とか「今はGo To Travelでどういうものが売れてるんだ」とか、そういったものがつぶさにわかるので。

そういった、会社の中の効率化という観点でもデータの活用をしています。これが今やっていることの現在地かなと思っています。

一休はいかにして、データを活用するに至ったか

倉橋:今、聞いただけでも相当、多面的にデータ活用をされてるなという印象を受けるんですが。

その提供されている、例えばホテルさん・施設さんといった、業界横断的なデータというか。そのユーザーの行動状態みたいなものが、おそらく一休さんで相当見えておられるんだろうなと思っていて。それって企業さん単体だと、どうしても見えない部分だと思うので、ニーズとしてすごく高い部分なんだろうなと思うんですが。

この辺りどういう……例えば、どこかのティッピング・ポイントみたいなのを越えてきたタイミングで、ある種、価値提供化されていったのか? 初期からそういう思想があったのか? どういう部分なんですか?

:もう本当に「データ活用したほうがいいんじゃない?」と言い始めてからなんですよね。というのは最初、宿泊事業のオンライン化が進み始めた時って、今から20年くらい前の話なんですけど。その当時、実は販売するサイトで商品が分かれていまして。「楽天トラベル」さんは出張のためのホテル選び。リクルートの「じゃらん」さんがどっちかというとペンションとか、若い子向けのプライベートな利用。

高級なホテルは一休。それから、誰か旅の専門家に相談したければJTBさんという感じで。分かれていた時は商品に差別性があるので、あまり競合のお客さんの分析とか施設さんへの提案とかって、いらなかったんですよ。これが10年ぐらい経ってくると、うちで売っているはずの高級旅館がじゃらんさんでも売られていたりとか。うちで売るはずの高級ホテルが楽天でも売られたりとか。もう今、商品が基本的に一緒になっています。

これはやっぱり、効率的な市場に進化してくると「なるべく多くのチャンネルで販売したほうが良い」というのが、合理的な判断になるじゃないですか。それと同じように、価格もみんな揃ってくるわけです。例えば株式市場とかはそれの典型だと思うんですけど。

例えばブレインパッドさんの株を買うんだったら、どこの証券会社から買っても基本的には同じ値段で。これ、昔は違ったわけですよ。証券会社の人しかリアルタイム価格を知らなかったんですよ。お客さんは日経新聞で昨日の終値を見てたんですよね。

倉橋:なるほど。

:なのでどんどん進化してくると、データの透明度が高くなってきて。商品がどこでも売っているようになって、値段も揃ってくるとなった時に。どうやって我々はリッツ・カールトンさんへの提案力を上げるか? という問題に直面した時に、まさに先ほど申し上げたような、マンダリン・オリエンタルさんとの比較だとか。

要は「ホテルさんがさらに売上を上げるチャンスが、どこにあるのか?」というオポチュニティ探索が必要になったというのは、そういう長い歴史的な流れだと思いますね。

倉橋:なるほど。もしかしたら業界進化、市場性、ユーザーのニーズの変化とかもあるのかもしれないですよね。ありがとうございます。いただいたお話とか、また他の方々のご意見と混ぜながらお聞きできればと思います。

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