
2025.02.18
AIが「嘘のデータ」を返してしまう アルペンが生成AI導入で味わった失敗と、その教訓
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司会者:本日のパネルディスカッションは「高度情報化社会で成長するビジネス」と題しまして、2人のゲストをお迎えして議論させていただきたいと思います。
パネリストは、株式会社企(くわだて)代表取締役、クロサカタツヤさま。株式会社メルカリ、取締役Presidentの小泉文明さま。そして、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授 山口真一。以上の3名となります。
また、モデレーターは国際大学グローバル・コミュニケーション・センター教授・研究部長 渡辺智暁です。
それではこのままマイクをモデレーターの渡辺さんにバトンタッチしたいと思います。では渡辺さん、みなさま、どうぞよろしくお願いいたします。
渡辺智暁氏(以下、渡辺):はい。よろしくお願いいたします。モデレーターを務めさせていただきます、GLOCOM(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター)の渡辺です。
まずはパネルのお二人、クロサカさまと小泉さまから、山口さんのお話を聞いての感想と、あとは自己紹介も兼ねてコメントのようなものを、お一人5分ぐらいでいただけますでしょうか? クロサカさん、最初でお願いします。
クロサカタツヤ氏(以下、クロサカ):はい。ありがとうございます。ただいまご紹介いただきました、株式会社企で代表をしております、クロサカと申します。山口先生、お話ありがとうございました。大変興味深いというか、新著ももう私、拝読しておりまして。
こんなに本の中身を出しちゃっていいんだろうかと、ちょっとドキドキしながら聞いていましたが「あ、これがフリーミアムか」みたいな感じで、納得していたところもあります。
改めまして、私の自己紹介から簡単にさせていただきますと。通信分野とか放送分野のコンサルティングをしております、小さな会社を経営しております。もう本当に10人ぐらいしかいない会社なんですけれども、いろいろやらせていただいておりまして。
特に通信のほう、放送も実はそうなってきているんですけれども。通信のほうで申し上げますと、先般、普及が始まりました「5Gをどういうふうに設備投資していくのか」とか。あとは通信政策との関係で「この後インフラを、どういうふうに世の中に普及させていくのか」とか、そんなお話を仕事としてやっているんですが。
ただ実は通信業界というのも、もうかれこれ10年近く、データビジネスと向かい合い始めています。特にスマホが出てきてから、日本にiPhoneが入ってきたのが2008年ですから、もう10年ちょっと経つわけですけれども。スマホが入ってきてから、データビジネスと通信というのはかなり近づいてきたんですね。
これと産業としてどう向かい合っていくのか。さらに言うと、人々の生活がどう変わっていくのか。ということを、いろいろな通信事業者さんの仕事として考えないと、先々が見えないというような時代に入ってきまして。
そうなると、データビジネスをどういうふうに作るのか。あるいは、データプライバシーをどういうふうに守るのか。みたいなことをいろいろ考えなければいけないということで、その辺の仕事なんかもよくやらせていただいております。たぶん今日は、そういう文脈もあって声をかけていただいたんだと思うんですが。
クロサカ:私は山口先生のお話を伺っていて、2点「あ、なるほど」と言うか、反応したところがあります。本当はもっといっぱいあるんですけど、2点申し上げますと。1つ目は「長い目が必要だ」ということです。つまり、ものすごく事業開発を続けていくことに時間がかかるということですね。
Twitterの歴史をおっしゃっていましたが、Twitterも気がつけばもうそんなふうになったんだなと思いますし。もっと申し上げますと、Amazonが事業を始めてから20年以上経っているんですよね。Googleも同じぐらい。だいたい2000年前後ぐらいに彼らは立ち上げていますから、20年以上25年ぐらいもうたっているかもしれない。
20年選手って、もう実は普通の会社というか、あらゆる会社でけっこうなものだと思うんですよ。そう考えると、どうしても我々は目先のデジタルビジネスの華やかさだとか、影響の大きさというところに目を捕らわれてしまうんですけれども。やはり、着実に積み重ねてきているということは否めないと言うか、ちゃんと受け止めなければいけない。
その時に、山口先生がおっしゃっているFSP-Dモデルを、たぶん彼らは自分たちが成長していくためのドライバーとして位置づけているんだろうな、ということを感じていて。
これは、そういう意味で言うと実は、いろいろ細かいところでチャレンジができると同時に「やり続けていかないといけないということが、けっこう難しい話だぞ」ということを感じました。
クロサカ:2つ目ですが、ソーシャルと若者の消費のところで、眼鏡屋さんで5日間眼鏡をかけてインスタに載せてというのがありましたけれども。あれって実は、もうまったく目新しい斬新なものではないんじゃないかな? と、ちょっと思ったんですね。
というのは、似たような発想で。例えば、非常にオーセンティックなビジネスですけれども、デパートの紙袋ってたぶんそういうものだったんじゃないかなって思ったりするんです。
もう最近、デパート自体が大丈夫? というところもありますけれども。ただ私は40半ばですけど、それぐらいの世代の方だと、伊勢丹の紙袋だ三越の紙袋だというのが、ある種の社会的なアイコンだったわけですね。
デパートに行って物を買ったら、当然、タダでくれるわけですけれど。それを持って歩いたら……なんだったらアレですよね。1度使って捨てるんじゃなくて、何度も使いますみたいな人もいたりして。
そこに何か1つブランドであったり、価値であったりというものを感じている人たちが消費者にもいたんだろうと。
あれはたぶん「私は三越の袋を持っています」ということを、人に見てもらうということがたぶん1つ体験になっていて。それが「あ、なるほどね。三越でお買い物をしてきてなんかいいね、楽しそうだね」みたいなことが、フィードバックとして回っているという状態でもあると思うんですね。
なので、ちょっと違うかもしれませんけれども、たぶんFSP-Dモデルの手がかりというか手法そのものというのは、たぶん昔からあるものというのもけっこうあるんじゃないかなと。だとすると「じゃあ昔と今は一体何が違うんだ?」というところが、私自身はすごく関心が高まるところなので。
今日はそんな話を、みなさんとさせていただけるといいかなと思っております。よろしくお願いします。
渡辺:クロサカさん、どうもありがとうございます。それでは続いて、小泉さまにもコメントと自己紹介をお願いしてよろしいでしょうか。
小泉文明氏(以下、小泉):はい。みなさん、こんばんは。メルカリの会長をしております、小泉と申します。同じようにサッカーチームの鹿島アントラーズの社長もしておりまして、今、2社経営をしているんですけれども。私自身、メルカリの前はmixiという会社をやっていまして。まさしくプラットフォームでSNSの運営であるとか、その後のソーシャルゲームなどを見ていたので。
今日のプレゼンテーションの中で、ソーシャルゲームからメルカリまで幅広く出てきていまして。正直、経営している時はこんなに体系的には思っていなくてですね。
けっこう「その時その時でベストなものを考えていったら、そういうモデルになった」といったところなので。こうやって体系的にまとめていただけると、なんか「なるべくして勝ったのか」というですね(笑)。そんな気もしているんですけれども。
私自身、話を伺っていて2つ、大きく感じたところがありまして。1つめは、先ほどクロサカさんがおっしゃっていたように「時間がかかった」というのは、私もメルカリ立ち上げ時期の時にまさしく「クリティカル・マスでどこまでいくと、ネットワーク効果としてティッピングポイントを超えるのかな」というところで。
私たちは会社を作ってから1年8ヶ月ぐらいは、ずっと売り上げゼロですね。それまでは本当にずっと、手数料も取らずにフリーの期間をやっていました。
なので累積で言うと、その期間でたぶん40億円を超えるような資金調達を4回ぐらいに分けてやっていまして。おそらく30億近く、ずっと赤字を垂れ流していたと。30はいっていないですかね。二十何億ですけれども、垂れ流していたというところなので。
非常にファイナンスの力と、ある意味、株主であるとか経営陣の胆力と共に、このプラットフォームは作っていくということが重要でして。なかなかWinner-takes-allなビジネスモデルなので、本当Winnerになると、非常にハッピーなんですけれども。
メルカリもmixiも、(競合が)おそらく20社ぐらい参入しており、これは勝つまで非常に難しかったというところもあるので。今後もこういうモデルを作っていく上では、時間軸をどう経営軸として見るかというのが、すごく重要なんじゃないかなと思いました。
2点目が「価格の決定権が顧客側にある」であるとか。決定権の話が出たんですけれども、私はテクノロジーを使う会社を十何年やっていまして。考えているのが「結局、テクノロジーは何なんだ」と言うと、僕は「個人がエンパワーメントされる」であるとか、こういう人々にパワーを与えてきたのがテクノロジーかなと思っています。
なので、SNSであれば情報の発信という意味でパワーを与えてくれましたし、メルカリというのは売買でパワーを与えてくれるんですけど。
これまではどちらかと言うと生産者であるとか企業が“上”で、消費者はどちらかと言うとその中で“下”という構造になっていたものがですね、徐々に価格の決定権であるとか、いろんな主導権を個人の方が持ち始めたなと思っておりまして。
ここは今までの、なんとなく「大量生産・大量消費」でみんなが同じものを買って、みんながその生活をすることで豊かになった時代からの、大きなチェンジが起きていると思っていますので。この決定権が個人に移ってきていると。消費者に移ってきているというのが、大きな変化であり。そこを読み間違うと、非常に難しくなってくるんじゃないかなというところを、プレゼンテーションの端々で感じることができたかなと思っています。
渡辺:小泉さま、ありがとうございます。時間軸の話と、それから、それぞれの方からもう1つずつ、コメントがありましたけれど。山口さんのほうから、何か返答はありますか?
山口真一氏:そうですね。お話を伺っていて、今、渡辺さんもおっしゃっていたとおり「まず時間という長い目を持たなきゃいけない」という話と「手がかりが昔からある」という話と。あとは「個人のエンパワーメント」の話の3つが、たぶんポイントだったと思うんですけど。
特に興味深かったのが、第一声でお二人とも同じ「長い目で見る」ということをおっしゃったというのが、やはりこれはかなり印象的ですよね。
企業を経営されている方も、その企業と接してコンサルティングをされている方も、2人とも同じところに注目したということは、やはりこれは今、非常に重要になっているポイントでもあり。また、おそらくそれができていないという企業も多い、というポイントなのかなと思ったんですね。
なので、この辺にやっぱりFSP-Dモデルの、あるいは情報社会で今後成長し続けるとか、あるいは成功するといったポイントが隠れているのかなと感じました。
渡辺:なるほど。ありがとうございます。
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