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BUSINESS INSIDER JAPAN 浜田敬子氏とリンクトイン村上が徹底議論「問いを立てる力の磨き方」(全3記事)

新規事業はゼロイチではなく“掛け算の発想”から生まれる 社会課題をビジネスに繋げる「問いを立てる力」とは?

世界で7億人超のユーザーを擁するビジネスSNSリンクトインのネットワークには、世界的に知られたオピニオンリーダーが多数登録しています。その中から、リンクトイン編集部が依頼し、積極的に情報発信している人々が「リンクトイン・インフルエンサー」。海外ではマイクロソフト創業者のビル・ゲイツといった企業家から、仏エマニュエル・マクロン大統領など各国の指導者まで、幅広いリーダーが名を連ねています。本企画は、日本のリンクトイン・インフルエンサーをゲストに招いたオンライン・ライブイベントで、リンクトイン日本代表の村上臣氏がゲストにまつわる旬のテーマを、たっぷりと掘り下げて聞いていきます。本パートでは、BUSINESS INSIDER JAPAN 統括編集長の浜田敬子氏をゲストに迎え「新しい視点を生み出す、掛け算の発想」などについて語りました

手帳に手書きでメモを残す、アナログ派の浜田氏

浜田敬子氏(以下、浜田):臣さんは逆に、情報を集める時にこれとこれを見ると必ず決めているものとかありますか?

村上臣氏(以下、村上):最近はソーシャルがけっこう多くて、タイムラインを眺めたりしています。ただ、それでもやはりバイアスがかかるので『BUSINESS INSIDER JAPAN』さんとか主要なニュースサイトを、ひたすらタブにしてバーっと開いて、見終わったら閉じるみたいなことを、朝やったりとかしています(笑)。

浜田:そうですね。自分の中でバイアスを外すのは難しい作業ですよね。

村上:絶対にバイアスは入りますから。「絶対なにかのバイアスが掛かっているな」とまず認知することを意識するようにしています。常に客観視することを心がけています。

浜田:私は手帳に手書きで、書くとわりと覚えるので、気になった人の言葉やニュースを書き留めています。アナログ派なんですよ。

このスタイルは実は自分で生み出したものではなくて。博報堂で今、役員をやっていらっしゃる嶋浩一郎さんから学んだんです。嶋さんはケトルの創業者ですけれども、昔、彼を「ノート術」というテーマで取材したんですよ。

その時に嶋さんがMoleskineのノートにすごくメモしていて、本を同時に何冊も読んでいたんですよね。そして、気になるところには全て付箋を貼っていました。そして読み終わった後に、付箋を(ノートに)全部細かくメモして、同時並行で読んでいる色々な本をごちゃ混ぜにして書いていたんです。

そして海外出張の時などには、本ではくてメモ帳を持ってずっと読んでいると。面白いなと思って。

村上:浜田さんも、内容を改めて読み返すみたいなことはやられているんですか?

浜田:さすがに何年も前のものは見たりしないですね。1年前くらいのメモなら見ますけれど、やはりニュースなのでどうしても古くなってしまうし、見方もどんどん更新されてしまいます。臣さんはどうですか?結構昔のものを見返したりします?

村上:見ても1年前くらいですかね。

浜田:そうですよね。

村上:リンクトインに入って最初の頃に、すごいメモしていたんですよね。環境とか働き方が変わったので。もう3年ほど前になりますけれども。当時書いたノートは、今でもたまに見ますね。その時、自分が何に気づいたとか。

浜田:へえ! 思ったこととか。

村上:これは新しいとか、覚えたほうがいいことを結構メモしていて。今見ても「まだできていないことがあるな」とか「これはもうできたな」とか振り返ることはありますね。

村上氏「手書きの絵コンテで、PowerPointの構成を考える」

浜田:5月に『BUSINESS INSIDER JAPAN』で、経営者の在宅ワークを取材させていただいた時に、臣さんも取材させていただきました。

村上:ありがとうございます。

浜田:お部屋の写真、たくさんありがとうございました。その時、臣さんは超デジタル人間だと思っていたら、机の上にメモ帳というかスケッチブックみたいな紙とペンが置いてあったのが、すごく印象的だったんです。

村上:そうですね。

浜田:あれはどういうふうに使ってらっしゃるんですか?

村上:本当にメモで、今も僕、デジタル机とアナログ机がこういうふうに(直角を表す仕草)なっているんですけど。

浜田:おお。

村上:そっちにノートは置いていて。

浜田:紙で書く時は、どういうことを書いているんですか?

村上:本当、パッと思いついたこととかですね。ただ、ミーティング中のメモはやはり紙で書くことが多いです。人と話している時にパパっとキーワードだけメモする場合は紙が多いですね。あとは資料作ったりとか、原稿書く前の構成を考える時。僕はPowerPointを作る前に、必ず紙で書くんですよ。

浜田:絵コンテみたいなのを書くんですね。

村上:そうです、絵コンテですね。起承転結を考えます。会社にはホワイトボードがあるんですけど、家にはないので。結構大きめの紙にバババッと書いて「これとこれはこっちのほうがいいよね」とかやるのによく使います。

CA藤田社長と村上氏のアナログ活用術

浜田:紙とデジタルだと、紙の方が手を動かして書く分、ちょっと発想も変わるような気がしています。先程の嶋さんを取材した時に同じ企画で、サイバーエージェントの藤田晋さんにも取材したんです。

今もやっていらっしゃるかどうかわからないですけど、面白かったのは、藤田さん、当時スケッチブックを持っていたんです。マルマンの黄色と緑の有名なスケッチブックで、常にガーッと書いていたんですよね。

何かを説明する時も、パっとそれに書いて社員に見せたリ。自分の頭の中をそれに書いているという言葉がすごく印象的でした。IT企業の社長でもスケッチブックなんだなと、当時思いました。

村上:私も昔、スケッチブックを使っていた時もあります。あとは単純にA4のコピー用紙をひたすら使っていました。残さないんですよね。消す時もぐちゃぐちゃって粗く消しちゃうので。

消しゴムできれいに消すんじゃなくて、思考のフローをそのままメモして、違うと思ったらバツをしてというのをひたすら繰り返します。逆に消したものをもう1回見てみて「やはり要る」とか、そういうタイムラインが物理的にわかるようにしています。

浜田:わかります。パソコンとかにメモする時って、きれいな言葉にしてメモりますよね。

村上:そうですね。

浜田:でも、紙だとぐちゃぐちゃと「これ違う」とか「やはりこっち」とか、自分の思考の痕跡みたいなのを残していく感じですもんね。

村上:そうですね。文字の大小とかつながりとか、やはりどうしてもパソコンで打ってしまうと同じ大きさで同じようなきれいな言葉になって、間違えたらすぐ消しちゃうので。

浜田:そうですよね。

村上:それが初期の頃は全部残っていたほうがまとまりやすいかなと、自分的には思いますよね。

浜田:脳内のそのまま紙にトレースするみたいな感覚かなと思いますよね。

村上:原稿に追われている時に、なかなか書けない時があるんですけれども。よく人に聞かれた時に「いや、もうできているから」みたいな。「脳内でできている」と。「あとは乱筆するだけだ」とよく言うんですけど、強がりで(笑)。

実際に脳内でできているんですけど、うまくアウトプットができない。言葉にアウトプットできないだけで「絵にしろ」といわれたらできる気がする、みたいな。その変換作業に、メディウムが必要な時がありますよね。

普段から“企画の材料”を貯めておくには?

浜田:そうですね。あと、先ほど企画の話をしたんですけれども、ゼロから何かを生み出すのはとても難しくて、やはり普段からいかに材料を貯めておくかが大事だと思います。

最近は企業の広報の方の研修に呼ばれたりすることが多くて「メディアはどう企画を立てているんですか?」と聞かれたり「自分たちが企画を立てたいので、企画の立て方を講師として話してください」と言われたりすることがあるんですね。

その時は「ニュースはいい材料になりますよ」とお勧めしています。最近は紙の新聞を読んだことがない人が多いと思うんですけれど、ある企業で研修した時に、紙の新聞を買ってきてもらってワークショップをやったんです。

何紙かバサバサと置いたんですね。すると、今まではネットで自分が好きなジャンルのニュースだけを見ていたけれども、紙の新聞だとふだん触れないニュースもパッと目に飛び込んでくることが分かる。

その時に出したお題が「今日の新聞の中の1つのニュースを、なんでもいいから自分で選んで、それと自分の会社が今、抱えている課題。もしくはサービスのいいところみたいなものを掛け合わせて、新しい企画を作ってください」というものだったんですよ。

そうしたら、すごく面白い企画がどんどん生まれました。今までみなさん、何かと何かを掛け合わせる発想がそもそもなかったのと、掛け合わせる材料としてニュースを意識したことがなかったという感想を、後でもらいました。

ニュースはまさに社会を映す鏡ですから、今、社会で何が起きているか、何が問題になって何が課題なのかが、ものすごく分かりやすいと思うんですよね。1つの思考を鍛える訓練として、ニュースを使うのはお勧めですよと、いくつかの企業さんのお伝えしたことがあります。

掛け算で生まれる、新しい視点

村上:まさにそうですね。事前の質問でこんなのをいただいています。「新規事業の企画を行うにあたり、活用出来る考え方はなにかありますか?」。今の話につながると思うんですよね。特に新規事業の企画とかは。

浜田:そうですね。

村上:やはりゼロイチで何かを生み出す言っても、本当にゼロからイチというのは少ないというか、それは発明なので滅多にあることではないと思います。むしろ、色々な角度で物を考えたりすると、掛け算によって新しい視点が生まれやすいと思うんですよね。

浜田:そうですね。

村上:ほとんどの新規事業って、それだと思うんですよね。

浜田:根本的な新規事業は何かと言った時に、例えば、私が取材した中ではネスレジャパンの社長だった高岡(浩三)さんなんかは、常に「社会課題×なにか」みたいな発想で考えていたと聞きました。

ネスレジャパンが力を入れていたのは高齢化で、高齢者のためにネスレができることはなにか? というので、病院食みたいなものを始められたりとかしていました。

高岡さんの言葉で印象的だったのが「社会課題を考えるビジネスを考えれば、永続的なビジネスになるんだ」と。課題が解決されるまで、絶対このビジネスはなくならないので。

ネスレはグローバルでビジネスをしています。例えば、とても貧困層の多い途上国に対して、安価で安い食品を提供するというのは、まさに課題解決型のビジネスです。つまり、今後もずっと必要なものなので、なくならないわけですよね。

「常にそういうことを意識することが大事ですよ」と高岡さんが言っていて、本当にそうだなと思いました。そのためには、そもそもの課題を知る必要がありますよね。

少なくとも日本国内で今、何が課題なのか。何がみんなにとって不便なのか、どういうことによって誰かが不利益を被っているのかとか。すぐには利益がでないから、今まで見過ごされて来て。「こんなのビジネスにならないよ」みたいに扱われてきたと思うんです。

社会課題は解決するのが難しいから社会課題として残っているわけです。すぐに利益が出ないから、どこも手を付けていないわけですよね。登る山としてはすごくハードルが高い。

でも、そろそろ日本企業もここに向き合わないと、新しいものができないのではないかと感じています。そのためにも、私は若い読者に「ニュースを読んだほうがいいよ。そこには課題がいっぱい書いてあるから」と言っているんです。

なぜ「問いを立てること」が大切なのか

村上:事前質問にも「学生が問題解決力を高めるためにやっておくといいこと」というのを頂いていましたが、まさにこれですよね。ニュースという鏡を見て、社会で課題となっているものを探す。そこから自分なりの仮説を立てて、さらに調べていくことが必要だと思いますよね。

浜田:そうです。最近、印象的だったニュースが「東京都の人口が初めて減少に転じた」というものだったんですよ。これまでは日本全体の人口が減っても、東京だけは増え続けていたんです。これって、色々な原因が考えられるわけですよね。

まさに今日のテーマである「問を立てる力」ですけれど、「なんで減ったんだろう?」と、まず思うじゃないですか。それを色々な方が分析していて、例えばコロナの影響で地方に移住したいという人が増えたのか、どう人口動態が動いているかを考えていくだけでも「こういうところにビジネスチャンスがあるんじゃないか?」という発想になっていくと思うんですよね。

ニュースを見た時に「これちょっと気になる」って、みんな日々あると思うんですね。1つか2つは。

村上:そうですね。パッとニュースを読んで「これってなんだろう?」というふうに思う。これは疑問ですよね、個人的な。そこからさらに問いや課題に深めて行くためには、たぶんステップがあると思うんですよ。

これは自分なりの仮説を持って、それを解決するため、答えを得るために必要な問を立てるということなのかと思います。浜田さんは、問いを立てるのはなぜ今大切なのか、考えはありますか?

浜田:先ほどの学生さんの質問にあった、問いを立てること自体が「問題を見つける力」だからですね。どこに問題があるのかという視点は人それぞれ違っていいと思うんですよ。同じニュースを見ても、見方が違うと思うので。自分なりに「そのニュース、なぜそもそも気になったんだろう?」とそこから始まっていいと思います。

問いとは、社会に対して自分がどう向き合っているかという、考えそのものだと思うんですよね、ですから、人によって同じものを見ても問いが違ってくるのも、当然。問いそのものが、自分が社会に対してどう思っているのか、何を感じて何が不満なのかという、自分を見つめ直すことにもなると思います。

もっと言えば、会社であれば自分たちの会社が持っているサービスを見直すことになるわけです。問いは、反面的に自分たちを見直すかたちにもなるのかなと思います。

面白かったのは、先程事例でお話したワークショップを実施した企業では、ニュースと掛け合わせることによって「自社の中にこんな課題があったんだ」とか「実は私たちの会社、こういうサービスを持っていて、この課題に使えたじゃん」ということを再発見していました。研修を主催した部長さんも「こんな結果が出ると思いませんでした」と言っていました。

ニュースは1つの入口できっかけですが、何か壁打ちするものがないと、自分たちも見直せないですよね。

村上:確かにそうですね。壁打ちって、よく僕も知り合いから「壁打ち相手になってくれ」というので、たまにこう話したりとかあるんですけれども。やはり、何か返ってくるとそれによって自分の問いもブラッシュアップされますよね。

浜田:そうです。

村上:「自分はこう考えていたんだ」ということが、改めて理解できる手助けになると思いますね。

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