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西野亮廣さんx元Google尾原「何者かになるための、個人がつながる時代の生存戦略」:あえて数字からおりる働き方(全3記事)

“役に立つ”を超えた“意味がある存在”とは? 西野亮廣氏×尾原和啓氏が語る、あえて数字からおりる働き方

執筆家/IT批評家 尾原和啓氏がさまざまなゲストと語り合うYouTubeチャンネル「尾原の IT&モチベ解説 ー10分対談・ITビジネスの原理実践編」。今回は自身の新著『あえて数字からおりる働き方 個人がつながる時代の生存戦略』について、西野亮廣氏と対談されました。本パートでは「数字を追いかけても“何者”にもなれない」などについて、二人が語ります。

数字を追いかけても“何者”にもなれない

西野亮廣氏(以下、西野):何を書かれてるんですか、今回の本は。

あえて数字からおりる働き方 個人がつながる時代の生存戦略

尾原和啓氏(以下、尾原):今回はタイトルを読むと『あえて数字からおりる働き方』っていう書き方と、あともう1個大事なのがこの『変化の時代にゆるがない武器を手にいれる』っていうことですね。

なんだけれども、結局これ何かっていうと、オンラインの時代ってものすごく、一見するとやっぱりフォロワー数稼ぎたくなる。「いいね」の数が欲しくなる。で、実際に西野さんも、日本で一番のオンラインサロンで数字を追ってるように見えるんだけれども、実は数字を追えるようになったのって、一回数字から降りて、変化の時代でも揺るがない仲間作って、冒険の軸を作ってやってるからいけてんねんで、と。

西野:確かに。

尾原:やっぱりみんな、最近お話聞いてると「何者かになりたい」っていう意見が多いんですよ。

西野:あぁ、なるほど。

尾原:なんだけど一方で、あがいてあがいて数字を追っかけてみたけど「なんか何者にもなれへんなぁ」とか。あと特に怖いのが、今、コロナもいっぱい出てきて、変化の時代の中で錆びついて、古い中に閉じこもってしまうんちゃうか? みたいな。

そんな話があって、いやそうじゃないんですよと。それって実はあえて数字を追っかけずに、誰かにとって「お前と仕事したいんや」ってなったほうがええんちゃうか? っていう。

西野:あぁー。

尾原:だから、西野さんが言ってる「キャラ経済」。これにおいて要は「役に立つやつ」ってのは、もういくらでも代替が効いちゃうわけですよね。

西野:確かに、確かに。

尾原:なんだけど「お前と仕事したいんや」。さっき前段でむっちゃ盛り上がってた、けんすう(古川健介氏)っていう下らないことしか言わない男は、僕らにとって「役に立つ」を超えた、意味がある存在じゃないですか。

西野:確かに。本当、おっしゃるとおりだなぁ。

尾原:で、この「意味ある存在」になれるから何者かになって、何者かになったら初めて数字つけてったら、数字で人を呼べるようになるから。やっぱり最初はあえて数字から降りて、誰かにとって何者かになることをやったほうがええんやで、っていう。

「これが好き」が「いいね!」につながることを信じて

西野:あぁー、なるほど。よく自分が意識しているのは、まずは自分っていうものがそこまで特別な感性を持っているとは、やっぱり思わない。

尾原:えっ!

西野:いや、もしかしたら数は少ないかもしれませんが、そんなに飛びぬけては。だってみんなと同じようにご飯食べて、みんなと同じような情報を取り込んで、同じ時代を生きているから。そこまで突飛な人間ではないって、やっぱり思っていて。

なのでけっこうシンプルなんです、自分のルールって。もう、自分がいいと思ったことをするんですよ。それのみで。自分がいいと思ったことをしたら、確かに身の回りにはそれをいいって言う人はあんまりいないんですが(笑)。でもインターネットってどういうことかっていうと、兵庫県に一人しかいない、鹿児島に一人しかいない、沖縄に一人しかいない、こんな(自分の)ようなヤツをつないでくれるっていう、そこじゃないですか。

尾原:そう、そう! さすが! インターネットって遠くにあるものをつないでくれるから、みんな「インターネット=グローバルに出て行かないとあかん」と思うんですけど、ちゃうんですよね。グローバル、均一になることではなくて、遠くの「俺、なんか異邦人」と思ってるヤツらがつながれることなんですよね。

西野:あぁ、おっしゃるとおりだと思いますね。だから本当に、身の回りに合わせて形を変えて、目先の数字なんか全然取りに行かなくてよくて。たぶんこういうヤツはいるから、どっかに。「わかるわー」とかって言ってくれるヤツは。昔はたぶん辛かったと思うんですよ、インターネットがなかったから。コイツが生きるのは。

尾原:そうですね、かなり外れ値ですからね。

西野:リトマス紙としてやっぱり置いてるのは、自分がいいと思うか否か。そこに尽きますね。だから1回も追ってないです、僕。フォロワー数を増やしたいと思ったことないですし、YouTubeのチャンネル登録者数を増やしたいとか、あんなの一切ないんで。自分が「これが好き」っていうのをやっとけば、時間かかるけれども「いいね」って言ってくれる人がいるだろう、見つかるだろうな、みたいなことを信じて。でもまぁ、それができる時代になったっていうことです。

やることなすこと炎上した過去

尾原:そうです、できる時代になって時代が追いついたからいいんですけど、西野さんってやっぱり基本、めっちゃ自分好きじゃないですか。大好きじゃないですか。イタいぐらい好きじゃないですか。

西野:好きなんですよー(笑)。

尾原:(笑)。いやでもね、4年前に対談させていただいたときってまだ炎上しまくってたし、もっと前で言うと、手売りでチケット売ったりとかされてて。

西野:確かに。

尾原:あのときって辛くなかったんですか? やっぱり自分がズレてるとか、自分がおかしいとか。なんでそこを突き抜けられたのかなって。今、振り返ってみて。

西野:いや尾原さん、辛かったですよ。いろいろ。

尾原:ホンマ?

西野:なんというんですかね……ちょっと鼻につく辛さかもしれないですけれど、今からお話するのは。

尾原:はい(笑)。

西野:要するにあのとき、4年前とか5年前とか、そんなもんですよね。

尾原:絵本を出し始めたとき。

西野:そうです、そうです。あのときって、やることなすこと炎上するんですね。で、その炎上理由が言ってしまえば「クラウドファンディングした」と。そういうことなんですよ(笑)。

尾原:そうそう(笑)。

西野:「あいつ、クラウドファンディングしてやがる!」っていう炎上なんですよ。

尾原:そうですね、あと「無料で本を公開しやがった」とか。

西野:そうそう。クラウドファンディングって、言ってしまったら「手段」じゃないですか。僕がクラウドファンディング好きとか嫌いとかじゃなくて、ハサミ使うとかノリ使うとか、ドライバー使うとか。ああいう「生きる術」としてのクラウドファンディングです。そうするとこれは、間もなくみんなが使うことは、もう決定してるじゃないですか。

それを否定するってことは結局どうなるかっていうと……自分が「この人のことすごい好きだな」と思ってる人も、このクラウドファンディングをやってる自分を否定してたんですけど。そうすると見える未来は何かっていうと、自分が好きな人は苦しむっていう。これが辛いですね。

尾原:そうですね、確かに。それ辛い。

西野:僕の場合は、芸人がむっちゃ好きなんですね。で、よく例えで言うんですけど「もう津波が来てる」と。津波が完全に来ていて「みんな津波が来てるから、一回ちょっと丘の上に行こう」って言うんですが、たぶん「こいつはオオカミ少年」みたいな扱いになっちゃって「炎上商法でしょ?」とか。

尾原:そうですね、みんなね(笑)。

西野:「なんか言ってる」「目立とうとしてんスか?」「逆張りスか?」みたいな感じでいじられて。「いや、じゃなくて本当に津波が来てるから! 一旦避難しよう!」って言うんですけど「またまた」みたいなことで。それは芸人だけじゃなくて、テレビとか日本全体でコイツをいじって。

で、仕方ない。僕は生き延びなきゃいけないんで、一応、丘の上にパッと避難するんですね。そうすると間もなく津波が来て。僕の大事な人たちがバーッて流されていくのを見なきゃいけないっていう。この辛さはありました。

尾原:僕めっちゃ話わかる(笑)。

西野:これは本当、辛いですよ。

尾原:いや、でも本当に西野さんが言ったように、ひな壇の話ってまさにそうですよね。大きなテレビで見る時代から、みんながスマホで見る時代になったら「画面の中にひな壇入られへんやんけ」っていう。まさに「スマホっていう津波来るぞ」「YouTubeって津波来るぞ」っていう、そこで動かれたわけですね。

西野:そうです、そうです。それを尾原さんとか起業家さん周りは「そうだよね」って言ってくれて。

尾原「ヤバい、スゴい」って言ってました。

西野:ヤバいよね、っていうことで話聞いてくださったんですけど。肝心要の、僕が大好きな芸人さんとかがバーッと流されて。で、これが結局、今このコロナでどうなったかっていうと。

尾原:そういう話なんですよ。

西野:芸人ってみんな食い扶持がないんですよ、今。テレビだめ、舞台だめってなったら「えっ、じゃあ僕たちどうやって稼ぐの?」。YouTubeもちょっと前に否定してしまったし、その前にクラウドファンディングのことも否定してしまった。で、身動きとれなくなって。これをなんとか……いや、だから僕の言い方もよくなかったのかな、ちょっと。イライラしてたもんで。

「変化の時代に揺るがない武器」とは?

尾原:いや、でも難しいんです。もう1個のこの本のサブタイトルの「変化の時代に揺るがない武器」って何かという話が、そこにつながってくると思ってて。

西野:教えてください。

尾原:調子がいい時代って、やっぱり目の前の成功方程式に飛びつきたくなるんですよね。しかもその目の前の成功方程式って、言い方悪いけど、成功してる者同士でパス回ししてたほうが、勝負って楽だから。やっぱりそこで生きたほうが、得になってしまうんですよ。

でもコロナみたいな「昨日の正解が、今日のまったくの間違い」みたいになってしまうような時代って、結局、西野さんがサロンで「東北の結(ゆい)」みたいな話で言ってるように、誰かが一人沈んだら、遠くにいるやつは無事だったから、じゃあそいつが助けてやるよ、というふうに。

1ヶ所で固まってるとそこの塊が「テレビのワイド画面が沈んだ」「三密のライブが沈んだ」ってなる、と。成功を分けてるときはいいけど、変動するときって、さっきの最初に言われた、インターネットの本質って遠くにいる人間をつなぐものだから。遠くに離れれば離れるほど、価値観は一緒なんだけど、誰かが沈んでもこっちは沈まないから、そうするとこいつが助けてやって。で、こっちが沈むとまたこいつが助けてやって、っていうふうに。

遠くにいる連中と強い関係で助け合える。なにかあったら「お前、意味のあるヤツやから助けたる」という存在になり合うことが、やっぱり強いんちゃうかなと思って。

西野:これちょっとお聞きしたいんですけど、尾原さんってそういうお話をいろんなとこでされているじゃないですか。で、とくにオンラインコミュニティみたいな、オンラインサロンみたいなものが非常に意味がある、価値を持ってるよっていうことを、だいぶ前からお話しされてるじゃないですか。

尾原:そうですね、もう5年ぐらいになりますね。

西野:どうなんですか? ここ最近というか、ここ何年かっていうか。今年入ってからなのかコロナ始まってからなのか。それの刺さり具合って、変わってきたんですか? 前に言ったときにはあんまり刺さんなかったけど、具体的に聞いてもらえるようになったりって、あったりするんですか。

尾原:そういう意味で言うと、そうですね。西野さんがちょっと『プペル』売れ始めて、「きた!」みたいな、波の変化をめっちゃ感じてます。

西野:へぇー。

尾原:っていうのは、やっぱり今まで僕みたいな、バリ島とシンガポールいて「リゾート地から働いてますよ」みたいな人って、まさに「好きでやってんでしょ? お前だけができる世界やん」みたいな話が(あったけど)、今は強制的にリアルのほうが「一時停止!」ってなってしまったので。全員がリモートで暮らすようになったんですよね。

そうするともうリモートで生きるしかないから、強制的にリモートの解像度を高く生きるしかなくて。そのときに、僕がずっと言ってたのは何かというと、みんな勝手に、自分が仕事の「オンのとき」っていうのと「オフのとき」っていう縦軸と「都に住む」っていうのと「リゾート地とかありえへん場所にいる」っていうこの横軸が、みんな「仕事のときは都市」で「オフのときはリゾート」って勝手に思ってるんですよ。

西野:あぁ、分かれてないから。

尾原:でもこれでみんなリモートを体験してみたら「あれ? よく考えたらオンのときって、別に都市にいなくてもええやん」ということに、みんな気付き始めたんですよね。

西野:確かに。

尾原:で、今までって「昨日の正解をひたすら繰り返すこと」が勝ちパターンだったんだけど。変化のときって「昨日やってないことをする」ことが勝ちパターンなので。そうすると、わかのわからない発想が生まれる場所だったりとか、ふだん自分が会わんようなヤツと会える場所のほうが、イノベーションって降りてくるわけですよ。だってイノベーションって、遠いものを掛け算することだから。

そうすると実は、オンのときこそリゾート地にいて「やっぱ友達に会いたいわ」とか「便利なもん買いたいわ」「役に立つもん買いたいわ」っていう、オフのときに都市に行くっていう生活のほうが。

西野:なるほど、おもしろい。

尾原:だから90度「がちゃーん!」って変わっちゃったんですよ、このコロナで。で、たぶんこれって、ホンマにわかって今コロナの中でリモートを楽しんでる、オンラインサロンに入っているような人たちは、解像度が高いから。たぶんこのコロナが収まったあと、ぜんぜん違う暮らしが待ってるはずなんですよ。

西野:なるほどなぁ。おもしろいですね。

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