2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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司会者:では、もう一度マーチャン(若宮正子氏)に出ていただきます。先ほどご講演の中でお話がございました、エストニアでマーチャンと共にアンケートの実施をされていたアレックスさんは、今日本当に偶然で。ご帰国……「帰国」になります?
齋藤アレックス剛太氏(以下、アレックス):帰国。数日前ですね。
司会者:数日前ですね、本当にたまたまいらっしゃったそうで。ぜひともお二人から貴重なお話をうかがえたらなと思います。それではマーチャンとアレックスさん、前のほうへ。どうぞよろしくお願いします。
(会場拍手)
では先に、アレックスさんの自己紹介をお願いします。
アレックス:そうですね。初めまして、アレックスと申します。今日はありがとうございます。すいません、ドタ参なんですけれども。
(会場笑)
自分は1年半ぐらい前に初めてエストニアという国に行きました。本当はすぐ帰ってくる予定だったんですけど、もうエストニアのことが気に入ってしまって。
「この国に住めないかな?」と思っていろいろ画策したところ、運よく現地のスタートアップで仕事を得ることができて、それ以来エストニアを拠点に活動させていただいております。
今はblockhiveというブロックチェーンと、あと今日も出てきたと思うんですけどデジタルIDというガバメントテック、「ガバテック」と言われるスタートアップの中で働いています。
先ほどもご紹介いただいたんですけど、その中の「SetGo」(日本にいながらエストニアで法人設立ができるサービス)というプロジェクトを今やっています。なので若宮さんとお会いしたのも、エストニアが最初でしたよね。
若宮正子氏(以下、若宮):そうですよね、ええ。
アレックス:今日もみなさん「へぇー、そうなんだ」と聞いていらっしゃったと思うんですけど、若宮さんもなにも知らない状況から、この半年間の中でナレッジを蓄えていて。もう今日はしゃべることないな、と思っているんですけれども(笑)。
(会場笑)
僕は向こうに住んでいるので、向こうのスタートアップで働いていたり、あとは実際に利用者として現地の政府のサービスを使っています。そういったところでご質問あったら、お答えしていきたいなと思います。
若宮:ちなみにうかがってよければ。何歳ですか?
アレックス:えっとね、さっき計算したんですよね。若宮さんと……58歳差?
(会場笑)
なので、26歳です(笑)。
司会者:若い。まぁ、差は考えないでいいですよね!
アレックス:(笑)。本当に僕のおばあちゃんと同じ年齢で(笑)。
司会者:同い年!?
アレックス:同い年(笑)。
司会者:うわぁー! こうやって一緒に仕事ができるというのがまたいいですね。
アレックス:本当にそうですよ。今日もFacebookのメッセンジャーでやり取りしていますからね。
司会者:いいですね。じゃあ時間もアレですので、質問がある方にどんどん当てていきたいと思います。ご質問のある方は、挙手にてお願いいたします。
(会場挙手)
あ、ではどうぞ。
質問者1:すばらしい講演をありがとうございます。エストニアではお年寄りの方もEバンクなどを使われているということなんですが、日本ですと、パソコンをお年寄りに「使って」と言って、私なんかも親に教えたりするんですけど、やっぱりなかなか抵抗があるんです。
だけどエストニアではご自分で勉強されるというので、その違いがよくわからなかったんです。国民性なのか、それとも環境なのか。どうしてエストニアの方々は「自分で勉強する」というモチベーションを持ってやっていられるのか、もうちょっと教えていただけたらと思います。
若宮:アレックスさんはどう思われますか?
アレックス:まず前提として、エストニアの高齢者の方も最初から自発的にというか、ITに詳しかったわけではないんです。もしエストニアにいらっしゃった方がいたら、「そうだろうな」と思うかもしれないですね。
本当に「電子国家」とみなさんイメージされているかもしれないですけど、実際に行ってみると……旧市街はすごくきれいなんですよ。ジブリの(映画の)舞台になったみたいな。
すごくきれいな所なんですけど、そこから外れると旧ソ連の住宅街というか、団地が並んでいて。まだフランスとか西洋の国に比べると、ちょっと「どよーん」とした感じも残っているんです。
そこで暮らしている高齢者の方々も、みんなApple Watchをつけてスマホをいじっていて、ということはなくて。カートを押してこうやって歩いて、マーケットに行ってお買い物をするような感じです。なにが言いたいかというと、ベースはそんなに変わっているわけではない、というところがまず1つ。
その中で、なぜああいうふうに高齢者が使うようになったのかで言うと、2つあるかなと思っていて。1つはさっきの回答の中にもあったと思うんですけど、「家族のサポート」。
これは、今も(質問者)ご自身でやっていらっしゃるとおっしゃったと思うんですけど、そこは欠かせないものだなと思っています。
とくに、若宮さんともお話ししているんですけども、エストニアでは老人会や町内会みたいなつながりがそんなにないんですね。これはまた若宮さんからも言っていただければいいと思うんですけど。
若宮:群れない性格らしくて、そういうグループを作ったり、老人会だ町内会だというのはないというか。理由の1つは非常に寒い国なので、地方に行くと家がバラバラ(過疎地)になるので、そう簡単に隣の家には(行けない)。
アレックス:井戸端会議ができないよね(笑)。
若宮:できない。下手に井戸端会議すると凍死しちゃうから(笑)。
(会場笑)
アレックス:ありがとうございます。なので1つは、まず家族のサポートが必ず必要になってくる。2つめは、家族のサポートがあってある程度できるようになってくると、ここからは転がっていくものだと、だんだん大きくなっていくものだと思うんです。やっぱり「周りの高齢者の方々がデジタルを使いこなしている」というところが意欲になるのではないかなと思っていて。
あとは「つながりが少ない」といっても、やっぱり同世代でITをやっている、デジタルをやっている。若宮さんの周りでデジタルをやっている高齢者の方が多いように、そういったかたちで普及していくんじゃないかなと。
「あの人がやっているんだったら僕も」みたいなかたちで普及していくんじゃないかな、と思っています。そのへんはどうですか?
若宮:やっぱりそれはあると思います。結局便利なんですよ。だって投票所に行くにしても、寒いのに行かなきゃいけないわけでしょう? だけどボタンをちょんちょんと押すだけで投票できる。
日本だったら急にその日が冷え込んだりすると棄権するんでしょうけれども、ああいう国ですから政治に関心が高いので、それはないようにするとか。
例えば処方せんだって、お医者さんから薬剤師さんの所に行くでしょう。で、おもしろいのは薬剤師さんの所で、「この人が処方せんを持って薬を取りに来た」ということを主治医の先生にフィードバックするわけですよ。そういうことができる。
もっとも実際に持って帰って飲んだかどうかまではチェックできないけど、少なくとも持って帰ったところまではチェックできる。そういう利便性が高いんですね。いちいちお医者さん行って、処方せんをもらって、それを持って薬屋さんに行ってまた待たされて……とか、その必要ないわけですから。
アレックス:やっぱり総合すると、家族のサポートがあってでもやりたいと思うような利便性がそのサービスにあるのが前提になってくるのかもしれないですね。
質問者1:ありがとうございます。日本にはそのサービスがないから「そこまでやる意味はないな」とお年寄りが思っちゃうけど、(エストニアには)すごくいいものがあるから、「使ったほうがいいよね」とみんなが思ってくれるんですね。
若宮:おっしゃるとおり。みなさん、顔写真付きのマイナンバーカードはお持ちですか?
(会場挙手)
案外少ないですね。
司会者:少ないですね。
アレックス:14パーセントくらいですね。
若宮:要するに、持っていてもメリットがないから。充実感がない。おまけに、私も2~3ヶ月前に羽田で「なにか本人確認が必要だから」と言うのでマイナンバーカードを出したら、「それはダメです」と断られちゃうし。
要するに使えないんですよ。使えないのはなぜかというと、罰則が個人情報保護法よりも厳しいんです。裏返して見ちゃいけないとか、そういうような。利便性が極めて低くて罰則ばっかり厳しいから、触らぬ神に祟りなしでみんなが協力してくれない。
アレックス:マイナンバーカードというと、なんだか悪者みたいに見られちゃうかもしれないですけど。でも先ほどから何回も出ているデジタルID、これを日本に例えるとマイナンバーなんですよね。
国民一人ひとり、例えば僕はミドルネームを抜いたら「齋藤剛太(サイトウ・コウタ)」という名前ですけど、「サイトウ・コウタ」なんて日本に100人も200人もいると思うんですよ。でも、それを僕だと認識するのはやっぱりデジタルID、つまりマイナンバーだと思うんです。
これから日本がそういう行政サービス、あるいは民間サービスも含めてデジタル上で提供していく中では、鍵になってくると思います。
今でこそ利便性は低いけれど、これから伸びていくとは思っていますし、実は僕の本業のblockhiveのほうでもそういうことをやっていきます。これからポジティブになっていけばいいな、とは思っていますね。
司会者:使いやすさがキーですね。
若宮:うん、そうだね。
アレックス:使いやすさがやっぱりキーですよね。まとめると、おじいちゃん・おばあちゃんでも使いたくなるようなサービスを作る、ということですかね。
質問者1:あぁ、そういうことですね。よくわかりました、ありがとうございます。
司会者:ありがとうございます。次の方。
(会場挙手)
あっ、じゃあ一番奥の方、早かったので。
質問者2:今日はありがとうございました。エストニアには本当に、ブロックチェーンとか非常に興味があって。今日はどんなお話が聞けるんだろうと思って大変楽しみにして来ました。
質問したいことは、システムはけっこうみんなから嫌がられるというか、拒否されるというか、無効化する動きが多いかなと思っていて。とくに我々のマイナンバーなんか、まさにその動きの最たる例だと思っているんです。実際にやっていく上で、「利便性」というお話があったと思います。
今「幸福度が非常に高い」というデータをお示しいただいたと思うんですが、具体的にみなさんの生活の中で(何が)どう良くなっていったと幸福を感じておられるのか、そこを教えていただけますでしょうか。
若宮:やっぱりこれは「過疎地で寒い」ということもあるんでしょうけど、「足を運ぶ」という負担がなくなる。それでムダな時間を使わなくてもよくなると。おもしろいんですけど、日本では「年寄りは暇を持て余している」という認識がわりとあるんです。
アレックス:若宮さんは例外ですけどね(笑)。
(会場笑)
若宮:アンケートを見ると、「ムダな時間を使わなくても済む、その間に自分の好きなこともやれる」というようなものがあって。
質問者2:みなさん、最初から「ムダな時間がこれでなくなるぞ」と思って取り組まれたんでしょうか。
アレックス:僕らはエストニアの高齢者ではないので、あくまでもアンケートの結果から推察することにはなってしまいますけど。
若宮さんが今おっしゃったように、回答の中で自由にコメントをいただけるところがあったんです。その中でもやっぱり「役所に行かなくて済む」「自宅で完結する」「時間をセーブすることができる」というところがトップにあったんですね。
その中で、彼らも実際に家族とかから「まず、これをやってみなよ」と言われてやっていく中で、「これは便利だ」と気づいていったところがあって。先ほどから何回も出ている処方せんの例とかがそうですよね。
わざわざお医者さんの所に行かなくても、お医者さんにポータル上でお願いすれば処方せんを出してくれるとか。そういうふうに、やっていく中で(利便性に)気づくことができる。
アレックス:家族はなぜそれをやるかというと、家族の負担も減るからなんですよ。例えば投票。投票に行かなければいけない。首都タリンにエストニアの人口の3分の1が集中しているので、だいたいのお子さんはタリンにいるとしましょう。
エストニアは九州くらいの小さな国土なのですが、その中で人口がバラバラになっている。とはいえ車で3時間です。実家に帰って、もう運転ができないお父さん・お母さんを連れて投票所まで30分くらいかけて行く。
そこで電子投票のやり方をパソコン上で教えるとなると、家族にもインセンティブが働きますよね。
それはあらゆる行政手続きにも応用できるものだと思っていて、やっぱりおじいちゃん・おばあちゃんとしても、実際に「家族の手をわずらわせたくないから自分でやる」という声があったと認識しています。若宮さんはどう思われますか。
若宮:おっしゃるとおりだと思います。それとやっぱり国民性なんでしょうけれども、なんでもわりと積極的に前向きに捉えることが、確かにあるような気がします。「できない」じゃなくて「自分でやってみる」みたいな、そこのところが。
自由記述欄で「なにか日本の高齢者にもひと言メッセージを残して」と言ったら、「やってみると思ったより簡単だ」「ぜひやってみて。おすすめします」みたいなものが非常に多かったですよね。
アレックス:うん、多かったですね。ちなみに今回のサーベイの結果は、来週17日にメディア向けに一般公開して、実際の詳細なデータやいただいたコメントとかも出す予定です。フルバージョンは年明けあたりに発表する予定でおります。
司会者:発表を楽しみに、というところですね。よろしいでしょうか、ありがとうございます。
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