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あすか会議2019 4部分科会 社会起業家というキャリア(全5記事)

貧困や犯罪には、起きるべくして起こる“構造”がある 社会の問題に挑む「社会起業家」というキャリア

経営に関する「ヒト」・「カネ」・「チエ」の生態系を創り、社会の創造と変革を行う株式会社グロービス。グロービスが主催する「あすか会議2019」では、テクノロジーや宇宙、地政学、ダイバーシティなどのさまざまな分野の有識者らが集い、日本の未来のあるべき姿と、その実現にむけて一人ひとりがどう行動していくべきかをとことん考えます。今回は、SDG'sが世界的な潮流となっている中で「社会起業家というキャリア」と題して、世の中にイノベーションを起こし続けている、社会起業家たちの志と生きざまに迫ります。

テーマは「社会起業家」というキャリアの歩き方

町井恵理氏(以下、町井):ありがとうございます。「社会起業家というキャリア」ということで、分科会を始めたいと思います。初めてあすか(会議)で登壇をするのに、いきなりグロービスから言われたのがモデレーターという仕事でした(笑)。本当に「ハードルを上げてくるな、グロービス」と思っています。

そのハードルに乗っかっていこうというところで、すばらしい社会起業家の人が集まっているので、ぜひいいところを引き出して、みなさんのヒントになるような会にできればなと思っています。よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

まず、みなさんは社会起業家になりたいという気持ちはあるんですかね? 社会起業家になりたい、目指している方はどれぐらいいますか?

(会場挙手)

けっこういますね。すごい。意識が高いですね。いいですね。じゃあ、登壇者のみなさんがどういう歩みを経て社会起業家になってきたか、というところで進めていきたいと思います。まず安部さんから順番に自己紹介をいきますかね。

安部敏樹氏(以下、安部):どんな話をすればいいですかね。

町井:まず自己紹介ですね。やってることと……。

安部:なるほど、なるほど。僕は今一番みなさんに共有しなきゃいけない話は、明日が何の日かという話だと思ってですね。

町井:はい。

安部:明日七夕でしょ? 私は七夕生まれなんですよ。

町井:おー(笑)。

(会場拍手)

安部:今晩から年齢が変わるこの日に、俺はわざわざ浜松までみなさんのために来てるんですよ!

(会場笑)

安部:いや、相当えらいでしょ!

(会場拍手)

安部:というね。誕生日という重要な自己紹介が終わりました。それ以外は何を話せばいいんですかね?

町井:いや、なんでも。とりあえず何人かに相談をしたら、安部さんがしゃべるのを止めるのが私の役目だと聞いてます。

安部:あー、なるほど。

町井:とりあえず事業の内容についてとか、なんでもしゃべっていただければと。その後でキャリアのところをおうかがいしていければなと思います。

旅を通して、国内300種類以上の社会問題の現場を学ぶ

安部:1分程度で。はい。ざっくりですね。リディラバというのは、社会問題の現場を学びに行く旅行の仕事をしていく事業をやってるんですね。もともと私が21歳の時に始めたので、活動はもう10年やってます。

これまでで1万人以上の人が、我々のサービスを使って、気軽に学びに行ける旅行で、社会問題も楽しみながら学びましょう、自分も当事者になりましょう、その後も関心をもって何か動いていきましょう、ということを(掲げて)、国内用に今300種類以上のテーマがあります。テーマはけっこうえぐいのから、いろんなものがあります。

地方のものもあれば、性風俗嬢の人がどうしてセーフティーネットに引っかからずに貧困状態に陥ってしまうのか、という話もあれば、医療的ケア児のように、医療としては救えているんだけども、社会としては救えていないので、どうしても社会復帰できません、という子どものサポートをする話とか。

本当に幅広く、300種類以上のテーマを旅行にして学べる状態にする。そういうものに一般の人が行けるだけではなくて、中高生の修学旅行に差し込んだり、あとは……。みなさん、なんかいい。反応がいいですね?

(会場笑)

(参加者を指して)この辺が特によかった! すばらしい。

(会場笑)

はい。そういう中高生向けの修学旅行もあれば、企業の研修みたいな形で入っていくこともあれば、あとは地方自治体などがけっこううちのツアーを使って人の往来を作りたいと。

うちのツアーはやっぱり普通の観光のツアーと違うので、20人ぐらい送ると急に、みなさんみたいな課題を見つけるのが好きな人が来るわけですよ。現地でいろいろやってるうちに、「これは俺がこの地域にいなきゃいけねぇんじゃねぇか!?」というふうに勘違いしましてですね。

(会場笑)

その勘違いがすばらしくて、そうした結果、移住して、課題解決に従事する、という。関係人口などの先に移住とかまで出てくる。地域の自治体からすると、観光客って2日間来ても、その地域の経済効果は10万円ぐらいの単価にしかならないんですよね。

でも、その人が生産活動と消費活動を10年して、しかも問題解決までしてくれると、1億円、2億円ぐらいの価値が出てくるじゃないですか。そういう意味でいうと、ユーザーとして取りたいというニーズが地域にあるので、地方自治体さんがうちのツアーを使ったりもしていると。

犯罪の加害者側への取材を通して、構造的な問題を可視化

安部:最近は『リディラバジャーナル』という、ジャーナリズムのお仕事もやっています。文春砲を打ったやつとか、専門の記者をとってきて「お前、それベッキー叩くとかじゃなくて、その調査力を社会のために使おう! やろうぜ!」という感じで行って、あのー……。

(会場笑)

ね。そうそう。いいじゃないですか。いや、本当でしょ? みんなそう思わない? いや、不倫をそこまでがんばって追う必要ある?

(会場笑)

そうなるじゃないですか。それよりは社会課題の調査をしていきましょう、というのがあって、本当にめちゃくちゃ深堀りしてやると。深堀りする1つのポイントとしては、構造化というものをやっています。例えばホームレスのおっちゃんがいたら、そのホームレスのおっちゃんがなまけているように見えるじゃないですか。

でも、問題が起きる場合って、貧困状態から抜け出せないような状態があるんです。そこをちゃんと構造的に可視化することを意識づけています。そうすると何ができるかというと、けっこう加害者の取材ができるんですね。

たぶん問題が起きた時に、普通は加害者(の話)って、なかなか情報として持つことがないじゃないですか。例えば痴漢の問題とかだと、「痴漢この道30年! 私1人で3万人やりました!」というような人に会いに行くわけですよ。そういう人のところに行って、取材をして話を聞くことって、取材される側としてもみんな嫌だからなかなか普通できないわけですよね。

でも、我々は構造化をして、「別にあなたを責めたいわけじゃない」と。ただ、問題を知りたいだけなんだ、というスタンスでいくと、加害者の人も意外に「じゃあ協力しますよ」という感じです。

だからそういうものとか、加害者取材で言えばペドフィリアとか。小児性愛ですね。小児性愛犯罪を起こしたら、もうそれは完全にアウトなんですけど、その手前で防げるすべはなかったのかみたいな話を聞いたり……あー、そろそろ?

町井:(笑)。

安部:そろそろ? まあ、そういう情報を加害者から取ったりね。そういうことを仕事にしているものでございます。みなさん、今日はよろしくお願いします。

(会場拍手)

小尾勝吉氏(以下、小尾):ぜひですね。会員になれるそうなので、私も会員になりました。

安部:いや、本当にありがたい!

小尾:いやいや。本当に現場のリアルが書かれていますので、ぜひみなさん、興味がありましたら。

安部:ぜひ『リディラバジャーナル』、すぐ課金できますから、みなさん!

小尾:(笑)。

(会場笑)

安部:調査報道って本当にお金がかかって、年間3,000万円ぐらい赤字が出ていて、本当に大変なんです。

小尾:よろしくお願いします。あ、またふっちゃった。

安部:ありがたい。あー、ごめんなさい!

小尾:僕の番(笑)。

安部:黙る黙る、すみません。

(会場笑)

お弁当屋さんから始まった、共生型の住宅&有料老人ホーム

小尾:いえいえ。みなさんこんにちは。愛さんさんグループの小尾(おび)と申します。小尾というのは珍しい名字で、宮城県には1人しかいません。もともと神奈川県出身で、震災後に移住をして、その後ボランティア活動をしました。

最初はお弁当屋さんからスタートして、仮設(住宅)にいる高齢者の方たちにお弁当を届けて、そのまま移住をして創業したのが僕の経緯になっています。今、障害や難病を持たれた方と共に、高齢者の最期の安らかな世界を作ろうということで村づくりをしてるんですね。

なので、例えばもともと自衛隊だったけれども、もう10年間家に引きこもっていたような方々が僕らのところにきて、老人ホームの掃除をしたり、ご飯を作ったりして。目の前に畑がありますから、畑で採った野菜を使って、彼らが調理をして、高齢者の方に出すと。通常、高齢者の住宅というと、冷凍の食事などですけれども、そういう手作りのものを障害者の方と共に作って提供していったりですね。

あとは、知的障害の方が入ってきて、介護の資格を取って、彼らが介護のケアにあたるというような活動をやっております。そういう方々にも、最後にやっぱり生まれてきてよかったという役割に出会える場所を作ろうということで、村という位置づけで活動をしております。こんな形でよろしいでしょうか。ありがとうございます。

(会場拍手)

安部:すごくいい話だからコメントしたくなっちゃうんだけど、しないほうがいいんですね。

(会場笑)

小尾:次の人の番(笑)。

安部:あー、確かに。

町井:(次の方)お願いします。

(会場笑)

ジュエリー業界の裏側にある貧困や環境問題

白木夏子氏(以下、白木):(町井に向かって)姉さん。この前、姉さんと一緒にイスラエルに行ってきたんです。

町井:そうなんですよ。

白木:そう。いつもお姉さんと一緒。

町井:いろいろ学ばせてもらいます。

白木:そう。何年か前に、町井さんにメンタリングをさせてもらったことがあるんです。「そんなに辛かったらやめたら?」というようなことを言った経験があるんです(笑)。

町井:いやー、その時は辛かったんですよ。

白木:でも、本当にアワードおめでとうございます。

町井:ありがとうございました。ありがとうございます。

(会場拍手)

白木:私はジュエリーブランド「HASUNA(ハスナ)」を、11年ほど経営しておりまして、エシカルなジュエリーを作っています。エシカルは「倫理的、道徳的な」という意味で、人と社会、そして自然環境に配慮をしてジュエリーを作るということをしてます。

ペルーとかパキスタンとか、ジュエリーの原材料が産出される場所は、その多くがいわゆる発展途上国と言われているところです。そこで子どもが働いていたり、大人も強制労働させられていたり、低賃金労働をされていたり。そうした貧困の温床、あとは環境問題の温床になっていたりもするんですね。

そういったところがないジュエリーを作りたいということで、2009年にこのブランドを立ち上げて、今11年目に至ります。初期のころは本当に、毎月のようにルワンダやペルーの山奥のほうとか、パキスタンの山に登ったりしました。鉱山労働者に会いに行ったり、研磨をする人たちの工場に行ったりして素材集めをして、ジュエリーを作っていました。

今はルートができたので、そこまで頻繁には現地に行っていないです。今、日本のジュエリー職人さんも、実はすごく低賃金で働いている現状があります。職人さんも本当にすばらしい技術を持っていらっしゃるので、そうした職人さんたちのサポートもできないかなということで、日本の職人さんたちのサポートもさせていただきながら、ジュエリー作りを行っております。

店は表参道にあって、あとは全国の百貨店等々でポップアップ販売させていただいていたりもします。はい。キャリアについてはまた後ほど詳しくという感じですかね。

町井:ありがとうございます。

(会場拍手)

本を読ませてもらいました。ジュエリーというだけでパッと買うんじゃなくて、本を読むとその歴史まで出てくるので、その執着というか、こうやってできあがっていくんだなというのを感じるので、ぜひ本も読んでいただければなと思います。

白木:ありがとうございます。

町井:本を宣伝しました(笑)。

白木:数日前に、表参道の本店を移転して、町井さんはそのオープニングにも、かわいいお嬢ちゃんと一緒に駆けつけてくださいました。

町井:そうです。ありがとうございます。じゃあ、藤沢さんお願いします。

社会起業家の3つの役割は「可視化・事業家・制度化」

藤沢烈氏(以下、藤沢):はい。改めてRCFの藤沢です。今日はよろしくお願いいたします。最初に事業の紹介をする前に、まず社会起業家がどんな役割を持っているのか、ちょっと話をしてから自分の紹介をしたいと思います。

(会場笑)

何? 大丈夫、大丈夫。社会起業家の役割は3つあります。まず1つ目は社会化。社会問題を可視化して、世の中に伝えていくことが1つ目の大きな役割です。安部さんがやってるようなことですね。

2つ目が事業化。事業を通じて社会問題を解決するのが社会起業家の役割ですので、組織やプロダクトやサービスを通じて、社会問題を解決する方向に向かっていくと。

3つ目が制度化ですね。社会的な問題って、なかなか当事者からお金を取りにくいところがありますので、行政がなんらかのサポートをするといった仕組みが必要になってきます。そういう制度化をすると。

確かに起業やベンチャーも社会問題解決に繋がることがあるんですけれども、営利を目的にしますから、どうしても事業化にフォーカスせざるを得ないんですね。でも、社会化や制度化をやらないと、問題は解決しません。そこにNPOや社会起業家の役割があると考えています。

RCFは、東日本大震災を中心とした復興や防災の仕事をしています。日本の復興って何が大きなテーマだったかわかりますか?

一番大きなテーマは住宅なんですね。住宅の再建が復興の中心的なテーマだったんです。けれども、住宅を提供しても今高齢化が進んでいます。災害が起きると地域のコミュニティが壊れてしまうので、住宅を戻しても孤独な状態でなかなか元の暮らしに戻せないという問題があるんです。

最近はコミュニティという言い方をしますね。まず住宅を提供するだけではなくて、地域のコミュニティを戻すところまでやらないと復興ではないと。東日本大震災以前は、そういう概念がなかったんですね。

まさにそういう問題があるんだということを提言し続け、コミュニティ支援の事業を自らも立ち上げ、1つの地域でやるだけだと広がりがありませんので、県や復興庁に提言をして、制度化してもらって広げると。そういった取り組みを社会化から事業化でモデルを作り、国に制度として取り込んでもらう仕事をしています。今日はよろしくお願いいたします。

(会場拍手)

町井:すばらしいまとめです。可視化・事業化・制度化、いいですね。すごくわかりやすいです。ありがとうございます。

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