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SHARING CITY SHIBUYA(全3記事)

地域に根ざすコミュニティは、外科手術的には生み出せない シェアリングエコノミーから生まれる新しい渋谷の文化

2018年9月8日、渋谷キャストにて「SHARING DAY SHIBUYA 2018」が開催されました。“シェアリングエコノミーから生まれる新しい文化”をテーマに、渋谷区のシェアに関わるさまざまな取り組みと2018年にスタートした渋谷区独自の民泊条例の狙い、そして多くの外国人観光客が集う渋谷ならではの民泊体験・ナイトタイムの過ごし方など、その魅力と可能性について語るセッションが繰り広げられました。本パートでは、最後のセッションとなる「SHARING CITY SHIBUYA」の模様を3回に分けてお送りします(1/3)。

サンフランシスコから191もの国へと広がったAirbnb

上田祐司氏(以下、上田):みなさん、こんにちは。

今日のSHARING DAYには、たくさんの方に来ていただけて、本当にうれしく思っています。このセッションでは、渋谷で開催しているSHARING DAYにふさわしく、“渋谷のシェア”についていろいろとお話ができればなぁと思っております。本当に豪華なゲストが来てくださっています。

では最初に、シェアや渋谷に関連して、どういうような活動をされているのかをちょっと簡単にお話ししていただきましょうか。じゃあ、山本さんから順番にお願いします。

山本美香氏(以下、山本):みなさん、こんにちは。Airbnbの山本と申します。

今日はよろしくお願いいたします。Airbnbというのは、サンフランシスコで生まれた会社です。

191ヶ国、68,000の都市でグローバルに展開しており、自宅、あるいは空いているお家を貸したい方、それからパッションを持ってシェアをしたい方と、そういったものを体験したい旅行者の方をマッチングするプラットフォームを提供しております。今日はよろしくお願いいたします。

上田:よろしくお願いします。

(会場拍手)

渋谷区、昼の区長と夜の区長の対面

上田:ではZeebraさん、よろしくお願いします。

Zeebra氏(以下、Zeebra):はい。

私はナイトアンバサダーということで、夜をどうやって盛り上げていくかをメインにいろいろ動いてるんですけれども。最近は「ナイトメイヤー(夜の市長)」というシステムがヨーロッパを中心にどんどん確立してきています。

これはなにかというと、さすがに区長も24時間起きてらっしゃるわけにいかないので、夜は夜でそういったものを取り仕切る(役割が必要だと)。規模的には民間の方が多いんですけれども、そろそろ日本でも必要なんじゃないかなということです。

そういったことの知見をシェアしつつ、ワールドサミットが年に何度か開催されるので、そちらにも参加しています。例えば来週もインドのニューデリーでナイトタイムカンファレンスみたいなのがあるので、そちらに出席させていただいて、「日本は今、こんな感じですよ」とお話ししてきます。そこで、まずはとりあえず渋谷からナイトメイヤーを作ってみようかなということで、今いろいろ動かさせてもらっています。

上田:なるほど。よろしくお願いします。

(会場拍手)

上田:では、長谷部区長、よろしくお願いします。

長谷部健氏(以下、長谷部):こんにちは、昼の区長です。

上田:昼の区長(笑)。

長谷部:長谷部と申します。渋谷区でこのシェアエコ(シェアリングエコノミー)に関することっていうと、一応専門の担当者を置いてやってるんですけど、実は「これがアウトプットだ」というのがなかなか難しくて。

もちろんそういう協会があったり、シェアエコに取り組む事業者が出てきたりはしてるんですが、区として一番大切なのは、やっぱり地域のコミュニティの絆がもっともっと強くなっていくことです。そこが前提となっていれば、シェアエコがもっともっと活発に進むんじゃないかなと思うんです。

例えば、昔で言う「醤油の貸し借り」みたいな話とかあると思うけど、そういうのって顔見知りがそばにいるからそうなったりすると思うんですよね。

お互いが顔見知りだったら、孤独死もなかった

長谷部:そう思って、いま渋谷区では6月の第1日曜日を「おとなりサンデー」の日と設定しまして。

上田:おとなりサンデー?

長谷部:「近所の人と交わる日」としてるんです。公園を使ってもいいし、道路も使ってもいい。いろんなことを行政もバックアップするので、隣近所の人とバーベキューするのもよし、道路に落書きする日であってもよし。そんないろんなことにいま取り組んでいます。

あと、渋谷区は「ちがいを ちからに 変える街」というのが20年先のビジョンになっています。この「違いを力に変えていく」っていうことが、イノベーションを起こしていくことの原動力、いろんなパワーの源になると思うんです。そういった素地の中で、もともと多様性がわりと育まれていたこの渋谷区で、この街らしいシェアエコができていったらいいなと思ってます。

上田:はい、ありがとうございます。よろしくお願いします。

(会場拍手)

上田:簡単に取り組んでいただいていることを発表していただきましたけども、私まだついていけてないことがいくつかあるので、もうちょっと深くおうかがいしたいんですが。まずは、長谷部区長の「おとなりサンデー」。「あれはすごい」というのを耳にしたことはあるんですけど、いまいちイメージがつかないんですよね。

ちなみにみなさん、おとなりサンデーって、ご存知の方いらっしゃいます?

(会場挙手)

上田:けっこうご存知の方がいますね。

長谷部:もともとはパリで始まったムーブメントで、「隣人祭り」って日本語で訳す言葉があります。

上田:隣人。隣の人のことですね。

長谷部:向こうではアパルトメントですね。孤独死が都市の課題としてあって、それに心を痛めた青年たちが、「自分たちが顔見知りだったら、こんな2ヶ月も3ヶ月も放置されることはなかった」と。そこで隣同士が顔見知りになる日を作ろうといったことがありました。

パリも渋谷と同じように多国籍な人が集まってきていて、昔のような家族同士で住んでた方たちから核家族化していって、隣のマンションでもそんなに交わることがない。そんな背景も同じなんですよね。渋谷でも当然、孤独死ってあったりするんで。

外科手術的にはできない、地域に根ざすコミュニティ作り

長谷部:あとは、町会や商店会などのいろんなコミュニティがありますけど、高年齢化していて次の担い手がいないとか、PTAのなり手がなかなか見つからないといった問題もあります。

それって、本当はそのコミュニティにもっと活力があったり、多くの人が顔見知りだったりしたら、もう少しそういうところがスムーズにいくんじゃないかなぁと。これはなかなか、外科手術的にできるものじゃないので。

上田:そうですよね。

長谷部:いろんな機会を作っていって、「みんなが顔見知りになる日」を決めれば、ちょっと声もかけやすくなるんじゃないかって思ったんですね

パリでは立食パーティーだったんですよ。自分で食べたいもの、飲み物を持って中庭に集まりましょうと。パリの人はパーティー上手だから、それで簡単に盛り上がれちゃうと思うんですよね。僕らは「パーティーしましょう」って言っても、ちょっと照れくさいじゃないですか。

だから、渋谷区では「なにしてもいいです」っていことにしたんですよ。それで、行政は協力できることは協力しますと。

それで「公園で青空マージャンしました」って、おとなりサンデーでやってる人たちがいました。住宅街木密エリア(木造住宅密集地域)の狭隘道路はわりと通行止めにしやすいので、近所の人たちが長テーブルと椅子を出してきて。山形の人がいらっしゃった時は、東北の芋煮会みたいなものを大きな鍋を持ってきてやって、みんなでお酒持ち寄って盛り上がってるのがあったり。

上田:例えば、今日この瞬間、渋谷のどこかの公園で机並べて、みんなが食べ物持ってくるんですか?

長谷部:そうですね、近所の人が声をかけあって。それが6月の第1日曜日なんですよ。

上田:へぇ〜!

長谷部:そういう日を設定すれば、みなさんも声をかけやすいかなと思っています。これは自由参加にしているんですが、町会によっては公園全部にお店まで出しちゃって盛り上がったりしています。ふだんは公園でビールとか飲めないんで。恵比寿だったら当然ヱビスビールを買って、みんな飲んでました。

Zeebra:(笑)。

長谷部:そんな感じで、ゆるく始めてるんですけどね。

自治体や町内会のあり方を変えるSNS

Zeebra:年に1回とかですか?

長谷部:年に1回ですね。6月の第1日曜日だけです。今年は商店街が協力してくれて、渋谷区じゅうの商店街に旗をかけて、「あっ、なんだこれ?」っていう空気をちょっとずつ出せてきたかなっていう感じですね。

上田:隣に住んでる人が一体だれなのかわからないのが普通という感じが今はしますけど、そんな活動があれば普通にしゃべりますよね。

長谷部:そうですよね。だといいんですけど、なんて言うか、やっぱりなかなか難しいもので。

上田:難しい?

長谷部:1歩踏み出すには、まだまだ高い壁があると思うんですよね。

上田:そういう意味では、夜の世界ではもうちょっとハードルは下がりますよね?

Zeebra:そうですね、みなさんやっぱり、ちょっとお酒が入ってたりとかね。

長谷部:陽気でね(笑)。

Zeebra:すると、なんとなくフラッと隣にいる人に声かけたりできるようになったりすることがあるんじゃないかと思うんです。でも、いまのお話だったら、それこそ昼間からビール1杯飲めばできるかもしれないですよね。

上田:たしかに。

Zeebra:そうそう、そういうのがいいんじゃないかと思うんですけど。それこそさっきおっしゃってたみたいに、町内会や商店会に若い方たちがなかなか入ってくれないっていう問題は、けっこうどこでもあるらしいんですね。

例えば僕は道玄坂の上にインターネットラジオ局を開局して、そこで毎日放送してるんです。そのリスナーの方々って、みんなTwitterなんかでハッシュタグを付けたりして、ぜんぜん関係ない人たち同士で話し合ったりするんですね。気がついたらリスナー同士がオフ会してるみたいで。

そういうのって、今の世の中では普通になってきてるじゃないですか。SNSが先にあって、その後に知り合うとかって。だからもう、いっそのこと町内会とか商店会も、SNSみたいにしちゃえばいいのかなんて思ったりもします。

長谷部:ありますよね。もちろん、いずれそうなるんだと思うんですよ。ただ、今はまだそれを使えない人もいるから、一概に「それにしよう」っていうと大変なことになっちゃうので、やっぱり両方できるようにしておかないといけない。

若い人たちはそういった新しいものを使ってやっていく。そうなると、もしかしたら町会の単位も変わってくるかもしれないですけどね。ネットを介せば、もうちょっと広域になってもできるじゃないですか。そうやって少しずつ変わってくる気もしますけどね。

オンラインのつながりがオフラインを活性化させる

上田:ちなみに商店街といえば、たしかAirbnbさんも、なにか取り組みをされていらっしゃったような。

山本:ありがとうございます。弊社はオンラインプラットフォームなんですけれども、オンラインからオフラインという流れがすごくおもしろいなって毎回感じるんですね。

オンラインでやりとりした知らない人同士の一方が、まずその人のおうちに泊まらせてもらう。ホストさんとしては、やっぱり地域を自慢したいようなので、例えば近くの商店街やお祭りに連れて行くと。いま区長がおっしゃったような場に外国の方も一緒に連れて行って、その方をきっかけにむしろ仲良くなるみたいなことが実際起こっているみたいなんですよ。

あとは商店街の自分のお気に入りのお店をどんどん紹介していって、気づいたら商店街のおばちゃまがグローバルですごい有名になってる、みたいなこともあるんです。

上田:家を貸しているホストの方がゲストを案内するということなんですか?

山本:お家を貸している方、あと体験を実際に提供している方が、自分がすごく自慢に思っていらっしゃることを案内するんです。ゲストさん、つまり泊まってくれてる人や、体験したいという人をお連れになって。

上田:それはだいたい外国人なんですか?

山本:外国人の方もいれば、普段は東京にいない日本人の方もいらっしゃいますね。

上田:なるほど。その方を連れて商店街を歩くと。

山本:そうですね、一緒に商店街歩きをして、「実はここがおいしいんだよ」とか、地元の人しか知らない裏の店に連れていってくれて「わぁ!」なんて体験を提供してくださっている方が、今はすごく増えてます。

Zeebra:それこそ観光協会じゃないですけど、これまでは観光案内をなさる仕事の方たち、つまりプロフェッショナルがしてたことなんだけど、それを「お家を貸す」っていうところから、もうここまでいろいろできるようになってしまったというか。

それぞれのホスト目線で切り取る渋谷の姿

Zeebra:パソコンが1台あったら、もうなんでもできますよね。映像作ったり、デザインしたり。だれでもみんなプロみたいなことができる。そんな時代になってきたと思うんで、そういう意味では、興味を持ってらっしゃる方々がどんどんそういった新しいことを始めているのかなという気がしますよね。

山本:そう思いますね。ホストさん一人ひとりの見ている世界がまったく違うので、案内される方次第でまったく違う渋谷が見えてくる。そこもすごい魅力だと思います。

長谷部:Airbnbを介してデジタル的にゲストの募集はしてるんだけど、サービスとしては実はアナログ的なことをやっている。さっきの商店街のお知らせも、手作りのチラシみたいなのを作って、「これ見ていってくれ」みたいなことをやってたりとか、いろんな人がいるみたいです。

これは当然、地域振興にもつながってるわけですよね。商店街のローカルの人が行くお店にゲストが行って食べてたりと、なんだか不思議なことが起きてるんですよね。

山本:高齢のホストさんでいうと、お嬢さんとか息子さんがインターネットでやりとりをして、実際の受け入れはお母さんやお父さんがやってらっしゃるっていうこともありますし。

上田:パソコンが苦手だから、そういうところだけやってもらっていると? オンラインは苦手だけど、現場に来てもらったら対応はできるっていうことですよね。

長谷部:コミュニケーション力というか、ホストの人があの手この手を使ってやっているんですね。

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