2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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遠藤謙氏(以下、遠藤):結果として、要はなにがやりたかったかというと、(義足アスリートが)「本当に速いぞ」ということを見せたかったということと、あとは世界記録をどんどんどんどん更新していくレバレッジを効かせたイベントがしたかったんですよ。
どうしてかというと、やっぱり我々には心理的なバリアがあるんです。最近亡くなったロジャー・バニスターという……。これは為末がよく使っているスライドなんですが、1マイル走という競技が流行っていたときに、どうしても人類は4分を切れないのではないかと言われていたんですね。彼は、史上初めて4分を切ったんです。彼が切った後に、次の1年以内に、立て続けに23人もの人が4分を切った。
ですから、我々はかなり、要はもっと言えば10進数という数にものすごく心理的なバリアを張っているんです。「10秒の壁」と言われていましたよね。そういったものが実は切られた途端に、心理的にタガが外れてどんどんいけるのではないかと。
「障害者」という言葉も、すごく壁を感じます。「義足」という言葉にも感じるんですが。義足を気にすることなく賞金レースをして、「賞金がほしい」となった途端に、本気で壁を打ち破るようなインセンティブと呼ばれることがあるのだなと思ったことから、そういった渋谷のレースが1つのレバレッジにならないかと考えて、実現しました。
元村有希子氏(以下、元村):さっき外国人の方の後ろに佐藤選手も控えていましたが、佐藤選手はちゃんと走れたんですか?
遠藤:あれはですね、デモンストレーションとしてやっぱり走っています。彼は遅いわけではありませんが、やっぱり100メートルで言うと、1秒ぐらいは遅いんですよ、彼らより。だから、3人のうちの1人にはなれなかった人たちが後ろで見るという感じでした。
元村:かなり沿道いっぱいに人がいましたが。
遠藤:めちゃくちゃ人がいっぱいいましたね。
元村:あれは、渋谷にたまたま居合わせて見ていた人もいるんですか?
遠藤:絶対にそちらのほうが多いのではないかと思いますね。やっぱり。
元村:じゃあ、効果がありましたね。
遠藤:その後の反響は、すごく大きかったです。これも我々「パラリンピック」とは一言も言っていません。僕らが大事にしていることは、オリンピック・パラリンピックのために何かをするということを去年ぐらいからまったくやめているんですよ。
そうでなくて、やっぱり義足の人が速く走ることによる、我々の「障害者」や「健常者」という価値観の変革のようなものが僕らはおもしろいと思っています。それを目標にする、ひとつのマイルストーンにオリンピック・パラリンピックがあるという感じです。
義足の図書館(注:競技用義足で気軽に試走できる施設)もそうですし、あれは2020年だけで終わるものではなく、どんどん続くものだと思っています。渋谷のレースも、世界記録を絶対に塗り替えるために、これから毎年やりたいと考えているんです。
元村:義足の図書館で言うと、さきほどクラウドファンディングで1,750万円を達成したという画面が出ていましたが、あれは何日ぐらいで達成できたんですか?
遠藤:あれは2ヶ月ぐらいですかね。
元村:かなり苦労している方も多い中で、あれほどの金額がどうやって集まったんですか?
遠藤:いや、苦労しましたよ。やっぱり。
元村:でも、100万円でも集まらない人がけっこういるんですよ。
遠藤:いや〜、それは友達が少ないんじゃないですか?(笑)。
(会場笑)
元村:友達が少ないから?
遠藤:クラウドファンディングはプロジェクトそのものもそうですが、「その人に投資する」という意味合いが多いですよね。だから、僕がいいかと言われるとそうではなく、僕を応援してくれる人を応援してくれる人がたくさんいたというイメージです。
元村:遠藤さんがいいと言っているのかなと今思いました。
遠藤:ははは(笑)。最初はあまり伸びなかったんですよ。だからそこの時点で、「あっ、僕の友達はこんなもんか」と思ったのと……。
(会場笑)
遠藤:そこは否定させていただきます。
(会場笑)
元村:その1,750万円で、ああいった道なども全部作ったんですか? それとも元々あったところに?
遠藤:義足の図書館の話ですよね? あれは、豊洲はもともとありました。東京ガスの用地開発さんと、ブリリアというのがありますよね。東京建物さんにネーミングライツを買ってもらって、そのお金で建てられたもんです。
元村:1,750万円はどういうところで使われたんですか?
遠藤:ほとんど板ばね、義足ですね。義足1本で20〜60万はしますので。
元村:30本揃えればかなりのお金、500万ですよね。
遠藤:義足だけで1,300万円ぐらい使いました。
元村:子どもさんは、どういった反応を示しますか? ああいった競技用義足を履いて、走って。
遠藤:もう、これはやっぱり子どもも大人も同じで、競技用義足、板ばねというのはやっぱり軽いんですよ。普通の義足は跳ねる感覚がないので、やっぱり普段の義足と板ばねの違う感覚というのは、僕らだと残念ながらそこまで感動は、彼らが感じられるほどは感じることができないんですが、彼らはやっぱりものすごく喜びますよ。すごく喜んでくれます。
元村:あそこに貼ってあるのは、義足の図書館を取材した記事で、残念ながら読売新聞なんですが。
(会場笑)
元村:ちょうどこの催しが決まった頃に載っていたので、切り抜いて。今日みなさんもお時間があれば読んでいただきたいと思います。毎日新聞もね、今度出るんですよね。
遠藤:はい、この前来ていただきました。
元村:取材に行ったようなので、3月30日の朝刊を見てください。
遠藤:ははは(笑)。
元村:遠藤さん、また拡散してください。
遠藤:はい、もちろん。
元村:「載りました」ということでね。
遠藤:ありがとうございます。
元村:終わりですか?
遠藤:はい、終わりにします。
元村:はい、ありがとうございます。
遠藤:ですから、物作りもやっていながら、自分たちができる範囲内でちゃんと社会を変えられるようなアクションをやっているというのが、僕たちの活動内容だと思います。
元村:はい、ありがとうございます。遠藤さんを外から眺めていて、すごく知りたいと思うことがいくつかあるんですが。
1つは、エンジニアや研究者というのは、どちらかというと自分の目の前のタスクやテーマにすごくわーっと深く入るあまり、社会と関わりを持たない人が多い印象が私の中にあるんです。
遠藤さんはどちらかというと、最初、修士の2年のときからもうやっていらっしゃいますよね。その原動力は、どういうところからになるんですか?
遠藤:僕、社会全体というイメージはそんなになくて、もちろんこうした場ではきれいごと的に言うんですが、本当はやっぱり自分の後輩や、ああいった顔が見えている人に対してちゃんと作れるものを作りたいというのがたぶんいちばんのモチベーションだと未だに思っています。
元村:じゃあ、やっぱり「Xiborgで作りたい」というアスリートと1対1の関係の中から、いろんなものを作っていくと。
遠藤:はい。将来的には、1人のためじゃなくて、それからどんどん積み重ねてどんどん社会が変わっていくというストーリーはもちろん考えていて、やりたいとは思いますが、いちばんのモチベーションは何かと言われたら、その最初の1人ですよね。
最初の1人がちゃんと速くなるとか、走れるとか、歩ける。そういったことをちゃんとできるようなものを作るというところが、やっぱりやっていていちばんうれしいです。
元村:あとは、もともとロボット少年だったわけですよね。ヒューマノイドだったり、ロボコンにも参加されたりしながら、今はその一部と言うのかな、ロボティクスの中の一部だと私的には思っているんですが。そのロボティクスと義足作りというところのつながりは、どういった感じで捉えていらっしゃるのかを知りたいんですが。
遠藤:まずロボット義足に関しては、100パーセントロボットだと僕も思っておりまして、人間が使うので人間の身体の知識も必要ですが、やっていることは基本的には、例えば機構設計やはんだ付けやプログラミングといった、普段ロボットの研究者がやっているようなことを義足に対してやっています。
やはり究極の動く物体は人間だと思うんです。それは人工物では作れないので、人間がどういう存在なのかという、ロボットはロボットで作っていながら、人間というのは作れないという手の届かない存在であると同時に、人間の体そのものに対して非常に興味があります。
ゆくゆくは人間のように動くものはロボットで作れると思うんですが、そのプロセスはすごく遠いので、憧れという意味での人間という見方をしています。
元村:遠藤さんの人間観にも通じると思うんですが、例えば片足を失った人を義足で補う、そのことによって本来人間が持っていた能力を上回る能力を得られるということは、つまり身体能力を拡張していくということですよね? どこまで拡張したいですか? というか、していいと思いますか?
遠藤:僕は基本的に他人に迷惑がかからなければ、いくらでもやっていいと思います。
拡張というのはaugmented human、augmentation、あとは英語でいうとenhanceなど、もっと高みになるようなイメージがあり、これには1つの軸があって今ここにいるけれども、もうちょっと改善しよう、いいものにしていこうというような感覚で、そうした単語をみなさんも無意識的に使っていると思うんです。でもそれは、軸が崩壊してしまったらaugmentでもなんでもなくなってしまいますよね?
わかりやすい例が、やっぱり「走る」ということだと思うんです。誰もが例えば速く走れるような靴があって、それがオリンピックで使ってもいいようなものであったとしたら、速く走ることに対する価値観はみんな薄れると思います。
そうなると、それはaugmentationではなく自分の自己実現のための1つのアプリケーションということになるので、どこまでいけばいいのかというよりも、自分が幸せになれる方向でテクノロジーがあればどんどんやった方がいいと思っています。
元村:遺伝子ドーピングというものを今、頭に思い描いていて、例えばゲノム編集をして生まれつき足の速い遺伝子があるのか知りませんが、そういうものを例えば受精卵の段階でなど、そのようにするのもenhanceですよね? それもオッケー?
遠藤:僕はオッケーです。
元村:なるほど、おもしろいですねー。
遠藤:これは人間としてオッケーなんですが、どこが盛り上がるのかというルール作りに関してはおそらく収拾がつかなくなってくると思います。
ですから、オリンピックもパラリンピックも、もしかしたらそんなに盛り上がらなくなってきてしまうのではないかという懸念がありますが、でも要は、多様性が広がるということは、どこか1ヶ所に人が集まらなくなってくるということですよね? それはおそらく、時代の流れの1つなのではないかと僕は思っています。
元村:なるほど。『ゲノム編集の部』のようなものがあったりして、みんな100メートル7秒くらいで走ってしまったりするんですね(笑)。
遠藤:はい、ニッチでかつエッジの効いたものが集まってくる競技会のようなものがあるというか、そうなってくることが自然だと思います。
元村:それを助けるのがテクノロジーであるということですね?
遠藤:はい。
元村:そういうことですね。オリンピックやパラリンピックとは言わないと仰っていましたが、あえて聞きますが、2020年はどこでなにをしていたいですか?
遠藤:2020年のオリンピックパラリンピックのときですか? それは、僕はやりたいことがあって関係者には協力してもらいたいんですが、Xiborgは今まであまり相手にされてこなかったんです。本当に最初の頃は馬鹿にされていましたし、「これをやりたい」と思ったときに、そんなに協力してくれる人がいなかったんです。
それが今、結果が出始めて、ちょっと手のひらを返したような人もでてきているんです(笑)。それは置いておいて、最初の方に助けてくれた人や、これからでも助けてくれる人たちが絶対いると思うんです。その人たちと100メートルの決勝を見たいと思っています。
元村:関係者というのはアスリートも含めて?
遠藤:アスリートも含めて、パラリンピックに出られなかった人たちも含めて、Xiborgの関係者をたくさん招待してホームストレートの真ん中ぐらいかゴールくらいかわかりませんが、そこのチケットを集めて、みんなで決勝を観戦したいと思っています。なので、もしチケットが余っていたら僕にください(笑)。
(一同笑)
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