2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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川口真沙美氏(以下、川口):ありがとうございます。今年の受賞のデザインからもかなりたくさんの話が聞けて、ずっと聞いていたい感じなんですが、ここからは、みなさまの個人的なロングライフデザイン。なくては困る愛用のデザインをお聞きしてみて、その背景やデザインの力について考えていきたいと思っております。
では、まず柴田委員の愛用のデザインということで、artemideのテーブルランプ(Tolomeo)を挙げていただきました。
柴田文江氏(以下、柴田):福光さんと齋藤さんの話がおもしろくて、私のはさらっと終わろうかと思うんですけど(笑)。今日いらしてるみなさん、きっとキャップレスとプラマンを買いたくなってると思うんですけど、ロングライフデザインてそういうところがあるんですね。
確かに自分も知っていて、「いいものなんだろうな」って思うことを、もう一回呼び起こしてくれるところがあるので、実は受賞することはすごくいい効果があるんです。
これ(アルテミデ トロメオテーブルランプ)は、私の愛用のデザインということで3つ持ってきたんですけど、本当にただ好きなデザインを持ってきただけなんです。私自身もプロダクトデザイナーなので、照明器具をデザインしたり、してみたいなと思うことがあるんですが、本当にこれはよくできてるんですよ。こうなってこうなるとこう動くみたいなところを考えると(笑)、まあこういうかたちになるなと。
お手本のようなデザインでして。あと、たぶん今日デザイナーの方も多くいらしていると思うんですけど、ほとんどのデザイン事務所の照明ってこれじゃないかと思いますね。私が知る限り、みんなこれを使っている。かっこいいんだけど、ある意味、本当に「普通に普通」だからスタンダードなのかなと思います。
次は、これも個人的なものなんですけど、(リチャード)ジノリのベーシックホワイト。これは業務用なんですよね。ジノリらしい生地感で、模様はまったくないんだけど業務用なのでちょっと丈夫にできてる。あと実は縁にたまりのあるぼてっとしたかたちで。
それが意外となんにでも合うんですよ。どんな洋食器にも合うし、ちょっとした柄のない和食器だったらぜんぜん合ったりするところが。そこが非常に気に入っています。
川口:じゃあ次、最後の。
柴田:ちょっとやらしいんだけど(笑)。
(会場笑)
ポルシェ911です。私、工業デザイナーなもので、こういうものが大好きなんですね。でも冷静に考えたら、ポルシェって本当にロングライフデザインなんじゃないかと思うんですよ。
子どものときから車好きだったんですけど、子どもや女性はとくに車のかたちってなかなか覚えにくいんですが、流石にポルシェを見極められない人っていないんですよね。それぐらいかたちがこうアイコニックであって、長いこと変わってない。
でもよく見るとすごく変わっているし、常に新しいし、いつ見てもかっこいい。とくに911に限っては大好きという、ただそれだけです(笑)。
(会場笑)
川口:はい、ありがとうございます(笑)。
齋藤峰明氏(以下、齋藤):先ほどちょっとお話したんですけど、すごく計算されててこれほど変わらない車ってないんですよね、かたちがね。ポルシェのホームページ見るとそういう動画があるんですけども、911が1台置いてあって50年前からのモデルを上にガーッと投影していくんですよ。そうするとね、ほとんど変わらないんですよね。
なんかアニメみたいにこう多少ずずずずーっと動くんですけども、ぜんぜん画像が(上下左右に動くジェスチャー)こうならない。だからほとんど変わらない。ここまで変わらない車って、他にないんじゃないかなって思うくらい。
福光松太郎氏(以下、福光):さっき話しておられた、今日ここでお話しになってませんが.......。新しくされたらご家族の方はすぐわかったっておっしゃってた。だから、ほとんど変わってないけど新しくするというのがデザインパワーですよね。
柴田:実はぜんぜん変わってないようですけどかなり変わってるんですよ。自分がもしそれをデザインするとしたら、すごく難しいなと思うんですね。
たぶんデザインに許されている余地はすごく少ないんだと思うんです。あんまり変えられないっていうところで。けれどもやっぱりその時代時代に合わせて、なんていうのかな。すごいすっきりさせている。
もちろん古いポルシェの格好良さもあるんだけれども、新しいポルシェの格好良さもあって。それは単に変わらないっていう後ろ向きなんじゃなくて、すごくアグレッシブな感じがするのが、プロダクトデザイナーとしてはすごく勇気をもらえるっていうか「あ、そういうもんだな」と。守るっていうことじゃなくて攻めていくことで新しいものを作り、守っていくんだなって思います。
川口:ありがとうございます。それでは、永井さんの愛用のデザインで、1つ目はMacBook Airを挙げていただきました。
永井一史氏(以下、永井):そうですね。僕もデザイナーなので、「あなたが本当に好きなデザインはなんですか」とか「一番大切にしているデザインを1つ教えてください」とかたまに言われると、けっこうドキッとしちゃって。
すごいこだわってるようであんまりこだわってないのかな、とか思っちゃったりして。実は僕、全く同じMacBook Airを5台を駆使して使ってて(笑)。あんまりデザインの話じゃないからどうでもいいんですけど(笑)。ふだん手にいろんなものを持たないんですね。
しかも今、セキュリティの問題があるので、例えば会社に1台2台、まあ厳密には3台あるんだけど、2台置いてあって。外に、例えば講演や打ち合わせに出るときに持ち出すやつと、持ち出さないのがあって。
しかも家でも一緒なんですよ。土日に持ち出すやつと持ち出さないのがある。大学にも1台。都合5台あって、それをちゃんと使ってるという意味において、こんなに僕の大切なデザインはないんじゃないかっていうことが1点。
永井:あと、ちょっとグッドデザイン賞に絡めると、ちょうど10年か、8〜9年くらい前だと思うんですけども、内藤さんが審査委員長のときに僕とか柴田さんもやってたよね。山中さんとか、何会っていうのかな。
柴田:なんかリーダー会?(笑)みたいな。
永井:リーダー会?(笑)。副委員長会とか、これからのグッドデザイン賞をどうしていくかを考える会がみたいなのがあって。たしか発売された直後に、山中さんがその会議にMacBook Airを持ってきたんですよ。
柴田:ああ、覚えてる。すっごい覚えてる。
永井:覚えてるでしょ? 僕はMacBookはもちろん使ってたんですけど、この薄さが初めて出たときで、それを山中さんとかがこのヒンジがどうのとか、なにがすごいかをすごい解説してくれて。
柴田:ビスの穴が丸いって言ってました。
永井:あ、言ってたっけ?(笑)
柴田:プロダクトの人はわかると思うんですけど、曲面にビス穴をつけるとビス穴が流れますよね。「ビスの穴が丸いんだよ」と山中さんがすごく言ってた(笑)。
永井:ああ、言ってたね。でも、みんなでなんか熱く語り合ってて「あ、すごい幸せな場にいるな」と思った記憶もあり、本当に使ってるという意味においてはこれを挙げたいなと思いました。新しいMacBookも1台買ったんですが、MacBook Airの方が、かたちも好きなんです。
柴田:これロング(ライフデザイン賞)に推薦されてますか?
永井:Apple商品って意外と難しいのでは?
川口:そう、意外と難しくて、推薦はされているんですけど、なかなか応募に至らないという(笑)。
(会場笑)
永井:ふだん打合せして、この(Macbook air)使用度比率すごいよね。6人いたら……。
柴田:私も4台持ってますよ。
永井:あっ(笑)。
柴田:(笑)。
永井:やりますね。一緒一緒(笑)。
齋藤:Appleは当たり前だと思ってるんじゃないですかね。賞なんかいらないと。
川口:ありがとうございます。もう1点は、ハンス・J・ウェグナーのGE 290 Chair。
永井:そうですね。これは実際に家で使ってるんですけど、今までのソファは単に座るためのソファって感じだったんです。でも、これに替えてから自分のいる場所になったんですよね。
たぶん心地良さとか座面の角度とかがすごく大きいと思うんですが。一番僕がものを考えたりする場所で、ここにMacBook Airを持ってきて(笑)。
(会場笑)
朝、数時間座ってるっていうのが僕の日課なんですけど(笑)。とても大切で、視覚的にも目に入ってるかもしれないんだけど、機能的な座り心地感とかで特別なもう自分だけの場所になったということは、デザインの力だなと思います。
川口:ありがとうございます。では齋藤さんの愛用のデザインということで、エルメスのズールー・コインケース。
齋藤:何回も日本とフランスを引っ越したりしてたもんですから、あんまりこうずーっと物をもって行ったり来たりってあんまりしないもので。どっちかっていうとものは好きなんですけど、愛用って言われると......。今私パリと東京と行き来してるときには本当に機内持ち込みのスーツケース1つで行き来してるんで(笑)。
愛用って意味で言うと、あんまりこれっていうのがないんですけど、ふだん持ってるものというとこのズールー。小銭入れなんですね。これは4代目のエルメスですから、1950年か60年代に発表されたものだと思います。
エルメスの革の商品っていうと、もちろんケリーバッグだとかいろんな有名なバッグがあって、それはもうデザイン的にはみんな50年以上前のロングライフっていえばロングライフなんですけれども。
ただ個人的に愛用してるって意味では、この小銭入れが珍しくて。どこにも縫い目がないんですよね。エルメスの革のもので縫ってないのはこれしかないんじゃないかなって思うんですけども。
なんとこれぺしゃんこになってですね。今持ってるんですけれども、まあ小銭入れですからけっこう小銭入れてもこんなふうにぺしゃんこなんですね。
ところがこれ開けるとですね、おもしろいのは開けると蓋が大きく開く。だから小銭入れたり出したりするのにすごく便利で、片手でこうやるとしまっちゃうっていう、魔法のような小銭ケースなんですね。
ズールーっていうのは、ズールー族っていうのがアフリカの南の方にいてですね。ちょっと調べてみたんですけど、なぜこの名前を付けたのかは不明ですね。
神秘なね、折り紙みたいな構造になってて。魔法のような、ってことでそのアフリカの民族の名前が相応しいのかなってつけたんだと思うんですけども。エルメスには毎年、こういうふうにして時代を超えて長く使えるものがいっぱいあるんです。
愛用といえば書類鞄とかも20年くらい使ってるものばっかりなんですけども。家に置いておくものじゃなくて、ふだん身に着けて持ってるものはそういうものが多いかなと思いますね。
私にとってはこれがロングライフの1つの象徴かなと思って、しかもエルメスの場合はだいたい丈夫にできてるんですけども、ダメになったらまた修理してもらえるんで安心して長く使えるってところが特徴。今はもうエルメスにいないんで、宣伝してもしょうがないんですけど(笑)。
(会場笑)
長いこといたんで、なにかっていうとエルメスを見ますね。
川口:はい。あともう1つ、愛用ってわけじゃないけれども、これが究極のロングライフデザインなんじゃないかってことで挙げていただいたのがLevi'sのジーンズ。
齋藤:愛用のものって言われましたが、ロングライフって考えたときに、ジーンズが当然あるんじゃないかと思って、遡ってずーっとこのロングライフ賞の資料を見たんですけど出てこなかったんですよ。
このジーンズは、先ほどの写ルンですじゃないですけども、こういうソフィスティケートされ進化した世の中で、100年以上も前の洋服を今でもみんなが日常的に使うというのは超ロングライフ賞だなと思って。
さっきのAppleじゃないですけど、たぶんLevi'sの人たちはこんなのずーっと当たり前と思ってて、こういう賞に応募してこないんだと思うんですよ(笑)。
先ほど控室でもお話してたんですけど、このもの自体は、リーバイ・ストラウスって人が、1850年代に会社を起こし、ゴールドラッシュの時代ですから、金鉱を掘る人たちのためのズボンとして帆布からズボンを作った。
そのあと1980年代にその会社を買った人がいて、その人が今度は今のデニムを使った。デニムという生地を作ったんです。
デニムっていうのは、フランスのニームっていう町が南仏のアルルの側にあり、そこの出身の人が考案した生地なんですね。
それがアメリカに渡ってデニムの生地となって使われた。最終的にジーンズって呼ばれるのはどうしてかなと見ていたら......。
ジーンズってフランス語の名前でジャンって書くので、たぶんジャンって人がこのかたちを考えたんじゃないかなと思って見たらそうじゃなくて。この生地がニームからジェノバを経由してアメリカに行ってたと。
ジェノバっていうのはフランス語だとジェーヌっていうんですよ。その音声が訛ってこうジーンズになったとかって書いていて。これはちょっと本当かどうかわからないんですけども、でもいずれにしろ19世紀からね、ずーっと前ですね。
一般的には、オートクチュールだプレタポルテだって華やかなファッションがずーっと時代を作ってきた中で、まだこれが今でも若者たちには一番愛されるのは、すごいなって思いますね。
これはロングライフ賞にいつかなるんでしょうかね(笑)。
川口:ひとしきり控え室でも話題に挙がっておりました。ありがとうございます。
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