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プレゼン(全2記事)

住み心地がいい神戸で働くということ Lusie小泉寛明氏が提唱する「コーポラティブ・エコノミー」の新概念

まちづくりの観点にとどまらず、今後あらゆるビジネスで「コミュニティ」の存在は重要なキーワードとなっています。そこで「地方におけるコミュニティの作り方、育て方〜クリエーターの『居場所』はどうつくっていくべきか〜」をテーマとした「Creators Reunion KOBE」が1月24日に開催されました。神戸R不動産を運営するLusie Inc. 小泉寛明氏が自身の活動内容をプレゼンしました。

すばらしく住み心地のいい“まち”

山阪佳彦氏:続きまして、小泉さんのほうから、今日はスライドなんかもいくつかご用意していただいているみたいです。小泉さん、とくに神戸でずっと、コミュニティづくりも含めて、クリエイターとの関わりをたくさんお持ちなので、そのへんの話もうかがいながらプレゼンいただければと思います。よろしくお願いします。

小泉寛明氏(以下、小泉):こんばんは。小泉といいます。よろしくお願いします。

私自身は、さっきご紹介あったとおり神戸出身ではないんです。宝塚市生まれで大阪で育って、ロサンゼルスに留学して、東京で森ビル株式会社という会社に就職して、辞めてロサンゼルス行って、また東京行って、大阪行って、伊豆に行ってみたいな。フラフラ動き回ってたんですけど、なんかふとしたタイミングで神戸に縁があって住んでます。

独立したのが7年前ぐらいなんですけど、その前にリーマンショックがあって、ちょうど独立した頃に東日本大震災があって、かなり世の中が大きく揺れたタイミングだったんです。そんなタイミングに起業したというか独立したというかたちです。

当時どうしようかなと思ったんですが、神戸って仕事がある雰囲気がぜんぜんしない。正直なところ、今もそんなにしないんです。だけど、ある意味すばらしく住み心地のいいまちなので、なんかポテンシャルはあるなというのはすごく感じていて。今もデータをお聞きして、3,000億円が流出してる。まさしくそんな感じだと思います。

そこになんか、個人的に別にそれを掘り起こそうとは思わなかったんですけど、そういうビジネスチャンス的な匂いはあるなというふうには思っていて。

それと社会背景的にも「東京からもう出よう」みたいな人けっこういるんじゃないかなと当時思って。僕は拠点を神戸にして、東京の人たちにどっちかといえば、「もうそろそろ東京以外で仕事するのもありじゃないですか?」という活動を始めたようなかたちです。

今、僕が住んでるのはこの北野町というエリアです。今日は神戸から来ましたので、神戸の写真をたくさんご紹介できたらなと思います。

すぐ裏山で走ったりできる環境です。僕らがいるところの北野町は、けっこう外国人マンションがたくさんあって、外国人マンションからも人がいなくなってしまったので、家賃が大暴落してすごく安く借りれました。

多様な文化が根付く

外国人マンションや僕が住んでいた家でもあるんです。オフィスの屋上とかに、けっこう気持ちいい空間があったり。ここは三宮まで本当に15分。新神戸の駅まで7〜8分ぐらいの距離感のところです。

その移住みたいな活動を始めてから、ほぼ1番目のお客さんと2番目のお客さんが、「R不動産」というサイトをやって、今日も実は来ていただいてる長谷川暢宏さんという方。長谷川さんは、僕が「ポートランド(米国オレゴン州)と神戸はなんか重なるな」と思ってそういうブログを書いていたら、なんかちらっとそれに反応していただいた部分もあって。

実は彼は「Coda」「Transmit」といったソフトウェアを作る、ポートランドのPanic inc.という会社の日本代表なんです。神戸市じゃないんですけど、(兵庫県)西宮市の柏堂町にポーンと家族と移ってきて、そこで仕事されているという方です。

スズキコージさんという絵本画家の方は、とある業種ではすごく人気の方なんですけれども、このお2人両方、「イラストレーター」「ITのプログラマー」で、どこでも動けるみたいな人たちがポーンと移ってきたというような感じでした。当時6〜7年前ぐらい、5年前かな、ぐらいの話です。

そんなことがあって神戸へ移住してくる人もけっこう増える可能性があるんじゃないかと思って。実はもう1人、安田洋平さんという方が今日来ていただいているんですけど。安田さんは「東京R不動産」の編集者としていろいろ本とか地図を作っていらっしゃった。

「神戸の地図を一緒に作りましょうよ」ということで神戸に何回も来てもらって通っていたら、実はこの地図をきっかけに安田さんも神戸に引っ越してきた、みたいなことがありました。

この地図をきっかけに、ちょうど作っている頃に安田さんから「移住してきて1人で仕事するのは寂しいから、シェアオフィスを作ってくださいよ、小泉さん」って言われて。

安田洋平氏:僕だったんですか?

小泉:そうですね。はい(笑)。

オフィスをセルフリノベーション

実は2人から言われたんですね。あとに出てくる設計事務所をやってる人からも言われて。「引っ越してくるのはいいけど、コミュニティがないから作ってくださいよ」と言われました。(スライドを指して)ここ自宅でマンションの1室だったんですけども、セルフリノベーションで衝立てだけ立ててシェアオフィスにしました。

出てった人もいるんですけど、今3〜4年シェアオフィスを運営しています。設計事務所、編集者、動画の編集者、グラフィックデザイナー、フォトグラファー、こういう人たちが今まで入居してきては出ていきました。会社が大きくなってそれこそ出ていった方が大半なんですけど、近くでみなさんね、みなさん神戸にたいがい居らっしゃいます。

人が人を連れてきている

よく飲み会をしたり、地元の人たちとの接着点みたいなこともやったりしています。

その1人、今津修平さんという方で建築設計事務所です。彼も東京から移ってきたの4年前ぐらいですね。もともと細々と1人で(やっていて)「これで食えなくなったらどうしよう。家族もいるし、大丈夫かな?」という感じで、2〜3年けっこう「やばい!」みたいな時期もあったんです。

でも、今けっこう売れっ子になってきて、スタッフも4〜5名ぐらい抱えて、今度事務所も独立して、大きな場所を借りて自分の設計事務所を作るようになってきています。

フォトグラファーで片岡杏子さんという方なんですけど、さっきのデータのとおり、フォトグラファーとか優秀な人が神戸に正直いなくて、来た瞬間にいろいろ、ローカルコミュニティと接着があると、そこに仕事の依頼がバーって集中して、彼女は神戸・大阪界隈ではけっこう仕事が集中して売れっ子になっちゃったんです。彼女みたいな人がいたり。

株式会社シー・アイ・エーというシー・ユー・チェンさんという人がやっているクリエイティブエージェンシーがあるんですけど、そこ出身の岩野翼さんと森江朝宏さんという2人で「AKIND」というブランディングのコンサルティングの会社を作って神戸で起業したんです。

彼らも今ピーチ航空さんの会社のブランディングをやったりとか、けっこう大きな、有馬温泉のブランディングをやったりとか、そんな仕事をされています。彼らも出ていって、近所で今、人材募集とかやってると思います。

阪急電車高架下の素敵な空間

COPAIN DESIGN SOURCE inc.というグラフィックデザインの会社なんですけど、彼女が明石出身で、社長に「私、東京いやだから明石に帰ります」って言ったら、社長が「じゃあお前、神戸に会社作って支店作ってやるから残れ」と言われて、うちのオフィスを借りていただいてやられています。

彼らもやっぱり実力がそれなりにあるので、神戸に来て東京の事務所でもありますみたいなことで言うと、仕事ガンガン取ってそれなりにやっていらっしゃいます。

ほかにも、絵本の製作者、編集者など。これ2〜3年前の東京のイベントなんですけど、この女性の編集者も移って来られました。

気がついたのは、僕ら空間とか建築の仕事をやってた人間としては、そういう場所が人を集めるのかなとも思っていたんですけど、結局「人が人を連れてきている」という感覚がありまして、常にそういう感覚はあります。

そういう仕事のコミュニティみたいなものを、ほかのこういうノマド族というか、どこでも仕事できるクリエイター系の人以外でも取り組んでる箇所が2ヶ所あります。これは灘の高架下という王子公園駅から春日野道駅(まで)の高架下の話です。

(スライドを指して)阪急電車にはこういう番号がついてる高架下がありまして。こんな高架下ですね、僕ら「すごくいいな。この空間」と思って。これもう大量に空きがあるんですね。この阪急電鉄の高架下に。

はじめは、この家具職人の小寺昌樹君って言うんですけど、大阪のgrafというクリエイティブユニットの家具職人だったんですけど、彼が独立したいという時に、この高架下を紹介させてもらったら、1階を工房にして、2階をこういうショールームにして(Magical Furniturの)営業を始めました。これが4年前ぐらいですかね。

当時、阪急さんともかなり交渉していろいろ大変だったんですけど、1個こうやって明かりが灯ると、少しずつ「俺もやりたい」みたいな感じの人が増えてきました。

彼らはCultivate Industryという鞄のブランドの会社です。それこそ1個20万ぐらいするような、どっちかといえば日本で売るというより外国で売ってるようなかばんを作っているような人たちが移ってきました。岩永大介・信介兄弟ってこの2人なんですけど、お2人とも目線は完全に外国を向いてますね。

これはバレエスタジオだったり、額縁屋さんとか。これはで「TEAMクラプトン」というDIY工務店チームです。そんなことで、今だいたいこの高架下に15〜16軒、そういうクラフトマンが集まってきたり、スポーツ系の人たちが集まってきたりしています。

こんな感じでたまに、全部オフィスというかアトリエなので、たまに春と秋だけオープンフェスみたいな感じで中を見れるようなイベントをやったりしています。

神戸サイズのまちだからコーポラティブ・エコノミーが可能

もう1つご紹介させていただこうと思います、FARMERS MARKET。これは、三宮の神戸市役所の南側に「東遊園地」という公園があります。

今の季節もこんな感じなんですけど、「なんでこんなにいい場所がこんな殺風景なんだ」ということで、実は当時、3〜4年前ですけど、何人かでそのような話をしていたら、市主導で社会実験をしようという話になりました。

僕が担当したのは「FARMERS MARKET」なんですけど、2日だけ実験をしてみたんですね。6月に2日間実験しました。そしたらものすごい数の人がやってきて。(スライドを指して)秋の風景や春の風景、当時の風景なんですけど。

これは続けてやろうと思って、続けてこういうのは日常化しないといけないだろうということで実験を重ねました。2015年は実は9回やって、2016年から30回、春から冬までやって。その次は冬もやろうということになって、去年は41回。今年はもうほぼ毎週やってるというようなかたちになっています。

さまざまな出自のチームメンバー

例えばMorning Dew Farmの中野信吾さんという方なんですけれども、中野さんなんかはカメラマン出身ですね。もともとグラフィックデザイナーですが、モニカちゃんはカナダ経由で、今は農業をやってると。どっちかというと「そっちが正しいんじゃないか」みたいなことで農業に入ってきた方々なんですけど、こういう方がいらっしゃいます。

シェフの方が農家に買いに来る。あと彼女たちも洋服のデザインとかをやってたって言ってましたけど、今、農業をやっています。ミュージシャンだったんだけど、農業をやっているというような人がいたりしています。

今、これは神戸市さんと実は一緒にやっていて、神戸市さんと農業業者のみなさんと、単に農業業者だけじゃなくて、食物販の人とか飲食店の人とか一緒に会員になってもらって社団法人を作って運営をやっています。事務局は、私たちまちづくりやってる人間だったり、料理研究家だったり、公認会計士さんだったりが、やらせていただいています。

こういうチームみたいなことでやると、なにか化学反応が起きるというか。さっきの高架下もシェアオフィスも、こういうFARMERS MARKETもそうだと思うんです。

我々のFARMERS MARKETに関しては、本当、少しずつ若い世代が増えている。例えば農業の世界でいうと、JAが農家を支えるコミュニティになっていますが、我々は新しいJAを作ろうとかそういう考えはないんですけど、またJAに属してない人たちがほとんどで、「農業を通じた、違うエコノミーを作っていこう」みたいな人たちが集まってきてるという感じがしています。

コーポラティブ・エコノミーという新概念

最後になりますが、僕たちがやっていることは、どっちかといえば、企業という考え方がだんだんなくなっていくと思いまして、個人が協力し合うコーポラティブ・エコノミーというか、そういう世界に移っていくんじゃないかなというふうな気がしています。

最近、AirbnbとかUberとか、そういうシェアリングエコノミーみたいな話もありますけど、なんかシェアリング・エコノミーも胡散臭くなってきたというか、企業型になってきた感じがしてて。

コーポラティブ・エコノミーというか、個人がもっと有機的に協力し合う、そういうエコノミーみたいのが、逆にいうと大都市ではできない、神戸ぐらいのサイズ感のまちだったらそういう経済を作れるんじゃないかなという実感がしつつあります。

実は、そのFARMERS MARKETのお店のリアルショップがはっている、さっき言ってた、うちのシェアオフィスは「KITANOMAD」っていうんですけど、そのKITANOMADを移転して新しい拠点が3月までにできる予定です。そこのティザーサイトみたいなものが立ち上がってます。

よろしければ、3月末にオープンします、神戸にお立ち寄りいただいたときに立ち寄りやすいような、ちゃんと野菜のショップがあって、カフェがあって、シェアオフィスがあって、ヨガスタジオがあってというような拠点を北野坂のど真ん中に作る予定ですので、お気軽にお立ち寄りください。はい、以上でございます。

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